マイホームの購入を考える際、多くの人は住宅ローンの借入を検討するのではないでしょうか。
住宅ローンを組むことで、憧れのマイホームを手に入れることが可能です。しかし、購入後の長期的な返済計画も、事前にしっかりと立てなくてはいけません。
せっかくマイホームを購入しても、日々の生活や貯蓄ができなければ本末転倒ですからね。
そこで当記事では、年収600万円の世帯が住宅ローンを借りる際に、覚えておきたいポイントや注意点について解説します。
借入額を決めるポイントは?
住宅ローンの借入額は、いくつかのポイントによって決まります。これらのポイントを理解することで、無理のない返済計画を立てることが可能です。
借入額を決めるのには、次のようなポイントがあります。
- 金利タイプ
- 返済負担率
- 頭金
- 返済期間
以下で詳しく解説します。
金利タイプ
住宅ローンの金利タイプには「固定金利」と「変動金利」の2種類があります。
固定金利は、借入時に決めた金利が返済期間中ずっと変わりません。
一方、変動金利は金利が定期的に見直され、経済状況に応じて変動します。
返済負担率
返済負担率は、年間の返済額が年収に占める割合を示す指標を言います。金融機関は返済負担率を基準にして、無理なく返済できるかどうかを判断します。
一般的に、返済負担率の目安は20%~35%とされていますが、無理のない返済を目指すなら25%までに留めるのが理想的です。
頭金
頭金は、住宅購入時に最初に支払う自己資金のことを指します。住宅価格の10%〜20%を用意するのが理想的とされています。
頭金を多く出すことで借入額が減り、月々の返済や総返済額も軽減されます。また、金融機関からの信頼も高くなり、審査も有利に進む可能性があります。
ただし、頭金を多く用意しすぎると、引っ越しや緊急時の支出に備える手元資金が不足するリスクもある点に注意しましょう。
また、頭金ゼロでもローンを組めますが、その分、月々の返済額や金利負担が増える点に注意が必要です。
返済期間
返済期間とは、住宅ローンを完済するまでの期間のことを指します。一般的には15年から35年で設定されます。
返済期間を長くすると、月々の支払いは少なくて済みますが、利息が多くなるため総返済額が増える傾向があります。
逆に短くすると、月々の負担は大きくなりますが、利息が減って総返済額を抑えられるといったメリットがあります。
世帯年収600万円で借りられる住宅ローンの具体例
年収600万円の世帯が住宅ローンを組む場合、一般的な借入可能額は年収の5倍~7倍とされています。つまり、3,000万~4,200万円の範囲での借入が可能です。
以下では、年収600万円の世帯が借りられる住宅ローンの具体例をご紹介します。
借入額
- 住宅価格:3,500万円
- 頭金:10%(350万円)
- 借入額:3,150万円
金利タイプ
- 固定金利:1.2%(35年返済)
- 変動金利:0.6%(35年返済)
返済負担率
返済負担率は20%に設定
支払い額(固定金利1.2%の場合)
- 月額:約9.3万円
- 総返済額:月々9.3万円×12ヶ月×35年 = 約3,900万円
- 金利分の総支払額:約750万円
月々の支払い額(変動金利0.6%の場合)
- 約8.3万円
- 総返済額: 月々8.3万円×12ヶ月×35年 = 約3,500万円
- 金利分の総支払額:350万円
こちらが年収600万円の方が借り入れる住宅ローンの金額と、月々の返済額の例になります。
頭金350万円を用意して3,150万円を借入れた場合、固定金利1.2%だと月々の返済額は約9.3万円、変動金利0.6%の場合は約8.3万円です。
金利タイプによって月々の負担や総支払額が大きく変わるため、自分の経済状況などに合わせて返済計画を立てる必要があります。
住宅ローンの種類
住宅ローンには大きく分けて「民間融資」「公的融資」「協調融資」といった3つの種類があります。
これらの住宅ローンは、それぞれ違った借り入れの条件や金利、返済方法が異なります。以下では、各住宅ローンの特徴を詳しく解説します。
民間融資
民間融資とは、銀行や信用金庫、ネット銀行などが提供する住宅ローンを言います。一般的に住宅ローンと言えば、民間融資を指す場合がほとんどです。
民間融資のメリットは、金利の選択肢が豊富で低金利商品が多い点が挙げられます。さらに、年収や信用情報に基づき借入額が設定できるため、選択肢の幅が広がります。
ネット銀行からでも住宅ローンの審査や手続きを受けられるため、忙しくて時間が取れないという人にもピッタリです。
一方で、審査が厳しいのがネックになります。特に収入が不安定な自営業やフリーランスの人には、不利になることもあります。
公的融資
公的融資とは、政府や地方自治体が提供する住宅ローンです。民間融資とは異なる条件や利便性が特徴で、代表的な公的融資には「財形住宅 融資」や「自治体融資」があります。
財形住宅融資は、財形貯蓄を1年以上、貯蓄の残高50万円以上といった条件をクリアーすることで受けられる融資です。
もう一方の自治体融資は、都道府県や市町村の自治体が、独自に行なっている融資を言います。こちらは融資を受ける条件が自治体によって異なります。
また、中には自治体によっては自治体融資を行っていない場合もあるので、事前に確認が必要です。
協調融資
協調融資は、複数の金融機関が提携して行なう融資を言います。協調融資には主に以下のようなパターンがあります。
- 日本政策金融公庫+民間金融機関
- 商工組合中央金庫+民間金融機関
- 民間金融機関+民間金融機関
協調融資では、民間金融金庫と住宅金融支援機構が提携して融資する「フラット35」が有名です。
住宅ローンの金利タイプと特徴
住宅ローンを組む際は、金利タイプを理解して慎重に選ぶ必要があります。なぜなら、金利タイプによって、月々の返済額や総返済額が大きく差が生まれるからです。
金利タイプには主に、固定金利、変動金利があります。それぞれの特徴について、以下で詳しく解説していきます。
固定金利の特徴
固定金利は、住宅ローンの借入時に設定された金利がずっと変わりません。経済状況に左右されず、安定した返済計画が立てられるのが最大のメリットです。
固定金利には、一定期間の金利が固定されている「固定金利選択型(特約型)」と「全期間固定金利型」の2種類あります。
固定金利選択型は、2年、5年、10年など一定期間だけ金利が固定されるのが特徴。その後は変動金利に移行するか、再び固定期間を選択できます。
一方、全期間固定金利型は、借入時に設定した金利が返済終了まで変わらないローンです。代表的なものに「フラット35」があります。
固定金利は、変動金利よりも初期金利が高くなりがちですが、金利が変動しないため、一定額を安定して返済したいと考えているのであればおすすめです。
また、審査面でも変動金利の場合は店頭金利(2~3%)が用いられるのに対して、固定金利の場合は実行金利が利用されるため、返済負担率が緩和されやすいという特徴があります。
変動金利の特徴
変動金利は、経済状況に応じて金利が定期的に見直されて変動します。金利の見直しは金融機関によっても異なりますが、多くの場合は半年ごとか4月と11月の年2回行われます。
変動金利のメリットは、 初期金利が低い点です。返済額を抑えて、住宅ローンを利用したい方は、一般的に変動金利を選択するけーづが多いです。
例えば、固定金利が1.5%の場合、変動金利は0.5%~1.0%と低く設定されるのが一般的です。しかし、変動金利を利用する際は、金利が上昇すれば返済額も増える可能性があるため注意しましょう。
住宅ローンを選ぶ際に知っておきたいポイント
住宅ローンを選ぶ際には、さまざまなポイントを押さえておく必要があります。中でも金利の選択やリスク管理は、返済計画に多大な影響を与えかねません。
そこで以下では、住宅ローンを選ぶ際に知っておきたい重要なポイントについて解説します。
低金利時に住宅ローンを活用する
低金利時に住宅ローンを組むことで、総返済額を大幅に減らせるという大きなメリットがあります。
金利が低ければ、月々の返済額を抑えることができます。家計にかかる負担も減るため、余裕を持ちながら他の支出や貯蓄を考慮できるのが利点。
短期間で完済が可能なのであれば、初期金利の低い変動金利がおすすめです。
金利が低いと総返済額はどれくらい減る?
金利が低いと住宅ローンの総返済額は大幅に減ります。金利が1%変わると、30年間の返済期間では総返済額が数百万円単位で変わります。
具 体例を挙げると、3,000万円を金利1%で借り入れた場合と、金利2%で借り入れた場合では、以下のような返済額の差が生じます(返済年数=30年)。
- 金利1%:総返済額は約3,470万円
- 金利2%:総返済額は約3,990万円
金利による差額は家計に大きな影響を与えます。低金利時にローンを組むことで、将来的な負担を大幅に減らすことができるのです。
固定金利と変動金利の選び方のポイント
固定金利は、返済額が借入期間中ずっと一定で、金利変動リスクを避けられる点がメリットです。
金利上昇のリスクを取りたくない、安定した返済計画を立てたい人に向いています。ただし、初期金利は変動金利より高く設定されることが一般的です。
変動金利は、借入時の金利が低く抑えられているのが特徴。金利が低い期間中は返済額が少なくなるため、総返済額を減らせる可能性があります。
ただし、金利が上昇すると返済額が増加するリスクがある点に注意しましょう。
金利変動リスクに対応する
金利が変動するリスクに対応する方法として、次のような対策が考えられます。
固定金利を選ぶ
最も確実にリスクを避ける方法は、借入時に固定金利を選ぶことです。固定金利であれば、将来の金利上昇の心配がなく、安定した返済が可能です。
ミックス型を選ぶ
借入額の一部を固定金利、もう一部を変動金利で借りる方法です。低金利時には変動金利のメリットが得られ、高金利時には固定金利のメリットが得られます。
ただし、金利上昇のリスクを分散できる反面、固定金利と変動金利のどちらのメリットも分散す る点に注意が必要です。
繰り上げ返済を活用する
金利が低い時期に返済額を多くすることで、将来の金利上昇リスクに備えることができます。繰り上げ返済をすることで、元本が減り、結果的に金利上昇の影響を抑えられます。
金利を定期的に見直す
住宅ローンを組んだ後も、金利の見直しは定期的に行うべきです。特に、変動金利でローンを組んでいる場合は、金利の上昇に注意を払い、必要であれば借り換えや金利タイプの変更を検討すると良いでしょう。
例えば、金利が下がったタイミングや、借入時よりも低金利の商品が出た場合は、借り換えを行なう絶好のチャンスです。
低金利の期間中に借り換えを行なうことで、総返済額を減らすことができます。
家計と将来の支出を見据えた返済計画の立て方
住宅ローンは、長期間に渡って返済することを前提としています。そのため、家計に与える影響を考慮して、無理のない返済計画を立てる必要があります。
住宅ローンを安定して返済するのはもちろんのこと、生活費、教育費、老後の資金といった、将来的に必要となる支出を蔑ろにすることはできません。
以下では、それぞれの支出に対する具体的な対策や計画の立て方を解説します。
生活費を圧迫しない返済額の見極め方
家計の負担を減らすために、適切な範囲で借り入れすることが大前提です。
一般的に推奨される返済負担率は20%~25%程度が理想とされています。
例えば、年収600万円の場合、月々の返済額を10万円~12万円以内に抑えられれば、家計に負担をかけずに済むでしょう。
また、返済額を設定する際には、普段の生活で必要となる生活費(食費、光熱費、通信費など)をしっかりと把握しましょう。
生活費が月にどれだけ必要かがわかれば、無理なく返済できる額を見極めることができます。収支の正確な把握には、家計簿や家計管理アプリの活用がおすすめです。
教育費と住宅ローンを両立させる方法
子どもが複数いる場合や、私立学校、大学に進学する場合に、教育費は大きな負担となります。住宅ローンを組む前に、教育費の見積もりと貯蓄計画を立てておくことで、住宅ローンの返済と教育費を両立させやすくなります。
子どもの年齢に応じた進学プランに合わせて、学費の積立を早めに開始すると良いでしょう。学資保険や教育資金専用の積立を活用することで、安定して積立が可能です。
子どもの教育費がかさむ時期になったら、住宅ローンの繰り上げ返済を控えましょう。また、返済期間を延ばすことで、月々の返済額を減らすことができます。
老後資金と返済計画の立て方
住宅ローンの返済期間が長引くと、老後に影響を与える可能性があります。年金生活の中で、住宅ローンを支払い続けるのは家計が厳しくなるためです。
可能であれば、退職時点で住宅ローンの返済を終えておくのが理想だと言えるでしょう。ボーナス や退職金を一部利用して、繰り上げ返済を行うのもひとつの方法です。
また、住宅ローンの返済だけを行なうのではなく、並行して老後の資金も積み立てておきましょう。
返済計画を見直して家計の負担を減らす
住宅ローンを借り入れた後、返済を続けていればいいという訳ではありません。なぜなら、住宅ローンを借り入れた後に、生活や経済状況が変化する可能性があるためです。
定期的に住宅ローンの返済状況を確認して、必要に応じてローンの借り換えや金利の見直しを行いましょう。家計に余裕があり、積み立ても十分にできているのであれば、繰り上げ返済を行なうことで総返済額を減らすことも可能です。
住宅ローン返済中に備えるべきリスクと対策
住宅ローンの返済計画をしっかり立てたとしても、計画通りに進むとは限りません。返済中に予期せぬトラブルに巻き込まれたり、病気や怪我を負う可能性は十分にあります。
それらが原因で収入が減ったり、収入源を失う恐れがあるため、事前に対策を講じることが重要になります。
以下では、ローン返済中に備えるべきリスクと対策を紹介します。
団体信用生命保険(団信)の活用
民間の金融機関の住宅ローンでは、多くが団信への加入を求められる。
団体信用生命保険(団信)は、借り手が死亡もしくは高度障害となった場合に、残りのローンを保険で返済してくれる制度です。
団信に加入しておくことで、万が一の事が起きた場合でも、家族に返済の負担を残さずに済みます。
最近では、がんや三大疾病(心筋梗塞・脳卒中)に対応した特約がついたプランも増えており、病気のリスクにも対応が可能です。
なお、民間の金融機関で住宅ローンを利用する際は、団信への加入が必須となる場合が多いです。
失業や病気に備えて追加保険を選ぶ
団信は万が一の事態が起きた場合に有効です。しかし、団信だけではカバーできない病気や怪我などにかかる可能性もあります。
例えば、長期の返済期間中に仕事を失うリスクや、病気で収入が減少するリスクに備えることで、家計にかかる負担を減らせます。
一部の金融機関では、住宅ローンを組む際に「失業保険特約」を付けることができます。
これは、失業した場合に一定期間の返済額を保険でカバーしてくれる保険です。会社の倒産やリストラなど、不可抗力で職を失った場合に役立ちます。
また、病気や怪我で働けなくなった場合、ローン返済が困難になることがあります。そのような場合に備えて、「収入保障保険」「就業不能保険」「所得補償保険」に加入しておくと良いでしょう。
病気や怪我が原因で収入が減ったり収入源を失っても、生活費やローンの一部を保険で補うことができます。
繰り上げ返済で総返済額を減らす
繰り上げ返済は、借入金を前倒しで返済して元本を減らす方法です。家計に余裕があるのであれば、繰り上げ返済することで総返済額が減り、返済期間を短縮することができます。
早めに元本を減らすことで金利負担が軽減されるため、家計の負担や将来起こり得るリスクを軽減することができます。十分な貯蓄があり、家計に大きな負担をかけないのであれば、ボーナスを活用するなど繰り上げ返済を検討しましょう。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。今回は、年収600万円の世帯が住宅ローンを借入れる際のポイントについて解説しました。
住宅ローンを組む際は、無理のない返済計画を立てることがなにより重要となります。そのためには、住宅ローンで借入額を決めるポイントを把握しておきましょう。
また、返済負担率を適切に設定することもポイントです。理想は手取り収入の20~25%以内に抑えること。適切な範囲であれば、家計への過剰な負担を減らすことができます。
家計に負担をかけずに住宅ローンの返済を続けるためにも、無理のない返済計画を立ててください。