近年、老後の住み替えの注目度は高く、検討している方も多いものです。
老後の住み替え先の選択肢の1つとして、賃貸があります。
賃貸には、老後のライフスタイルに合った家を選べるなどの魅力がありますが、いくつかリスクも潜んでいるので慎重な検討が必要です。
この記事では、安心して老後を過ごすための知識として、家を売って賃貸に住む合理的な理由やリスク、売却時の注意点などを分かりやすく解説します。
老後は家を売って賃貸に住むのが合理的な理由
一昔前までは、持ち家に生涯住むのが一般的でしたが、最近は老後に住み替えるケースも増えています。
住み替え先の選択肢には購入と賃貸があり、どちらを選択するかは慎重に検討することが重要です。
ここでは、老後に家を売って賃貸に住むのが合理的といわれる理由として、以下の4つを解説します。
- 家が広すぎるケースが多い
- 年齢に合った立地を選べる
- 老後資金が手に入る
- 相続しやすくなる
それぞれ見ていきましょう。
家が広すぎるケースが多い
家の売却が合理的といわれる理由に、それまでに住んでいた家では手に余るケースが多いことが挙げられます。
子育て中に購入する家は、一般的に2階建てで子供部屋が確保されているケースが多いものです。
しかし、子どもが独立し夫婦2人だけの生活になると、使わない部屋が増え、持て余す恐れがあります。
また、使わない部屋でも定期的な掃除が必要です。そのうえ、老後に足腰が弱ると、2階への上り下りもつらくなってくるでしょう。
こうしたタイミングで売却し、老後のライフスタイルに合ったコンパクトな家や、バリアフリーの家に住み替えることで、無理のない生活をしやすくなります。
年齢に合った立地を選べる
賃貸は比較的立地が良く、一度入居しても引っ越しやすいというメリットがあります。そのため、その時々の状況に合わせた住宅環境を選びやすく、快適な生活を送りやすいでしょう。
一方、戸建は一般的に郊外や住宅街に建てられることが多く、自動車の所有を前提とした立地も少なくありません 。
若いときは多少アクセスが悪くても、歩きや自動車でカバーできますが、老後はアクセスの悪さが生活に支障をきたすことがあります。
その点、賃貸であれば比較的駅近など利便性の高い立地であるケースが多いため、自動車がなくても不自由ない生活を送りやすくなるでしょう。
また、定年後は職場や子どもの学区に縛られず、自由に住む場所を選べます。
一旦田舎で悠々自適な生活をして、年をとったら便利な立地に引っ越すという選択もしやすいでしょう
老後資金が手に入る
家を売却することで、売却金というまとまったお金を老後資金に充てることができます。
「老後2,000万円問題」が話題になったように、多くの人が老後資金に不安を感じており、十分な資金を自分で蓄えることが重要です。
売却金を老後資金に充てることで、老後の生活を安心して送りやすくなるでしょう。
さらに、家を手放すことで固定資産税などの維持費が不要になり、生活費の負担が軽減されます。その結果、経済的なゆとりを持ちやすくなる点もメリットです。
▼関連記事:老後の住み替えで資金計画を立てる際に注意すべきことは?チェックポイント7選を解説します
相続しやすくなる
家が相続財産に含まれると、相続時にトラブルに発展しやすくなります。
不動産は現金のように公平に分割できないことから、誰が相続するかで揉めるケースが少なくありません。
また、築年数が古い家は、相続しても活用しにくく、売却も難しい場合があります。
そのため 、相続トラブルの原因となる不動産をあらかじめ売却しておくことで、相続後に子どもたちが頭を悩ませずに済むでしょう。
さらに、売却金を使い切らなかった場合は現金として相続させられるため、分配しやすいという点もメリットといえます。
老後は家を売って賃貸に住むリスク
老後に家を売って賃貸に住むことにはいくつかリスクがあるので、リスクまで押さえて判断することが重要です。
ここでは、リスクとして以下の4つを紹介します。
- 引っ越しの手間がかかる
- ずっと家賃を支払う必要がある
- 新しい環境で生活をスタートする必要がある
- 高齢者への賃貸は断られるケースがある
それぞれ見ていきましょう。
引越しの手間がかかる
高齢になってからの引っ越しは、体力面・精神面に大きな負担となる恐れがあります。
それまで子どもと一緒に生活していた戸建ての場合、荷物の量は想像以上に多いものです。
特に、引っ越し先がコンパクトな賃貸なら、すべての荷物が入りきらず、大幅な処分が必要になることもあります。
持っていくものと処分するものを判断しながら引っ越し作業を行うのは、かなりの体力と気力が必要となり、高齢になってからでは難しい可能性もあります。
自分たちだけでは難しいなら、親族や専門業者の手を借りて無理なく行うようにしましょう。
ずっと家賃を支払う必要がある
そのまま家を所有していれば、住宅ローン完済後は毎月の居住費の負担が大きく減少します。
一方、賃貸では住み続ける限り賃料を払い続ける必要があります。
たとえば、65歳から80歳までの15年間、毎月8万円の家賃を支払う場合、総額は1,440万円になります。
売却代金や自己資金の状況によっては、賃貸に住んでいる途中で家賃の支払いが難しくなる恐れもあるでしょう。
定年後は収入が大きく減少するため、将来的にどのくらいの期間、賃料を負担できるのかを慎重に検討することが重要です。
新しい環境で生活をスタートする必要がある
今の家を売却して新しい賃貸で生活をスタートすると、環境の変化がストレスになるケースもあります。
土地勘がない場所では、買い物施設や病院などの生活環境を一から把握しなければなりません。
また、これまで築いてきた人間関係がリセットされ、新しい場所で人間関係を構築するのは、若い人でも負担に感じることがあります。
ましてや、長年住み慣れた場所を離れるとなると、精神的な負担はさらに大きくなるでしょう。
特に、環境の変化によるストレスを感じやすい方は、住み替え後に精神的に不安定になる可能性があるので、慎重に検討することが大切です。
高齢者への賃貸は断られるケースがある
そもそも高齢者は、賃貸の選択肢があまり多くありません。
高齢者は収入減少による賃料の延滞や孤独死といったリスクが高くなることから、入居に消極的な大家も珍しくないのです。
高齢者向け賃貸も増えていますが、賃料が比較的高めなうえ、まだそれほど多くはありません。
希望するエリアで借りられる賃貸がないケースもあるので、事前に調べておくようにしましょう。
▼関連記事:高齢者の賃貸物件への入居審査が厳しくなる理由と対策を解説します
老後に家を売るときの注意点
老後に家を売るときの注意点として、以下の3つを押さえておくことが大切です。
- 売却代金で住宅ローンを完済する必要がある
- 見知らぬ土地への移住は慎重になろう
- 家族に相談しよう
それぞれ見ていきましょう。
売却代金で住宅ローンを完済する必要がある
住宅ローンが残っている家を売却するには、まず住宅ローンの完済が必要です。
一般的に、売却金を充てて完済するケースが多いので、売却見込額と住宅ローンの残債を調べて、完済できるかを慎重に判断しましょう。
売却金で完済できる場合は問題なく売却でき、さらに残った分を老後資金に充てることも可能です。
しかし、売却金だけでは完済できない場合、不足分を自己資金などで補填しなければならず、その負担が老後資金に影響を及ぼす可能性があります。
また、売却金に加えて自己資金や援助を用いても完済できない場合は、売却自体が難しくなるので注意が必要です。
見知らぬ土地への移住は慎重になろう
「老後は憧れの土地で暮らしたい」「旅行で行ったときよかったから」などの理由で住み替えを考える方もいますが、縁もゆかりもない土地への移住はおすすめできません。
憧れだけや情報だけで移住すると、実際に住んでみて「思っていたのと違った」となりかねないからです。
特に、移住者の少ない田舎では、地域のコミュニティがすでにできあがっていたり、地域ならではの風習があるため、移住者が住みにくい場合もあります。
賃貸であれば比較的引っ越しはしやすいですが、違ったからといってすぐに引っ越すというのは現実的ではないでしょう。
いきなり移住するのではなく、まずは短期間の宿泊から始めて、徐々に日数を増やし、実際に住むのが問題ないかを確認することが大切です。
家族に相談しよう
家を売却する際には、家族に相談しておくことが大切です。
自分名義の家であれば所有者が自由に売却できるとはいえ、同居家族がいれば反対に遭う可能性があります。
たとえ同居していない家族であっても、その家は家族にとっても大切な場所でしょう。
もしかしたら、子どもが将来その家や土地で暮らしたいと考えているかもしれません。
また、老後になってからの家の売却は相続にも関わってくるものです。
家族の意向も踏まえたうえで、売却や賃貸を検討することが重要です。
老後生活を安心して過ごすための終の棲家の探し方
老後での住み替え先は終の棲家になる可能性が高いものです。
ここでは、老後生活を安心して過ごすための家の探し方として、以下の3つを解説します。
- 住み慣れた地域がおすすめ
- リースバックという方法もある
- 老後に必要な資金をシミュレーションする
それぞれ見ていきましょう。