家を売却する時、多忙のあまり家具や家電を処分する時間が取れないことがあるかもしれません。
また、家具や家電を残しておけば、その分の価格を上乗せして売れるのではないかと考える方もいるでしょう。
使っていた家具や家電を処分せず、残したまま家を売却する方法はあるのでしょうか。
また、売却時の費用について、さらには、どのように交渉すればよいのかを解説します。
- 家具や家電を残したまま家を売る場合は、撤去費用は売主負担になる
- 不動産会社による買取で売却する場合は、撤去費用を含めて買取金額が算出されることが多い
- 高価な物であれば残置物がプラスに評価されることもあるが、売却金額を上乗せするのは難しい(買主に良い印象を与える程度の効果)
- 使えるものはリサイクルショップやフリマサイトで売るなどで、撤去費用を抑えて現金化することが可能
家具や家電を残したまま売ることは可能なのか
そもそも、家具や家電を残した状態での物件の売却は、普通のことなのでしょうか?
処分費用を負担して売却するのが一般的
家具や家電を残して売却したい時は、家具や家電の処分費を支払ったり、売却価格から処分費用を引いたりすることが多いです。
ただし、残置物を残したままにするのは一般的ではありません。
多くの人は、自分が選んだ家具や家電を新居で使いたいものです。
他人が使っていたものは気分的にも、衛生的にも問題があり、古くて使いにくいなどの理由で買い換えるケースが多いです。
そのため、買主側は残置物を処分しようとします。
仮に家の売却価格が3,000万円で、処分費用が50万円かかるのであれば、処分費用の50万円を売主が支払うか、もしくは、3,000万円から50万円を引いて2,950万円で売却することになります。
家具や家電の処分にかかる費用の相場
家具や家電の処分費用は、売主側が負担します。
家具や家電をまとめて処分したい時は、廃品回収業者に頼むのが最も手っ取り早い方法です。
自治体の粗大ゴミ回収などで一つひとつ処分しても良いのですが、量が多いと手間がかかりますし、基本的には割高になってしまいます。
スムーズに処分する方法としては、廃品回収業者のトラック積み放題オプションを利用するのが一番です。
廃品回収業者は2トントラックを用意して、トラックに積めるだけ不用品を持ち帰ります。
料金もプラン方式で一定です。
2トントラックであれば2〜3万円のプランが大 半を占めます。
参考:くらしのマーケット
ただし、大きなタンスやベッドのマットレスなどは、費用を別途に請求される可能性があります。
処分するもののサイズや重量に応じて処分費用が高くなることを押さえておきましょう。
家具や家電を処分するメリット
あたりまえのことですが、家具や家電を処分して売却するメリットは、買主が購入後に自分たちで家具や家電を処分する手間がかからないことです。
買主側からすれば、いくら費用を差し引いたとしても、新居の購入後に家具や家電を処分する手間や時間がかかります。
業者を手配して回収に来てもらうにも、時期や場所によっては1、2週間かかってしまうこともあります。
それでは新居での生活がスタートできません。
家具や家電の残置物があると、新生活を始めるまでの手間や時間がかかってしまうので、買主には歓迎されません。
スムーズに家を売りたい時や引渡しを行いたい時は、潔く残置物を処分してしまうほうが賢明です。
残置物が多いと内覧時の印象も良くない
また、家を売る際は内覧がつきものです。
内覧時に古い家具や家電が残ったままだと、悪い意味で生活感が滲み出てしまいます。
特に部屋が家具や家電類でごちゃごちゃしていると、内覧者の心象が悪くなるおそれがあります。
一度売却を決めたら速やかに家具や家電を処分してから部屋を見てもらった方が、部屋も広々として見え、内覧者の印象は良くなる傾向にあります。
画像の加工やバーチャルステージングは有効?
最近はAIによる画像修正を用いることで、家具や家電などを自然に消して空室状態のイメージ画像を作成することも簡単になりました。
また、バーチャルステージングと呼ばれる手法で、CGで家具やインテリアを配置し、理想的な住空間を演出することも可能です。
しかし、加工した画像をポータルサイトなどに掲載する際は「この画像はCG加工されています」などと明記しなければいけません。
たとえ加工した写真の印象が良くて内覧に訪れる人がいても、実際の訪問時に「悪い意味での大きなギャップ」を感じてしまうと、売買契約には結びつきにくくなってしまいます。
そのため、閲覧者に誤解を与えかねない画像の修正・加工等は控えるのが無難です。
仏壇はどう処分する?
仏壇は家具とは異なり、故人の魂が宿る特別なものとされており、適切な手順を踏んで処分するのが望ましいでしょう。
仏壇が不要な場合
仏壇を処分する際は、「魂抜き(お性根抜き)」を行いましょう。
魂抜きとは、仏壇に宿る故人の魂を抜き取る儀式で、お寺に依頼して執り行ってもらいます。
魂抜きの費用は、依頼するお寺により異なりますが、1万円〜3万円程度が相場です。
その後、仏壇を廃棄する場合は、仏具店や専門の廃棄業者に依頼することが一般的で、1万円前後の費用がかかります。
自治体の粗大ごみとして処分できる場合もありますが、一般的な家具とは異なるため、適切に処分してくれる業者に依頼するのが無難です。
仏壇を移動する場合
新居へ持っていく場合は、仏壇専門の引越し業者に依頼すると安心して運搬できます。
新居で再び仏壇を設置する際には、「魂入れ(開眼供養)」を行う必要があります。
この儀式も、魂抜きと同様にお寺に依頼し、1万円〜3万円程度の費用がかかるのが一般的です。
最近は、通常の引越し業者でも仏壇運搬に対応してくれることがあるので、サービスを確認してみると良いでしょう。
仏壇を残したまま売却できる?
仏壇は故人を祀るための特別な存在であるため、家具や家電と異なり、残したまま売却するのは一般的ではありません。
多くの買主は仏壇を受け継ぐことを望まないため、売却前に仏壇を処分するか、新居へ移動することが望ましいでしょう。
不動産会社による買取で売却する場合は、上記のような対応を代わりに行った上で引き取ってくれることもあります。
なお、宗派や地域によって処分の手順が異なることがあり、最近は特別な儀式は不要で処分するケースも増えてきました。
適切な処分方法の詳細は、ご自身でも確認することを推奨します。
家具や家電を残したまま高く売るには
家具や家電、カーテンなどを残したままの状態で家を高く売る方法はあるのでしょうか。
家具や家電がまだ使えるものであれば、メリットになることも
残置物の品質などによっては、プラスの評価が下されることもあります。
家具や家電が清潔かつ充分に使用に耐えうるものであれば、買主側は買い直しの手間が省けるため、多少なりともメリットがあると判断されるでしょう。
同時に、処分の手間が省ける売主側のメリットにもつながります。
食器棚やタンスなど、大型の家具
例を挙げれば、食器棚は購入すると10万円以上もしますし、家の中に持ち込んだりするのも何かと手間がかかります。
それでいて丁寧に使っていれば、劣化は起こりにくいです。
キッチンに綺麗な状態の食器棚を残しておけば、買主が新しい食器棚をわざわざ買わずに済むので、買主側の金銭的なメリットにつながります。
タンスや衣装ケースといった大掛かりな家具も、残置物として歓迎されることがあります。
ただし、あまりにもサイズが大きく、買主側のライフスタイルに合わない場合は、最初から処分したほうが良いでしょう。
当事者によってケース・バイ・ケースだと言えます。
比較的新しい家電
家電も同様です。
例えば壁掛けの大きなテレビなど、室内の状態にフィットしていて金額も高いものであれば、残すことでプラスに評価してもらえる可能性があります。
しかし、家電にこだわりがある人や絶対に新品でなければ済まない人にとって、他人が選んだテレビ は不要でしょう。
こればかりは運任せとも言えます。
少なくとも数十年間も使っているような古い家電、汚れの目立つ家具は、あまり歓迎されません。
最近5年以内に買った品質の良い家具や家電であれば、プラスになる可能性があるかもしれないと考えておきましょう。
エコキュートなどの最新給湯設備
これは家具や家電などの荷物というよりも、家の設備にあたりますが、エコキュートなどの新型の給湯設備が導入されている場合は、物件がプラス評価を受けることがあります。
そもそも取り外して新しい家に持っていったり、処分したりするような性質のものではないですが、物件のアピールポイントとなる場合もありますので、査定時や物件情報の掲載時には不動産会社に確認してもらいましょう。
エアコンや照明は歓迎されやすい
一般的に残置物でも歓迎されやすいのは、エアコンや照明です。
エアコンは本体の価格も高いですし、設置の費用や手間がかかります。
また、売主側にとってもエアコンを外して新居に設置する場合、撤去と設置のコストがかかります。
エアコンの撤去費用は15,000円、設置で15,000円、さらに、新しい場所に設置する時の消耗品の費用で15,000円程度もかかることが多いからです。
古いエアコンを新居に持ち込むだけで、5万円近い費用がかかるのです。
対して最新式で6畳から8畳程度のエアコンを買ったとしても、設置費用込みで5万円から6万円で購入できます。
エアコンは無理にリサイクルしようとは思わずに、そのまま残してあげるのが良いでしょう。
照明の設置は簡単ですが、部屋の雰囲気に合っていれば、そのまま残しても良いでしょう。
購入直後に買主が照明のある生活を送ることができるため、歓迎されやすいのです。
▼関連記事:マンション売却時にエアコンは外さなきゃいけない?残す場合の注意点も解説
家財道具を価格に上乗せするのは難しい
高価な家財道具が多いのであれば、値上げできる可能性はゼロではありませんが、普通の家具・家電を残すことで売却金額を上げることは難しいです。
「役に立つ残置物は買主に好印象を与え、購入意欲を高める効果がある」程度に考えておきましょう。
家具や家電の処分を安く行うには
家具や家電の処分費用は、売主が負担するのが一般的です。
それでは、費用を抑えるためにはどうすれば良いのでしょうか。
自治体の粗大ごみに出す
最も安く済ませる方法は、粗大ゴミとして自治体に出すことです。
例えば川崎市の例ですが、200センチメートル以内のものであれば、処分費用は最高でも1つあたり1,000円です1。
大きなタンスを処分したとしても、大型の家電を処分したとしても、1つあたり1,000円なので、20個処分しても20,000円です。
ただし、リサイクル方式が法律で決められている一部の家電(エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)は引き取ってもらえません。
また、2メートルを超える大きな家具や家電も引き取ってもらえません。
さらには、廃品回収の際には大型の家具や家電を自力で運び出さなければいけません。
物理的に家から運ぶのが難しいこともあるでしょう。
そういった場合はやはり、廃品回収業者に頼むのが最適です。
リサイクルショップに買い取ってもらう
基本的に廃品回収業者にはお金を払わなくてはいけませんが、リサイクルショップに依頼すれば不要品を買い取ってくれることがあります。
まだまだ使える物が多ければ、買取金額が数万円単位になることもあります。
ただし、汚れた物や古すぎる品は買い取ってもらえないので、売れなかった物は廃品回収などで処分しましょう。
オークションやフリマサイトで売る
現金化を狙うなら、ネットオークションやフリマサイトを利用するのも一つの手です。
説明書やパッケージが揃っていれば、高額で売れることもあります。
ただし、発送作業を自分でしなければいけないので手間がかかりますし、全てのものが売れるわけではありません。
最近ではジモティーのような個人間譲渡サイトに掲載し、無償または安価で譲渡する代わりに家まで引き取りに来てもらうなどの方法もあります。
これらの方法を活用すれば、手間はかかりますが安く処分できますし、ものによってはお金になることもあるのです。
不動産会社による買取で売却する場合は、処分費用がかからないことが多い
家の売却方法は、不動産会社に買主を探してもらう「仲介」による取引が一般的ですが、不動産会社が買主となる「買取」という方法もあります。
不動産会社が利益を見込んで購入するため、「売却金額は仲介の相場よりも低くなってしまう」という点がデメリットですが、買取の場合は家具や家電などの処分費用も含めて金額提示されるケースがほとんどです。
買取の場合は残置物の撤去が不要なことの他にも、
- 仲介手数料がかからない
- 数週間程度で売買契約まで進められる(仲介での売却は一般的に売り出してから3~6カ月程度かかる)
- 契約不適合責任が免責になる
といったメリットがあります。
売却を急いでいるケースや、内覧に何度も対応することができないといった場合には、不動産会社による買取での売却を検討しても良いでしょう。
「買取」での売却を検討している方は、できるだけ多くの不動産会社の査定額を手間なく比較し、高値売却が期待できる「イエウリ」がオススメです。
まとめ
売主と買主の合意があれば、家具や家電が残ったままでも家を売ることは可能です。
相手に好印象を与えることもありますし、売主が自費で不要な家具や家電を処分する手間とコストが省けます。
最近では、インターネットサービスの利用で不要な家具や家電を売れば、思わぬ高値になることもあります。
少しでも手元にお金を残した人は、高く売るために工夫してみると良いでしょう。