リストラや病気が原因で、住宅ローンの返済が困難になることがあります。こうした場合、返済を一時停止(リスケ=リスケジュール)してもらうことはできないのでしょうか。
この記事では、住宅ローンの返済が困難になった際に、返済猶予が可能なのかを明らかにしたうえで、依頼の手順や手続きの方法を解説します。
住宅ローンの返済に困ったらまず銀行に相談を
突然のリストラや病気などで収入が途絶え、住宅ローンの返済が困難になった場合、一時的に返済の猶予が可能なのかについて、解説をしていきましょう。
住宅ローンの無断滞納は最悪のシナリオ
銀行に無断で住宅ローンの返済を滞納すると、2~3カ月後に、督促状が送られてきます。
さらに滞納を続けると、催促状が届き、最終的には、自宅が競売にかけられることになります。
滞納することで、一時的に生活費が確保できたとしても、自宅を失うという現実を考えれば、とても賢明な選択とはいえません。
返済猶予やリスケジュールの相談
資金繰りに困った場合は、返済期限がくるまでに必ず融資をしてくれた銀行に相談をしましょう。
住宅ローンの返済が困難になった際に、銀行に相談をすると、リスケジュールという返済計画の見直しを提案してくれることがあります。
いくつかあるリスケジュールのメニューのひとつとして、返済猶予という選択肢も提示されます。
住宅ローンは最長1年の返済猶予がある
返済の一時猶予は、すべての返済を猶予してくれるのではなく、元本の返済が猶予されて、金利のみを返済するという方法です。
元本返済の猶予期間は、最長で1年です。
期間限定の猶予ですから、その先の返済の目途が見込めないと、猶予をしてもらうことはできません。
返済猶予を利用できるケース
たとえば
- 家族が入院中で一時的に医療費を確保する必要がある
- リストラをされたが、近々確実に再就職が可能である
といったケースであれば認めらるでしょう。
元本返済もゼロ円になるということではなく、毎月10万円を返済しているとすれば、そのうち返済可能な3万円を猶予期間中に返済するといった流れになります。
返済猶予の後は返済額が増える
ただし、返済一時猶予では、原則として返済期間の延長が行われないので、猶予期間終了後は、猶予前よりも返済金額がアップします。
このため猶予期間後の返済が実際に可能なのか検討が必要です。
フラット35は最長3年の返済猶予がある
住宅金融支援機構のフラット35を利用している場合も、病気やけが、その他やむを得ない理由で返済が困難になった場合、返済の猶予制度があります。
次の1~3の条件をすべて満たせば、最長で3年の元本返済猶予をしてもらえます。
- 離職や病気等の事情により返済が困難となっている
- 収入減少割合が20%以上、または失業中
- 以下のいずれかに該当する
- 年収が機構への年間総返済額の4倍以下
- 月収が世帯人員×64,000円以下
- 住宅ローン(民 間の住宅ローンを含む)の年間総返済額の年収に対する割合が、年収に応じて下表の率を超える
年収 | 返済負担率 |
---|---|
300万円未満 | 30% |
300万円以上~400万円未満 | 35% |
400万円以上~700万円未満 | 40% |
700万円以上 | 45% |
これらの条件を満たした場合、次のような措置がとられます。
- 最長で15年の返済期間の延長
- 最長で3年の元本返済猶予
- 猶予期間中の金利の引き下げ
フラット35では、元本返済猶予だけでなく、返済期間の延長もあるので、猶予期間が終了した後も返済猶予前と同等の金額を返済していくことができます。
返済期間を延長する方法もある
住宅ローンのリスケジュールは返済猶予だけでなく、返済期間を延長するという方法があります。
返済猶予を含め、従前はリスケジュールを認めてくれない金融機関も多かったのですが、近年は「住宅ローンの返済方法は柔軟に対応するように」という国からの通知もあり、返済延長に応じてくれる金融機関も増えています1。
何年間延長できるのかという明確なルールはありませんが、延ばせる最長は、トータルの返済期間が35年までの範囲です(最近は最長40年など、35年を超えるローンを用意する金融機関もある)。
また返済完了時の年齢も加味され、完済年齢が75歳までと定められている銀行であれば、その年齢に達するまでの期間が返済期間が延長できる限度になります。
銀行では、完済年齢を75歳に設定しているケースが多いのですが、中には70歳としている銀行もあるので注意してください。
フラット35の住宅金融支援機構は、住宅ローンの契約年数にかかわらず、最長で15年の延長が認められています。
また完済年齢も80歳に設定されていますから、大幅な延長が期待できます。
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リスケジュールによるデメリット
返済猶予や返済延長といったリスケジュールをした場合、一時的に返済が軽減されるというメリットがありますが、一方で次のようなデメリットがあります。
- 返済猶予で返済期間の延長をしない場合は、返済猶予後の返済額が高くなる。
- 返済期間を延長すると、トータルの返済額が増える
- 優遇金利が適用されていた場合、これが適用できなくなることがある。
- 変動金利を利用していた場合、金利が0.5%~1%引き上げられることがある
- 追加で担保や保証人を求められることがある
リスケジュールでは、こうしたデメリットがあることを認識しておくことが重要です。
リスケジュールが認められないケース
リスケジュールは、本来銀行にとって望ましい選択ではありません。
当初の審査で、確実に返済してもらえるはずだった顧客が、返済が苦しいと訴えてきたのですから、リスケジュールに際しては、再度審査が行われます。
この審査に通らなければ、従前どおりの返済をしていくことを余儀なくされます。
当然、債務者に対しては、返済に対して最大限の努力が求められます。
たとえば、次のようなケースに該当するとリスケジュールを断られることがあります。
ギャンブルが理由でローンの返済が苦しい
リスケジュールは、あくまで会社の景気が悪くて給与が下がったといった、本人の努力ではいかんともしがたい理由がある場合に適用されるものです。
自堕落なギャンブルによって返済が苦しくなったことが明らかであれば、リスケジュールは断られます。
贅沢な生活をしている
リスケジュールの相談をすると、銀行の担当者から、日常の生活パターンのヒアリングが実施されます。
たとえば「高級車を2台保有している」「子どもが何カ所も塾に通っている」「子どもも含め家族全員が携帯電話を保有しており、利用料金が異常に高い」といった状態であると、車の売却や携帯電話の一部解約といった節約措置をとらないと、リスケジュールを断られることがあります。
オーバーローンで売却する場合、信用情報に影響する?
住宅ローンの返済が厳しくなって家の売却を検討する場合、売却金額でローン残債を賄える場合はスムーズに売却可能です。
一方で、売却金額では残債をク リアできずオーバーローンになる場合、残債の返済計画が明確であり、金融機関の承認が得られれば売却できるケースがあります。
ただし、この場合、信用情報に影響が出る可能性があるため、事前に金融機関とよく相談することが重要です。
信用情報に影響が出るケース
以下のような場合、信用情報にネガティブな影響が出る可能性があります。
①ローンの「減免(カット)」が行われた場合
売却後に残債務を全額返済できないため、金融機関が債務の一部を免除した場合「異動」として信用情報機関(CIC、JICC、KSC)に記録されることがあります。
異動情報(いわゆるブラックリスト状態)として記録されると、一定期間(通常5年~10年)新たなローンやクレジットカードの審査が通りにくくなってしまいます。
②返済条件の変更(リスケジュール)をした場合
残債を分割払いにするために、金融機関と新たな返済条件での合意(リスケ)を行った場合、「条件変更」として信用情報に登録される可能性があります。
一般的にリスケは異動情報にはならないケースもありますが、金融機関の判断次第であるため、事前に確認しておきましょう。
③保証会社が代位弁済した場合
金融機関が保証会社に債権を移し、保証会社が代位弁済(支払いを肩代わり)すると、異動として記録されるため、一定期間は信用情報に影響が出ます。
信用情報に影響が出ないケース
以下のような場合は、信用情報に影響が出ない可能性があります。
①売却後、残債を自己資金で完済する場合
売却後に発生す る残債をすぐに自己資金や別のローン(無担保ローンなど)で返済する場合、信用情報には影響しません。
ただし、新たに借りたローンの履歴は信用情報に載るため、将来のローン審査に影響する可能性があります。
②金融機関が「通常の売却」として扱う場合
売却後の残債の支払い計画が明確であり、借入残高と売却価格の乖離が少ない場合、金融機関が信用情報に登録せずに売却を認めることもあります。
競売はなるべく回避すべき理由
このように、残債務の返済方法次第では信用情報に大きな影響を出さず、オーバーローンの家でも売却できることがあります。
住宅ローンの返済遅延が続くと任意売却や競売となってしまい、売却活動に充てられる期間が短くなってしまうため、持ち家の維持が難しい場合は早めに金融機関と返済スケジュールや売却について相談するようにしてください。
とくに競売となると、市場価格よりも大幅に安い金額で手放さなければならず、多額の残債務を抱えてしまう可能性があります。
割り切って自己破産するなどの見立てがある場合を除いて、できる限り競売は避けるのが無難です。
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まとめ
リストラなどが原因で住宅ローンの返済が困難な状況になった場合、銀行に何の断りもなく滞納をするのが、最悪の選択です。
滞納を続けると、自宅が競売にかけられる可能性があり、自宅を失った上に借金だけが残るといった事態にもなりかねません。
住宅ローンの返済が困難になったら、とにかく、融資をしてくれた銀行に相談をすることから始めましょう。
銀行としても、競売になることは避けたいと考えているので、現実的に返済ができるリスケジュールをしてくれます。
一定期間のみ返済が困難なことが明らかであれば、元本返済を猶予してもらって金利のみを返済するという方法があります。
長期的な低収入が予測されるのであれば、返済期間自体を延長してもらうという方法があります。
銀行の住宅ローン担当者に、収入状況を正直に提示して、最善のリスケジュールを検討してもらいましょう。
ただし、銀行が具体的に相談にのってくれるのは、自分自身の生活を節約したうえでのことですから、自身の生活の見直しが求められることも頭に入れておきましょう。