コロナ禍を経てリモートワークが普及し、通勤は週に数回、あるいは月に数回という働き方が珍しくなくなりました。この流れは一時的なものではなく、社会全体に定着しつつあります。
一方で、都心の物件価格は高騰を続け、住宅ローン金利の上昇も重なり、住まいのコストに対する不安は増すばかりです。
こうした社会情勢を背景に、都心から少し離れた「郊外」での暮らしを選ぶ人が増えています。
本記事では、郊外に住むことのメリット・デメリットから、後悔しないための住まい探しのポイントまで、詳しく解説します。
郊外の定義とは?本記事で扱うエリアの範囲
厳密な定義はありませんが、この記事では都内までおおむね1時間前後の立地を想定して解説していきます。
本記事で扱う「郊外」は、都心から電車でおおむね1時間以内でアクセスできる住宅エリアを指します。
首都圏であれば、東京都下(立川市・多摩市・八王子市など)や、埼玉県・千葉県・神奈川県の主要沿線沿いの地域が該当します。
これらのエリアは、いわゆる「田舎」とは異なり、大型商業施設や生活に便利な施設が充実しています。
都市機能の利便性と、自然豊かで落ち着いた住環境を両立できるのが大きな魅力です。
郊外に住む5つのメリット
それでは、郊外に住むことでどのようなメリットが得られるのか説明をします。
①物件価格が安く、広さを確保しやすい
郊外暮らしの最大のメリットは、なんといっても物件価格が安いことです。
同じ予算であっても、都心に比べて格段に広く、ゆとりのある住まいを手に入れることが可能です。
例えば、都心ではコンパクトなマンションしか選択肢になかった予算でも、郊外であれば広々としたリビングのあるマンションや、庭付き・駐車場付きの一戸建ても十分に視野に入ってきます。
広い居住スペースによりプライベートな空間の確保や、庭を使った家庭菜園やBBQなど、新たな趣味の楽しみが広がります。
また、お子さんがいらっしゃるご家庭や、将来的な計画のある方にとっ て、子供部屋の確保といった視点からも安心感が大きいです。
②自然環境に恵まれた生活ができる
都心の喧騒から離れた郊外は、公園や緑地が豊富で、全体的に静かで落ち着いた環境が魅力です。
子どもと一緒に遊べる場所が多く、季節の移り変わりを感じながら生活できるでしょう。
また、郊外型のニュータウンでは歩道がしっかり確保されており、車通りが少ないエリアや、静かな住宅地が多いため、落ち着いた環境で過ごしたい方にも最適です。
③子育て世帯に優しい地域施策や環境
郊外の自治体の多くは、子育て支援に力を入れている傾向にあります。
都心ほど待機児童問題が深刻でないケースも多く、保育園や学校の選択肢が比較的広い場合があります。
また、地域ぐるみで子育てを支援する風土があり、支援施設やコミュニティによる見守り体制が整っているエリアも多く、安心して子育てができるでしょう。
④生活コストを抑えやすい
郊外に住むことで、物件価格が低いため住宅ローンの支払いが減り、固定資産税や管理費なども比較的安く済むなど、固定費を減らしやすいです。
また、都心と比べてスーパーなどの物価もやや安い傾向があり、日常の生活費も削減可能です。
特に、マイカーを所有するご家庭では、月々の駐車場代が低額で済むエリアも多く、駐車場付きの戸建てやマンションであれば駐車場代が無料となるため、 経済的に大きなメリットになります。
⑤交通インフラの向上
近年は、有料の着席保証列車(京王ライナー、小田急ロマンスカー、東武TJライナーなど)が充実し、通勤の快適性が大きく向上しています。
必ず座って移動できるためストレスがなく、また、都心までの所要時間も短縮され、1時間程度での通勤が現実的なエリアが増えています。
中には、リモートワークとの組み合わせで出社日が少なくなり、コストや快適性の面から新幹線通勤を選ぶ人もいらっしゃいます。
郊外暮らしがオススメな方の生活スタイル・家族構成
これらのメリットを踏まえ、どのような人に郊外暮らしが向いているのを解説します。
小さなお子様がいるファミリー世帯
広い住まいでのびのびと子育てをしたいと考えている方にとって、郊外は恩恵を受けやすいです。
地域の子ども同士の交流も活発で、子育て世代が多く住む街では、コミュニティのつながりも強い傾向にあります。
また、公園や緑地の数が多い自治体では子どもたちの遊び場にも困ることはないでしょう。
在宅勤務やフリーランスの方
リモートワークが増え、通勤頻度が少ない方にとっては、静かで広い住環境が仕事のパフォーマンス向上にもつながります。
都心のマンションでは広さの関係で確保しづらい書斎やワークスペースも取りやすく、家の中でもオンオフを切り替えやすいため、ワークライフバランスの観点からも郊外は魅力的です。
趣味やプライベート空間を大事にする方
郊外では、DIYやガーデニング、ペットとの暮らし、アウトドアを楽しむ環境が整いやすいのも大きなメリットです。
キャンプや登山、サーフィンなどが趣味の場合、都心に比べて駐車場代が安かったりコストをかけずに車を所有しやすく、道具を積んでフィールドへ気軽にアクセスできます。
また、ペットとの暮らしもより豊かになります。
マンションでは管理 規約で小型犬や猫に限られることが多いですが、戸建てを選べば大型犬の飼育も可能となります。
広い庭でペットを思い切り遊ばせることができ、ペットにとっても良い環境を与えられるでしょう。
二世帯・三世帯で暮らしたい方
郊外では土地が比較的安価で、敷地面積や建物面積の広さのある物件が豊富です。
そのため、親世帯・子世帯での二世帯住宅での同居や、近くでの居住を検討する方にも適しています。
親世代の近くや一緒に暮らし、サポートを受けることで、家計や家事・育児の負担軽減にもつながる可能性があります。
郊外に住むデメリット・注意点
もちろん、郊外に住むのはメリットばかりではありません。
デメリットもしっかりと把握し、総合的に判断することが重要です。
①通勤や通学の距離・時間が長くなる可能性
当然ながら、都心へのアクセスには時間がかかります。
将来的に会社の出社方針が変わり、通勤日数が増えても許容できるかも重要です。
- ドアtoドアでの所要時間
- ラッシュ時の混雑具合
- 乗り換え回数
- 終電の時間
- 台風や大雪など、災害時の交通網への影響
などを確認しておきましょう。
②商業施設・医療機関の充実度
駅前は栄えていても、少し離れるとスーパーや病院が少なく、車がないと不便なエリアも多く存在します。
生活の利便性・安心感を確認する上で、以下のポイントをチェックしておきましょう。
- 日常的に利用するスーパーや病院、学校などへのアクセス
- バスなど公共交通機関の運行本数や最終便の時間
- 夜間・休日診療に対応している総合病院の有無
③物件の資産価値や将来性
不動産は生活の拠点であると同時に資産となりますので、物件の資産価値は重要なポイントです。
すべての郊外エリアの価値が安泰というわけではありません。
人口減少や過疎化が進行している地域では、資産価値が著しく下がるリスクもあるため、長期的な視点で慎重なエリア選定が求められます。
▼関連記事:資産価値の高い土地の特徴とは?価値を左右するポイントを徹底解説
郊外で快適な生活を始めるための6つのポイント
理想の郊外生活を送る上で住まい探しにおいてどのようなことに気を付けておけば良いのか解説をします。
①駅からの距離や通勤・通学時間の確認
最寄り駅までの距離・乗換回数・混雑状況を事前に確認しましょう。
特に、平日朝の通勤ラッシュ時を体感して、通勤のシミュレーションをすることをおすすめします。
▼関連記事:通勤時間と幸福度の関係から不動産相場と住まい選び、働き方改革について考える
②周辺環境や生活利便性の確認
地図上で確認するだけでなく、実際に現地を歩いたり、公共交通機関を利用して生活施設へのアクセスを確認して実際にイメージをしておくことが大事です。
その際に街の雰囲気や治安、住民の様子をよくチェックしておき ましょう。
また、自治体が公開しているハザードマップで、洪水や土砂災害などのリスクも確認しておくと良いでしょう。
③将来的な価値や売却しやすさ
資産として物件を保有する際には「住み続ける」という視点だけでなく、「将来売却できるか」という視点も持ちましょう。
エリアの都市計画を調べ、再開発や新駅の設置、新しい道路の開通計画などがあるエリアは、将来的に新しいファミリーが流入することで、過疎化しづらかったり、資産価値が上がる可能性があります。
そういったエリアで街の成長を感じながら住むことで、子育てにも充実感が出るでしょう。
▼関連記事:再開発で地価はどれくらい上昇する?過去の事例を解説します
④賃貸でお試し居住してみる
もし可能であれば、購入を検討しているエリアで数ヶ月から一年ほど賃貸物件にお試し居住してみることをお勧めします。
季節ごとの気候の違いや、天候による交通機関への影響、地域イベントの様子など、短期間の訪問ではわからないリアルな暮らしを体感でき、購入の際の判断材料が増えます。
また、実際に住むことで、そのエリアの中でもどの地区が自分に合うかなど、購入時には検討エリアの中でも細かい立地までこだわって物件を選ぶことが可能になります。
⑤信頼できる不動産業者と相談を重ねる
郊外の物件探しは、その地域の情報に精通した不動産会社のサポートが鍵となります。
一つの業者に聞くだけでなく、複数社の意見を聞くことでフラットな感覚を確認しましょう。
希望するライフスタイルや将来設計を丁寧にヒアリングし、メリットだけでなくデメリットも正直に伝えてくれる、信頼できるパートナーを見つけることが郊外への転居の鍵となるでしょう。
⑥事前の資金計画、住み替えの日程確認
郊外は都心と比べて物件の単価が低いからと言って、ハウスメーカーで理想の注文住宅を建てたり、広い物件を選択したりすると想定していたよりも費用が嵩んでしまうことも多くあります。
事前に物件購入におけるコストやハウスメーカーへの相談をしておくことが重要です。
また、都心に既に物件をお持ちの方で買い替えとなる場合、複数の不動産会社から正確な査定を受けた上で金融機関と相談しておきましょう。
不動産売却で残債とコストを差し引いてどのくらいの手元資金が得られるのか、それを頭金として次の物件を買う場合にはどのくらいのローンを借りることになるのか、資金計画をしっかりと立てなければなりません。
「売り先行」であれば確実な資金を得た上で動くことができるため、資金計画を立てやすいメリットがあります。
ただし、買い替えであれば購入物件を短期間で選ぶ必要があるので、ある程度の妥協必須だったり、仮住まいという選択をしなければならない場合もあります。
「買い先行」であれば気に入った物件を見つけるまで吟味することが可能というメリットがあります。
一方で、先に新居を買うと一時的なダブルローンが発生したり、旧居の金融機関との契約で、売却までのリミットがあり、資金計画がうまく立てられなかったりということもあります。
買い替えは複数の不動産業者と金融機関と取引をすることになりますので、どのような手順で買い替えを進めるのか、具体的にどういったスケジュールになり、どのような契約となるのか必ず事前確認をしておきましょう。
▼関連記事:ローンの残っている家を売って新居を買う時の注意点7選
まとめ
郊外での暮らしには、広さ・コスト・自然環境といった数々の魅力があります。
特に、子育て世帯や在宅勤務の方にとっては、生活の質を向上を見込める選択肢となるでしょう。
一方で、通勤や生活利便性といった課題も存在する可能性があるため、ご自身のライフスタイルに合うかどうかを慎重に見極める必要があります。
また、不動産売却を経て郊外へ住み替える場合には、事前に査定を受け、資金計画を明確にした上で買い替えの事前準備をしておくことが重要です。
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まずは査定を依頼して、買い替えの相談をしてみることから郊外への住み替え検討をしてみても良いのではないでしょうか。