シングルマザーで住宅購入を検討する際、住宅ローンが組めるのかを心配している人は多いのではないでしょうか。
この記事では、シングルマザーは住宅ローンを組めるのかや、利用する際の注意点などを解説します。
シングルマザーでも住宅ローンは組める
結論からお伝えすると、シングルマザーでも住宅ローンを組むことは十分可能です。
金融機関の審査では、家庭の状況よりも収入の安定性や返済能力が重視されます。必要な条件を満たせば、問題なく審査に通るケースが多いのです。
また、住宅ローンの負担を軽減できる公的支援制度や自治体独自の支援策もあります。
これらの制度をうまく利用すれば、家計を圧迫せず無理なく返済を続けられるでしょう。
シングルマザーが住宅ローンの審査を通過するには?
シングルマザーが住宅ローンの審査を通過するためには、審査の仕組みを理解し、安定した収入と計画的な返済プランを用意することが大切です。
以下では、住宅ローンの審査の基準やクリアすべきポイントについて解説します。
住宅ローン審査の基準を知ろう
住宅ローンの審査では、金融機関が返済能力を評価するために以下の基準を満たしているかをチェックします。
- 完済時年齢
- 健康状態
- 借入時年齢
- 年収
- 勤続年数
- 返済負担率
- 担保評価
- 金融機関の営業エリア
- 連帯保証
- 国籍
- 雇用形態
- 融資可能額(融資率)①購入の場合
- 融資可能額(融資率)②借換えの場合
- カードローン等の他の債務の状況や返済履歴
- 申込人との取引状況
- 業種
- 家族構成
- 雇用先の規模
- 所有資産
- 性別
- その他
参考:国土交通省「令和5年度 民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」
国土交通省のアンケートの結果、住宅ローンを80歳までに完済できるかを重視しているのが分かります。
次に健康状態の良し悪しが重要視されています。なぜなら健康診断で引っかかると、団体信用生命保険(団信)に加入できない恐れがあるからです。
団体信用生命保険(団信)は、ローン利用者が死亡・事故等で返済不能になってしまった際に、保険会社が代わりにローンを完済してくれる保険です。
シングルマザーの女性が気にする家族構成や性別は、住宅ローンの審査にそこまで影響は及びません。
審査に通るために押さえておきたい項目
金融機関では、特に以下の項目を重視する傾向にあります。
- 健康状態
- 年収
- 勤続年数
- 返済負担率
- カードローン等の他の債務の状況や返済履歴
以下では、金融機関が住宅ローン審査で特に注目する項目について、詳しく解説します。これらのポイントを事前に把握して、しっかりと準備することで審査通過の可能性を高めることができます。
健康状態
多くの住宅ローンでは、団体信用生命保険(団信)への加入が求められます。
団信は、万が一申込者が死亡または高度障害になった場合、保険で残りのローンを完済する仕組みです。団信に加入するためには、健康状態に関する審査をクリアする必要があります。
持病がある場合や健康状態に不安がある場合は、団信不要の住宅ローンを検討するのも一つの手段です。
年収
安定した年収は、住宅ローン審査を通過できるかを左右する最も重要な項目です。金融機関は、申込者が無理なく返済できるかを年収を基に判断します。
シングルマザーの場合でも、一定の収入があれば審査通過の可能性は十分あります。
多くの金融機関では、年収の5~8倍程度を借入可能額の上限としています。ただし、返済負担率( 年収に占めるローン返済額の割合)による制限がかかる場合もあります。
勤続年数
勤務先での勤続年数は、収入が安定しているかを判断するための重要な目安です。一般的には、勤続年数が2年以上であることが望ましいとされます。
勤務先が変わったばかりでも、同じ業界での勤務が続いている場合は、柔軟に判断されることがあります。
返済負担率
返済負担率とは、年収に対する年間返済額の割合を示す指標です。金融機関は、返済負担率が高すぎないかを確認し、申込者の返済能力を判断します。
返済負担率は、一般的に30~35%以下が望ましいとされています。この基準を超えると、審査に通りにくくなる可能性があるため注意しましょう。
カードローン等の他の債務の状況や返済履歴
住宅ローンを申し込む際、金融機関は信用情報機関のデータを参照し、他の借入状況や返済履歴を確認します。
カードローンやリボ払い、消費者金融からの借入が多く、過去に支払い遅延や延滞があると、審査に悪影響を及ぼす可能性がある点に注意しましょう。
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シングルマザーにおすすめの住宅ローン
一口に住宅ローンと言っても、金融機関ごとに様々な種類があるため迷いますよね。特にシングルマザーには、長期的に安定して、無理なく返済できるローンが安心できるはず。そこでおすすめなのが「フラット35」です。
以下では、フラット35の特徴や、なぜシングルマザーにおすすめなのかを解説します。
フラット35の特徴
「フラット35」は、住宅金融支援機構と民間金融機関が共同で提供する住宅ローン商品です。フラット35には次のような特徴があります。
完済するまで金利が固定
フラット35の最大の特徴は、借入時に決まった金利が完済まで変わらない点です。
住宅ローンの金利タイプには「固定金利」と「変動金利」の2種類があります。変動金利は、市場や経済状況によって金利が上下するのが特徴。低金利時にはメリットがありますが、金利が上昇すると返済額が増えるリスクを伴います。
一方、固定金利は、借入時に設定された金利が返済期間を通じて変わりません。返済額が一定に保たれるため、長期間にわたるローン返済においても安心感があります。
住宅ローンのように返済が長期間にわたる場合、金利の上昇による返済額増加は家計に大きな負担となります。しかし、フラット35では金利が固定されているため、このリスクを回避できます。
さらに、返済額が一定であることから、家計の管理がしやすく教育費や生活費など将来の支出を見据えた計画を立てやすいというメリットもあります。
ただし、現在は住宅ローンの金利は低く設定されており、「変動金利の方が固定金利よりも金利が低い=固定金利の方が利息負担が大きい」状態です。
ニーズに合わせた商品が用意されている
フラット35は、多様な利用者の ニーズに対応するため、さまざまな商品を提供しています。基本プランの「フラット35」は、新築だけでなく中古住宅やリフォームにも対応しており、全期間固定金利型の特徴を活かして安定した返済計画を立てることができます。
他にも、省エネルギー性能や耐震性能など一定基準を満たす住宅には「フラット35S」、子どもの人数に応じて一定期間金利が引き下げられる「フラット35子育てプラス」、中古住宅購入時にリフォーム費用を含めて借入ができる「フラット35リノベ」など。
これらのラインナップから、収入状況や家族構成、住宅の性能基準に応じて適切な商品を選ぶことができます。
保証人や繰り上げ返済の手数料が不要
フラット35の特徴の一つに、保証人や繰り上げ返済の手数料が不要である点があります。一般的な住宅ローンでは、返済能力を補うために保証人を求められる場合がありますが、フラット35ではその必要がありません。
さらに、フラット35では繰り上げ返済をする際の手数料がかからないのも大きなメリットです。繰り上げ返済とは、資金に余裕ができたときに借入金の一部または全額を返済することをいいます。
繰り上げ返済をすることで、総返済額を減らしたり返済期間を短縮できるため、家計に掛かる負担も軽くできます。
多くの金融機関では、繰り上げ返済に数万円の手数料がかかる場合があります。ですが、フラット35は手数料がかからないため、資金に余裕ができた段階で、気軽に返済することができます。
シングルマザーにフラット35がおすすめな理由
「フラット35」は、「全期間固定金利」なので、金利が借 入時から返済終了まで固定されます。返済額が一定で金利上昇を心配する必要がないため、無理のない返済計画が立てやすくなります。
また、雇用形態に制限がないのもおすすめな理由です。正社員はもちろん、パートや派遣社員、フリーランスでも利用できます。
自己資金に余裕ができたら、繰り上げ返済を検討する人もいるでしょう。その場合も、繰上返済にかかる手数料が無料なのも嬉しいポイント。
さらに、子供の人数に応じて一定期間の金利を引き下げられる「フラット35子育てプラス」を利用することで、低金利で借り入れが可能です。
フラット35は一定の要件を満たす中古住宅でも利用できるため、「借入額をできるだけ抑えるために、割安な中古住宅を購入する」というのも有効な戦略だと言えるでしょう。
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シングルマザーが住宅ローンを組む際に利用したい公的支援制度
住宅ローンを組めたとしても、返済に不安が残るという人もいるはず。家計の負担を減らして、無理なく返済をすすめるためにも、以下でご紹介する公的支援制度を活用しましょう。
母子父子寡婦福祉資金貸付制度
母子父子寡婦福祉資金貸付制度は、ひとり親家庭を支援するために設けられた公的制度です。
母子家庭や父子家庭、寡婦(配偶者と死別または離婚し再婚していない方)を対象としており、住宅資金は次の用途で利用可能です。
住宅を建設し、購入し、補修し、保全し、改築し、又は増築するのに必要な資金
特別:2,000,000円
据置期間:6ヶ月
償還期間:6年以内
特別7年以内
利率:(保証人有)無利子
(保証人無)年1.0%
この制 度を利用することで、住宅ローンの頭金や家計を安定させるなど、住宅購入の負担を軽減することが可能です。
詳細な条件や申し込み方法は自治体によって異なるため、市区町村の福祉担当窓口で確認しておきましょう。
利用できるその他の支援制度
住宅購入とは直接関わりはありませんが、母子父子寡婦福祉資金貸付制度の他にも、ひとり親世帯に向けて次のような支援を行っています。
- 児童扶養手当
- 女性福祉資金貸付
- ひとり親家庭住宅手当
- 母子家庭自立支援給付金
- 高等職業訓練促進給付金
- 高等学校卒業程度認定試験合格支援事業
- ひとり親家庭等医療費助成
- 高校生等奨学給付金
- 遺族年金
これらの支援を活用して、住宅ローンの返済で家計にかかる負担を軽減しましょう。
シングルマザーが住宅ローンを組む際の注意点
住宅ローンは長期にわたって返済が続きます。何の準備もなしに住宅ローンを組むと、家計を圧迫したり、教育費や医療費にかかる費用が不足する恐れがあります。
以下では、家計の負担を軽減するために、金融機関への申し込みをする前の準備について解説します。
家計を見直して無駄を減らす
住宅ローンを組む前に、家計をしっかりと把握し、無駄を見直すことから始めましょう。
毎月の収支を確認し、固定費(家賃や光熱費など)と変動費(食費や娯楽費など)を分けて整理します。
それらが分かれば、どの部分を節約できるかが具体的になります。例えば、不要なサブスクリプションや嗜好品への出費を見直すなど。
普段の生活で絶対に 必要な支出と、そうでない支出を明確にして、無駄な部分は可能な限り削るようにしましょう。
子育てにかかる養育費を見積もる
シングルマザーが住宅ローンを組む際に、子育てと返済の両立は課題になるはずです。
公的支援を活用することで、養育費はある程度カバーすることはできます。加えて、あらかじめ対策をしておくことで、後々の負担を軽減することが可能です。
そこで、まずは子育てにかかる費用を見積もっておきましょう。子育てには主に、次のような費用がかかります。
- 食費
- 生活用品費
- 服飾費
- 医療費
- 保育費
- 教育費
- 通信費
- おこづかい
- 行事関係費
- 預貯金
- 保険
- 娯楽費
0歳から高校卒業までにかかる費用は、ひとりあたり約3,000万円と言われています。この費用をあらかじめ見積もっておくことで、どのタイミングでどれだけの出費が必要になるかを把握できます。
教育費や養育費に加えて、毎月の返済額も合算することで、無理のない返済計画が立てられるかが目に見えて分かるはずです。
収入の変動やトラブルに備えて貯蓄する
突発的な出費に備えて貯蓄をしておく必要があります。急な病気や怪我、家具家電、自動車の故障など、トラブルは突然起こるものです。
これらに対応するために、医療費や修理費用、場合によっては住宅ローンの頭金も準備しなければいけません。
日頃から家計を見直し、無駄な支出を減らしながら、可能な限り貯蓄に回すことを心がけましょう。貯蓄があれば、万が一のときも安心して対応できます。
まとめ
最後までお読み頂きありがとうございます。今回は、シングルマザーでも住宅ローンを組めるのかについて解説しました。
住宅ローンの審査では、以下の項目が重視されます。
- 健康状態
- 年収
- 勤続年数
- 返済負担率
- カードローン等の他の債務の状況や返済履歴
これらの項目さえ基準を満たしていれば、シングルマザーでも住宅ローンの審査は十分に通過することが可能です。
しかし、住宅ローンに通過しても、生活費や養育費に不安が残るという人もいるはず。それらに備えるために、公的支援制度や補助金を活用しましょう。
母子父子寡婦福祉資金貸付制度などを受けることで、住宅購入や住宅ローンの返済にかかる負担を大幅に軽減することもできます。
住宅ローンを選ぶ際は、全期間固定金利で安定した返済が可能な「フラット35」が、シングルマザーにも安心感があっておすすめです。繰上返済手数料が無料である点や、雇用形態に制限がない点も大きなメリットです。
さらに、長期にわたる住宅ローン返済と子育てを両立するためには、家計の見直しや子育て費用の把握、トラブルに備えた貯蓄が不可欠です。
日常的な支出の整理や公的支援を積極的に活用し、無理のない返済計画を立てましょう。