近年の不動産価格や建築資材の高騰を背景に、「割安で購入できる中古戸建て住宅」への需要が高まっています。
しかし、注文住宅には施主のこだわりが反映され、一般的な建売住宅とは異なるデザインや仕様が含まれるため、「売れにくい」「売却価格が折り合わない」といったデメリットも生まれやすいです。
この記事では、中古注文住宅の売却を検討している方に向けて、売却をスムーズに完了させるための具体的なコツや、売れにくいとされる理由とその対策について詳しく解説します。
中古注文住宅が「売れにくい」と言われる理由
注文住宅の売却が難航しやすい背景には、次のような理由があります。
カスタマイズ度が高く一般受けしにくい
注文住宅は、施主の好みに合わせた間取りやデザインが反映されていますが、その分、他の購入希望者にとっては間取りや仕様がニーズに合わない場合も多くなります。
例えば、独自のスキップフロアや特殊な収納スペース、特定のテイストに強く寄ったインテリアが採用されている場合、万人に受け入れられにくく、結果として売却までの期間が延びることがあります。
高コスト構造で価格の妥協が難しい
注文住宅は、建売住宅よりも施主の希望が反映されている分、建築費用が高くなりがちです。
このため、売却価格が高めに設定されやすく、購入希望者の予算と合わない場合があります。
築年数が経過すると建物自体の価値が減少するため、建築費用をそのまま反映した価格設定は難しいです。
- 建築時:こだわった内装や間取りにコストがかかる
- 売却時:こだわりの要素が評価されにくい
こうしたギャップが「売れにくい」「価格に折り合いが付かない」と言われる要因です。
ただし、耐震性能などの「災害リスク」や省エネ性能などは、建築から一定期間の間はプラスに評価されることもあります。
特殊な設備や仕様のメンテナンスコスト
高性能な設備やカスタマイズ性の高いインテリアは、注文住宅の魅力である一方、購入者にとってはメンテナンスや修繕の負担が増える可能性があります。
エコ設備や特注の素材など、手入れや交換が必要になることで、購入者側から見た購入後の負担が増加することも少なくありません。
たとえば、海外メーカーのシステムキッチンは、築年数が経過した後だとメンテナンスのための費用がかかるため、設備一式を取り換える前提で引き渡される場合もあるでしょう。
その際、特殊な形状の設備を導入していてリフォーム工事費用が嵩む場合は、金額的にマイナスの評価を受けてしまうことがあるのです。
中古注文住宅の売却を成功させるための対策
では、「注文時のコストを中古住宅として売却する時には反映させにくい」「一般ウケしないことがある」といったデメリットを解消して、注文住宅の売却を成功させるためのポイントを見ていきましょう。
独自性をポジティブにアピールする
注文住宅の特徴や独自性を購入希望者に伝える際、ポジティブな面を強調することが大切です。
例えば、耐久性の高い建材や高機能設備、周辺環境との調和が取れたデザインなどを具体的にアピールすることで、他の物件との差別化が図れます。
これらは仲介を依頼する不動産会社にも相談し、ポータルサイト掲載時の物件情報ページの内容を充実させるなどして、買主に訴求するようにしましょう。
信頼できる不動産会社の協力を得る
注文住宅の売却には、一般的な建売住宅と異な る戦略が必要です。
特に、注文住宅の売却実績が豊富な不動産会社に依頼することで、物件の適切な評価額を見積もってもらい、売却がスムーズに進むようサポートしてもらいましょう。
売り出し価格の設定時は、ハウスメーカーごとの建築単価から建物部分の価値を適切に算出することで、合理的な金額を設定することが可能です。
内装や設備のリフォームを検討
新しい所有者にとって魅力的な状態を保つため、リフォームや設備更新を行うことも一つの手段です。
キッチンやバスルームなど、使用頻度が高い設備を最新のトレンドに合わせることで、買主が購入後の生活をイメージしやすくなり、成約率が上がります。
ただし、コストをかけてリフォームした部分が必ずしも売却価格に反映できるわけではないため、不動産会社の意見も聞いた上で検討するようにしてください。
有名ハウスメーカー別の建築の特徴と売却時のポイント
同じ「注文住宅」のくくりでも「品質重視のハウスメーカー」「ミドルコストのメーカー」「ローコストのメーカー」で住宅の特性・構造が異なります。
「有名なメーカーが建築した」という点がプラス評価になることもありますので、メーカーごとの特徴も確認しておきましょう。
積水ハウス(高品質)
特徴
耐久性に優れた構造とデザインの自由度が高いことが特徴です。施主の希望に応じた設計が可能で、外観デザインも多彩です。
売却時のメリット
積水ハウスというブランド自体が高い評価を受けており、購入者にとって安心感を与えやすいです。
売却時 のデメリット
コストが高いため、購入者の予算に合わない場合があります。
一条工務店(高品質)
特徴
高気密・高断熱で、冷暖房効率が良く、光熱費が安く抑えられる住宅を提供しています。
売却時のメリット
エコ志向の買主にとっては、大きな付加価値になります。また、耐震性能にも高い評価があります。
売却時のデメリット
高性能設備が劣化すると、修繕費が高くなるため、購入希望者は慎重な検討が必要です。
住友林業(高品質)
特徴
自然素材をふんだんに使った木造住宅が特徴で、温かみのある住まいを実現しています。
売却時のメリット
木材を使った独特のデザインが魅力で、木のぬくもりを重視する買主には魅力的です。
売却時のデメリット
木造のため経年劣化が見えやすく、メンテナンスが必要です。
パナソニックホームズ(高品質)
特徴
耐震性と省エネ性能が高く、エコ設備が充実しています。
売却時のメリット
エコ設備のメリットがアピールポイントになり、買主にとって魅力的です。
売却時のデメリット
築年数が経つと最新のエコ性能ではなくなるため、買主が追加の設備更新を必要とすることもあります。
タマホーム(ローコスト)
特徴
リーズナブルな価格でスタンダードな住まいを提供しています。
売却時のメリット
手ごろな価格であり、広い購入者層に受け入れられやすいです。
売却時のデメリット
コスト重視の影響で、築年数によっては建材の劣化が目立つ場合があるため、修繕の必要性が増します。
購入者層に合わせた宣伝とターゲティング
ターゲット層に応じた宣伝戦略を考えることが、売却の成功には欠かせません。
たとえば、ファミリー層やエコ志向の購入者に対しては、エコ設備や利便性の高い周辺施設のアピールが有効です。
また、インターネットのポータルサイトやSNSを通じて広範囲の購入者に物件情報を届けると、遠方からの購入希望者を引き付けることができます。
インスペクションの実施で信頼性を高める
中古住宅の売却を進める際、インスペクション(住宅診断)の実施は、購入希望者にとって物件の状態を把握する手助けとなり、売却においても有利に働きます。
インスペクションでは、所定の講習を受けた建築士が住宅の構造や設備の状態をチェックし、劣化箇所や修繕の必要性について具体的な診断を行います。
インスペクションのメリット
インスペクション済みの物件であることを示すことで、購入希望者は住宅の状態について安心して判断できます。
不安を軽減することで、購入へのハードルが下がり、売却がスムーズに進む可能性が高まるでしょう。
事前に物件の状態が明確であると、購入希望者との価格交渉もスムーズに進められ、「中古住宅」というイメージから生じる不安からの減額交渉も防げる点がメリットです。
インスペクション結果を元に適切な価格設定ができれば、根拠のある交渉が可能となり、成約率の向上も期待できます。
なお、一般的な中古戸建て住宅でインスペクションを実施する際の費用は5万円程度です。
売却価格へのプ ラス効果
インスペクションの利用効果
住宅売却時のインスペクション利用者に、インスペクションの利用効果を確認したところ、「自宅の売却が希望価格で売れた」が64.3%で最も多く、「買手が早く見つかり売却がスムーズにできた」(51.8%)が続く。
引用:全宅連(2017年)『土地・住宅に関する消費者アンケート調査』
全宅連が実施したアンケート調査では、インスペクションを実施することで有利な条件で売却できたという結果が報告されています。
インスペクションを通じて良好な状態が確認された場合、その結果をアピールポイントとして活用できるでしょう。
インスペクションで不具合が見つかったら不利になるのでは?
「インスペクションを実施することで不具合が見つかり、売却前に補修をする必要があるのではないか」という懸念を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、もしインスペクションを実施せず、売却後一定期間の間に不具合が見つかった場合は「契約不適合責任(旧民法における瑕疵担保責任)」が問われて、補修のための費用が求められるケースが多いです1。
そのため、後々責任を問われるリスクがあるのであれば、売却前にインスペクションを実施するほうが安心でき、売却までスムーズに進めることが可能です。
ただし、この後解説する「メーカーの保証を引き継ぐ」場合は、メーカーが指定した検査を求められる場合があります。
メーカー保証の引き継ぎと必要な手続き
注文住宅の売却において、元のハウスメーカーが提供する住宅保証を次の購入者へ引き継ぐことができるケースもあります。
メーカー保証には、構造や基礎、外壁などに対する長期保証が含まれていることが多く、これを引き継げることは購入希望者にとっても大きな安心材料になり、購入意欲が高まるきっかけになるかもしれません。
保証引き継ぎが可能なケース
一部のハウスメーカーでは、特定の条件を満たすことで保証の 引き継ぎが可能です。
たとえば、積水ハウスや一条工務店といった大手メーカーでは、売却の際に一定の手続きを経ることで保証を継続できます。
新築から20年以内の物件※は、新築時の保証を継続することができます。また、保証期間が過ぎた物件に対しては、当社独自の点検・必要補修(有償)を実施して頂ければ、構造躯体と防水に関して新たに10年間の品質を保証する制度がございます。
耐震性能や雨漏りといった中古住宅の不安に対して、メーカー保証が引き継げる場合は買主にとってのメリットも大きいため、売れやすさ・価格の折り合いの部分でも有利に作用する可能性が十分あるでしょう。
保証を引き継ぐための手続き
まずは、元のハウスメーカーに連絡し、保証の引き継ぎについて確認しましょう。メーカーによっては、住宅の状態確認やインスペクションが求められることもあります。
保証の引き継ぎには、物件の購入契約書や保証書のコピー、物件の点検記録などが必要です。これらの書類を事前に整えておくと、手続きがスムーズに進みます。
一部のメーカーでは、保証引き継ぎに際して手数料が発生する場合があります。費用についても事前に確認し、購入者に説明しておくと良いでしょう。
このように、メーカー保証を引き継ぐことで、購入者にとって住宅の信頼性が増し、売却においても大きなメリットとなります。
柔軟な価格設定と適切な売却価格の見直し
現状の市場動向や地域の価格相場に応じて、価格を柔軟に調整することも重要です。
査定額が低い場合でも、理由をしっかり理解し、現実的な価格設定にすることで、成約に結び付きやすくなります。
中古注文住宅の売却に関するよくある質問(FAQ)
中古の注文住宅は売れにくいですか?
一般的に、注文住宅はオーナーの個性的なこだわりが反映されているため、一般的なニーズと合わない場合があります。そのため、売却に時間がかかることがあります。
なぜ中古の注文住宅は売りにくいと言われるのですか?
特殊な間取りやデザイン、設備が買い手の好みに合わない可能性が高いからです。また、リフォームやリノベーションが必要な場合、買い手の負担が増えるため敬遠されることがあります。
中古の注文住宅を売るためにはどうすれば良いですか?
市場価格を適正に設定し、物件の魅力を最大限にアピールすることが重要です。必要に応じてリフォームやハウスクリーニングを行い、不動産会社と協力して効果的な販売戦略を立てましょう。
リフォームやリノベーションは必要ですか?
物件の状態や市場のニーズによります。投資対効果を考慮し、キッチンやバスルームなど需要の高い箇所を中心にリフォームを検討すると良いでしょう。
関連記事:家(戸建て・マンション)はリフォームすると高く売れる?
どのような不動産会社に依頼すべきですか?
中古住宅の売買に実績があり、注文住宅の販売経験が豊富な不動 産会社を選ぶと効果的です。「イエウリ」では、実績豊富な優良不動産会社をご紹介します。
売却価格はどう設定すれば良いですか?
周辺の類似物件の相場を参考にしつつ、物件の特長や状態を考慮して適正な価格を設定します。高すぎると買い手がつきにくく、低すぎると損をする可能性があります。
関連記事:家を高く売る方法をゲーム理論で考察
物件の特長をどのようにアピールすれば良いですか?
高品質な建材の使用、エコ設備の導入、便利な立地条件など、買い手にとって魅力的なポイントを強調して宣伝します。
購入希望者のニーズに合わせて間取りを変更できますか?
可能であれば、リフォームの提案や間取り変更の可能性を伝えることで、買い手の興味を引くことができます。
売却までに時間がかかる場合、どうすれば良いですか?
価格の見直しや販売戦略の変更、不動産会社の再選定などを検討します。また、物件の魅力を再評価し、新たなアピールポイントを見つけることも有効です。
関連記事:媒介契約を解除して仲介業者の変更は可能?
広告や宣伝はどのように行えば良いですか?
インターネット広告やチラシ、オープンハウスの開催など、多様な手段で物件情報を広く発信します。
ハウスクリーニングは必要ですか?
はい、内覧時の印象を良くするためにプロのハウスクリーニングを利用すると効果的です。
ホームステージングは有効ですか?
はい、家具やインテリアを配置して生活イメージを演出することで、買い手の購買意欲を高めることができます。
エネルギー効率や環境性能をアピールできますか?
省エネ設備や環境に優しい建材を使用している場合、それらを強調することで付加価値を提供できます。
土地として売却する方が良い場合もありますか?
建物の老朽化が進んでいる場合や、土地の価値が高い地域では、解体して土地として売却する選択肢もあります。
関連記事:古家付きの土地は更地にして売る方が得?
適切な売却時期はありますか?
不動産市場が活発になる春や秋が一般的に適していますが、地域の市場動向を確認してタイミングを計ると良いでしょう。
税金や費用はどれくらいかかりますか?
仲介手数料、譲渡所得税、印紙税、登記費用などが発生します。詳細な金額は専門家に相談してください。
関連記事:売却費用・税金で確認すべきポイント
売却前に専門家のアドバイスを受けるべきですか?
はい、不動産の売却に精通した専門家に相談することで、適切な売却戦略を立てることができます。
購入希望者からの値引き交渉には応じるべきですか?
市場価格や売却を急ぐ度合いによりますが、柔軟に対応することで成約 に繋がる場合があります。
関連記事:買主から値引き交渉されたときの対処法は?
物件のデメリットはどのように対処すべきですか?
デメリットを隠すのではなく、正直に伝えた上で、それを補うメリットを強調することが信頼につながります。
耐震性や安全性は重要視されますか?
はい、近年は耐震性や防犯性など、安全面への関心が高まっています。これらの情報を明確に提示しましょう。
売却活動中に居住していても大丈夫ですか?
可能ですが、内覧の際には整理整頓を心がけ、買い手が生活をイメージしやすい環境を整えることが重要です。
ペットを飼っていた場合、何か注意すべき点はありますか?
ペットの臭いや傷などがある場合は、専門業者による清掃や修繕を検討すると良いでしょう。
近隣環境の情報は提供すべきですか?
学校や商業施設、交通アクセスなどの情報は買い手にとって重要です。積極的に提供しましょう。
価格交渉の余地を最初から設けるべきですか?
あらかじめ交渉の余地を持たせた価格設定をすることで、買い手との折衝がスムーズになります。
関連記事:不動産の売り出し価格はどう決める?
まとめ
注文住宅は一般的に売却に時間がかかるとされますが、適切な対策を講じることでスムーズな売却が実現可能です。
住宅の個性やブランド力、エコ性能などの長所をしっかりとアピールし、購入希望者のニーズに応じた柔軟な価格設定を行うことで、成約率が高まります。
各ハウスメーカーの特長を理解した上で、プロのサポートを活用しながら売却を進めていくことが成功の鍵となるでしょう。