不動産の売買では数千万円単位の大金が動くことは珍しくありません。それだけに、売買時の仲介に入る不動産会社を選ぶ時は、できるだけ信用のおける不動産会社を選びたいもの。
この記事では、信用できる不動産会社を選ぶためにチェックするべきポイントを解説します。
不動産の売買で気をつけたい仲介会社とのトラブルについて
まず、信用できない不動産会社を仲介に入れてしまうと、どのようなトラブルが発生し得るかを見ていきましょう。
契約の解除
不動産を売買する時、売買契約時に1割ほどの手付金を買主が売主に支払います。
しかし、手付金を受け取った後「やはり売りたくない」と考え直すことがあるかもしれません。
売買契約が成立して一度手付金を受け取った後、物件の引き渡し・決済前に契約を解除しようとすると、手付金の2倍を支払わなければいけません(手付け倍返し)。
こうした注意点は、不動産会社の宅地建物取引士が事前に説明してくれます。
しかし、業務が怠慢で信用できない不動産会社の場合はその説明をせずに売買契約を急かすのみで、その後考え直して契約解除をする際に、初めて手付金の2倍を支払わなければならないことを知らされるかもしれません。
もちろんこれはたとえばの話ですが、売買の全てを不動産会社に任せっきりではいけません。
物件の売買に慣れた専門家である不動産会社に手数料を支払って仲介を依頼するのですから、取引が初めての人にも親身になって、時にはアドバイスをしてくれるような信頼できる不動産会社を選ぶことでトラブルを未然に防ぐことができるのです。
契約不適合(瑕疵担保責任)
中古物件を売却する時に発生する可能性があるのが、瑕疵(かし)の修繕費用を誰が支払うのかという責任問題です。
瑕疵とは売主も把握していない建物の損害箇所(欠陥)のことです。
民法改正によりこれまで以上に細やかな対応が求められる
家を売買して、数ヶ月後に雨漏りが あることが発覚した場合、買主と売主の間で「修理費を支払ってほしい」「そちらが使った上で劣化した部分だ」とそれぞれの言い分が衝突してトラブルが発生します。
そこで、通常の中古物件の売買では、一定期間だけ売主が修繕費を支払う「瑕疵担保責任」を負う期間を設定し、期間内に問題が発覚すれば、売主側の責任において修繕費を支払う取り決めを交わし売買契約書に記載します(実務上では3カ月に設定されることが多い)。
なお、この「瑕疵担保責任」という概念は2020年の民法改正に伴い「契約不適合責任」に置き替わり、契約書で記した状態と異なる不具合が発見された場合、売主側の責任として扱われると考えられます。
不動産会社の確認不足で、契約不適合(瑕疵担保)責任期間を設定していなかったり、瑕疵について説明しなかったりしたことが原因で売却後に損害賠償を求められてしまうことは避けたいため、仲介を依頼する業者をきちんと選ぶことが重要なのです。
宅建業法の改正とインスペクション
中古物件の売買において瑕疵に関するトラブルは少なくありません。
そのため、平成2018年の宅建業法改正により、媒介契約の締結時に既存住宅状況調査(インスペクション)の実施について確認する義務が設けられました。
実施を希望するかは売主・買主双方ともに確認し、買主が希望する場合は売主の承諾が必要です。
こうした説明は媒介契約を結ぶ時にされますが、素人目線でもわかりやすくメリットやデメリットを含めて説明してくれる不動産会社は、信頼できると言えるでしょう。
トラブルの回避は業者・担当者の見極めが大切
先に挙げたようなトラブルが発生すると、百万円単位の損失が発生する可能性もあります。
そのような無用なトラブルを避けるためには、どのような不動産会社を選べば良いのでしょうか。
問い合わせ時の対応で判断する
まず、問い合わせ時にどのような対応を取るかで、不動産会社や担当者が信頼できるか否かの判断が容易につきます。
こちらの希望を聞いてくれる
売買のいずれであっても、問い合わせた時にまずはこちらの希望をきちんと聞いてくれる不動産会社は信頼に値します。
不動産会社の中でも不誠実な会社は、売主や買主の希望を聞かずに自社の都合ばかりを考えます。
とにかく売れればいいと考えて売却価格を格安で提示する会社もあれば、自宅を買いたい人にとりあえず自社で売れなくて困っている物件を買いませんか、などとセールスをかけることがあるのです。
また、最初からいきなり「いくらまででしたら出せますか」「いつまでに買うのですか」などと自社の都合ばかりを押し付けてくる不動産会社は、誠実さに欠けると言わざるを得ません。
まずはどういった物件が欲しいかという買主の要望、どれぐらいの価格で売る必要があるのかという売主の要望を、きちんと汲み取ってくれる不動産会社や担当者を選ぶようにしましょう。
見たい物件を最初に見せてくれる
不動産物件を買いたい人は、最初にインターネットの物件情報サイトで情報収集を行い、目星をつけてから仲介の不動産会社に話を聞くことが多いです。
つまり、最初から欲しい物件が決まっていて、ひとまずはそれを見せてくれないかという問い合わせをすることがほとんどです。
しかし、買主の都合を考えない不動産会社の場合、買主が見たい物件ではなく、自分たちが売主と媒介契約を結んでおり、売れたら手数料の入る物件を押し付けてくることが あります。
買主側からすれば興味のない物件を見せられるよりも、まずは自分が欲しいと思った物件を見たいはずです。
そのようにお客の都合を考えてくれない不動産会社は、選ばない方が良いでしょう。
査定内容にきちんとした根拠がある
物件の売主として不動産会社を探すとき、まずは売却物件の査定を依頼することが多いでしょう。
この査定をどのようなプロセスで行い、どういった根拠に基づいて価格を提示するかでも、不動産会社を信頼できるかどうかが違ってきます。
複数の不動産会社に査定を依頼した場合、高い値段をつけてくれた不動産会社を思わず選びたくなるかもしれません。
しかし、金額で判断するのは危険です。
仲介会社は高い査定を出せば媒介を取れてしまいます。ですが、それは売主さんのためにはなにもならない。もちろん売れる可能性もあるかもしれませんが、市場よりも高い値段で販売活動をすることで売却期間が長くなり、後で売れない原因になり得ることもありますからね。
株式会社サワキタ不動産
前野 潤一様 よりヒアリング1
不動産会社は自分たちで売上を確保できる専任媒介契約を結ぼうとして高い査定をつけてくることもあり、それは客引きのための根拠のない査定額にすぎません。
実際に売り出してみると市場よりも割高な査定価格では売れず、「この値段じゃ売れないので値下げしましょう」と値下げを切り出し、あなたの思うような値段で売ってくれないこともあるのです。
案件をいただきましたら、まずは、Google マップで物件の外観や位置関係を確認し、その不動産のある役所の HP 等から道路をはじめインフラ、都市計画関係を調べます。
そして、不動産は現在空き家なのか、周辺の人口動態、隣接する不動産は管理がしっかりされているのか、周辺の売り出し物件の数など、ご依頼物件の査定だけでなく、他の不動産の流通動向や街全体の状況をしっかり調べます。
株式会社マトリックストラスト
主任 中村 貴志 様 よりヒアリング2
売主に寄り添って営業している不動産会社は、売却の理由や時期に合わせてさまざまな角度から売却をサポートしてくれます。
査定額の高低ではなく、提示した金額に対し「築何年でこういった立地で、土地の価格がこの程度だからこの価格になりました」というように、直近の取引事例や客観的なデータを元に、根拠を明確に示してくれる不動産会社を選びましょう。
評判で判断する
不動産会社を選ぶ時は、評判も調べておきましょう。
ネットの口コミや評判で悪いものがない
最近は、インターネット上で不動産会社の口コミや評判がチェックできます。
何らかの問題を起こした不動産会社の場合、インターネット上で書き込みがあることも。
まずは、仲介を依頼する不動産会社の社名や支店名で評判をチェックしてみると良いでしょう。
資格の更新を何回も繰り返している会社である
不動産会社は都道府県、もしくは国に登録を行う義務があり、営業の認可を受けた事業者の登録番号は不動産会社の店頭に掲示する義務があるのでその免許番号を見てみましょう。
- 国土交通大臣免許(5)第○○号
- 東京都知事免許(2)第○○号
このように免許番号が記されている場合の()内の数字は、5年毎の更新を繰り返している回数です。
更新回数の多さは、その不動産会社が長年に渡り営業を続けていることの証明です。
顧客の信頼を得ている不動産会社だと言えます。
登録の更新を繰り返しており、長く営業できているという実績が客観的に判断できる指標です。
ただし、創設から間もない会社でも、社長や社員は他の不動産会社に勤めて経験を積んでから独立しているケースも多いです。
新しい不動産会社はHPやSNS等で自社の情報を積極的に発信している傾向にあるので、そうした部分もチェックするのが良いでしょう。
過去に行政処分を受けていないか
宅建業免許を取得している不動産業者は、宅建業法をはじめとする法律を遵守して営 業しなければならず、違反があった場合には業務改善の指示や営業停止、極めて悪質なものには免許取消といった行政処分が下されます。
仲介の依頼を検討している業者が、過去に行政処分を受けていないかどうか=きちんと運営されているかどうかは信頼性を見極める上での1つの指標です。
ただし、過去に行政処分を受けていても、その後問題点を改善して運営している業者もありますので、口コミや評判などと合わせて確認するのが良いでしょう。
行政処分の有無は、国土交通省のネガティブ情報等検索サイトで確認できます。
▼参考
営業担当者で判断する
不動産会社には当たり外れがありますが、仲介に入って業務を行う営業担当者の良し悪しも見極める必要があります。
不動産会社と専任媒介契約を結んでしまうと、3カ月は仲介会社の変更はできません。
しかし、不動産会社に言えば、すぐに営業担当者を変更してくれることも多いです。
ここでは「この人はきちんと働いてくれない担当者だ」と見抜くためのポイントをお伝えします。
言うことが何度も変わる担当は危険
不動産の売却や購入において大抵の人は専門的な知識を持たないでしょう。
それだけに、宅地建物取引士の資格がある営業担当者のことを信じてしまうものです。
しかし、営業担当者の中には、お客の無知につけこんで不動産売却のルールを勝手に変更したり、査定価格を何度も変更したりと、契約を無視する者もいるのです。
このような担当者を選ぶと、後に瑕疵担保責任や売買契約時でトラブルが発生してしまうかもしれません。
絶対に避けるべき担当者ですので、すぐに変更を申し出るべきです。
REINS(レインズ)の情報を見せてくれる
不動産業者の専門情報ネットワークに「REINS」というサイトがあります。
REINSは不動産登録業者だけが見られるインターネット上のサイトで、全国の売買物件の情報が掲載されています。
REINSを見せることや物件をしっかりとREINSに登録すること、いずれも信頼できる営業担当者を見抜くためのポイントです。
不動産業者だけが占有する情報を売主や買主に見せないような営業担当者は、顧客に最善の情報を提供する意欲がありません。
REINSにはイン ターネット上の不動産物件サイトに載っていない情報もあり、お得な物件に関する情報が載っている可能性があります。
REINSを活用して顧客にメリットを与える意思がない営業担当者は、選ばない方が良いでしょう。
レスポンスが早い
レスポンスが早い営業担当者は、基本的には良い営業担当者です。
反対にレスポンスが悪い営業担当者は、あまり選ばない方が良いでしょう。
不動産の相場は刻一刻と変化するため、少しでも早く売れるようにすることが結果的に高値での売却につながることが多いです。
また、お得な物件を探している場合、情報が表に出ればすぐに売れてしまいます。
買う側にとっても、売る側にとっても、素早く対応してくれて最新の情報を教えてくれる営業担当者は貴重な存在です。
しかし、やる気のない担当者の場合、なかなか物件情報を教えてくれなかったり、インターネット上に物件情報を掲載しなかったりします。
そのせいで思うように売却や購入が進まないことがあります。
特に、売却時はいつまでに売らなければいけないというタイムリミットが決まっていることもあるので、レスポンスの悪い営業担当者を利用することは避けましょう。
こちらの要望に素早く答えてくれる営業担当者を選んでいれば、無駄な苦労やストレスを抱えずに済みます。
不動産会社選びは売買の成果を大きく左右する
「不動産会社はどの会社を使っても同じだから、どの営業担当者も似たり寄ったり」ではありません。
不動産会社と営業担当者の良し悪しで、不動産売買の価格も大きく変わってくるのです。
ここまでに挙げた数々のポイントをチェックして良い不動産会社を選び、無用なトラブルを避けるようにしましょう。