子ども時代を過ごした思い出のある実家を売ることは、実務的な問題以上に、精神的なハードルの高さもあります。
そのため、実家を売りたくないと考える人は一定数いるものです。
とはいえ、活用しない実家をそのままにすることにはリスクもあり、売却するよりもダメージが大きくなりかねません。
この記事では、実家をそのままにするリスクや、売却に抵抗がある場合の確認ポイント、売却するメリットを分かりやすく解説します。
実家を売りたくない人は意外と多い?
親が死亡したり、施設に入居したりすると、実家が空き家になり、管理の問題が発生します。
誰かが適切に管理できるというなら問題ありませんが、そうでない場合は売却を検討する必要があるでしょう。
思い入れのある実家はそのままにしたいという人が一定数いる
株式会社AlbaLinkの「空家の活用方法についての意識調査」では、実家が空き家になった時に「売却する」と答えた人が48.9%と最も多くなっています1。
しかし、次いで「そのままにする」29.0%、「賃貸に出す」14.3%と、売却せずに保有することを選択する人が半数近くに上るのです。
また、空き家のまま管理する理由については、「解体には費用がかかるから(124票)」が最も多く、次いで「思い入れがあり売却や賃貸には出したくないから(120票)」となっています。
経済的な理由で空き家のまま所有するケースがある一方、感情的な理由で売却できない方も多いことが分かります。
兄弟間で意見がまとまらないことも要因として挙げられる
空き家になった実家の処遇については、兄弟姉妹がいる場合、自分だけでは決められません。
仮に、自分で勝手に決めてしまうとトラブルに発展する恐れがあるため、遺産分割協議で相続人全員が 合意した上で決定する必要があります。
しかし、話し合いで決めようにも、兄弟姉妹の間で実家への思いや今後の希望が異なることは珍しくありません。
その結果、意見が対立して話し合いがまとまらないケースがあります。
また、実家が田舎にあり親族の結びつきが強い場合には、兄弟姉妹だけでなく、他の親族の意見も考慮しなければならないこともあるでしょう。
こうした話し合いがまとまらないうちは、売却や活用の判断が難しく、「とりあえず空き家で所有する」という状態が続いてしまいがちです。
実家をそのままにするリスク
実家を、売却や活用もせずに空き家で放置すると、以下のようなリスクが発生します。
- 固定資産税がかかる
- 住まないとすぐに老朽化しやすい
- 維持管理に手間や費用がかかる
- 適切に管理しないと災害時に損害賠償請求されるリスクがある
それぞれ見ていきましょう。
固定資産税がかかる
固定資産税とは、おおむねすべての不動産に課せられる税金です。
毎年1月1日時点の所有者が納税義務者となり、その年の5月~6月頃に送付される納税通知書に応じて納税します。
固定資産税は空き家であっても課税の対象です。
そのため、実家を放置していようと、所有し続ける限り毎年納税の負担が発生します。
また、実家の所在地によっては都市計画税も一緒に徴収されるため、事前に税負担がいくらかを確認しておくようにしましょう。
住まないとすぐに老朽化しやすい
人の住まない家は日常的な維持管理ができないため、老朽化が早くなります。
とくに、築年数が古い木造は季節の変化や風雨の影響を受けやすく、人が住まないことで一気に老朽化が進む恐れがあります。
老朽化が進んでしまうと、いざ売却や活用しようとしたときに、修繕費が高額になるなどのデメリットが生じる可能性があるので、注意しましょう。
維持管理に手間と費用がかかる
空き家の実家を適切に管理するには、定期的な清掃や通水、換気、点検が必要です。
しかし、管理のために定期的に実家に訪れ掃除するとなると、手間も時間もかかります。
遠方に実家があるなどで、定期的に管理に行くのが負担になるケースも多いでしょう。
管理に行けない場合は、管理会社などに委託するという方法も検討できますが、委託料として月5,000円~2万円程が必要になってきます。
これらの手間や費用をいつまでもかけ続けられるかは、慎重に検討するようにしましょう。
しかし、手間や費用の負担を避けようと放置していると、実家の状態が悪化し「特定空き家」に指定されるリスクがあります。
特定空き家とは、倒壊のリスクがある・著しく景観を損ねる・保安上放置が適切ではないなどと判断され、自治体から指定される空き家です。
特定空き家に指定されると、状況改善のための指導や戒告があり、従わなければ罰金などのペナルティが科せられます。
さらに、固定資産税の優遇措置が外される・強制代執行されるリスクもあるので、注意しましょう。
適切に管理しないと災害時に損害賠償請求されるリスクがある
適切に管理せずに、災害時などに建物が倒壊・損壊し、近隣や通行人に被害を与えた場合、所有者が損害賠償請求されるリスクがあります。
たとえば、管理を放置していた結果、台風で瓦が飛び、通行人にケガをさせたケースでは、損害賠償請求される可能性があるのです。
損害賠償請求までいかなくても、敷地外にまで樹木が伸びている、不法投棄で敷地が荒れているなどの理由で、近隣住民とのトラブルに発展する恐れもあるでしょう。
▼関連記事:実家が空き家になったらやるべきこと
自分や親族が実家の売却に抵抗がある場合の確認 事項
実家を売却してしまうと基本的には取り戻せないため、売却するかは慎重に判断することが大切です。
売却に抵抗があるなら、無理に売却せずに所有するのもよいでしょう。
しかし、状況によっては所有が難しい場合もあるので、まずは以下の3つを確認することが大切です。
- 所有権を確認する
- 維持管理する人を確認する
- 活用方法を確認する
それぞれ見ていきましょう。
所有権を確認する
売却する・しないは、実家の所有権を有する人(名義人)に左右されます。
売却したいと思っていても、所有者が応じなければ売却はできません。
反対に、実家を所有したいと考えていても所有者が売却を進めてしまえば、阻止できなくなります。
親の実家だと思っていても、実は借りた家で名義人が別の人・共有名義で親以外にも所有者がいるといったケースは珍しくありません。
また、実家が代々受け継がれている場合、相続登記が長年放置されていて、数代前で止まっているケースや、相続人の数が増えすぎて所有権が複雑になっているケースもあります。
まずは、登記簿(登記情報証明書)を取得して、現在の所有者が誰になっているかを確認しましょう。
そのうえで、所有関係が複雑になっている場合などは、弁護士や司法書士といった専門家に相談することをおすすめします。
登記簿の情報は「登記情報提供サービス」で確認でき、登記情報証明書を取得したい場合はオンラインで手続きした後に、郵送または法務局で受け取るのが便利です。
参考:法務局|登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です
維持管理する人を確認する
実家を所有し続けるなら、維持管理する人が必要です。
維持管理する人が曖昧なまま所有し続けると、結局誰も管理せずに荒廃してしまうとなりかねません。
誰が管理の役割を担うかは、兄弟間や親族などを含めて話し合い、明確にしておくようにしましょう。
活用方法を確認する
実家の処遇や活用方法としては、以下が検討できます。
- 誰かが住む
- 賃貸に出す
- 空き家として放置する
- 更地にする
- 売却する
自分や親族の誰かが住めるなら、シンプルに活用が可能です。
しかし、築年数が古い物件の場合、住むための修繕費が高額になる恐れもあるので、事前に見積もりを取り、資金計画を立てておくことが大切です。
賃貸に出せば毎月の家賃収入が得られ、固定資産税などの負担軽減だけでなく、手元にお金が入る可能性もあります。
ただし、賃貸経営は立地やニーズに大きく左右されるほか、入居者とのトラブルなどのリスクもあるので、周辺の需要などを十分に調査した上で検討しましょう。
空き家のまま所有を続けるという方法もありますが、前述したように放置するとさまざまなリスクがあるので、注意が必要です。
建物の管理が難しい場合は、更地にしておくことで管理の手間を軽減できます。
兄弟や親族の意向や状況などを踏まえて、どの方法が適しているかを慎重に検討しましょう。
いずれの活用も難しい、またはコストや手間を避けたいという場合は、売却も視野に入れることが大切です。
▼関連記事:自分の共有持分のみを売却するには?手続きの流れ、トラブルを防ぐ方法を解説します
実家を売却するメリット
売却が心苦しいとはいえ、所有し続けるにはリスクがあります。
一方、売却して手放すことでメリットも生じるので、リスクとメリットを考慮して検討することが大切です。
実家を売却するメリットとしては、以下の2つが挙げられます。
- 維持管理の手間を省ける
- 相続をスムーズに進めやすい
それぞれ見ていきましょう。
維持管理の手間が省ける
実家を所有し続ける限り、定期的な維持管理の手間がかかり、毎年税金などの費用も発生します。
一方で、売却して手放すことで、以降は維持管理の手間や費用がかからなくなります。
手間や費用は一見、それほど負担にならないように感じるかもしれませんが、長期間続けることで徐々に負担が増す恐れがあるでしょう。
また、長期間所有し続けてから売却を決めると、その分築年数は経過し、売却にも不利になりかねません。
そのため、長期的な手間やコストをシミュレーションして、早い段階で売却するかを判断することが大切です。
▼関連記事:空き家は放置すると劣化が早い!必要なメンテナンスを解説します
相続をスムーズに進めやすい
実家は相続時にトラブルになりやすい財産です。
不動産は現金のようにきっちり分けられないので、誰が所有するかで揉めやすくなります。
また、相続財産が実家とわずかな現金のみというケースでは、相続税が発生した場合、相続財産だけでは対応できず、相続人の自己資金で対応しなければならないこともあります。
そのため、相続時に実家を売却することで、所有者を決める手間を省き、さらに売却金を公平に分配することができ、スムーズな相続が実現しやすくなります。
▼関連記事:不動産相続の際の税金を解説
まとめ
思い入れがあるなどの理由で、実家を売りたくない人は多いものです。
しかし、実家を売らずに空き家で所有すると、維持管理の費用や手間がかかります。
手間や費用を惜しんで適切に管理できないと、損害賠償請求されるといったリスクもあるので注意しましょう。
売りたくない場合でも、まずは所有権を確認し、放置以外の管理・活用を検討することが大切です。
検討の結果、管理が難しいなら売却するのも1つの方法です。
売却すれば、管理の手間や費用から解放され、スムーズな相続を実現できるといったメリットもあるので、前向きに検討するとよいでしょう。









