不動産の一括査定サイトは、1回の情報入力で複数社の査定額を比較できるので便利なサービスです。
一括査定サイト経由で各不動産会社の査定額を確認した後は、
- 複数社の話を聞いた後に契約する会社を選んだので、他の会社とは交渉を打ち切りたい
- 利用後に売却をやめることにした
といった理由で不動産会社に「断る連絡を入れる」必要がありますが、これが億劫になってしまうという人は少なくありません。
不動産会社は一括査定サイトから査定物件の情報を受け取る際、1万円~1万5000円程度の手数料を支払っているのですが、査定を無料で実施して、実際に自社経由で家が売れた場合にしか仲介手数料報酬を受け取ることができません。
そのため、断る連絡を曖昧な状態にしておくと、しつこい営業電話などのトラブルに遭遇してしまう可能性があるのです。
この記事では、査定後に不動産会社の営業を上手に断り、トラブルを防ぐ方法を解説します。
断る理由を正直に伝える
不動産会社は、査定サービス経由の申し込みに対して手数料を支払っているので、その費用を回収するためにも「自社が契約できる見込みがあるなら、熱心に営業する」という場合がほとんどです。
そのため、以後の連絡を控えてもらうためには断る理由を正直に伝えるようにしましょう。
- 他の会社で契約することにした
- 今回は売却をやめることにした
宅建業法の定めにより、「断った後に再勧誘を行うこと」は禁止されています。
違反した不動産会社は行政処分される可能性もあるため、はっきりと断った後は電話やメールでの連絡や訪問営業が来ることはなくなるでしょう。
▼関連記事:「家をやっぱり売りたくない」と思ったらキャンセルは可能?タイミングによる注意点・違約金等について解説
査定後に断りの連絡を入れないと営業が続く
査定後に曖昧な態度を続けていると
「他の不動産会社さんとの査定の比較検討はもう終わりましたか?」
「当社のお客様で、あなたの家のような条件の物件を探している方がいるのですが、売却の時期はまだ未定ですか?」
「○日の△時ごろにお客様の近所まで営業で行く予定があるのですが、挨拶を兼ねて訪問させていただけませんか?」
といった連絡が来る可能性があります。
断った後の勧誘行為は法律で禁止されている
なお、宅建業法で禁止されている不動産会社の営業行為として、他には以下のようなものがあります。
- 契約を急がせる
- 目的を告げずに勧誘を行う
- 迷惑な時間の訪問や長電話
- 威圧で契約を迫る
もし断った後の再勧誘や、上記のような迷惑な営業行為があった場合は、国土交通省や各都道府県の宅建業免許所管課などの監督官庁に相談するか、申し込みを行った一括査定サイトにその旨を伝えてください。
不動産業者に対して、「迷惑なのでもう勧誘しないでほしい」「自宅は売りません」と明確に、きっぱりと伝えましょう。
消費者が勧誘を断ったにもかかわらず、勧誘を続けることは禁止されています。迷惑な電話勧誘については、知らない電話番号からの電話には出ないようにすることや、特に高齢者の場合には、通話録音装置や迷惑電話対策機能のついた電話機を利用することも考えましょう。
▼不動産会社による悪質、迷惑な営業行為の情報提供窓口
宅地建物取引業免許(知事免許)に関する窓口
地方整備局に関する窓口
嘘をついて断らない方が良い理由
「嘘も方便」とは言いますが、査定後に不動産会社へ断りの連 絡をする際は、事情を正直に伝えた方が良いでしょう。
不動産の売却を進める際は、不動産会社専用の情報共有サービスであるレインズや、SUUMO、HOME’Sなどの不動産ポータルサイトに物件情報を登録します。
そのため、他社と契約したのに嘘をついて断った場合や、連絡を無視していた場合、売却活動を進めていることがそうしたサイトの情報から知られてしまう場合があります。
不動産会社に対する印象も悪くなりますし、他に依頼した場合は結局それが知られてしまうと考えれば、断る際は理由を正直に伝えるべきです。
また、売却活動の開始後は他の仲介会社経由で買主を紹介されることがあるので、嘘をついた会社や担当者と再び繋がる可能性もあり、その際に気まずい思いをするのは自分自身です。
トラブルなく断るための文例
不動産会社に査定してもらい、以後の連絡や勧誘を断る際は以下の文例を参考にしてください。
- 対応してもらったことへの感謝
- 契約しない理由
- 今後もう一度話を聞いてみたい状況になった場合は、自分から連絡する
という内容を伝えることで、スムーズに断ることが可能です。
「断る連絡をせず無視する」「曖 昧な態度を続ける」といった形で断ろうとするのは、しつこい電話連絡などの原因になってしまうので止めましょう。
▼関連記事:不動産の無料一括査定で起こるトラブルとは?回避策と対処法を解説
「金額を知りたいだけ」で一括査定サイトは使わない方が良い
冒頭で、不動産会社は一括査定サイト経由で売却の査定を受けるために、1件あたり1万円~1万5000円程度の手数料を支払っていると説明しました。
不動産の一括査定サイトは最大6社程度に同時査定依頼ができますが、登録して査定に申し込んだ段階で「どの不動産業者が媒介契約を結べるか」の競争が始まります。
1分も経たずに複数の不動産会社から電話がかかってくることも珍しくありません。
そのため、売却を視野に入れていないのに利用してしまうと、熱心な営業が来て迷惑に感じてしまうというミスマッチが起こってしまうのです。
▼関連記事:マンションなどの不動産を査定だけ依頼しても良い?無料査定の使い方・注意点を解説
一括査定サイト側にキャンセルの連絡をする
「なんとなく家の価値が気になったから使ってみたけど、不動産会社から何度も連絡が来るのは困る」という場合は、一括査定サイト側のサポートデスクなどに「今回は売却しないことにしました。査定申し込みはキャンセルして、不動産会社にもその旨を伝えてください」と連絡してください。
査定に申し込んだ売主側からこうした連絡があった場合、多くの一括査定サイ トは不動産会社側に料金を請求せずにキャンセルの処理を行います。
不動産会社も、手数料が発生して契約の見込みが少しでもあるなら熱心に営業を続けますが、キャンセルすれば以後の連絡は来なくなるでしょう。
無料査定サービスは不動産会社の営業ツール
こうしたケースで正直な理由を伝えてキャンセルせずに無視していると、一括査定サイト側から「○○不動産様から、お客様と連絡が取れないと伺いました。状況はいかがでしょうか?」と連絡が来る場合があります。
最近は「あなたの家も高く売れるかも?たった30秒で気軽に無料査定」といったニュアンスの広告を見て、家を売るつもりが無い人が登録してしまうケースも増えているようです。
売却目的ではない査定依頼でも、不動産会社は一括査定サイトの運営者に手数料を支払わなければなりません。
無料一括査定のサービスは不動産会社が手数料を支払って営業活動をするためのツールなので、売るつもりが無いなら使わない、申し込んでしまった場合は自分でキャンセルの旨を伝えるというのがトラブル防止策です。
もちろん、「住み替えを考えているので、まずはいくらで売れそうかを確認したい」「家を相続したので、相続税の支払いを考えるためにも売却金額が知りたい」など売却に繋がる可能性がある場合は、査定額を比較して相場を確認するメリットがあるので、一括査定が活用できます。
なお、「売却の可能性は低いけど家の資産価値を知りたい」という場合は、もともとそういったニーズのために提供されている無料のAI査定、匿名査定ツールや、国土交通省が運営する「不動産情報ライブラリ」などで調査するのがおすすめです。
▼関連記事:不動産情報ライブラリを使って自分で不動産の相場を調べる方法
「査定金額が高い」だけで媒介契約を結ぶ会社を選ぶのは要注意
一括査定サイトなどを利用して複数社の査定額を確認し、契約する会社を決めたから他の会社は断りたいという方は「査定額の金額が高いから」という理由だけでその会社を選んでいないか、今一度確認するようにしましょう。
一括査定サイトは不動産会社にとって売主との契約を獲得するためのツールであることをお伝えしました。
そのため、「高い査定額を提示して、自社と契約してもらおう」と考える不動産会社も少なからず存在するのです。
特に一括査定サイトを利用した場合「競合する他社」の存在が明らかなので、高めの査定額が提示されやすいです。
各担当者が営業トークの中で「うちなら高く売れます」とアピールすることもあると思いますが、査定額はあくまでも目安であり、その金額で買う人がいなければ成約には結びつきません。
高い査定額の不動産会社と媒介契約を結んで売却活動を進めても、相場からあまりにも高い金額では売れ残ってしまい、後から値段を下げざるを得なくなります。
不動産会社はあなたの家がいくらで売れそうかを調べる際、周辺で過去に売買された取引事例を参照しているので、それらの査定根拠も十分確認するようにしてください。
「高く売れるかも」と金額だけで契約を誘導する会社よりも、査定根拠をきちんと示して妥当な相場価格を示してくれる会社の方が誠実な営業を期待できるとも言えます。
▼関連記事:高すぎる不動産の査定額に注意すべき理由
まとめ
一度対応してくれた不動産会社に断る連絡を入れるのは気が引けてしまうという方は少なくありません。
特に訪問査定を受けた後など、一度顔を合わせた相手であればなおさら断りづらく感じてしまうものです。
しかし、態度を曖昧にしたり、無視するのはしつこい営業の元になってしまうことがあるので、断る際は理由をはっきり伝えるようにしてください。
また、家を売るつもりが無いのに申し込んでしまった場合は、サービス側にキャンセ ルの連絡を入れることで不動産会社への手数料課金がキャンセルされ、その後の営業電話もなくなるでしょう。