戸建てを所有すると初期費用だけでなく毎年税金や修繕費といった維持費がかかります。
戸建ての維持費はトータルで数百万以上になってくるため、購入時には長期的なランニングコストも把握して計画を立てることが重要です。
この記事では、戸建て住宅の維持費の内訳や節約ポイントなどを分かりやすく解説します。
戸建て住宅の維持費にはどのくらいかかる?
一般的な木造戸建て住宅の維持費は、年間で20~50万円が目安です。
単純計算で月額2~4万円かかることになります。
ただ、戸建では毎月定額で維持費を支出するわけではなく、まとまった費用で支出するケースが多いので、どのような費用が必要かを理解しておくことが大切です。
戸建て住宅の維持費は、大きく「修繕費」「税金」「保険」「その他」の4つに分類されます。
以下では、年間コストの内訳を詳しくみていきましょう。
年間コストの内訳1:修繕費
戸建てのコストの中でも高額になるのが、修繕やメンテナンスのための修繕費です。
戸建ては築年数が経過するごとに劣化も進むため定期的なメンテナンスが欠かせません。
外壁や屋根の塗り替え・設備の交換などさまざまな箇所で修繕が必要となり、築10年を超える頃には大掛かりな修繕も視野に入れる必要もあるでしょう。
戸建ての修繕費は、新築から30年間で600~800万円かかると言われています。
修繕費は毎月支出が必要なわけではありませんが、修繕が発生するとまとまった額の支出が必要です。
たとえば、屋根・外壁の塗り替えであれば1回で100万円以上かかるケースも珍しくなく、それを10~15年毎に行うことになります。
キッチンやバス・トイレ・フローリングといった設備・内装も、築年数が経過すれば交換が必要になってくるでしょう。
定期的なメンテナンス以外でも、台風で被害を受けたなど突発的な修繕が必要になるケースもあります。
戸建ての場合、これらの修繕費の支出に備えて計画的に蓄えなければなりません。
30年間で600万円なら毎月1.6万円ずつ積み立てる必要がある点は覚えておきましょう。
年間コストの内訳2:税金
戸建てを所有すると毎年固定資産税と地域によっては都市計画税も課税され、一般的な戸建てでは年間で10~30万円程かかります。
固定資産税とは、家や土地などの不動産の所有者に毎年課せられる地方税です。
固定資産税は、毎年1月1日時点の所有者に請求される。なお、一般的に「固定資産税」と呼ばれるのは、固定資産税と都市計画税を合算したものであるケースが多い。
1月1日時点の所有者が納税義務を負うので、家を所有した翌年から所有し続ける限り課税されます。また、家が市街化区域にある場合は都市計画税も一緒に徴収されます。
それぞれの税額の計算方法は、以下のとおりです。
- 固定資産税=固定資産税評価額×1.4%(標準税率)
- 都市計画税=固定資産税評価額×0.3%(税率上限)
固定資産税・都市計画税ともに自治体によっては上記とは異なる税率の場合があるので、所在地を管轄する自治体のホームページで確認するようにしましょう。
固定資産税評価額は、土地が時価の60~70%、建物で建築費の50~70%が目安です。
また、土地の評価額は軽減措置により最大6分の1に軽減されます。
例えば、建物の評価額1,500万円、土地1,200万円のときの固定資産税は以下のとおりです。
- 土地の固定資産税:1,200万円×1/6×1.4%=2.8万円
- 建物の固定資産税:1,500万円×1.4%=21万円
- 固定資産税合計:2.8万円+21万円=23.8万円
上記の場合、年間約24万円の固定資産税がかかってくるのです。
なお、新築の建物は課税初年度から3年間は評価額が2分の1になる軽減措置が適用されます。
年間コストの内訳3:保険
戸建てにかかる保険料は、火災保険・地震保険で年間3~5万円が目安です。
家を所有する際には、火災保険に加入するのが一般的です。
火災保険
火災保険は任意ではありますが、加入していないと火災や自然災害などで建物や家財に被害が出た際に保障を受けられません。
住宅ローンを組む場合、金融機関が火災保険への加入を必須としているケースも少なくないでしょう。
また、火災保険では地震・噴火・津波による被害やそれらを原因とする火災の被害は補償されないため、別途地震保険の付帯も検討する必要があります。
火災保険料は加入する保険会社やプランによって費用は異なりますが、目安は年間1~2万円ほどです。
地震保険
地震保険料の目安額は年間2~3万円ほどとなります。
地震保険は地域や家の構造ごとに定められており保険会社による違いありません。
しかし、地震保険は単体での加入ができず、火災保険とセットで加入する点には注意しましょう。
火災保険・地震保険は任意加入ですが、万が一に備えて安心して生活するためには欠かせません。
コストを考慮しつつ適切な保険に加入するようにしましょう。
年間コストの内訳4:その他
その他の費用としては、以下のようなものが挙げられます。
- 水道光熱費
- 自治会費
総務省の家計調査1によると2人以上世帯の水道光熱費の平均月額は22,273円です。
ただし、世帯の人数や家の性能・設備などによって大きく異なるので注意しましょう。
また、家のあるエリアによっては町内会に加入が必要となり自治会費を負担するケースがあります。
自治会費の目安は年間で3,000~5000円程ですが、自治会の有無や額はエリアによって異なります。
自治会への加入は必須ではないものの町内を過ごしやすくするために必要な費用でもあるため、前向きに検討するとよいでしょう。
戸建て住宅の維持費を節約するポイント
戸建て住宅の維持費を節約する ポイントとしては、以下の3つが挙げられます。
- 屋根と外壁のメンテナンスを同じタイミングで行う
- メンテナンスフリーの素材を選ぶ
- 火災保険料は長期一括にすると保険料を安くしやすい
屋根と外壁のメンテナンスを同じタイミングで行う
家の修繕費用の中でも高額になりやすいのが、屋根と外壁の塗り替え・張り替え費用です。
屋根と外壁のメンテナンスは施工箇所が広範囲になるうえ、足場の設置も必要になることから費用が高くなる傾向にあります。
屋根と外壁のメンテナンスは別々のタイミングで依頼することもできますが、トータルの費用を抑えたいなら同じタイミングでの依頼がおすすめです。
屋根と外壁のメンテナンスは両方とも足場の設置が必要となり、別々で依頼するとそれぞれで足場の設置費用が加算されます。
足場の設置費用は20~30万円ほどかかってくるため、両方をまとめて行うことでトータルの費用を抑えやすくなるのです。
ただし、施工業者によっても費用は大きく異なるので、複数の業者で見積もりを取って比較するようにしましょう。
メンテナンスフリーの素材を選ぶ
屋根や外壁、内装などは素材によってもメンテナンス時期が異なってきます。
耐久性が高いなどメンテンナンスを軽減できる素材を選ぶことで、トータルのメンテナンス費用を抑えることにつながるでしょう。
たとえば、屋根の塗装であれば一般的なウレタン素材で耐久年数が6~10年であるのに対し、無機素材なら15~25年と異なるため、メンテナンスの回数が大きく変わってきます。
屋根の塗り替えは1回で40~80万円ほどになってくるので、30年間で2回するのと3回するのではトータルの費用も大きく変わってくるでしょう。
ただし、メンテンナンス性の高い素材は初期費用が高くなりがちです。
そのため、初期費用+メンテナンス費用で長期的に試算したうえで、検討するようにしましょう。
また、素材だけでなく自分でこまめにメンテナンスしておくことで劣化を遅らせることもできます。
日常的な手入れや必要な時期のメンテナンスをしっかり行っておくと、修繕費を抑えることにつながってくるでしょう。
火災保険は長期一括にすると保険料を安くしやすい
火災保険・地震保険の保険料の支払い方には、主に「月払い」「年払い」「一括払い」の3種類があります。
3年や5年の長期契約にして、月払い・年払い・一括払いを選択することも可能です。
月払いは1回の額は大きくありませんが、割引が適用されないことが多く、トータルの保険料は高くなりやすいです。
一方、例えば「5年払い」であれば、1回あたりの保険料を安く抑えることができ、5年間は火災保険の保険料率が上がったとしても契約時の保険料で済ませることができるというメリットがあります。
近年では火災保険が右肩上がりに上昇しているため、できるだけ長期間で契約したほうがお得でしょう。
ただし、長期間で契約するとプランの変更や他の保険会社に変えるといったことがやりづらくなる点には注意が必要です。
もっとも割引がきくのが長期一括払いです。
1回で支払う額は大き くなってしまいますが、トータルの保険料を抑えられるので検討するとよいでしょう。
戸建て住宅の維持費のシミュレーション
ここでは、戸建住宅の維持費を具体的にシミュレーションしていきましょう。
なお、ここでは税金・修繕費・保険料のみで計算し、修繕費は年間18万円・保険料は火災保険・地震保険の5年長期一括払いで年間10万円として計算します。
地方の築10年の戸建て住宅
以下の条件でシミュレーションしていきます。
- 土地の評価額:1,000万円
- 建物の評価額:2,000万円
- 火災保険・地震保険加入
固定資産税は、以下のとおりです。
- 建物:2,000万円×1.4%=28万円
- 土地:1,000万円×1/6×1.4%=2.3万円
- 固定資産税合計:28万円+2.3万円=30.3万円
また、都市計画税は以下のようになります。
- 建物:2,000万円×0.3%=6万円
- 土地:1,000万円×1/3×0.3%=1万円
- 都市計画税合計:6万円+1万円=7万円
よって、年間の維持費は以下のとおりです。
- 固定資産税:30.3万円
- 都市計画税:7万円
- 保険料:10万円
- 修繕費:18万円
- 維持費合計:65.3万円
都心の新築戸建て住宅
条件は以下のとおりです。
- 土地の評価額:3,000万円
- 建物の評価額:1,500万円
- 火災保険・地震保険加入
固定資産税・都市計画税は以下のようになります。
- 固定資産税:3,000万円×1/6×1.4%+1,500万円×1/2×1.4%=17.5万円
- 都市計画税:3,000万円×1/3×0.3%+1,500万円×0.3%=7.5万円
固定資産税は新築から3年間は建物の評価額が2分の1になる軽減措置が適用できます。
ただし、期間終了後は税額が上昇してしまう点には注意しましょう。
トータルの維持費は以下のとおりです。
- 固定資産税:17.5万円
- 都市計画税:7.5万円
- 保険料:10万円
- 修繕費:18万円
- 維持費合計:53万円
都心は地方に比べて地価が高くなりやすいため、面積が小さくても固定資産税・都市計画税が高くなる恐れがある点には注意が必要です。
また、都心でよくある狭小住宅・密集住宅地は足場の設置が難しいため、外壁・屋根のメンテナンスコストが大幅にアップすることがある点にも気を付けなければなりません。
地方の築30年の戸建て住宅
条件は以下のとおりです。
- 土地の評価額:1,000万円
- 建物の評価額:500万円
- 火災保険・地震保険加入
固定資産税・都市計画税は以下のようになります。
- 固定資産税:1,000万円×1/6×1.4%+500万円×1.4%=9.3万円
- 都市計画税:1,000万円×1/3×0.3%+500万円×0.3%=2.5万円
地方は地価が安くなるため土地が広くても土地の固定資産税を抑えやすくなります。
また、築古の住宅は建物の評価額もほとんど付かなくなるため、トータルの税額が小さくなります。
地方の場合、エリアによっては都市計画税も課税されないケースも少なくありません。
上記の場合の維持費の合計は以下のとおりです。
- 固定資産税:9.3万円
- 都市計画税:2.5万円
- 保険料:10万円
- 修繕費:18万円
- 維持費合計:39.8万円
ただし、築古の住宅は修繕費用が高額になるケースも少なくありません。
購入時の段階で大規模なリフォームが必要なケースもあるので、初期費用+ランニングコストはしっかり試算しておくようにしましょう。
戸建て住宅とマンションはどちらが維持費が高い?
一般的には、戸建よりもマンションの方が維持費用は高い傾向にあります。
マンションでは毎月、修繕積立金・管理費の負担が必要です。
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査結果」によると、管理費の平均は月額17,103円、修繕積立金が平均月額13,378円の合計約3万円という結果があります。
つまり、年間36万円の支払いが発生します。
これらの費用は、専有部分ではなく共有部分の費用となり、専有部分の修繕費などは別途必要になるため戸建てに比べトータルの支出が増えやすくなるのです。
しかし、マンションは修繕積立金・管理費を毎月支払っているため、突発的に高額な支出が発生しにくいというメリットがあります。
一方、戸建は毎月の修繕費の支出がない分、自分で計画的に蓄えなければ、いざというときに対応できない恐れがあるものです。
いずれにしても、維持費は必ずかかってきます。
購入の段階から長期的な維持費まで含めて資金計画を立てておくようにしましょう。
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戸建て住宅の維持費に関するよくある質問
最後に、戸建住宅の維持費に関するよくある質問をみていきましょう。
マイホームの維持費で後悔しやすいこととは?
戸建は毎月修繕費を出費する必要がない反面、高額な支出が発生するタイミングが必ずありその時に後悔しやすい点に注意が必要です。
とくに、外壁・屋根の塗装のタイミングは100万円以上かかるケースも多いので、計画的に蓄えておくようにしましょう。
戸建てのメンテナンス費用として毎月いくら積立するべき?
毎月2~3万円ずつ積み立てておくと安心です。
ただし、戸建ての築年数・設備・劣化状況などによっても異なるため、事前に必要な修繕費用をシミュレーションし逆算して計画を立てるようにしましょう。
修繕費用について不安がある場合は、不動産会社からアドバイスをもらうのもおすすめです。
まとめ
戸建て住宅を所有すると、毎年税金や修繕費・保険料などの維持費用が必要です。
固定資産税・都市計画税・保険料は、決まったタイミングで決まった額の支払いとなるので、計画しやすいでしょう。
しかし、修繕費は毎月決まった額の支出があるわけではなく、必要なタイミングで高額な支払いとなるケースがほとんどです。
そのため、修繕費用をあらかじめシミュレーションして逆算して計画的に積み立ておく必要があります。
安心して住み続けるためにも、購入人は初期費用だけでなく長期的な維持費まで考慮し、資金計画を立てるようにしましょう。