古い家だからそのままでは売却が難しいのではと考え、解体やリフォームを検討する方もいるでしょう。
しかし、解体やリフォームには費用がかかり、売却しても損をしてしまう恐れがあります。
実は、古い家でもそのまま売却することが可能です。ただし、そのまま売却する際には、デメリットや注意点も理解しておく必要があります。
この記事では、古い家を解体・リフォームせずに売るメリット・デメリットや、売却時の注意点を分かりやすく解説します。
古い家の売却方法
古い家の売却方法には以下の4つがあります。
- 古い家を解体して土地として売りに出す
- 古い家をリフォームして売りに出す
- 古い家をそのままにして売りに出す
- 不動産会社に買い取ってもらう
それぞれ見ていきましょう。
古い家を解体して土地として売りに出す
更地であれば買主は購入後に自由に活用できるため、建物の取り壊し費用や手間を気にせず計画を進められます。
特に、中古住宅の再利用よりも新築を希望する層にとっては、更地のほうが条件に合いやすく、幅広い買主にアプローチできます。
また、古い建物が残っていると耐震性や雨漏りなどの劣化リスクを懸念して購入を避ける人も多いため、それらの不安を解消できるのも更地化のメリットです。立地がよければスムーズな売却も期待できるでしょう。
ただし、解体には費用がかかり、一度解体すると戻すこともできないため、不動産会社のアドバイスをもらってから決めることをおすすめします。
▼関連記事:古家付きの土地は更地にして売る方が得?解体のメリット・デメリットを解説します
古い家をリフォームして売りに出す
リフォームを実施して、家の状態を改善して売り出す方法もあります。
状態がよくなり物件の魅力がでれば高値での売却も期待できるでしょう。
買主も購入後にリフォームの必要がなく、修繕費を抑えて購入できるという魅力があります。
しかし、リフォームすることで逆に売却にマイナスとなるケースもあるので、こちらも不動 産会社に相談したうえで実施を検討するとよいでしょう。
古い家をそのままにして売りに出す
古い家だからといって、そのままでは売れないわけではありません。
小まめに管理していた、過去にリフォームしているなどで、築年数が経過していても十分建物として活用できるなら、そのままでも売却できる可能性があるでしょう。
また、歴史的価値のある家や趣のある古い家なら、古民家としての需要も期待できます。
不動産会社に買い取ってもらう
不動産の売却方法には、仲介と買取の2種類があります。
主な売却方法は、不動産会社が間に入る仲介です。
一方、不動産会社を買主として直接売却する方法が買取になります。
仲介では広告などで買主を探す必要があるため、古い家は避けられやすく売却が難しいケースがあります。
しかし、買取なら広告などで買主を探す必要はなく、不動産会社と条件がまとまれば売却できるので短期間での売却が可能です。
また、買取は解体やリフォームが不要なのでコストを抑えて売却できる点も魅力といえます。
ただし、買取は仲介よりも売却額が下がる点がデメリットです。
不動産会社が買取して再販売する際のコストや利益を差し引いた金額で取引されるため、仲介よりも金額が安くなる。
安くなってでもすぐに手放したい、解体などの手間をかけたくないというケースで検討するとよいでしょう。
売却に時間をかけられたり、少しでも高く売りたい場合は、まずは仲介での売却にチャレンジすることになります。
仲介で売却する場合は、前述のとおり「解体する」「リフォームする」「そのまま」のいずれかを選択することになりますが、そのままでの売却がおすすめです。
以下では、そのままの売却をおすすめする理由として、解体・リフォームしないで売却するメリット・デメリットを解説します。
古い家を解体せずに売却するメリット・デメリット
古い家を解体せずに売却する方法として、「古家付き土地」と「中古住宅」の2種類の方法があります。
古家付き土地とは、古い家が建っている土地として売却する方法です。
この場合、建物としての価値はほぼゼロとして土地を売却する形になります。
一方、中古住宅として売却する場合は、建物としての価値も含めた売却になります。
古い家が付いた家をどのように売るかは売主の自由ですが、売却方法によって戦略が変わるため、不動産会社に相談しながら決めるとよいでしょう。
築何年までの家が建物部分に価値が付く中古住宅と見るかは、管理状態や施工メーカーなどの要素も関係します。そのため、一概に築年数だけで判断するのは難 しいです。
一般的には「築20年を超えた木造住宅は、建物部分に価値は付かない」と言われることもありますが、最近は住宅ローン控除が適用できる基準の変更などにより、20年を超えた戸建て住宅でも建物部分が評価されるケースもあります。
以下では、解体しないメリット・デメリットを、解体して更地で売却する方法と比べてみていきます。
メリット
解体しないで売却するメリットは以下です。
- 解体費が不要になる
- 固定資産税のアップを防げる
- 古家付き土地なら土地としての需要も見込める
それぞれ見ていきましょう。
解体費が不要になる
解体しない大きな魅力は、解体費をかけないで売却できる点でしょう。
物件や周辺環境にもよりますが、解体費は木造で1坪当たり4~5万円ほどかかります。
たとえば、30坪の家なら120~150万円ほどになり、地中埋設物があったり倒壊リスクが高いなどの状況によってはより高額になりがちです。
解体せずに売れれば売却コストを抑えられるため、手元に残るお金も多くなるでしょう。
固定資産税のアップを防げる
建物の建っている土地は固定資産税が軽減されるのに対し、建物を解体すると軽減が受けられません。
軽減が外されると固定資産税が最大6倍に跳ね上がる恐れがあり、売却できずに固定資産税が高い期間が長期化すると負担も大きくなります。
古家付き土地なら土地としての需要も見込める
建物が付いた状態であっても、古家付き土地として売却することで、土地を探している買主への訴求が可能です。
建物での売却が難しくても土地としてなら売却できる可能性があり、さらに解体費用をかける必要がないのもメリットとなるでしょう。
デメリット
デメリットとしては、土地を探している人への訴求が弱くなる、家の管理が必要という点が挙げられます。
古家付き土地は土地を探している人へアプローチできますが、更地よりは需要が下がりがちです。
古い建物があることで土地の状態が確認しにくく、新築後のイメージがつけにくい点も買い手から避けられやすくなる要因と言えるでしょう。
さらに、買主は購入後に解体費用を負担する必要がある点も、敬遠される要因につながります。
古家付き土地として売却する場合、相場より価格を下げる必要があるだけでなく、買主から解体費用分の値下げ交渉を受けやすい点にも注意しましょう。
また、建物がある以上、売れるまで建物の管理が必要です。
空き家を放置していると劣化が進みやすくなり売却にマイナスになるだけでなく、周辺環境に悪影響が出て近隣からクレームが入る恐れもあります。
定期的に建物を訪れ、換気や掃除 などの管理を行う手間と時間がかかる点も覚えておきましょう。
▼関連記事:土地の解体更地渡しは売主のデメリットが多い?
古い家をリフォームせずに売却するメリット・デメリット
次に、古い家をリフォームせずに売却するメリット・デメリットをみていきましょう。
メリット
リフォームせずに売却するメリットは以下です。
- リフォーム費用が不要になる
- リフォームしたい買主の需要にマッチできる
それぞれ見ていきましょう。
リフォーム費用が不要になる
リフォーム箇所や規模によっても異なりますが、大掛かりなリフォームが必要なら100万円以上、フルリフォームなら1,000万円以上かかります。
また、リフォーム費用を売却価格に全額上乗せするのは難しい点にも注意が必要です。
相場よりも高値の物件は基本的に買主から避けられるため、上乗せできても相場の範囲内の一部にとどまります。
リフォームすることで「売れやすくなる」効果が生まれる可能性はありますが、かけた費用を売却額に上乗せするのは難しいでしょう。
売却額によっては、かけたリフォーム費用分が損失になる恐れもあるので注意しましょう。
▼関連記事:売りやすくするためのおすすめリフォーム事例
リフォームしたい買主の需要にマッチできる
近年、古い家を安く購入し、自分の好きなようにリフォームしたいという買主が増えています。
売主がリフォームしてしまうと、その需要から外れてしまい、買い手の幅が狭まってしまうのです。
リフォームはデザインや設備など選択肢の幅が広く、買い手の好みと一致しなければなかなか売れません。
買い手としても、好みでないリフォームをされた家を高く買って再度リフォームするよりも、リフォーム前の家を安く買って自分好みにリフォームするほうがよいでしょう。
リフォームしないことでリフォーム費用を抑えられるだけでなく、リフォームしたいニーズにマッチし、売却できる可能性があります。
デメリット
デメリットとしては、古い設備のままでは売りにくかったり、売却価格が安くなるなどの点が挙げられます。
買主がリフォームを前提としている場合でも、設備が古いままでは印象が悪くなります。
とくに水回り設備は買主にとっても重要なポイントなので、状態が悪いとマイナス要因となりがちです。
また、買主は購入後にリフォームが必要なことを考慮して、価格を下げる のが一般的です。
リフォームを理由に値下げ交渉を受けやすいため、売却価格が下がりやすい点には注意しましょう。
リフォームしない場合でも、設備の交換や配管など、目に見えない部分の修繕を行うことで、売却にプラスになる可能性があります。
建物の状況次第でもあるので、一度不動産会社に状況をチェックしてもらってから判断するとよいでしょう。
古い家を解体・リフォームせずに売却する際の注意点
古い家を解体・リフォームせずに売却するときには、いくつか気を付けなければならない点があります。
以下の注意点を押さえて売却を進めるようにしましょう。
- 契約不適合責任に注意しよう
- 家財は事前に撤去しておくのがおすすめ
- リフォームはせずとも清掃はしっかり行う
それぞれ解説します。
契約不適合責任に注意しよう
契約不適合責任とは、契約とは異なる品を引き渡した際に売主が問われる責任です。
不動産では、契約書に記載していない瑕疵(不具合)が見つかったときに問われ、補修費や代金減額請求・契約解除・損害賠償請求を受けるリスクがあります。
契約不適合責任を避けるためには、不動産の状態を正確に把握し買主に告知しなければなりません。
しかし、古い家は売主も把握できていない不具合が多く、契約不適合責任のリスクが高くなります。
売却前にインスペクション(中古住宅状況調査)を受けて正確な状態を把握しておくと、契約不適合責任のリスク軽減が可能です。
家の状態が正確に把握できれば、買主としても安心して購入しやすくなるのもメリットと言えます。
また、古い家は不具合が多いことから「建物部分の契約不適合責任を免責として、古家付きの土地として取引する」ケースが多いため、不動産会社に売り出し方法や契約内容を相談するとよいでしょう。
家財は事前に撤去しておくのがおすすめ
家具家電があると、内覧時に生活感が出て印象が悪くなりがちです。
売却後に撤去しよう考えていると、量が多くて時間がかかり引き渡しまでに間に合わない恐れもあるでしょう。
売却活動をスタートする前から家財を整理しておくと、いざというときに慌てずに対応しやすくなります。
リフォームはせずとも清掃はしっかり行う
リフォームはおすすめしませんが、清掃・整理整頓は徹底的に行うことが重要です。
古い家でさらに汚れが目立つとなれば、内覧時に印象が悪くなります。
リフォーム前提であっても、状態が悪いと感じるとリフォーム費用が高額になることが予測でき、避けられる恐れがあります。
内覧時の印象を良くするには、しっかりと掃除して家中ピカピカにしていくことが大切です。
掃除が行き 届いていると築年数よりもきれいに見えやすく、売却につながる可能性があります。
自分での掃除が難しいならハウスクリーニングを検討するのもよいでしょう。
古い家の売却に関するよくある質問
最後に、古い家の売却に関するよくある質問をみていきましょう。
古い家を売却したら税金はかかる?
古い家に関わらず家を売却したら、印紙税・登録免許税・譲渡取得税が発生します。
なお、印紙税は売買契約書にかかるので基本的には必ず発生する税金です。
一方、登録免許税は抵当権抹消登記が必要なケース、譲渡所得税は売却で利益が出たケースでのみ発生する税金となります。
あらかじめどの税金がいくらかかるかはシミュレーションしておくとよいでしょう。
売却時の諸費用を差し引いた手取り額の算出や、利益が出た場合の手取り額は「不動産売却シミュレーター」でおおまかに計算できます。
古い家が売れないときはどうすればいい?
中古住宅・古家付き土地のいずれでも仲介での売却が難しいなら、買取を視野に入れることをおすすめします。
売却額は下がりますが、仲介手数料・解体費・リフォーム費をかけずに売却できるので、トータルではそれほど下がらない可能性もあります。
古い家をずっと所有して固定資産税や管理費などの負担がかかるなら、買取で少しでも早く手放すことを検討するとよいでしょう。
▼関連記事:築年数の古い家の売却・買取は可能?不動産の活用方法を解説
古い家を処分する方法はある?
所有する古い家の処分方法としては、売却がもっともシンプルです。
通常の方法では売却できないなら、自治体が運営する空き家のマッチング「空き家バンク」の利用や、自治体への寄付なども検討するとよいでしょう。
また、相続した家であれば更地にして「相続土地国庫帰属制度」で国に返還する方法もあります。
しかし、必ずしも国に返還できるわけではないので、相続前に相続放棄も検討しておくとよいでしょう。
▼関連記事:相続土地国庫帰属制度を利用するための条件を解説します
まとめ
古い家の売却方法として、「そのまま売る」「解体する」「リフォームする」「買取」が挙げられます。
解体やリフォームをしても必ず売れるとは限らず、費用がかかるため、基本的にはそのままで売るか、不動産会社のアドバイスをもらってから判断することをおすすめします。
また、古い家を売却する際には、契約不適合責任など注意しなければならない点もあります。
売却方法の選択などはノウハウが必要になってくるので、古い家の取り扱いに長けた信頼できる不動産会社を選ぶようにしましょう。