「マンション建て替えって費用を負担しないといけない?」「いつ立て替えられるのか分からない…」そんな疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
マンション建て替えは、居住者も費用の負担が必要です。
しかし、いつ建て替えられるのか、どれくらいの費用や期間がかかるのか分からないという方も多いものです。
この記事では、マンション建て替えの費用負担や時期・金額の目安など具体的に解説します。
マンションの建て替えで費用負担はある?
マンションの建て替えでは、居住者も費用を負担しなければなりません。マンションは、購入した時点でマンションの一部が自分の財産となります。
自分の財産であるマンションの維持管理の責任は居住者にあります。そのため、建て替えの費用は居住者もしなければならないのです。
「マンションの建て替えなんてそうそうないでしょ」と思われている方もいらっしゃるでしょう。
マンションは経過年数に応じて確実に老朽化していくので、一般的には10年~15年で老朽化に対して大規模な修繕が行われます。
しかし、大規模修繕だけでは対応しきれないほど老朽化した場合にマンションの建て替えが行われるのです。
マンションの法定耐用年数
マンションには寿命があり、RC造の場合の法定耐用年数は47年(自己居住用の場合は70年)と法律で定められています。
法定耐用年数は、マンションの寿命の目安になる指標ですが、耐用年数を超えたからといって住めなくなるわけではありません。
適切に維持管理されているマンションでは、法定耐用年数を超えても問題なく住めるという物件も多くあります。
反対に、管理ができていないマンションは耐用年数前でも劣化が進み、日常生活に支障が出てしまう場合もあるのです。
老朽化が進んだマンションは、居住者が生活しにくいという問題だけではありません。
壁 の剥落や倒壊などが発生すれば、居住者だけなく近隣住民にも命の危険性もあります。

築古のマンションが増えてきている
特に現在のマンションは築年数が古いものが多くなっています。
国土交通省によると、平成30年末時点でのマンションストックは約654万戸あり、そのうち築40年を超えたマンションは約81万戸という結果も出ています1。
今はまだ大丈夫でも、いつかは建て直しが行われることを意識しておく必要があるでしょう。
マンションの建て替えで修繕積立金は使えない
マンションを所有しているうえで毎月支払っているのは、家賃や住宅ローンだけではありません。
マンションの管理費や修繕積立金も毎月支払っているものです。
「修繕積立金があるのだから手出しは必要ないのでは?」と思われるかもしれませんが、修繕積立金は原則として建て替えには利用できません。
そもそも修繕積立金とは、大規模修繕や地震や水害などの天災のための修繕に使われる費用です。
国土交通省では、マンションの管理の参考とすべきガイドラインとして「標準管理規約」を定めています。
この標準管理規約では、修繕積立金での建て替えを原則として認めていません。
そして、ほとんどのマンションはこの標準管理規約を元に、それぞれのマンションの管理規約を定めています。
そのため、修繕積立金を建て替えに利用できないのです。
ただし、建て替えのための事前調査では利用できるので、その分の負担は少なくなるでしょう。
費用負担がないケース
建て替えするからと言って必ずしも費用の負担が必要なわけではありません。
建て替え後に部屋を売却して費用を補填できるといった場合は、費用負担無しで実施可能です。
マンションの容積率が大きく、建て替えで元の戸数よりも部屋数を増やせる場合、その部屋を売却することで費用を賄えるケースでは、費用負担がない場合があります。
ただし、この場合は新しく部屋を作れるだけの余裕がマンション自体にあることや、売却の見込みがある人気エリアなど立地の良さが必要です。
オーベルグランディオ萩中の事例
元々の368戸を建て替え後に534戸まで増やし、増設した部屋を販売することで建て替え費用を賄いました。
建て替え前48㎡→建て替え後44㎡の家に住むことで費用負担がゼロになったケースです。
費用負担があるケース
上記とは反対に、部屋を使いして売却する見込みがないマンションの場合は、費用の負担が発生する可能性があります。
一般的には、ほとんどのマンションがこのケースに該当し、費用の負担が生じます。
マンションの建て替えで必要な費用の目安
マンションの建て替えが必要となる場合、気になるのは費用がどれくらい掛かるのかです。
ここでは、マンション建て替えの費用について見ていきましょう。
1戸あたり1,000万円程度が相場
マンションの資産価値や戸数・建て替え条件にもよりますが、一般的な建て替え費用の目安は1,000万円と言われています。
ただし、これは建て替えだけに掛かる費用です。
マンションの建て替えとなると、建て替え費用以外にも仮住まいのための家賃や、建て替え時と完成時の最低2回の引っ越し費用なども掛かります。
立て替えに関するすべての費用をカバーするとなると、1,400万円程かかるでしょう。
マンションの建て替えでは、かなりのまとまった資金が必要となることを考慮したうえでマンションを購入する必要があるのです。
建て替え時に住 宅ローンを利用することも可能
高額な建て替え費用をすべて自己資産で賄えないという場合も多いものです。
その場合、建て替え費用に住宅ローンを利用することもできます。
ただし、元のマンションで住宅ローンを組んでおり、完済していない場合は審査に通ることが難しい可能性があります。
また、高齢者などが10年や20年と住宅ローンを組んだ場合、完済時の年齢が高くなるため、審査に通ることが難しいでしょう。
住宅ローンを利用できず、費用の捻出が難しい場合は、国や自治体で支援助成制度を利用することが可能です。
金融機関や自治体などに相談しながら、費用について検討しましょう。

建て替え前に売却を検討するのも一つの方法
建て替えの費用の準備が難しい、建て替えしたくないという場合は、建て替え前にマンションを売却するのも一つの方法です。
建て替えを検討するマンションは、それだけ老朽化が進んでいるということでもあります。
仮に建て替えがなかったとしても、その先老朽化で生活に支障が出てくる可能性もあるでしょう。
築年数が古いマンションに住んでいる場合、建て替えが検討される前に売却することをおすすめします。
マンション建て替えでお金が必要になる時期はいつ?
高額になる建て替え費用は、急に準備することは難しいものです。
建て替え費用がいつまでに必要なのかを理解して、計画的に準備する必要があります。
ここでは、建て替えの流れ踏まえて建て替え費用が必要なタイミングについて紹介します。
マンション建て替えの流れ
マンションの建て替えは大まかには次のような流れで進んでいきます。
- 管理組合で建て替えを検討
- 建て替え決議
- 建物の詳細設計
- 事業計画の確定
- 解体~工事着工
- 引き渡し
- 清算
管理組合で建て替え を検討
まず、建て替えが必要かを管理組合で検討します。
建て替えの理由が老朽化である場合、この段階でマンションの状態を専門家なども交えて調査・検討していきます。
この検討で、建て替えか建て替えを先延ばしにして大規模修繕で対応するなどが決められていくのです。
建て替え決議
管理組合で建て替えを決定した場合でも、管理組合だけの一存で建て替えられるわけではありません。
建て替えを決定するためには次の条件が必要です。
- 居住者である区分所有者の5分の4以上の参加した会議で協議する
- 協議の結果、5分の4以上の賛成を得ている
この条件をクリアした場合に、建て替えが決定されます。
建て替えが決定したら、建て替え組合などが設置され、権利変換の手続きや計画の推進を担います。
なお、1981年5月以前に建築確認を受けた「旧耐震基準」のマンションなど、周囲への危険性がある場合は賛成数が4分の3以上でも実行できるように区分所有法の改正が閣議決定されました(2025年3月)。
耐震基準に適合しないなどの耐震性の不足や、外壁がはがれ落ちるなどの周囲への危険性がある場合は、「4分の3の賛成」に緩和されます。
建物の詳細設計
建て替えが決定したのち、施行会社による詳細な設計へと移ります。
外装デザインや間取りなど、管理組合だけでなく居住者との面談を踏まえ意見を集めながら詳細な設計を立てていきます。
「今の間取りのままで」「エレベーターが欲しい」などの要望がある場合は、この段階で具体的に伝えておくとよいでしょう。
事業計画の確定
具体的な建物の詳細設計ができた場合でも、すぐに建て替えがスタートするわけではありません。
事業計画を再度、協議にかけ区分所有者の5分の4以上の同意を得たうえで、事業計画が確定となるのです。
解体~工事着工
事業計画が決定したら、実際に解体・工事へと移ります。
建て替え前には、区分所有権などの所有者の権利も古いマンションから建て替え後のマンションへ移すための手続きも行われるものです。
また、居住者は仮住まいに先に転居し、その後工事に着手します。
あらかじめ、着工時期などが説明されるので、スムーズに転居できるように準備しましょう。
マンションの規模にもよりますが、解体から完成まで9か月から1年半ほど掛かるのが一般的です。
引き渡し
マンションの建て替えが終わったら、いよいよ引き渡しです。
新しいマンションに入居すると、管理組合や規約も新しく組成されて新しい管理体制のもとマンション生活がスタートします。
清算
建て替えたマンションの登記や負担金の採 算を建て替えの組合が行ったのち、組合は解散します。
解体から竣工までは1年半ほどですが、実際に入居者の意見を取りまとめて立ち退きを決定し清算までとなると、5年や10年掛かる場合もあります。
マンション建て替え費用を支払うタイミング
マンションの建て替え費用を支払うのは、引き渡し前になります。
通常の売買同様、決済と同時に引き渡しとなるので、それまでに資金の用意や住宅ローンの契約などを契約的に進めておく必要があるのです。
引越し費用や仮住まい費用を支払うタイミング
建て替えでは、建て替え期間中の引っ越し費用や仮住まいの家賃なども発生します。
それぞれの費用については、依頼先の引っ越し業者や仮住まい住居の規定に沿って支払いましょう。
ただし、もし住宅ローンが残っているなら、その期間は住宅ローンと仮住まいの家賃の支払いが必要なので注意が必要です。
マンション建て替えが決まったらどうする?
マンションの建て替えが決まった場合の選択肢は次の2つです。
- 賛同して建て替え費用を支払う
- 立ち退く
賛同して建て替え費用を支払う
マンションの建て替えに賛同できるのであれば、費用を支払い再入居します。
建て替え協議の際に反対した場合でも、建て替え決定後は賛同に変わり再入居することは可能です。
その場合は、建て替え決議後2か月以内に賛同する旨を回答する必要があります。
マンションに思い入れがある、立地がよいなどの理由で退去したくない場合は再入居を選ぶとよ いでしょう。
また、建て替え後にはマンションの資産価値が上がる可能性もあるので考慮する必要があります。
立ち退くという選択もある
建て替えが決まったからと言って、必ずしも費用を負担して再入居する必要はありません。
建て替えの費用は1,000万円以上と高額になる場合があり、それだけの支払いが難しいという場合もあるでしょう。
その場合は、再入居せずに立ち退くという選択肢もあります。
建て替え決議の際に反対し、その後も意見を変えずに退去する場合は、区分所有権と敷地利用権を時価で建て替え組合に売り渡す必要があるのです。
その場合、通常の売却よりも低い価格での売却になる可能性が高いので注意しましょう。
早い段階で売却を検討してみよう
建て替えが計画されてしまってからでは、売却しようにも買い手がなかなか見つからないということもあります。
建て替えが検討されるような築古マンションでは、早い段階から売却を検討して動き出すとよいでしょう。
まとめ
マンション建て替えの流れや費用・支払うタイミングなどについてお伝えしました。
マンション建て替えは1,000万円以上の費用の負担が必要になり、負担が大きいものです。
マンションを購入する際には、建て替えの可能性を検討して購入を判断する必要があるでしょう。
また、所有するマンションの建て替えが決まってしまったら、早い段階で売却するというのも一つの手です。
建て替えにかかる費用や期間を理解し、最適な選択ができるように慎重に検討してきましょう。