住宅を購入する際、親から資金や土地を援助してもらうこともあるでしょう。
親から援助を受けると贈与税が課税される可能性があります。
贈与税は特例を適用することで節税できるので、特例についても理解しておくことが大切です。
この記事では、住宅購入時の親からの支援に対して贈与税がかかるケースや計算方法、特例を詳しく解説します。
住宅購入で親から支援を受けるのは問題ない?
住宅は一生の中でももっとも高額な買い物といわれるように、大きなお金が動きます。
親から援助を受けられれば資金繰りがぐっと楽になり、家の選択肢が増える可能性もあるでしょう。
とはいえ、親からの援助が問題にならないかも気になるところです。
ここではまず、住宅購入時の親からの援助について詳しくみてきましょう。
問題ないが支援内容次第で贈与税がかかる
住宅購入に関して親から援助を受けること自体は何も問題ありません。
資金の援助を受ける・土地をもらうなど援助の形はさまざまでしょうが、いずれであっても支援自体が違法となることはありません。
ただし、親から得た支援は贈与税の課税対象となります。
贈与税とは、財産を贈与されたときに受け取った側に課税される税金です。
贈与税の税率は最大55%と高く設定されているため、支援を受ける際には贈与税についても理解しておく必要があります。
全体の約1割が親からの支援を受けている
不動産流通経営協会1の統計によると、住宅購入時に親からの支援を受けた世帯は全体11.4%という結果があります。
さらに、そのうち贈与額が1,000万円を超える割合は37.3%と少なくありません。
また、贈与を受けた世帯主の年齢で最も割合が高いのは30~34歳(19.4%)、次いで35~39歳(15.7%)です。
50歳以上でも3.5%が援助を受けており、幅広い年齢層である程度まとまった額の親からの援助を活用していることが分かります。
親からの支援で贈与税がかかるケースとは
住宅購入時の親からの支援で贈与税がかかる代表的なケースは以下の2つです。
- 金銭の援助を受けるケース
- 土地の贈与を受けるケース
金銭の援助を受けるケース
住宅購入時に親から金銭で援助を受けるケースは代表的でしょう。
金銭の援助を受ける際には、受け取った金額が贈与税の対象です。
また、贈与ではなく親からお金を借りるという場合でも、以下のようなケースは借入ではなく贈与とみなされ贈与税の対象となる恐れがあります。
- 返済不能な金額である
- 利息がないか著しく低い
- 返済期限がないか現実的ではない
- 借用書がない
親子間でのお金の貸し借りは曖昧や返済について甘くなりがちですが、贈与税とみなされないためには借用書を作成し返済条件を現実的にきちんと定めることが大切です。
土地の贈与を受けるケース
お金ではなく土地をもらうケースでも贈与税の対象となります。
土地の評価額に応じて贈与税額を算出します。
なお、親の土地に家を建てるケースとして代表的なの は以下の4つでしょう。
- 土地を無償で借りる(名義は親のまま)
- 土地を有償で借りる(名義は親のまま)
- 土地をもらって家を建てる(名義は子に変更)
- 親の土地に二世帯住宅を建てる(名義は親のまま)
土地を贈与されるのではなく借りる場合は、無償・有償を問わず基本的に贈与税は発生しません。
ただし、両方とも相続時に相続税の対象となり、無償で借りている場合は有償よりも相続税が高くなります。
生前に一定額以上の財産を受け取った場合は贈与税が発生する可能性があり、被相続人の死亡後に財産を受け取った際は相続税が発生する可能性がある。
土地を贈与される場合は贈与税の対象ですが、その際に所有権が子に移るので相続時に相続税の対象となることはありません。
また、親の土地に二世帯住宅を建てる場合は、贈与税はかかりませんが相続時に建物の親の持分と土地が相続税の対象となります。
土地の援助を受ける場合、援助のされ方によってもかかる税金が変わってくるので、どのような援助を受けた方がよいかは慎重に検討するようにしましょう。
親からの資金援助でかかる贈与税の計算方法
贈与税の課税方法には「暦年課税」と「相続時課税制度」の2種類があります。
それぞれ税額が異なってくるので計算方法を押さえて、どちらを選択するか検討することが大切です。
ここでは、それぞれの方法での税金の計算について解説します。
暦年課税における贈与税の計算方法
暦年課税とは、1月1日から12月31日の贈与額合計に対して課税される方法です。
暦年課税の贈与税は以下の方法で計算できます。
暦年贈与には年間110万円の基礎控除があり、基礎控除を超えた部分に贈与税の税率を乗じて算出できます。
贈与を受ける側は、1年間に受け取った贈与額が110万円を超えると贈与税の課税対象になる。
贈与税の税率は一般税率と特別税率に分かれ、18歳以上の子や孫が親や祖父から贈与を受ける特別税率は一般税率よりも低く設定されています。
一般税率の税率は以下の通りです2。
基礎控除額後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
なお、暦年課税は贈与者(贈る側)ごとではなく受贈者(贈られる側)ごとに年間の贈与額合計が対象となります。
住宅購入資金以外にも贈与を受けている場合は、その額も含まれるので注意しましょう。
相続時精算課税制度における贈与税の計算方法
相続時精算課税の制度とは、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合において選択できる贈与税の制度です。
相続時精算課税制度を利用すると、贈与額の累計が2,500万円となるまでの部分を控除でき、贈与税が非課税になります。
さらに、2024年1月から追加された暦年課税の基礎控除110万円も併用して控除できます。
110万円を超えた部分も累計2,500万円までは控除
→ただし、相続時に相続税が発生する可能性がある
控除額を超えると、超えた部分に対して一律20%で贈与税が課税されます。
つまり、相続時精算課税制度を利用すれば、住宅を購入するために2,610万円の贈与を1年間で受けても、贈与税が発生しないのです(後述しますが、さらに追加で利用できる特例もある)。
ただし、相続時精算課税制度では贈与分が相続財産に加算される点に注意が必要です。
相続財産に加算されることで相続税が発生する恐れがあるので、相続財産まで含めて利用するかを検討することが大切です。
また、相続時精算課税制度を一度選択すると暦年課税に戻せません。
そのため、暦年課税と相続時精算課税制度のどち らを選択すべきかはシミュレーションして慎重に決めるようにしましょう。
なお、相続時精算課税制度は贈与者ごとに選ぶことが可能です。
父から贈与は相続時精算課税制度、母からは暦年課税といった選択ができるので、上手に活用しましょう。
直系尊属の住宅取得等資金に係る贈与税の非課税制度を活用しよう
「直系尊属の住宅取得等資金に係る贈与税の非課税制度」とは、父母や祖父母からの住宅取得時の資金援助の一定額を非課税にできる制度です。
この制度を活用することで税負担の軽減が見込めるので、概要を理解して適用を検討するとよいでしょう。
控除上限額
この制度では、取得する住宅の性能に応じて以下の控除が適用されます。
- 省エネ等住宅:1,000万円まで
- それ以外の住宅:500万円まで
また、住宅取得資金の非課税枠は相続時精算課税制度との併用が可能です。
併用することで最大3,610万円(1,000万円+2,500万円+110万円)まで贈与税がかからないので、高額な贈与を受ける場合は検討するとよいでしょう。
適用要件
この制度が適用できるのは、以下のような要件を満たした場合です3。
- 令和6年1月1日から令和8年12月31日までの贈与