不動産売却は必ずしも査定に基づいた、当初の売出価格で売却ができるとは限りません。
状況に応じて販売中に価格の変更を迫られることや、購入希望者からの価格交渉が入ることもあります。
今回の記事では販売中の価格変更にスポットを当て、不動産売却における価格変更のタイミング、適切な値下げ幅、そして注意すべき点について詳しく解説します。
タイミング別に解説!なぜ値下げをするのか?
不動産業者が正確な査定をして、その金額を基に販売価格を決めたとしても、不動産市況は刻一刻と変化しています。
そのため、売主は臨機応変に対応をしていくことが求められます。
また、売主の都合により値下げをしなければならないこともあります。
ここでは具体的なタイミングごとに、なぜ値下げが必要になるのか確認していきましょう。
反響の減少
不動産は売出開始した初動が、一番購入申し込みの反響を得られやすい時期です。
ポータルサイトでは希望条件を入れておけば、新着物件の通知を受けられるようになっているため、熱心に探している顧客のほとんどは最初の1〜2週間で物件情報をキャッチしています。
そのため、時間の経過とともに反響は減少していき、売れ残っている物件への関心は薄れてしまいます。
このタイミングで値下げをすることで、価格変更の通知が出るので、反響を取得しやすくなるのです。
周辺競合物件との兼ね合い
比較対象となる物件の販売状況によって、反響は大きく変化します。
条件が近い競合物件の価格が安い場合や、同価格帯で条件の良い物件が出てきてしまった場合には、反響を得られにくくなってしまいます。
そのため、競合物件の販売状況に応じて価格調整を行うのが重要です。
ただし、室内状況が悪くないか、設備仕様が劣っていないか、比較対象として妥当なのか競合物件について詳しく不動産業者に確認を求めて、その上で慎重に価格を調整したほうが良いでしょう。
チャレンジ期間終了
不動産会社の方針によっては、相場価格より高めの価格で販売する「チャレンジ期間」を設けることもあります。
その期間が終了しても反響が少なく、成約が難しいようであれば価格の見直しが必要となります。
価格変更の際は、不動産会社とチャレンジ期間満了時点での市場価格の擦り合わせをすることが大切です。
買い替え等の期日
買い替えや、転勤、相続などの理由で、売却までの期日を設けなければならないケースも多いでしょう。
期日から逆算して確実な売却活動を進める必要があり、反響が少なく売却の見込みがない場合には、価格の見直しが必要です。
期日までに一般の買主が現れなかった場合に備えて、確実に売却できる不動産業者による買取金額もあらかじめ確認しておくのが良いでしょう。
媒介更新
一般的に不動産業者は査定金額を、3ヶ月の媒介契約期間内に売れる金額を目安に算出します。
そのため、更新時期の3ヶ月経過のタイミングで販売状況、進捗の確認をした上で競合物件や市況に合わせて価格の見直しをすることも検討しても良いでしょう。
適切な値下げ幅について
前述したとおり、様々な理由で価格変更をするタイミングがあります。
ここからは、状況別に値下げ幅の目安や、購入顧客目線での販売戦略について確認していきましょう。
期日のない場合
売却が完了する期日の制限がない場合は、多少時間をかけても納得できる金額での売却を目指すことが可能です。
市況、競合物件の動きを見ながら調整をしつつ、小幅に値下げをしていき反響を見ていくことをおすすめします。
その上で、最低売却金額としてボーダーラインを設定して納得できる金額を確保できるような販売を進めておくことが重要です。
具体的な値下げ幅については価格帯にもよりますが、100万円単位での値下げ(3980万円から3,880万円など)を行うのが効果的です。
10万円台は元々端数という認識があるため、10万円単位の値下げはあまり有効ではありません。
売却期日のある場合
買い替えや、転勤、相続など売却期日がある場合においては、反響が減ってきた段階で積極的に値下げを検討しましょう。
残債や買い替え先の費用を考慮して最低売却金額を設定して、それ以上の金額で売却できそうであれば価格交渉にも応じる姿勢が重要です。
販売価格の値下げ幅は競合物件、市況を確認しつつ、割安感の出る金額を目安に思いきって下げるのが良いでしょう。
それでも成約が難しいようであれば、期日より早めに動いて不動産業者による買取で確実な売却を視野に入れる必要が出てきます。
なお、不動産業者による買取の場合、高くても仲介価格の7~8割程度の売却金額になってしまう点がデメリットですが、以下のようなメリットもあります。
- 仲介手数料がかからない(仲介と比較した実際の手取り額の差が小さくなる)
- 契約不適合責任免責で売却できる
- 契約から引き渡しまでを早ければ数週間で完了できる
- 引き渡し時期を引き延ばすことが可能な場合もある(目安は1~2ヶ月程度)
→仮住まいなしで住み替えできる
最近はリフォームした中古住宅の需要が高まり、結果的に高値で買取する不動産業者が増えている傾向にあるため、売却までの期日によっては買取も検討するのがおすすめです。
購入顧客目線での販売価格戦略
販売戦略において、いたずらに価格を下げるのではなく、効果的な価格設定をすることが重要です。
1. ポータルサイトの検索条件を意識した価格設定
不動産購入希望者は、SUUMOやathomeなどのポータルサイトを利用して物件を探すことが多いです。そこで、検索条件に合わせた価格表示が重要になります。
2. 価格交渉の余地を示すテクニック
不動産購入では価格交渉が一般的です。あえて、10万円の位を「80万円」に設定することで、交渉の余地を感じさせる効果があります。
3. 価格変更の効果検証
仲介業務を行う不動産会社は、ポータルサイトに掲載している物件情報の閲覧数や反響数が確認できるため、価格を変更した場合の反応をチェックすることが大切です。
▼関連記事:買主から値引き交渉されたときの正しい対処法とは?
値下げをしないデメリット
少しでも高く売りたいという売主の方の気持ちはよく分かりますが、なかなか売れないことで精神的に辛くなることも事実です。
また、値段を下げずに販売をし続けることによって様々なデメリットが生じてしまいます。
どのようなデメリットが考えられるのか、注意すべきポイントについて説明します。
売れ残り物件のレッテル
ポータルサイトで同条件のまま長期間売れ残っている物件は購入検討者から「何か問題があるのではないか」という印象を持たれ、敬遠されてしまいます。
参考比較用の物件になってしまい、たとえ内見が入っても他の物件のダシに使われるようないわゆる「当て物件」となり、温度感の低い顧客しか来ないということにもなりかねません。
価格変更があればポータルサイトでも価格変更のマークがついたり、お気に入りに登録している人には通知が届くようになっているので、悪い印象を与える前に価格変更をするのが良いでしょう。
あるいは、期限に定めのない売却事情であれば、一度売却を取りやめて、期間を空けてから再度チャレンジする選択肢も有効です。
住み替え計画の破綻
住み替え前提で売却をしている場合は、売却が遅れることで資金計画に問題が起こるだけではなく、最悪の場合、想定していた新生活が送れない可能性すら出てきてしまいます。
新生活に必要な金額、売却価格のボーダーラインについて正しく理解しましょう。
期日がある場合については、販売開始時点で値下げのタイミングや幅をあらかじめ期日に合わせて逆算して決めておくのが良いでしょう。
また、確実に売却ができる不動産業者による買取も押さえておくことをおすすめします。
▼関連記事:住み替えで買取を利用すべきケースとは?
売りやめのリスク
値下げをせず塩漬け物件になってしまい、売却活動を続けても売却の見込みがない場合には売りやめを検討する必要が出てきます。
ただし、解約のタイミングによっては違約金が発生する可能性がありますので注意が必要です。
解約に伴う違約金については下記の記事をご参考ください。
▼関連記事:売却キャンセル時の違約金等について解説
媒介契約期間は自由に解約できない場合があるので、契約期間や違約金について契約内容をよく確認しましょう。
保有時のランニングコスト
値下げをせず、少しでも高く売れる可能性を信じて販売活動を続けることで、値下げをするよりもかえってコストがかかることがあります。
物件を保有することでかかるランニングコストとしては、下記のものが考えられます。
- 住宅ローン
- 固定資産税、都市計画税
- 管理費・修繕積立金
- 光熱費
特に、既に引越しをしている場合は、新居と合わせて二重でかかる費用が多く、生活に大きな負担がかかることになります。
売れる可能性の低い金額で長期間保有することでかかるコストを考えて、早めに成約できる金額で販売することを検討してみてください。
値下げする前に注意すべきこと
価格を下げないことによるデメリットは前述したとおりです。
ただし、いたずらに価格を下げれば良いのかといえば、そうではありません。
一度価格を下げた後に再度価格を上げる場合購入希望顧客の印象は悪くなってしまいます。
そのため、価格改定の前に注意すべきポイントについて説明します。
販売状況および不動産会社の戦略確認
売れないからと、値下げを不動産会社に依頼する前に、まずは現在の販売状況や販売戦略について確認をしましょう。
反響がコンスタントに続いており、購入検討者が悩んでいるようであれば値下げは待っても良いでしょう。
もしくは、購入検討者に今決めるなら交渉の余地がある旨を伝えても良いかもしれません。
不動産業者がどういうスケジュールでいくらぐらいでの売却を想定しているのか、また、どのような広告戦略を持っているのか、よく打ち合わせをしておくことが大事です。
私が担当する物件の場合、まずは土日や連休に合わせてオープンルームをおこなうために広告を打ち、集まった反響の数や内覧希望者の数や内覧後の感触を確認します。その上で希望価格での売却が難しそうであれば、値下げを提案するようにしています。
ここで誠実に動いていないと感じるようであれば、不動産業者の変更も検討することも必要です。
その際にはあらためて査定、相談をおこなうことになりますのでなるべく早めに動いていく方が良いでしょう。
当サイト「イエウリ」では、不動産会社に物件情報のみを公開して一括査定できるため、しつこい営業電話などはありません。
各社の販売戦略などを比較して改めて依頼する業者を探したい場合は、利用を検討してみてください。
自分の状況確認
価格変更前に、住宅ローン残債や売却の期日などの状況を再度確認しておきましょう。
値下げをして残債割れをしてしまう場合には、手元資金から捻出する、住み替えローンを利用するなどの対応が必要です。
また、住み替え物件の購入資金を売却代金から出す場合は、売却想定額から残債、諸経費、税金を差し引いた金額が本当に必要な額に足りるのか、しっかりと計算してください。
それによって新生活が破綻してしまう可能性もありますので要注意です。
なお、期日がある場合については、値下げをしてすぐに反響があるという保証はないので、なるべく余裕をもったスケジュールで逆算して考えましょう。
・不動産売却時の手取り額や税金をシミュレーションしたい方はこちら
買取で確実な売却ができる金額の把握
期日までに確実な売却をしなければならない場合は特に、不動産業者が確実に購入する金額をあらかじめ把握しておきましょう。
これにより、買取金額を最低ラインとして、値下げをする前に購入検討者との価格交渉に臨む作戦も取れるようになります。
また、買取業者は再販売によって利益を上げる都合上、長期間売れ残って値下げをしていった物件という印象があると、再販の際に苦労してしまいます。
そのため、売れ残った後に買取を依頼すると売出当初に確認した金額よりも低い金額を提示されるおそれもありますので、価格変更後 でも当初の提示金額での買取になるのか確認しておきましょう。
仲介で売れずに値下げした物件を買取してもらう場合、買取価格が下がる可能性が高まる点に注意してください。
依頼している不動産会社だけでなく、複数社に買取の打診をすることも検討しても良いでしょう。
ただし、媒介契約の内容によってはそこで売却先を決めてしまうと違約金が発生する可能性がありますので、注意が必要です。
▼関連記事:仲介会社から買取業者を紹介された場合の注意点
まとめ
値下げは、売れ残り対策として有効ですが、安易な値下げは利益減につながるリスクがあります。
市場動向や自身の状況を十分に確認し、担当の不動産会社と綿密に相談しましょう。
もし担当との連携がうまくいかない場合は、他社の販売戦略や査定金額を比較することが大切です。
「イエウリ」を使えば、匿名で複数社の査定を確認でき、仲介業者の変更や買取業者探しもスムーズに進めることができます。
値下げを検討する際は、他社の意見も参考にしてみましょう。