住宅ローンを検討する際、多くの人は最寄りの銀行やネット銀行を候補に挙げるのが一般的です。しかし、地域に密着した金融機関である信用金庫も、選択肢の一つとして考えてみる価値があります。
なぜなら、信用金庫は銀行やネット銀行とは異なる独自のサービスを提供しており、利用者にとって特別なメリットがあるからです。
当記事では、信用金庫と銀行の違いに加え、信用金庫で住宅ローンを借りる際のメリットとデメリットについて分かりやすく解説します。
信用金庫とは?銀行との違いを押さえておこう
信用金庫と銀行は、どちらも金融サービスを提供するという意味で同じ機関です。
しかし、細かな部分で両者には明確な違いがあります。
以下では、信用金庫と一般的な銀行の違いについて解説します。
組織形態の違い
信用金庫と銀行の最も大きな違いは、組織形態です。
銀行は、株主からの出資をもとに運営されている株式会社です。
多種多様な金融商品・サービスの提供や全国規模の事業展開を行うなど、株主を優先して利益を出すことを目的とします。
一方、信用金庫は相互扶助を目的とした協同組織です。
会員になった住民や中小企業からの出資を受けて運営されており、地域の利益や活性化を重視しています。
営業エリアの違い
銀行と信用金庫は、営業エリアに明確な違いがあります。
銀行、特に大手銀行は、全国的に多くの支店を展開しているのが特徴です。
広い地域でサービスを提供しているため、地方部でも都市部と同等のサービスを受けられることが銀行の強みと言えるでしょう。
一方、信用金庫は特定の地域に密着し、地域内の住民や中小企業を主なサービスの対象としています。
信用金庫は地域経済の発展と相互扶助を目的とした協同組織であるため、営業エリアは法律で定められています。
そのため、地域外の顧客にはサービスを提供できない場合があります。
利用できる対象者の違い
銀行と信用金庫では、サービスを利用できる対象者に違いがあります。
銀行は、個人、中小企業、大手企業、個人事業主など、基本的に誰でも利用可能です。
一方、信用金庫の利用者は、その地域に住む住民や中小企業に限られています。
口座開設や預金は居住地や勤務先に関わらず受け付けているケースが多いですが、住宅ローンの借入れなど、融資を受けられるのは基本的に会員のみです 。
信用金庫の会員になるには、以下の条件を満たす必要があります。
- 地区内に住所または居所を有する者
- 地区内に事業所を有する者
- 地区内において勤労に従事する者
- 地区内に事業所を有する者の役員
- 地区内に転居することが確実と見込まれる者
- 事業者の場合、従業員300人以下または資本金9億円以下の事業者が対象
信用金庫で住宅ローンを借りるメリット
信用金庫には、大手銀行や地方銀行にはない次のようなメリットがあります。
- 地域密着だからこその柔軟な対応
- 相談・サポート体制が整っている
- 各種優遇サービスや特典が充実
- 銀行に比べて審査が柔軟に行われることがある
以下では、信用金庫から住宅ローンを借りるメリットについて詳しく解説します。
1. 地域密着だからこその柔軟な対応
域密着型だからこその柔軟な対応がしてもらえるのが、信用金庫を利用するメリットのひとつです。
銀行は全国規模で事業を展開しており、サービス内容も多種多様です。
しかし、地域の特性や中小企業の状況を正確に把握するのは難しく、融資の審査が画一的で厳しくなる傾向があります。
特に、収入や返済能力に重点を置くため、地域の中小事業者にとっては融資のハードルが高いと感じられる場合もあります。
その点、信用金庫では地域での取引実績や活動状況も踏まえて判断してくれることがあり、収入が不安定でも前向きに審査してもらえるケースがあります。特に「地元で長く取引している」「給与振込や定期預金などの利用実績がある」といった人は、審査で有利に働くこともあります。
さらに、信用金庫は住宅ローンに関連して、地元工務店や不動産会社とのネットワークを活かした情報提供をしてくれる場合もあり、地域で家を建てたい・購入したい人にとって心強い存在です。
2. 相談・サポート体制が整っている
信用金庫を利用する大きな利点は、手厚いサポートと気軽に相談できる体制が整っていることです。
信用金庫は、地元の住民や中小企業を支援し、地域を活性化させることを目的とした金融機関です。
地域の状況をよく理解しているため、一般的な銀行では難しいような相談にも親身になって対応してくれます。
例えば住宅ローンを利用する際にも、担当者が申込者の収入や生活状況に合った最適なプランを一緒に考えてくれます。
「どのくらい借りられるのか」「返済が心配」といった不安にも丁寧に答えてもらえるため、安心して進められるでしょう。
また、信用金庫の担当者は、定期的に連絡をくれたり、必要に応じて訪問してくれることもあります。
返済途中で不安や疑問が生じたり、家計の見直しをしたい時にも相談に乗ってもらえるでしょう。
このように、気軽に相談できる環境が整っているので、住宅ローンを初めて組む人でも安心して利用することができます。
3. 貸し渋りや貸し剥がしの心配が少ない
信用金庫は、貸し渋りや貸し剥がしの心配が少ない点でも安心して利用できる金融機関といえます。
この特徴は、住宅ローンを信用金庫で組む際の大きなメリットのひとつです。
「貸し渋り」とは、金融機関が貸し倒れのリスクを避けるため、新たな融資を控えたり、既存の融資枠を縮小することを指します。
景気の悪化や金融機関自身の業績不振が原因となりやすく、必要な融資を受けられなくなるケースが発生します。
一方、「貸し剥がし」は、金融機関がリスクを軽減するため、貸付金の返済を予定より早めるよう求める行為です。
貸し剥がしをされると借主は急な返済を迫られるため、資金繰りが厳しくなる場合があります。
信用金庫は、地域の個人や中小企業との取引関係を大切にしています。
特に、長期的な信頼関係を重視する信用金庫では、会員が不利になるような貸し渋りや貸し剥がしを回避する傾向にあります。
4. 銀行に比べて審査が柔軟に行われることがある
信用金庫は、銀行と比べて融資審査が緩めとされる点も、住宅ローンを検討する際の大きなメリットのひとつです。
銀行では収入の安定性や職業、勤続年数などの条件が厳しく求められます。
これらの条件を満たせない場合、融資を受けることは難しいでしょう。
一方、信用金庫は地域密着型の金融機関なので、顧客の状況を深く理解し、柔軟に対応してくれるのが特徴です。
例えば、個人事業主やフリーランスのように、収入が毎月一定ではない人や、勤続年数が短い人でも、収支の実績や過去の取引状況を考慮して前向きに審査を進めてくれる場合があります。
また、銀行では審査の基準に満たないと判断されるケースでも、信用金庫 では地域での活動や人柄なども含めて総合的に評価してもらえる場合もあるでしょう。
ただし、誰でも融資が簡単に受けられるわけではありません。
信用金庫も借主の返済能力をしっかりと確認しますので、申込時には自分の収入や支出を整理し、返済計画を明確にしておくことが重要です。
信用金庫で住宅ローンを借りるデメリット
信用金庫で住宅ローンを借入れることで、様々なメリットを得ることが出来ます。
しかし、一方で次のようなデメリットがあることも覚えておきましょう。
- 銀行よりも金利が高い場合がある
- 営業エリアが限定される
- 貸付金の限度額が低いことがある
以下では、信用金庫から住宅ローンを借りるデメリットについて、詳しく解説します。
1. 銀行よりも金利が高い場合がある
信用金庫は、中小企業や個人事業主などにも積極的に融資を検討してもらえる柔軟性が大きな魅力です。
ただし、銀行と比べると金利が0.5~1%ほど高めに設定される傾向が見られます。
その理由としては、主に以下の2点が挙げられます。
資金規模の違い
信用金庫は保有する金融資産が銀行よりも小さいため、1回あたりの貸付額も少額になりやすい傾向があります。
その結果、融資の回数を増やして利益を確保する必要があり、金利をやや高めに設定せざるを得ない場合があるのです。
地域密着型ならではのコスト
信用金庫は地域の顧 客一人ひとりに手厚いサポートを提供するため、人件費や事務コストなどの負担が大きくなりやすい側面があります。
こうした地域密着型の運営方針が、金利に反映される要因の一つです。
金利の優遇が受けられる可能性
一方で、給与受取口座や公共料金の引き落としなどをまとめて同じ信用金庫にすることで、金利の優遇を受けられる場合があります。
各信用金庫によってキャンペーンやサービス内容は異なるため、事前に確認し、条件を満たすとどのくらい金利が下がるかを比較検討してみましょう。
このように、金利面だけ見ると大手銀行やネット銀行より高く見えるケースもありますが、信用金庫ならではの柔軟な融資姿勢や細やかな対応は大きな魅力です。
金利優遇制度やサポート体制なども含めて総合的に比較し、自分の状況に合った選択をすることをおすすめします。
2. 営業エリアが限定される
信用金庫は、会員を対象に運営されている協同組織の金融機関です。
銀行とは異なり営業エリアは特定の地域に限定されており、会員になる資格もその地域内に住所や事業所を持つ個人や企業に限られます。
地域が限定されているため、利用したい信用金庫があっても、自身の居住地や勤務先が営業エリア外だった場合、口座開設や融資などのサービスを受けられない可能性があります。
信用金庫を利用する際は、希望する信用金庫の営業エリアを事前に確認し、条件を満たしているかを確認しなければいけません。
3. 貸付金の限度額が低い
信用金庫は地域の住民や中小企業だけでなく、収入が不安定な個人事 業主やフリーランスに対しても積極的に融資を行っています。
ただし、融資の限度額が低くなることがあり、これはデメリットのひとつといえるでしょう。
信用金庫は大手銀行と比べると資本が少ないため、大きな額の融資をするのが難しい場合があります。
例えば、住宅ローンで高額な物件を購入する場合、大手銀行なら対応できる額でも、信用金庫では限度額を超えてしまうケースが少なくありません。
多額の資金が必要となる物件を購入しようとしても、信用金庫の融資では必要な額の融資を受けられない可能性があるのです。
信用金庫の住宅ローン審査が柔軟になる理由
信用金庫で住宅ローンの借り入れをおすすめする理由のひとつに、住宅ローン審査の柔軟さがあります。
一般的な銀行では、住宅ローンの審査が厳しく利用できない人でも、地域の信用金庫ではローンが組めることもあるのです。
審査が柔軟になる理由①銀行と異なる運営形態だから
信用金庫の住宅ローン審査が銀行よりも緩いとされる理由のひとつは「営利第一の株式会社ではなく、協同組織金融機関である」という点です。
一般的な銀行は株主への利益還元を目的とする株式会社なので、貸し倒れのリスクを最小化するために申込者の年収や信用情報を厳しく審査する傾向があります。
一方、信用金庫は地域の発展や会員へのサービスを重視する協同組織金融機関です。
株主配当の必要がない分、個人の事情や地域の状況を総合的に考慮して審査を行う場合が多く、結果的に銀行より柔軟な判断につながる傾向があります。
ただし、協同組織であるからといって無条件に審査が甘いわけではなく、返済能力や信用状況の確認はしっかりと行われます。
審査が柔軟になる理由②独自の審査基準を設けているから
信用金庫のローン審査が緩い理由として、独自の審査基準を設けているからがあります。
銀行で住宅ローンを申し込む場合、基本的に以下の項目が審査されます。
- 完済時年齢
- 健康状態
- 借入時年齢
- 年収
- 勤続年数
- 返済負担率
- 担保評価
- 金融機関の営業エリア
- 連帯保証
- 国籍
- 雇用形態
- 融資可能額(融資率)①購入の場合
- 融資可能額(融資率)②借換えの場合
- カードローン等の他の債務の状況や返済履歴
- 申込人との取引状況
- 業種
- 家族構成
- 雇用先の規模
- 所有資産
- 性別 など
参考:国土交通省「令和5年度 民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」
金融機関によって異なりますが、特に次の項目が重視されがちです。
- ローンの完済時年齢が80歳未満
- 団体信用生命保険(団信)に加入できる健康状態
- 借入時年齢が65歳以下
- 無理なく返済が続けられる年収がある
その中でも、ローンの申込者に一定の収入がなければ、審査に通ることは困難です。
これだけ審査が厳しいのは、銀行が営利目的の株式会社だからです。
ローンの申込者に収入がなければ、返済が滞ってしまうのですから、審査が厳しくなるのも当然と言えます。
一方、信用金庫は地域経済の活性化を目的としている団体です。
住民や中小企業の会員を支援することを優先しているため、年収は低くても安定した収入があれば審査に通る可能性が高くなります。
審査が柔軟になる理由③取引実績を重視しているから
信用金庫では、収入はもちろんですが、取引実績も重視する傾向にあります。
例えば、給与振込口座や公共料金、クレジットカードの引き落とし口座として、日常的に信用金庫を利用するなどが挙げられます。
特に、長期間安定した取引実績があれば、信用金庫側が会員の収入や返済能力を正確に評価できるため、住宅ローンの審査で有利に働くことがあり、優遇金利の適用を受けられることもあるでしょう。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。
今回は、信用金庫から住宅ローンを借りる場合のメリットとデメリットについて解説しました。
信用金庫は地域に根ざした金融機関で、銀行とは少し違う特徴を持っています。
まず、信用金庫を利用できるのは、その地域に住んでいる人や中小企業が中心です。
銀行に比べて営業エリアが狭く、一定の条件を満たさないと利用できない場合もあります。
また、銀行と比べて住宅ローンの金利が低いわけではなく、借りられる金額も少なめです。
一方で、信用金庫の大きなメリットは、住宅ローンの審査が比較的柔軟に行われる点です。
収入が不安定な個人事業主やフリーランスでも、取引実績等によっては借りられる場合があります。
信用金庫を利用するメリット・デメリットを理解した上で、他の金融機関と比較しながら自分の返済能力に合わせて選ぶことをおすすめします。