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負動産の所有者は何をすべき?やっていいこと・ダメなことを解説

前回までの記事では、主に「負動産を所有すること」のリスクという観点で解説を行ってきました。

事前にそのリスクを回避することができればそれに越したことはありませんが、現時点で負動産の処理に悩まれている方の多くは、自らその負動産を取得したのではなく相続によってやむなく手にしたり、あるいは過去の見込み違いによって、意思に反して負動産を抱え込んでしまっている状態にあります。

今回の記事では、実際にその負動産を所有してしまった際に、いったいどのようなアクション・対策を行えばよいか、という点について解説します。

このページの目次
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負動産と化す物件の条件

まず大前提の話として、ある不動産が「負動産」と化すリスクというものは、その不動産の立地や種類を問わず多かれ少なかれ内包しているものです。

一般論で言えば、

  • 立地条件がよくない
  • 農地のように売買や譲渡に関して法令上の制限が加えられている
  • 崖地や未接道による再建築不可物件

など、利用に重大な支障がある不動産の方が負動産と化すリスクが高いのはまぎれもない事実です。

しかし筆者の印象では、負動産の発生条件は、不動産が持つ条件そのものより、むしろその不動産を所有する人の意識や状態に左右されているケースが多いように見受けられます。

強制的に解体された危険空き家の事例

例えば昨今負動産の問題の代表例として語られがちな「危険空き家」は、過疎化に見舞われた地方の小都市や農村に特有の話ではなく、東京都内、それも23区内でも見られるものです。

葛飾区の危険空き家

2016年3月1日、東京都葛飾区で倒壊の危機にあった「危険空き家」が行政代執行によって解体されましたが、これは空き家対策特別措置法が施行されてから、所有者が判明している空き家の行政代執行として初の事例で、当時大きく報道されました。

倒壊等著しく危険な状態

そもそも「危険空き家」は倒壊や崩落によって周辺道路やその通行人に危害を加えるおそれの高いものに指定されますので、行政代執行が行われるのは一定の人口密度がある市街地であることがほとんどです。

足立区の老朽化アパート

2025年8月25日には、足立区において、ベランダが倒壊の危機にある老朽化したアパートの行政代執行による解体が行われました。こちらも所有者は判明していて、410万円の解体費用は所有者に請求されることになっています。

しかし、その行政代執行の模様を伝えるニュース映像を見ると、解体現場となったアパートの奥には4階建てほどの鉄筋コンクリートのマンションが映っており、アパートが建つほどの敷地面積がある不動産の需要がないエリアとはとても思えません。近年の東京23区内における土地需要に鑑みれば、価格さえ折り合えば、410万円の解体費用を捻出してでもこの土地が欲しい事業者はいくらでもあると推測されます。

問題の老朽アパートの所有者は足立区の指導や勧告に対し、「自分には老朽化した責任はない」と回答したと報じられています。その回答の真意は解りかねますが、何らかの理由によってこの所有者は、当たり前の手段として誰もが考えるであろう「土地の売却」という手段を選択できない状態にあるということです。

時間の経過が進むにつれて問題解決が難しくなる

いくら需要が高い土地であったとしても、売却や運用をしなければ現金化することはできず、この場合はただ410万円という解体費用だけが所有者にのしかかってくる構図となります。もちろん「売却したくない」「所有し続けたい」という所有者の意思を無視して一概にこれが負債だと決めつけることはできませんが、金銭負担という視点に特化して捉えれば、数百万円という解体費用は誰もが簡単に捻出できるものではありませんから、これも広義の負動産になると思います。

つまり負動産というものは、所有者の考え方、あるいは置かれている環境によっては、例え客観的に見て好条件の不動産であったとしても発生してしまうものです。それが価格が付きにくい、需要の低い不動産であればなおさらそのリスクは高まります。

人の考えは時間の経過とともに変わっていくもので、時間の経過が解決してくれることもありますが、一方で不動産は、基本的に放置が続けば建物は朽ちていきますし、更地は荒廃していきます。黙っていても地価が上昇していく都心の一等地でもない限り、不動産に関しては、時間が解決してくれる問題はありません。

ですので、タイトルには「負動産の所有者」と記載しましたが、それは必ずしも登記上で所有者になったタイミングに限った話ではなく、相続のように、不慮の事故でもない限り次の所有者が誰になるかの見込みが立っている場合は、相続が発生する前から対策を講じておくのが良いと思います。

負動産処分の2つの方法

負動産の処分にあたって、多くの所有者がまず試みるのは、①仲介業者への相談、②市町村役場への寄付の相談、の2つです。負動産処分の通例で言えばどちらも期待できる手段ではありませんが、断られることは承知のうえでも、最初から無理だと決めつけるのではなく、とりあえずは一般の不動産と同じセオリー通りに聞いてみるべきです。

仲介が難しい場合は買取も視野に

山林や農地は無償でも難しいケースが多いと思いますが、空き家の場合であれば、①の仲介業者なら、所有者側に費用が発生しない形で引き取ってもらえる場合もあるかもしれませんので、もし引取が可能であったらその場で決断してしまうのが一番話は簡単です。

負動産に限らず業者による直接買取は、周辺相場よりかなり安めの価格に抑えられてしまうのが常ですが、売れるかどうかもわからない、売れたとしても仲介手数料を引くと手残りが10万、20万円にしかならなそうな負動産の売却に長い時間を要するくらいなら、手残りがなくても手早く話を終わらせてしまうというのも一つの手段と言えます。

仲介手数料の上限引き上げによる影響

2024年7月1日の宅地建物取引業法の改正によって、現在は800万円以下の価格の不動産売買においては、どんなに価格の安い物件であっても仲介業者は最大33万円(税込)の仲介手数料を売買主から徴収することができるようになりました。

2024年7月1日の宅建業法改正により、売買主の合意があれば30万円+消費税の仲介手数料を請求できるようになった。

「不動産会社が低額な物件の取引に関与しやすくなる」という目論見で上限額が引き上げられたが、売買主の負担が増えてしまい、かえって取引の停滞を招くのではないかとの意見もある。

本来これは手数料の上限を引き上げることによって業者の営業意欲を惹起し、価格の安い不動産の流通を促すための改正なのですが、10万円、20万円で売れれば御の字という価格レベルの負動産にとっては、この手数料の上限引き上げが逆に足枷になる物件も増えるのではという懸念は、改正当時、当の仲介業者自身からも上がっていました。

寄付が認められるケースとは?

一方、②の市町村役場への寄付の申し出については、こちらは逆に建物がある場合はまず受け付けてもらえることはなく、不動産の寄付そのものをすべて断る自治体の方が一般的であると思います。

しかし筆者が確認したがぎり北海道では、高度成長期にいわゆる「原野商法」で販売された山林や原野の引取を行っている自治体が複数存在します。これは、その物件があまりに人里離れていて事実上到達不能であり、管理のための整備費用も必要なければ、固定資産税も発生していないため、自治体側としても、引き取ったところでほとんど負担がないためであると思われます。

現実には、こうした北海道の原野などは、所有者自身にも一切の金銭的負担が発生していないことがほとんどなので、わざわざ手間をかけて処分に動く人は少ないというのが実情なのですが、手元に残したくない、子や孫に引き継がせたくない、という気持ちの上で整理をつけるために処分に動く方もいます。自治体によってケースバイケースなのでこちらもまずは問い合わせてみるのが良いと思います。

建物の解体とダイレクトメール業者の利用は要注意

この①,②がともに実現しない場合はまた別の方法を模索していくことになりますが、その際に絶対に避けるべき選択肢は、

  1. 空き家の場合、自分の判断だけで急いで解体しない
  2. ダイレクトメールを送ってくる業者を利用しない

の2点です。

売却が困難な負動産と化した空き家は、解体して更地に戻すとますます処分が困難になるケースが少なくありません。

筆者の知人にも、空き家の買取・リフォーム再販の事業に携わる事業者がいますが、せっかくまだ直せば使える建物があったにもかかわらず、業者に相談することもなく自己判断でいきなり解体して、その後更地の処分の相談を持ち込まれるケースが少なからずあると聞きます。

空き家を解体するデメリット

新築の需要がないエリアで、解体費用を超える価格で更地を売るのは困難だと語っていました。確かに遠方に住む所有者から見れば、その建物は古く、利用価値の低いものなのかもしれませんが、現場に携わるプロから見れば大きく判断が異なる可能性はあります。

近年は自治体側も「空き家問題」の解決のために、数値上の空き家率の減少を目指す流れにあります。ですので自治体によっては解体業者と業務の連携をしているところもあり、相談の中で解体を推奨されるケースもあると思います。

自治体としては、老朽化した「危険空き家」の発生を未然に防ぐためにそうせざるを得ない面はあるのですが、所有者の費用負担という観点で見れば、解体はあくまで最終手段として控えさせる方が、結果的に費用は抑えられるケースも多いのです。

▼関連記事:古い家は解体・リフォームしない方が損せず売れる!理由と売却時の注意点を解説します

ダイレクトメールを送付する業者の中には悪質な会社も少なくない

ダイレクトメールに関しては、100%駄目だと断定するつもりはありませんが、現状、負動産の所有者にわざわざ積極的にダイレクトメールを送付してくる業者の素性を確認する限り、そもそも依頼したところで根本的な問題解決に結び付かない詐欺まがいの会社だったり、解決したとしても不当に高額な「手数料」を要求する会社だったりと、決して誠実とは言えない会社の割合があまりに高すぎるのが実情です。

現時点ではそれらの業者を利用しなくても解決可能性が多々ある状況の中で、わざわざ火中の栗を拾いに行く必要性は薄いと感じています。

相続発生前からできる負動産対策

さてここまでは、実際に負動産を処分するために起こすアクションの一例として解説しましたが、例えば相続物件の場合は、その前の段階でも防止策を講じることができます。

世の中には様々な家庭があり、中には家族関係・兄弟関係が良好ではない人もいますので、あくまで理想論かもしれませんが、まず近い将来相続の発生が見込まれる不動産の情報を家族観で共有し、誰がその負動産の所有者となるか、誰が責任をもってその負動産の処分を主体的に行うかという点について、方針を明確にすべきであるということです。

共有名義は放置・負動産化が進む原因になりやすい

一般的には不動産は高額のものですので、平等を期して相続不動産を相続人全員の名義で共有して登記を行うケースはよく見られます。しかし、不動産に携わる人の間では定説となっていると言っても過言ではありませんが、不動産というものは単独所有すべきであるのが原則で、よほど必要がある場合を除き、共有登記は極力避けるべきです。

相続物件に限らず、共有されている不動産の場合、その処分には共有者全員の同意が必要になりますが、この共有者の同意が得られず宙に浮いたまま放置されている不動産というものがあまりに多いのです。赤の他人同士による共有であっても、意見の取りまとめは決して容易ではありませんが、家族同士の場合、利害よりも感情面が先に立って対立してしまうケースが少なからずあります。こうなると関係の修復は容易ではなく、むしろ家族関係が一番の障壁となって解決が困難になってしまいます。

負動産問題解決にはスピード感と決断力が重要

筆者が調べているような、ほとんど値段がつかない負動産の登記でも、たまに親族らしき複数名によって共有されているものを見かけることがありますが、利益もなく、責任しか発生しないような負動産の所有権を複数人で登記するメリットはまったくありません。共有登記を行っていなくても、第三者から見ればもう値段なんて絶対つくはずもないような負動産についても、家族の中で誰かが頑なに処分に反対し続けて話が進まない、という話はごくありふれたものです。

もちろん先にも書いたように、人の思い出をすべて蔑ろにしても良いというわけではありませんが、負動産の処分を念頭に置く限り、そうした感情面についての課題にはいずれは決着を付けなくてはなりません。時間の引き延ばしが許されない負動産処分の運命を左右するのは、何よりもスピード感と決断力に尽きると言えます。

▼関連記事:実家を売りたくないと考える人は意外と多い?自分や親族が売却に抵抗がある場合の確認事項を解説します

執筆者
吉川 祐介
吉川 祐介

1981年、静岡市生まれ。自身の家探しの過程で、70~90年代に投機目的で購入されたまま放置されている「限界ニュータウン」を訪ね歩くブログ「URBANSPRAWL 限界ニュータウン探訪記」を開設。22年には初の著書を刊行し、執筆の傍ら、YouTubeチャンネル「資産価値ZERO 限界ニュータウン探訪記」においても同テーマを題材とした動画配信も行っています。 著書に『限界ニュータウン 荒廃する超郊外の分譲地』(太郎次郎社エディタス)など。

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