不動産を売却する際は「仲介」という方法で、不動産会社に買主を探してもらう方法が一般的です。
仲介の不動産売買は、一般的な家電製品などの中古取引で例えるなら「買ってもらう人を探すために、メルカリやヤフオクなどのサービスを利用する」というものです。
一方で、ブックオフなど店舗に売りたい品物を持ち込んで売却するように「不動産会社がその物件を直接購入してくれる」形での不動産売却も可能で、これは「買取」と呼ばれます。
この記事では「買取」での不動産売却時にどのような注意点があるのか、トラブルの事例や防ぐにはどうすればよいのかを解説します。
不動産買取の注意点
不動産を買取で売却する場合は、以下の7点に注意してください。
- 仲介で売れる相場価格よりも買取金額は安い
- 住宅ローンの残債を返済する必要がある
- 買取業者によって査定額の差が大きい
- 3つの買取のパターンを正しく理解しなければならない
- 一度仲介に出すと買取金額が下がってしまう可能性がある
- 解体費用や測量費用を負担しなければならないことがある
- 契約不適合責任は免責の契約になっているか
それぞれ詳しく確認していきましょう。
仲介で売れる相場価格よりも買取金額は安い
冒頭でお伝えしたように、不動産の仲介を「メルカリ」、買取を「ブックオフ」に例えることができます。
ブックオフに商品を持ち込むと、店舗側はその商品を買い取った後、点検やクリーニングを行い、その商品を店舗やオンラインショップで販売します。
ブックオフは、商品を再販することで利益を得るため、買取価格は店舗の利益を差し引いた金額になっているのです。
メルカリで同じ商品を売れば、発送の手間や取引後のクレームのリスクがありますが、手元に残る金額は多くなるでしょう。
不動産の買取でも同じ構造が見られます。不動産買取業者は物件を購入した後、必要に応じてリフォームを行ったり、場合によっては解体して新たに住宅を建設したりして、転売することで利益を上げます。
そのため、仲介で 売却できる市場価格よりも、買取金額は業者が利益を確保する分だけ低く設定されることが多いのです。
一般的に買取は仲介の7~8割程度の価格になる場合が多いですが、物件の状態によっては買取価格が仲介価格の5割未満にまで下がるケースもあります。
一方で、リフォームや修繕があまり必要ない状態の良い物件や、立地が優れている物件では、9割近い価格で買取が行われることもあります。
したがって、物件の状態や市場の需要、そして査定額を見積もる不動産会社によって買取価格は大きく異なることを理解しておくことが重要です。
お客様担当窓口の島村です。「イエウリ」は、複数社の競争入札により、買取でも高額での売却を実現しやすくなっています。不動産買取を検討中の方は、ぜひチェックしてみてください。
住宅ローンの残債を返済する必要がある
これは買取だけでなく仲介の場合も同じですが、ローン中の家を売る場合は、売却金額で残債分を繰り上げ返済する必要があります。
売却時にローンを完済できない場合、抵当権(銀行がその物件を担保にする権利)を抹消できず、金融機関に売却を認めてもらえないのです。
もし売却額よりもローン残高が大きい場合は、預貯金などを捻出するか、住み替えローンなどを利用して不足分を補わなければならず、それらが不可能な場合は売却を白紙に戻さなければいけません。
前述の通り、買取は仲介よりも売れる金額が下がってしまうため、売却時にローン残債をクリアするハードルも必然的に高くなってしまう点に注意しましょう。
買取業者によって査定額の差が大きい
仲介で売却する場合、過去の不動産売買で相場価格がある程度形成されており、その金額付近で成約するケースが多いです。
買取の場合は、購入する不動産会社が再販売時のコストや利益をどれぐらい見込んでいるかによって、提示される金額に大きな差が出るケースがあります。
例えば相場の値段が3,000万円のマンションを買取してもらおうと思った時、
- A社:2,000万
- B社:2,400万
- C社:1,850万
といったように、最高額と最低額を比べると数百万円の差が出ることも珍しくないのです。
ただし、戸建て住宅の買取の場合に
- A社:建物はそのままにして購入する
- B社:建物は売主が解体してから土地のみを購入する
など、各社が提示する金額の条件が異なる場合もあります。
一般的な戸建て住宅の解体には100~200万円程度の費用がかかるので、表面的な金額以外の条件も踏まえて判断しなければいけません。
なお、不動産一括査定サイトの広告で「各社の査定額を比較するとウン百万円も差が!?」といった内容のものを目にすることがありますが、仲介査定額の高低は「売れる金額」ではないので、買取に比べて査定額を比較する意味はそこまで無かったりします(気になる方は下記記事をご覧ください)。
▼関連記事

仲介の場合は「高すぎる金額」で売り出しても買い手が見つからず、売却が長期化してしまうリスクもあります。相場を把握して適正価格で売却できるようにしましょう。
3つの買取のパターンを正しく理解しなければならない
不動産の買取を検討する際には、3つの主要なパターンがあります。
どの方法が自分にとって最適かを理解することで、スムーズな売却が期待できます。それぞれの方法を以下に詳しく解説します。
①直接買取:自分で不動産買取業者を探して買取してもらう
この方法では、売主自身が不動産買取業者を探し、その業者に直接物件を買い取ってもらいます。最もシンプルで、仲介業者を介さないため、仲介手数料が発生しないのが大きな特徴です。
特に「手間をかけずに早く売りたい」と考えている方に適しています。
ただし、適切な買取業者を見つける手間や時間がかかる場合もあるため、事前に信頼できる業者をリサーチしておくことが重要です。
②買取保証:一定期間の仲介売却が不成立の場合に買取
買取保証は、仲介で一定期間物件を売り出しても、成約に至らなかった場合に、仲介していた不動産会社が買い取ってくれる方法です。最初は高値で売れる可能性のある仲介を試し、売れ残った場合に不動産会社が買い手となるため、リスクを抑えつつ売却できるメリットがあります。
この方法でも仲介手数料は発生しません。買取保証は、時間に余裕がありつつも、最終的に売却の保証が欲しい方に適しています。
③仲介会社による買取業者の紹介
もう一つの方法は、 仲介を担当している不動産会社が、提携している買取業者を紹介し、その業者に物件を売却するケースです。
この場合、厳密には仲介取引となるため、場合によっては仲介手数料がかかることがあります。
不動産会社が買取業者を紹介してくれるのはメリットですが、事前に手数料の発生有無を確認することが重要です。
買取時の仲介手数料と「専任返し」の問題
買取を検討する際には、特に3番目のパターンにおいて、仲介手数料が発生するかを事前に確認することが大切です。仲介を担当していた不動産会社が「提携している買取業者を紹介できる」と提案してきた場合、その際に仲介手数料が発生するかどうかは確認するようにしましょう。
また、注意すべき点として「専任返し」と呼ばれる営業手法があります。これは、仲介手数料を多く受け取るために、意図的に買取を提案する悪質な仲介業者の手法で、近年問題視されています。
こうしたケースに遭遇しないように、売主は事前に手数料の仕組みをしっかりと確認し、信頼できる不動産会社と取引することが重要です。
「仲介で中々売れないから買取業者を紹介された」場合は、以下の記事の内容にも目を通すことをおすすめします。
▼関連記事

一度仲介に出すと買取金額が下がってしまう可能性がある
「最初は仲介で出して、売れなかったら買取を検討」する方が多いことは先ほどご説明しました。
基本的には仲介の方が売却した後手元に残るお金は多くなるため、できることなら仲介で売りたいところでしょう。
しかし、仲介で売却を始めたものの中々買手が見つからず
- 住み替えで新しい物件に移るタイミングが決まっている
- 相続税の支払い期限が迫っている
などのケースでは売却を急ぐために、買取を選択せざるを得ない状況になってしまう可能性もあります。
買取金額を見て、折り合いがつかないため仲介に出した、でも売れなかったから再度買取を打診するケース。私たち不動産会社は当たり前のように、一度市場に出したら同じ金額を出すことはできませんよ、と話しますが、個人の売主さんには中々理解をしてもらえません。
株式会社アイホーム(ヤマダ不動産神戸本店)
代表取締役 告野 亘 様 よりヒアリング1
不動産会社としても「一定期間売れずに残っている物件」には手が出しにくくなり、高い金額を出せなくなってしまうのです。
仲介で売れないから買取をお願いしようと思っても、当初の査定金額では買い取ってもらえないことも少なくありません。
解体費用や測量費用を負担しなければならないことがある
戸建てや土地を売却する際、売主が費用を負担して解体や測量を行った上で買取する条件を提示されることがあります。
このとき「知り合いの解体業者を紹介します」などと言って、相場よりも明らかに高い費用を請求する詐欺的な行為をはたらく不動産会社がゼロとは言い切れません。
悪徳業者の典型的な手法ですが、売却前に費用負担を求められたときは「本当に必要な費用なのか」「請求された費用相場は妥当なのか 」を確認すべきです。
なお、買取前に解体を求められるのは決して珍しいケースではないですが、買取業者によっては「現状有姿渡し」と言って「建物や土地はそのまま引き渡していいですよ。その代わり解体費用分を売却から差し引きますね」という提案をしてもらえることもあります。
測量に関しては、確定測量が済んでいなければ基本的に売主がほぼ必須で実施するものですが、自分でも測量費用の相場を確認しておけば安心です(一般的な宅地の場合、測量費用の相場は50万~60万円程度)。
契約不適合責任は免責の契約になっているか
不動産売買における「契約不適合責任」とは、売主が買主に物件を引き渡した後
- 雨漏りやシロアリの被害が見つかった
- 床の傾きが見つかった
- 建物を解体した後に地中埋設物が見つかった
といった欠陥・不具合が一定期間内に発覚したとき、それを修繕するための費用等を売主が負担しなければいけないことを指します。
ただし、不動産のプロである買取業者が購入する場合、こうした欠陥は買う前に自社で判断した上で購入するから「売主は契約不適合責任を負わない」という条件で売買契約を締結するケースが多いです。
しかし、売主の無知に漬け込んで、売買契約に契約不適合責任を免責とする特約を設けず、契約後に不動産会社から購入代金の減額を求められたなどのトラブル事例も存在します。
不動産買取でトラブルを回避するためにやるべきこと
上記のような注意点の確認を怠ると、トラブルに発展してしまう可能性があります。
不動産買取でトラブルを回避するためには、以下の5点を確認しておくことが重要です。
- 複数社の買取金額を比較する
- 必要な費用や手数料を確認する
- ギリギリの資金で住み替え計画を見積もらない
- 物件の状態を正確に把握する
- 買取業者との契約内容をよく確認する
それぞれ確認していきましょうね。
複数社の買取金額を比較する
不動産の買取では、業者ごとに金額の差が大きく出てしまうケースがあります。
仲介の相場価格よりは安くなってしまいますが、むしろ相場よりも安くなるからこそできるだけ高く買い取ってくれる業者を探すことで、売却金額で損をしてしまうリスクを低減できるでしょう。
なお、買取業者の査定額を比較したい場合は「イエウリ」が便利です。
イエウリで査定依頼する場合、入札形式で多くの不動産会社から価格提示を受けられるため、買取でも高値の売却が期待できます。
必要な費用や手数料を確認する
- 直接買取:自分で不動産買取業者を探して買取してもらう
- 買取保証:仲介で一定期間売り出しても成約しなかった場合に、仲介していた不動産会社が買主になる形で買取してもらう
- 仲介会社による買取業者の紹介:仲介会社に不動産買取業者を紹介してもらい、その会社に買取してもらう
買取業者と売買契約を結ぶ場合、上記3つのパターンがあることを解説しました。
仲介会社から買取業者を紹介してもらう場合
このうち、3のパターンでは仲介手数料を請求される可能性があるため、買取業者を紹介してもらう際に手数料発生の有無を必ず確認してください。
また、仲介会社経由で買取業者を紹介してもらう場合、何社ぐらいに声をかけてもらえるのかもチェックしましょう。
できるだけ多くの不動産会社の買取査定額を比較した方が良いのは前述の通りです。
大手の不動産仲介会社では「買取業者を紹介する場合は〇社以上に査定額を見積もってもらう」といった社内のルールが設けられてることがあります(売主の損失をできるだけ防ぐため)。一方で中小の不動産会社ではそうした規約が無いケースもあるため、十分に買取金額を比較できるかが高額買取のポイントです。
▼関連記事

仲介手数料以外の諸費用
直接買取や買取保証で仲介手数料が無料でも、他に費用が発生します。
また、買取前に建物の解体や測量の費用を売主が負担する場合は、相場と比較して高額すぎないかインターネットで調べるなどしてチェックするようにしてください。
売却金額によっては譲渡所得が発生するケースもありますし、相続した直後の物件を買い取ってもらうのであれば相続税も考慮しなければなりません。
税金については税理士に相談するなどして、支払額をシミュレーションしておくと安心です。
なお、相続に伴う売却で相続手続きを司法書士に委任するケースでは、買取に至るまでに追 加で費用が発生する可能性もあります。
相続物件の買取に慣れた不動産会社に相談するなど、費用や手続きでわからない点は必ず解消した上で売却に進みましょう。
ギリギリの資金で住み替え計画を見積もらない
住み替え時に業者買取を利用する場合は「ローン残高を仲介相場よりも安い買取の金額でクリアできるか」が一番のポイントになります。
ただし、先ほど説明した諸費用に加えて、住み替えでは引っ越し費用等も加味しなければなりません。
買取後にローンを完済して諸費用や税金を支払うと、手元に残るお金が思ったよりも少なくなってしまう可能性もあるでしょう。
次の物件の購入に必要なローンの契約や頭金などは、ある程度余裕を持った範囲で見積もっておくことで、住み替えが上手く行かずに起こり得るトラブルを予防できます。
物件の状態を正確に把握する
不動産の買取では、土地や建物の面積の誤認や、相続登記の未完了による権利関係の複雑さが原因で、トラブルに発展することがあります。
こうしたトラブルは、物件を売却しようとしている方にとって大きなストレスとなるだけでなく、買取価格に大きな影響を及ぼすことも少なくありません。
金額の減額理由を見極めることが重要
よくあるケースとして、「最初は納得できる査定額が提示されたのに、契約前に突然金額を下げられてしまった」という事態があります。
このような状況に直面すると、売主としては、その減額が正当な理由によるものなのか、それとも買取業者に足元を見られているだけなのかを判断するのが難しいことが多いです。