「どんな物件でも買取します!という不動産会社に買取を依頼したのに、断られてしまった」——そんな経験をすると、「うちの物件は売れないのでは」と不安になってしまうものです。
しかし、不動産会社が買取を辞退することは決して珍しいことではありません。本記事では、一括査定サービス「イエウリ」に登録された3,183件の物件について、不動産会社が実際に残した辞退コメント約8,000件を分析し、「なぜ買取を断られるのか」「断られたときにどうすればよいのか」を、実データに基づいて解説します。
そもそも買取の辞退はどれくらい起きているのか
まず知っておきたいのは、買取入札の辞退はごく日常的に発生しているという事実です。
今回分析したデータでは、1物件あたり平均32.4社が査定に参加し、そのうち平均26.6社が辞退していました。つまり、8割前後の会社が辞退するのはむしろ普通なのです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 分析対象物件数 | 3,183件 |
| 1物件あたりの平均査定参加社数 | 32.4社 |
| 1物件あたりの平均辞退社数 | 26.6社 |
| 全社が辞退した物件の割合 | 13.4% |
| 1社以上から入札を得られた物件の割合 | 86.6% |
注目すべきは最後の行です。平均で8割の会社に断られながらも、87%の物件は少なくとも1社から入札を得ています。買取は「多くの会社に断られても、1社が買ってくれれば成立する」取引です。10社に断られたとしても、悲観する段階ではありません。
ただし、この87%は「1社以上が価格を提示した」という意味であり、その価格が売主の納得できる水準とは限りません。買取は入札方式のため、参加社数が多いほど価格競争が働きますが、入札が1〜2社に限られる物件では比較対象がなく、相場を大きく下回る提示になることもあります。
「入札があるか」と「いくらで売れるか」は別の問題として考えておきましょう。
買取を拒否される理由ランキング
では、不動産会社はどのような理由で辞退しているのでしょうか。約8,000件の辞退コメントをキーワード分類した結果が以下です。
| 順位 | 辞退理由 | 出現割合(コメント全体に対する比率) |
|---|---|---|
| 1位 | 営業エリア外・対応エリア外 | 約24% |
| 2位 | 旧耐震・築年数が古い | 約3.2% |
| 3位 | 需要が見込めない・再販が難しい | 約3.2% |
| 4位 | 再建築不可・接道の問題 | 約2.8% |
| 5位 | 価格が合わない | 約2.2% |
| 6位 | 土地・建物の規模(広すぎる/狭小) | 約1.3% |
| 7位 | マンションの管理状態・修繕積立金 | 約1.3% |
| 8位 | 傾斜地・高低差・擁壁 | 約1.0% |
| 9位 | 市街化調整区域 | 約0.9% |
| 10位 | 借地権・共有などの権利関係 | 約0.8% |
※理由を明記しない定型的な辞退(「今回は見送ります」等)も多数含まれるため、割合の合計は100%になりません。
最大のポイントは、辞退理由の圧倒的1位が「エリア外」であり、物件そのものの欠点ではないことです。買取再販業者はそれぞれ得意な商圏を持っており、商圏の外の物件は内容にかかわらず機械的に辞退します。「断られた=物件に問題がある」とは限りません。
一方で、辞退率が高い物件には、やはり物件側の要因があることも事実です。実際、旧耐震物件の辞退率は86.9%と1982年以降築の79.2%を上回り、戸建て(86%)とマンション(75%)の間にも差があります。
辞退率が平均の8割を大 きく超えている場合は、エリア外以外で買取会社が取り扱いにくい理由が重なっていると考えたほうがよいでしょう。
実際の辞退コメントから見る7つの事例
ここからは、実際に不動産会社が残したコメントをもとに、代表的な辞退パターンとその背景を見ていきます。
事例1:営業エリア外で断られるケース
「エリア外のため、辞退させていただきます」——これが最も多いコメントです。ある福井県の戸建てでは33社中31社が辞退しましたが、その理由の多くはエリア外でした。また「東大阪市でも旧外環状線より東側の相場が不得意のため」のように、同じ市内でも細かく商圏を区切っている会社もあります。
買取再販業者は、仕入れ後のリフォーム手配や販売網が整っている地域でしか利益を出せません。地方都市や都市部でも駅から遠いエリアでは、対応できる会社の母数自体が少なくなります。
事例2:旧耐震(1981年以前築)の建物
「旧耐震物件の買取は行っていないため辞退いたします」「立地は良いですが旧耐震は検討が難しいです」といったコメントが目立ちました。中には、内装状態は良好でもリフォーム費用を算出した結果、解体・更地再販の価格にも満たなかったという具体的な報告もあります。
データでもこの傾向は裏付けられており、1981年以前築(旧耐震)の物件の平均辞退率は86.9%、1982年以降築では79.2%と明確な差がありました。特に1960年以前築では辞退率が92.9%まで上がります。
旧耐震の建物は住宅ローンや税制優遇の面で買主が付きにくく、耐震補強費用も読みにくいため、再販事業として成立させづらいのです。
▼関連記事:旧耐震基準の家は売却できない?基準の概要と売るための対処法とは
事例3:再建築不可・接道の問題
「再建築不可の場合、社内規定で買取できません」「非接道、再建築不可物件については取り扱い不可です」など、社内ルールとして一律に扱わない会社が多いのが特徴です。一方で「再建築不可物件を取り扱わないわけではないが、土地が小さく建ぺい率・容積率が低いため再利用用途がない」と、条件次第では検討する会社の存在もうかがえます。
建て替えができない物件は買主の住宅ローンが通りにくく、出口(再販)が極端に限られます。ただし再建築不可専門の買取業者は存在します。
▼関連記事:再建築不可物件の基準とは|建て替えや売却はできない?
事例4:市街化調整区域
「調整区域のため流通性に乏しく、買取後の再販売が見込めない」「市街化調整区域で開発許可の用途が不明」といったコメントです。中には「価格は出せるが、所有者に伝えられないほど安い価格しか出ない」という率直な本音もありました。
市街化調整区域は原則として新築や建て替えに許可が必要で、購入できる人・使える用途が限られるため、一般的な買取再販のスキームに乗りません。
▼関連記事:市街化調整区域とは?調整区域の特徴・不動産売買時の注意点を解説
事例5:傾斜地・擁壁・災害リスク
「南側擁壁の高低差、既存擁壁のやり直しを考えると買取金額が付かなかった」「急傾斜地崩壊危険区域に入っており、住宅ローンに影響がある可能性がある」「土砂災害警戒区域の可能性があり、再建築時にかかる費用が想定できない」など 、地形と災害リスクに関する辞退も一定数ありました。
擁壁のやり直しは数百万円〜千万円単位になることがあり、費用が読めない物件は買取価格の算定自体ができません。
▼関連記事:傾斜地・崖地で擁壁がある家、土地を売却する際の注意点を解説
事例6:借地権・権利関係
「借地権の取り扱いが弊社の金融機関でできないため」「築浅で良い物件ですが、借地戸建のため見送ります」など、物件の状態が良くても権利関係だけで辞退されるケースです。
借地権付きマンションでは「残存期間が30年を切っており、住宅ローンが厳しいため再販が難しい」という具体的な指摘もありました。
借地権は地主の承諾があれば(建物と共に)譲渡できる権利であり、都市部では戸建て・マンション共に取引のハードルとならないこともありますが、通常の所有権と比べると市場価値が落ちやすく、買取してもらえないケースがあるのも事実です。
その地方の取引の慣習に詳しかったり、地主との付き合いがある不動産会社を当たる他、地主との直接交渉も視野に入れることで、取引可能になるケースがありますが、そのような案件は不動産会社としては積極に扱いにくいものです。
この事例では、戸建てであれば地主との交渉で所有権を取得してから売却するなど、中長期的に準備した上での対策が求められます。
▼関連記事:借地権とはどんな権利?所有権との違いや、借地権付きの家を売れるかを解説
事例7:マンションの管理費・修繕積立金
マンション特有の理由として「管理費・修繕積立金が相場より割高」「総戸数が少なく、管理費・修繕積立金の負担増が懸念される」「成約事例がほとんど存在しない」といったコメントがありました。専有部分がきれいでも、管理組合の状況や総戸数といった自分では変えられない要素で判断されることがあります。
なお、データ全体ではマンションのほうが戸建てより有利でした。戸建ての平均辞退率が86%だったのに対し、マンションは75%にとどまり、査定に参加する会社数もマンションのほうが平均10社以上多い結果となっています。
▼関連記事:マンション買取は仲介より損?デメリット・注意点と買取で高く売る方法を解説
買取を拒否されたときの6つの対策
ここまでの分析を踏まえると、対策の方向性が見えてきます。
対策1:依頼する会社の数と種類を増やす
辞退理由の1位が「エリア外」である以上、最も効果的なのは分母を増やすことです。データ上、平均で8割に断られても87%の物件は入札を得ています。地場の会社と全国展開の買取再販会社の両方に声をかけること、一括査定サービスだけに限らず、自分でもその地方で営業している不動産会社をリサーチし、多くの会社に相談することで、解決策が見つかる確率を高めることができます。
ただし、これが有効なのは辞退理由がエリア外に偏っている場合です。再建築不可や旧耐震など物件条件が理由の辞退が並んでいるなら、社数を増やしても同じ理由で断られ続けます。その場合は対策2以降に切り替えてください。
対策2:物件の「難点」に対応した専門業者を探す
再建築不可、借地権、市街化調整区域、事故物件などには、それぞれ専門に扱う買取業者が存在します。一般的な買取再販会社が社内規定で一律辞退する物件でも、専門業者なら価格が付くことは珍しくありません。
辞退コメントに「再建築不可のため」「借地権のため」と明記されていたら、それはむしろ「探すべき業者の種類」を教えてくれるヒントです。
対策3:辞退コメントを読み込み、解消できる問題は解消する
辞退理由には「変えられないもの」(立地、築年、地形)と「変えられるもの」があります。たとえば「登記簿と話の辻褄が合わない」「売る意思と時期を明確にしてほしい」といったコメントは、情報整理や意思表示で解消できる問題です。
境界の確定、権利関係の 整理、売却時期の明確化など、売主側で準備できることを整えるだけで入札が付くケースがあります。
対策4:希望価格を見直す
「価格が折り合わない」という辞退は、裏を返せば「価格次第では買う」というシグナルです。買取価格は市場価格の7〜8割程度が目安とされており、仲介での売却相場を基準に希望価格を設定していると、買取ではほぼ全社に断られます。買取のスピードと確実性を取るなら、価格の期待値調整が必要です。
対策5:更地・解体前提の売却も検討する
築古戸建てのコメントには「解体・更地再販額にも満たない」「土地のみは買取査定外」といったものがありました。建物に値段が付かない場合、建物付きのまま「古家付き土地」として売るか、解体して更地にするかで、査定に参加してくれる会社の数が変化することがあります。
ただし解体費用の負担や固定資産税の増加もあるため、解体は複数社の意見を聞いてから判断しましょう。
▼関連記事:土地の更地渡しは売主のデメリットが多い?解体前の確認事項を解説します
対策6:買取にこだわらず、仲介や買取保証も視野に入れる
全社に辞退された物件は全体の13.4%でした。この場合でも、時間をかけられるなら仲介(個人の買主を探す方法)で売れる可能性は残っています。買取業者は「再販して利益が出るか」で判断しますが、個人の買主は「自分が住みたいか」で判断するため、評価軸がまったく異なるからです。
また、一定期間仲介で売れなければ買い取ってもらえる「買取保証付き仲介」という選択肢もあります。
正直なとこ ろ「0円でも売れない物件」が存在するのも事実です。買取業者が全社辞退し、仲介でも買主が見つからない物件は、現実に存在します。こうした物件では、ほとんど値の付かない価格での売却や、逆に売主が費用を負担して引き取ってもらう「有償引き取り」しか選択肢が残らないこともあります。
保有し続ける限り固定資産税と管理の負担は続くため、「いくらで売れるか」ではなく「いくらの負担で手放せるか」に判断軸を切り替える局面もあると理解しておきましょう。
▼関連記事:不動産の有償引き取りサービスは利用しても大丈夫?”負動産”処分の実例・注意点を解説
まとめ:断られるのは「普通」。データを味方に次の一手を
3,183件の実データが示すのは、次の3点です。
第一に、買取の辞退はありふれた現象であり、平均して査定参加社の8割が辞退します。それでも87%の物件は入札を得ています。
第二に、辞退理由の最多は物件の欠点ではなく「エリア外」です。断られた数だけを見て物件の価値を悲観する必要はありません。
第三に、旧耐震・再建築不可・借地権・調整区域といった構造的な難点がある場合でも、専門業者・価格調整・売却手法の変更という打ち手が残されています。
大切なのは、辞退コメントを「お断りの通知」ではなく「市場からのフィードバック」として読むことです。なぜ断られたのかが分かれば、次にアプローチすべき相手と、整えるべき条件が見えてきます。
※本記事の数値は、2019年6月〜2025年10月にイエウリへ登録された3,183物件・約8,000件の辞退コ メントの分析に基づきます。理由の分類はコメント本文のキーワードによる機械的な集計であり、複数の理由を含むコメントは重複してカウントされています。






