専任媒介契約・専属専任媒介契約で販売されている物件の場合、買主側の立場から見ると、自由に問い合わせや申込みができるのか分かりにくい点があります。
「売主が専任・専属専任媒介契約を結んでいる物件でも、買う側は他社経由から申し込みできる」のが原則ですが、実際には売主側の事情によって「他の不動産会社経由での申し込みが制限される」といったケースが存在するのも事実です。
そこで本ページでは、専任媒介契約・専属専任媒介契約が関係する不動産取引について、購入を検討している方の視点から、次のような疑問を中心に解説します。
- 専任・専属専任媒介契約の物件は、問い合わせ先がその不動産会社に限定されるのか
- 購入申込みの際に専任・専属専任媒介契約を結んだ場合、売買契約に至らなかったときの扱いはどうなるのか
購入検討者が誤解しやすく、トラブルにつながりやすいポイントを整理しながら、安心して物件検討を進めるための考え方を分かりやすくお伝えします。
問い合わせ先はその不動産会社に限定される?
売主が1社のみとの契約に縛られる専任・専属専任媒介契約で販売していても、買う側が必ずその不動産会社に申し込まなければいけないわけではありません。
原則として、SUUMOやHOME’Sなどのポータルサイト、あるいはREINS(不動産会社専用の物件情報サイト)に登録されている物件で専任・専属専任媒介契約が結ばれていても、他の不動産会社から内見の希望や購入申し込みができるということです。
ただし、
- 売主側の仲介会社が「囲い込み」を行っている
- 売主側の仲介手数料の割引や無料を条件に媒介契約を結んでいる
などの事情から、実質的に「その会社からしか申し込みを受け付けてもらえない」状況となる場合があります。
囲い込み
囲い込みとは、自社で売主・買主の両方から仲介手数料を受け取ることを目的に、他の不動産会社からの購入申込みや内見依頼を断る行為を指します。
売主側の仲介会社が囲い込みを行っている場合、他の不動産会社を通じて内見や購入申込みをしようとしても、「すでに申込みが入っている」「案内できない」などの理由で断られてしまうことがあります。
一方で、販売元の不動産会社に個人の買主が直接問い合わせた場合には、申込みや内見を受け付けてもらえるケースもあります。
このため、買主側から見ると「他社経由では買えないのに、直接なら進める」という不透明な状況が生じることがあります。
囲い込みは、売主にとって本来得られるはずの購入機会を減らし、売却条件の悪化につながる可能性がある行為です。そのため、2025年以降は宅地建物取引業法上、行政処分の対象となる違反行為として明確に位置づけられました。
しかし、制度が整備された現在も、実務の現場では一部の不動産会社によって囲い込みが行われていると指摘されることがあります。
買主としては、
- 他社経由で断られた理由が曖昧な場合
- 「直接でないと難しい」と案内された場合
には、囲い込みの可能性も念頭に置きつつ、冷静に状況を見極めることが重要です。
▼関連記事:不動産の売買時に注意したい「両手仲介」と「囲い込み」とは?問題点を解説
仲介手数料の事情で販売元からの申し込みだけに制限されるケース
囲い込 みとは別に、仲介手数料の取り扱いを理由として、販売元の不動産会社からの申込みのみを受け付けるケースもあります。
不動産取引では、
- 売主側の仲介会社(元付業者)
- 買主側の仲介会社(客付業者)
がそれぞれ仲介に入る「片手取引」と、1社が売主・買主の双方を仲介する「両手取引」があります。
売主と媒介契約を結ぶために手数料を割引・無料などの条件が設けられると……
販売元の不動産会社が「売主の仲介手数料を無料または割引します」という条件を最初に設けた場合、別の会社が買主側の仲介として入ってくると、その会社に手数料を支払う必要が生じます。
実際、売主と媒介契約を結ぶために、「専任または専属専任媒介契約で売り出す場合、手数料を割引する」という不動産会社も少なからずあります。
このような条件が設けられた場合、他社が間に入ると販売元の取り分が減る、あるいはゼロという構図になります。
その結果、
- 「元付業者に直接申し込む必要がある」
- 「他社経由では条件が合わない」
といった対応につながり、事実上、販売元への申込みに限定されるケースが生まれます。
囲い込みとの違い
囲い込みは、販売元が他社からの買主を意図的に排除する行為で、違法性が問われます。
一方、上記のような申込制限は、売主が希望する手数料の条件として生じるものであり、必ずしも同じ違法行為とは言えません。
ただし、買主の目線では両者はほぼ区別がつきません。「他社経由だと話が進まない」「直接連絡すると動いてくれる」という体験は、囲い込みの場合とまったく同じだからです。
買う側の対処方法
仲介手数料の事情により、販売元の不動産会社からの申込みに限定されている場合でも、買主側が一切動けなくなるわけではありません。
実務上は、次のような対応によって状況が変わることがあります。
販売価格や条件の変更があったタイミングを確認する
売主が価格の見直しや条件変更を行った場合、それをきっかけに取引条件が再整理され、他社経由での申込みが受け付けられるケースがあります。
特に、
- 販売価格が値下げされた
- 長期間売れ残っている
- 内見数が伸びていない
といった状況では、売主が「間口を広げたい」と判断する可能性が高まります。
他社経由で断られた場合でも、一定期間を空けて状況を確認することは有効です。
購入意欲が強い場合は、販売元に直接問い合わせる
購入の意思が固く、条件面でも前向きに検討できる場合には、販売元の不動産会社に直接問い合わせることも現実的な選択肢です。
この場合、
- すでに内見や検討を進めていること
- 購入時期や条件について具体的な意思があること
を伝えることで、売主側・仲介会社側ともに「確度の高い買主」として扱われやすくなります。
なお、検討したい物件において、売主側の事情で問い合わせルートが制限されている場合、直接問い合わせを行うこと自体は違法ではなく、買主の正当な行動の範囲内です。
条件提示を明確にしたうえで再度申込みを検討する
販売元に直接問い合わせる場合でも、
- 希望価格
- 契約時期
- ローン利用の有無
などを整理したうえで相談することで、仲介会社側が取引条件を調整しやすくなります。
結果として、販売元が他社経由を認める、または条件交渉に応じるケースもあります。
購入申込みの際に専任・専属専任媒介契約を結ぶとどうなる?
購入申込みの際に、買主が専任媒介契約や専属専任媒介契約を結んだ場合でも、その物件で売買契約に至らなければ、制約がいつまでも続くわけではありません。
専任・専属専任媒介契約は、あくまで一定期間に限って不動産会社に仲介を依頼する契約であり、売買契約の成立を前提として一生縛られるような性質のものではないためです。
実務では一般媒介が多い
そもそも実務上、購入申込みの段階で買主が専任・専属専任媒介契約を結ぶケースは多くありません。
多くの場合、買主側の媒介契約は一般媒介契約で進められます。
これは、購入検討段階の買主にとって、
- 他の物件と並行して比較・検討したい
- 1社に行動を限定される合理性が低い
といった事情があるためです。
そのため、購入申込み時に専任・専属専任媒介契約を求められた場合は、「なぜ専任が必要なのか」を確認することが重要になります。
売買契約に至らなかった場合、契約はどう扱われる?
専任媒介契約・専属専任媒介契約には、原則として契約期間が定められています。
専任および専属専任媒介契約の契約期間は最長3か月で、これが基本条件となるケースがほとんどです。
そのため、
- 交渉が不成立になった
- 売主が別の買主と契約した
- 条件が合わず白紙になった
といった場合には、
- 契約期間の満了をもって終了する
- 更新しなければそのまま終了する
- 正当な理由があれば途中解約できる
などの形で、媒介契約上の制約は解消されるのが一般的です。
同一物件で他社から申込むのはリスクがある
一方で注意すべきなのは、同一物件について、特定の不動産会社と媒介契約を結んだ後に、別の不動産会社を通じて申込みを行うケースです。
このような行動は、民法上の
- 条件成就の妨害
- 信義則違反
と評価される可能性があり、トラブルの原因になることがあります。
この場合は専任・専属専任媒介契約だけでなく、一般媒介契約の場合にも適用される可能性がある点に注意しましょう。
(直接取引)第11条
専任媒介契約の有効期間内又は有効期間の満了後2年以内に、甲が乙の紹介によって知った相手方と乙を排除して目的物件の売買又は交換の契約を締結したときは、乙は、甲に対して、契約の成立に寄与した割合に応じた相当額の報酬を請求することができます。
国土交通省が定める一般的な媒介契約書のフォーマットにも、上記のように「不動産会社の紹介によって知った相手方と当該の会社を排除して取引した場合、相当額の報酬を請求できる」と定められています。
特に、
- すでに内見・交渉・条件調整を行っている
- 不動産会社の仲介行為が明確に存在する
場合には、仲介会社の正当な利益を害したと判断されるリスクがあります。
買う側の実務的な対応方針
購入申込み時に専任・専属専任媒介契約を求められた場合は、次の点を確認しましょう。
- 媒介契約の対象は「その物件のみ」か
- 契約期間はどれくらいか
- 売買契約に至らなかった場合の扱い
- 解約条件や違約金の有無
内容によっては、一般媒介契約での対応を交渉することも現実的な選択肢です。
▼関連記事:不動産の媒介契約書でチェックすべきポイントを売主・買主の各視点で解説します
買う側は手数料や価格の交渉で有利になる?
一見すると、専任媒介・専属専任媒介では「売主側仲介会社は手数料が確定するのだから、買主は価格交渉や手数料面で有利になるのでは」と思われがちです。しかし実務上、必ずしもそうとは限りません。
まず、価格の最終判断をするのはあくまで売主です。専任媒介では仲介会社と売主の関係が密な分、価格戦略も共有されており、簡単な値下げには応じにくい傾向があります。
一方で、専任媒介物件は両手仲介が成立しやすい点も特徴です。仲介会社にとっては、多少価格を下げても両手仲介で成約できれば手数料総額は確保できるため、状況次第では早期成約を優先する判断が取られることもあります。
ただしこれは、売主に価格調整の余地や売却期限がある場合に限られ、需要が強い物件では無理に条件を下げず、条件通りの買主を待つケースも少なくありません。
反対に、「売主から満額の手数料を得られる分、買主側の手数料は割引・無料とする」などの方針で集客している不動産会社が存在するのも事実です。
このように、媒介契約の種類だけで買主が有利・不利を判断するのは難しく、実際の交渉余地は、売却期間や売主の事情、物件への反響状況によって大きく左右されます。
▼関連記事:中古物件の購入時に値引きは可能?値引き幅や交渉が有利になる条件を解説
まとめ:不明点は不動産会社に確認することが重要
媒介契約の種類を理由に「当社からは紹介できない」と断られるケースは、原則として多くありません。
ただし近年は不動産会社間の競争が激化しており、売主の仲介手数料を無料または割引とする条件で媒介契約を結んでいる場合には、実質的に販売元への直接申込みに限定されることがあります。
また、買主が購入申込みや売買契約に際して専任媒介契約や専属専任媒介契約を結んだ場合でも、当該物件で売買契約に至らなければ、その制約が継続するわけではありません。
不明点がある場合は、媒介契約を結ぶ前に不動産会社へ確認し、契約が成立しなかった場合の扱いや解約条件についても、あらかじめ明確にしておくことが重要です。







