家を購入するために、住宅ローンを組むことを検討している人もいるはずです。しかし、住宅ローンを組めるかどうかは、各金融機関の定める審査に通過できるかにかかっています。
住宅ローンの審査結果には「承認」「否決」「条件付き承認」の3種類があります。このうち「条件付き承認」は、あまり聞きなじみのない人も多いのではないでしょうか。
そこで当記事では、条件付き承認とは何か、なぜその結果になるのか、そして本審査に向けてどのような対策をすればよいのかを詳しく解説します。
住宅ローン審査の大まかな流れ
住宅ローンの審査には、大きく分けて「事前審査(仮審査)」と「本審査」の2つの段階があります。これらの審査を無事通過することで、金融機関から融資を受けることができます。
住宅ローン審査の大まかな流れは次の通りです。
- 事前審査
- 売買契約の締結
- 本審査
- 住宅ローン契約
- 融資の実行
以下では、住宅ローンの申し込みから融資が行われるまでの流れを詳しく解説します。
1. 事前審査
住宅ローンの申し込みをすると「本審査」の前に「事前審査」が行われます。
事前審査では、申込者の収入、信用情報、借入希望額などをもとに、住宅ローンを利用できるかどうかを大まかにチェックされます。
金融機関によって異なりますが、事前審査には通常数日~1週間ほどかかります。 審査が完了すると、次のいずれかの結果が通知されるのが一般的です。
①仮承認
申込者の収入や信用情報に問題がなく、希望額の借入れが可能と判断された状態です。物件が正式に決まったら、売買契約を経て「本審査」に進めます。
②否決
申込者の収入が審査基準に満たない、信用情報に問題があるなどの理由でローンが利用できない状態です。否決されたら他の金融機関に改めて申し込むか、条件を改善して再申請する必要があります。
③ 条件付き承認
金融機関が「ローンを貸し出すことは可能だが、一定の条件を満たす必要がある」と判断した状態です。
例えば、借入金額の減額、他の借入の完済、保証料の追加支払い、連帯保証人の設定など、指定された条件をクリアすれば本審査へ進むことができます。
2. 売買契約の締結
事前審査に通過したら、購入予定の物件の売買契約を結びます。この際、契約時に「手付金」の支払いが発生するため準備しておきましょう。
手付金の相場は、物件価格の5~10%とされています。
例えば、物件価格が2,000万円であれば、100~200万円が手付金として用意する必要があります。
物件価格全額を住宅ローンで借り入れる「フルローン」の場合も、売買契約時には手付金を現預金から支払う必要がある点に注意しましょう。
3. 本審査
事前審査を通過して売買契約を締結したら、次に本審査が行われます。本審査では、事前審査の内容に加えて、購入する物件の担保評価や提出書類に不備がないかを厳しくチェックされます。
本審査の結果が出るまでの期間は1〜2週間程度です。審査が完了すると、「承認」か「否決」のいずれかの結果が通知されます。
4. 住宅ローン契約
本審査に通過したら、金融機関と住宅ローンの正式な契約(ローン契約)を結びます。
契約時には、以下の書類等が必要になります。
- 金融機関で指定された契約書類
- 実印・印鑑証明書
- 住民票
- 免許証、マイナンバーカードなどの本人確認書類
5. 融資の実行
住宅ローンの契約が完了すると、金融機関から融資が実行されます。基本的に、申込者の銀行口座に資金が振り込まれます。
融資が実行された当日に、売主と買主が立ち会い「残代金決済」と「物件の引き渡し」が行われるのが一般的です。
住宅ローンの審査結果で条件付き承認になる理由
条件付き承認は、金融機関にローンを貸す意思はあるものの、契約前にいくつかの条件を満たす必要がある状態を指します。
条件付き認証になる理由には、次のようなものが挙げられます。
- 収入や職歴が不安定だから
- 借入時や完済までの年齢が高いから
- 信用情報に問題があるから
- 購入予定物件の状態や市場価値に問題があるから
1. 収入や職歴が不安定だから
各金融機関では、申請者が住宅ローンを無理なく返済し続けることができるかを最も重視しています。
申請者の収入が安定していたり、職歴が長いなど条件を満たしていれば問題なく承認されるでしょう。
しかし、収入が変動しやすかったり、短期間で転職を繰り返していると、将来的な返済が不安定になると見なされます。
こうした場合は条件付き承認として、金融機関が課す条件を満たす必要があります。
2.借入時や完済までの年齢が高いから
住宅ローンの審査では、申込者の収入だけではなく年齢も審査の対象としています。そのため、住宅ローンを借り入れる際に年齢が高いと、条件を設定される可能性が高くなります。
なぜなら、高齢で借り入れると定年退職後に収入が減る可能性が高くなるからです。
さらに、年齢が高くなるにつれて病気になるリスクも増します。体調を崩して入院したり、退職することになれば収入源を失うことになるでしょう。
これらの理由から、高齢で住宅ローンを組む際に、条件付き認証になることがあります。
3. 信用情報に問題があるから
金融機関は、クレジットカードやローンの利用履歴をチェックして、返済が遅れたり滞納していないかを確認します。これを「信用情報」と呼びます。
例えば、過去に返済が遅れたり、他のローンでトラブルがあった、現在の借入額が多かったりすると、住宅ローンの返済が不 安定だと判断されることがあります。
4. 購入予定物件の状態や市場価値に問題があるから
金融機関では、購入予定の物件にどの程度の価値があるのか、将来的に売却する際の価格がどのくらいになるのかを厳しく審査します。
なぜなら、借主が住宅ローンを返済できなくなった場合、金融機関は物件を売却して貸したお金を回収するためです。
例えば、築年数が古すぎる物件や、周辺の相場に比べて価格が極端に高い物件は、担保としての価値が低いと見なされる可能性があります。
条件付き承認の具体的な「条件」とは?
金融機関が条件付き承認を出すのは、住宅ローンの申込者に何らかの不安要素や問題点があると判断した場合です。
収入や信用情報、物件の評価などで審査基準に満たない部分があれば、次のような条件を提示します。
- 借入金額の減額される
- 他の借入を完済する
- 保証料を追加で支払う
- 連帯保証人を立てる
以下では、条件付き承認の具体的な条件に付いて詳しく解説します。
借入金額の減額される
金融機関では、住宅ローン返済の負担が大きくなりすぎないように、申請者の「返済負担率」をチェックします。
返済負担率とは、月収や年収に対してローン返済にあてる金額の割合を示す指標をいいます。
返済負担率は、以下の計算式で計算が可能です。
例えば、収入が毎月30万円の人が、月々9万円をローン返済に回すと返済負担率は30%になります。
無理なくローンの返済を続けていくためには、返済負担率は20~25%にするのが理想とされています。
金融機関は返済負担率の上限を30~35%に設定するのが一般的ですが、ギリギリの借入額で申し込むと「返済が厳しくなる恐れがある」と判断されかねません。
返済負担率が高くなると見込まれると、借入金額の減額を条件として提示されてしまいます。
金融機関の条件に従って借入金額を減らせば、月々の返済額は少なくなります。返済にかかる負担も軽くなるため、無理なく返済を続けることもできるでしょう。
他の借入を完済する
クレジットカードローンや自動車ローンなどの借入が残っている状態で、新たに住宅ローンを組むと毎月の返済額が増えてしまいます。
ローンの支払い が増えすぎると、生活費を圧迫することになります。最悪の場合、住宅ローンの返済が難しくなり、家を手放すことにもなりかねません。
金融機関は返済が滞るリスクを避けるために、既存の借入を完済してから住宅ローンを契約するようにと条件を付けることがあります。
もし、金融機関から他のローンの完済を条件に住宅ローンを承認された場合は、先に既存のローンを完済することを優先しましょう。
保証料を追加で支払う
住宅ローンを組む際、金融機関は「保証会社」を利用して融資するのが一般的です。
保証会社は申込者がローンを返済できなくなった際に、金融機関へ代わりに返済する役割があります。
この保証会社を利用するために支払う費用が「保証料」です。
住宅ローンの審査の結果、申込者の信用情報や収入に不安要素があると判断された場合、金融機関が追加で保証料を支払うことを条件にローンを承認することがあります。
保証料の支払いが増えると、住宅ローンの審査に通る可能性は高くなります。しかし、家計にかかる負担も多くなる点には注意が必要です。
連帯保証人を立てる
住宅ローンの審査では、基本的に連帯保証人を立てる必要はありません。しかし、申込者の収入や職歴などで不安要素がある場合、連帯保証人を立てることを条件に承認されるケースがあります。
連帯保証人をつけることで、もし申込者が住宅ローンを返済できなくなった場合に連帯保証人が代わりに返済することになります。金融機関にとっては返済が困難になった場合のリスクを減らすことができるため、審査を通しやすくなるのです。
住宅ローンで条件付き承認を避けるための対策
住宅ローンの審査で条件付き承認になるのは、金融機関が申込者に返済能力が不足していると判断しているからです。
金融機関が申込者に感じている不安要素を取り除くことができれば、本承認を得られる可能性が高くなるでしょう。
以下では、住宅ローンで条件付き承認を避けるために、事前に行うべき対策をご紹介します。
1.他の借入れを整理する
住宅ローンの審査では、申込者の総負債額と毎月の返済額を重要なポイントとして審査します。
自動車ローンやキャッシングなど、他の借入れが多いと住宅ローンの審査で「返済能力に問題がある」と判断されかねません。
返済する負債が多いと、条件付き承認や減額承認、場合によっては審査否決となる可能性があります。
条件付きの「条件」とはクレジットカードのリボ払い、キャッシング残金の精算だ。借入とみなされるものがあると、月の返済がそちらにもあると見なされる。
結果、住宅ローンの月返済見積もり額を減らされ、最終的には希望する額の借入ができないという問題となるようだ。これは40万円ほどであったので、親に頭を下げて借りて解決をした。
親は少し渋い顔をしていたが、これまでの経緯など説明を尽くしなんとか理解してもらうことができた。
スムーズに審査に通過するためにも、住宅ローンを申し込む前に不要な借入れを整理して、できるだけ完済しておきましょう。
2.十分な額の頭金を用意する
住宅ローンを組む際に、頭金を用意することで審査結果に良い影響を与えることができます。
頭金とは、住宅購入時に自己資金から支払うお金をいいます。頭金を用意できれば「自己資金が多い=計画的な資金管理ができる」と金融機関も判断し、審査が有利になる可能性があります。
また、頭金の割合によっては金利の優遇を受けられる場合もあります。金融機関によっては、頭金を一定額以上支払うことで、通常よりも低い金利が適用されることがあるのです。
これにより、総返済額を抑えることができるため、事前に金融機関の条件を確認することが大切です。
一般的に、頭金の理想的な金額は「物件価格の20%以上」とされています。20%未満でも住宅ローンは組めますが、頭金が少ないと審査が厳しくなる可能性もあるため注意しましょう。
とはいえ、頭金を支払いすぎて家計に負担をかけては本末転倒です。無理のない範囲で頭金を用意することをお勧めします。
こちらのローンシミュレーターでは、頭金の額、物件価格、金利、返済年数に任意の値を設定して、月々の支払額と総返済額を簡単にシミュレーションできます。ぜひご活用ください。
3.購入する物件を見直す
住宅ローンの審査では「物件の担保評価」も重要な基準の一つとされています。これは、申込者が住宅ローンを返済できなくなった場合、金融機関が物件を売却してお金を回収する仕組みになっているためです。
購入する物件の担保評価が低いと、金融機関にとって回収リスクが高まるため、審査が厳しくなる傾向があります。具体的には、融資額を減らされる「減額承認」や、特定の条件をクリアしなければ契約できない「条件付き承認」になるケースもあります。
では、一般の人が担保価値をチェックすることはできるのでしょうか?
専門的な査定は不動産会社や金融機関の評価に依存しますが、次のような方法である程度の目安をつけることが可能です。
周辺の相場を調べる
- 不動産ポータルサイトで類似物件の価格を確認する
- 公示地価・基準地価・路線価を調べる
金融機関の「担保評価の傾向」を把握する
- 一般的にマンションより戸建てのほうが担保評価は低くなりがち
- 築年数が古すぎると評価が低くなりやすい
不動産会 社に簡易査定を依頼する
金融機関が実施する正式な担保評価とは異なりますが、不動産会社に相談することで、購入予定の物件がどの程度の評価を受けるかを教えてもらえることがあります。
特に、同じエリアでの売買実績が豊富な不動産会社であれば、融資時の担保評価の傾向についてアドバイスをもらえることもあります。
また、不動産会社が過去に査定した類似物件の価格を参考にすることで、ある程度の目安をつけることも可能です。
物件選びの段階で、気になる物件の担保評価について事前に確認しておくと、スムーズに住宅ローンを進めやすくなります。
4.住宅ローンを収入合算で組む
住宅ローンを申し込む際、収入や職歴などに不安要素があると「連帯保証人を立てること」を条件に承認されるケースがあります。そのような時に活用したいのが「収入合算」です。
収入合算とは、配偶者や親などの収入を合算して住宅ローンの審査を受ける方法です。
収入合算には、主に以下の3つのタイプがあります。
ペアローン
- 夫婦や親子などがそれぞれローン契約者となり、別々の住宅ローンを組む方法
- それぞれが住宅ローン控除を受けられるが、審査や契約手続きが2倍になり、一部の費用が増加する
連帯保証型
- 主債務者(ローンを借りる人)と、その返済を保証する連帯保証人がいる形式
- 連帯保証人は返済義務を負うが、債務者と同等の権利は持たない
連帯債務型
- 1つの住宅ローンを複数人で共同して返済する方法
- 連帯債務者は主債務者と同じく返済義務を負い、ローン契約者としての権利も持つ
- フラット35など一部の金融機関が採用
収入合算を利用すると借入可能額が増えるため、一人では難しい物件の購入も可能になります。
ただし注意も必要です。例えば夫婦で収入合算をする場合、配偶者は「連帯保証人」または「連帯債務者」になります。
仮に夫が病気やけがで収入が減ったり収入源を失った場合、妻が返済を引き受けなければなりません。
また、収入合算の条件は金融機関によって異なるため、事前にしっかりと確認しておくことをおすすめします。
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まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。今回は、住宅ローン審査で条件付き承認になる理由と、本審査までに行うべき対策について解説しました。
住宅ローンの審査には「本承認」「否決」「条件付き承認」の3種類があります。
「条件付き承認」は、ローンを組むこと 自体は可能です。しかし、金融機関から提示された一定の条件を満たさなければ正式な契約に進めない状態をいいます。
住宅ローン審査で条件付き承認を避けるためにも、自身の収入や信用情報の状況を確認するなどして、万全の準備を整えましょう。