子どもの誕生や結婚をきっかけとして、住み替えを検討する人は少なくありません。あるいは、高齢の親を案じて近隣への転居を検討している人もいるのではないでしょうか。そうした人達の住み替えを支援する地方自治体の助成金や補助金の制度がありますので紹介していきましょう。
子育て世帯を支援する助成金
近年、少子化が大きな社会問題になっていますが、子育て世帯の住み替えを支援する地方自治体の助成金制度があります。
神戸市子育て支援住み替え助成事業
神戸市では、子育て世帯が賃貸住宅に新たに入居する場合の住み替えに係る費用に対する助成事業があります。助成金が交付されるのは、次の要件にすべて該当する世帯です。
- 令和3年1月1日以降に移転する世帯であること。
- 小学校入学前の子どもとその親を含む世帯であること。
- 世帯全員の年間所得の合計が520万円未満であること。
- 賃貸住宅に移転して、子育てしやすい住環境が確保されること。
- 新居は、建築基準法に規定する新耐震基準に適合しており、広さが最低居住面積の水準以上であること。
最低居住面積は、「計算式 10㎡×世帯人数+10㎡」によって算出します。ただし子どもの世帯人数は、「0 歳から 2 歳は 0.25 人」「3 歳から 5 歳は 0.5 人」「6歳から9歳は 0.75 人」とします。
たとえば、夫婦と0歳の子どもの3人世帯の場合は、「10 ㎡×(2+0.25)+10 ㎡」の計算式によって、32.5平方メートルが最低居住面積になります。
助成金の額は、市内での移転は一律30万円、市外からの移転は一律40万円です。
神戸市子育て支援住み替え助成事業北海道滝川市住み替え支援制度
北海道滝川市の住み替え支援制度は、子育て世帯のゆとりある居住環境の獲得を支援するものです。令和4年3月31日まで実施されま す。
対象となる住み替えは、住み替え支援協議会が斡旋する戸建て賃借住宅に転居する場合です。18歳以下の子供が同居する世帯で、世帯の収入が月額21万4千円以下で、市税の滞納がないことが基本的な条件です。
補助金の交付金額は、入居する賃借住宅の月額家賃の額に、下記の収入区分に応じ補助率を掛けて算定します。
- 収入が月額 15万8千円以下……家賃×40%
- 収入が月額 21万4千円以下……家賃×30%
ただし、月額家賃補助の上限額は、2万円です。
滝川市住み替え支援制度茨城県太子町子育て世帯住宅建設助成金
茨城県太子町では、18歳以下の児童がいる世帯の人が、自らが住む新築住宅を建設または購入する場合に助成金が交付されます。
次の要件にすべて該当する人が交付対象となります。
- 18歳以下の児童がいる世帯で、町内に自ら居住するための新築住宅を建設する、または建設完了後1年以内の新築住宅を購入する
- 建設工事完了後、または売買契約等による引き渡し後、速やかに居住する
- 延床面積が50平方メートル以上
- 町内の建設業者が施工する
- 市町村税等を滞納していない
- 過去3年以内に助成金の交付を受けていない
- 原則、交付申請を行った年度末までに工事が完成する
助成金額は次のとおりです。
- 新築住宅を建設する場合……床面積1平方メートルにつき2万円で、助成限度額は、200万円
- 新 築住宅を購入する場合……床面積1平方メートルにつき1万5千円で、助成限度額は、150万円
新婚世帯を支援する助成金
若者世代の活性化を目的として、新婚世帯を支援する地方自治体の制度があります。
神戸市結婚新生活支援事業
神戸市では、新婚世帯が新居に住み替える際の住居費や引越し費用を支援しています。対象となるのは、次の要件にすべて該当する夫婦です。
- 令和3年1月1日以降に婚姻届を提出し、受理されている世帯。
- 令和 3 年 1 月 1 日以降に夫婦共に新居へ住み替えていること。
- 夫婦の令和2年の年間所得を合算した金額が 520 万円未満であること。
- 夫婦共に婚姻時における年齢が 39 歳以下であること。
- 良好な住宅環境に入居すること。
- 申請日より2年以上神戸市に継続して居住する意思があること。
支援対象となる費用は、令和3年 1 月 1 日以降に支払った次の費用です。
- 新居の住居費(賃料 1 カ月分、敷金、礼金、共益費 1 カ月分、仲介手数料、取得費)
- 引越し費用(引越し業者への支払いに要した費用)
最大で30万円の補助金が支給されます。
神戸市結婚新生活支援事業熊本県南関町結婚新生活支援補助金
熊本県南関町では、結婚に伴う新生活を経済的に支援し、少子化対策として新婚世帯に対して、新居の住居費(新築、購入、賃借)と引越費用の一部を補助しています。
補助金の対象となるのは、次の要件をすべて満たした人です。
- 令和3年1月1日から令和4年2月28日までに婚姻届を提出し、受理された世帯であること 。
- 婚姻届出時の夫婦の年齢がともに満39歳以下であること。
- 申請時点で南関町に住民登録があること。また、補助金の対象となる住宅が南関町にあること。
- 夫婦の所得の合計が400万円未満であること。
- 他の公的制度による家賃補助等を受けていないこと。
- 過去にこの補助金に基づく交付を受けたことがないこと。
- 新婚世帯の2親等以内の親族に対し支払った費用でないこと。
- 暴力団の不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団の構成員でないこと。
- 同一世帯全員に町税等の滞納がないこと。
住居費と引越費用を合算した額に対して、次の補助金が交付されます。
- 婚姻届出時の夫婦の年齢がともに満39歳以下の場合……1世帯あたり上限30万円
- 婚姻届出時の夫婦の年齢がともに満29歳以下の場合……1世帯あたり上限60万円
「高齢者世帯」「親と近居する子ども世帯」を支援する助成金
高齢者に関わる支援では、高齢者に対する住み替え助成金制度の他に、高齢の親の近くに住む子ども世帯に対する支援制度があります。
福岡市高齢者世帯住替え助成事業
福岡市では、居住環境の悪い民間賃貸住宅に居住している、または建替え等により住替えが必要な高齢者世帯の住替えを支援するため、一定の要件を満たす高齢者世帯に対して、住替えに係る初期費用の一部を助成する事業を実施しています。
助成対象となるのは、「65歳以上のひとり暮らし世帯」か「65歳以上の人と配偶者、あるいは60歳以上の親族で構成される世帯」です。
そのうえで、次の要件をすべて満たす世帯に助成金が交付されます。
- 転居前の住居が「申請者または同居者が所有者と賃貸借契約を締結し、家賃を支払う民間賃貸住宅」あるいは「勤め先の会社が所有または借り上げている社宅等の住宅」である。
- 前年における世帯の月収が、158,000円以下の世帯であること。
- 生活保護等を受給していない世帯であること。
- 転居前の住宅の直近6カ月間の家賃の未払いがないこと。
- 福岡市の市税に係る徴収金の滞納がないこと。
- 転居前の居住地における、市区町村税に滞納がないこと
- 暴力団員又は暴力団と密接な関係を有する者ではない世帯であること。
- 過去に本要綱に基づく助成金を受けていない世帯であること。
これらの要件を満たすと、基本額として10万円の助成金が交付されます。さらに子ども世帯と同居または近居の場合は、5万円が加算されます。
福岡市高齢者世帯住替え助成事業東京都千代田区次世代育成住宅助成
東京都千代田区の次世代育成住宅助成は、「親世帯との近居のために住み替える新婚世帯・子育て世帯」や「子どもの成長等に伴いより広い住宅に住むために区内転居する子育て世帯」を対象とした制度を実施しています。
この制度は、区内の世帯構成バランス改善や地域コミュニティの活性化、定住性の向上を目的としています。
交付対象となるのは、次の(1)(2)のいずれかに該当する世帯です。
(1)親元近居助成
- 区内に引き続き5年以上居住する親がいる新婚世帯・子育て世帯である。
- 区外から区内への住み替え、または区内での住み替えをする。
(2)区内転居助成
- 区内に引き続き1年以上居住している子育て世帯である。
- 区内での住み替えをする。
そのうえで、次のすべての要件を満たす世帯であることが条件となります。
- 世帯の年間所得が「2人世帯:189万6千円~1,038万8千円」「3人世帯:189万6千円~1,076万8千円」「4人世帯:189万6千円~1,114万8千円」の範囲である。
- 住み替え先の住戸の専有面積が、住み替え前のものよりも広くなり、かつ「2人世帯:0平方メートル以上」「3人世帯:40.0平方メートル以上」「4人以上世帯:50.0平方メートル以上」の広さを有している。
- マイホームの場合は、金融機関から総額1,500万円以上の融資を受けて取得したものであること。
- 同居する者全員が住民税を滞納していないこと。
- 地域の町会に加入すること。
助成は、最長8年間または末子が18歳に達する年度まで行われます。助成額は、助成目的と世帯人数によって異なりますが、たとえば親元近居助成の3人世帯だと、1年目で5万円(月額)で年ごとに下がり8年目で1万5千円(月額)です。
千代田区次世代育成住宅助成まとめ
地方自治体では、将来まちを支えていく世代を支援していくことで、まちの活性化を図ろうという狙いがあります。
今回、子育て世帯、新婚世帯、親と近居する子ども世帯に対する支援制度を紹介しましたが、この他にUターンやIターンによってまちに居住する若者に対する支援制度もあります。
住み替えを検討する際には、当該自治体の支援制度の有無をぜひ検索してみてください。