マンションの売却では、間取りが重要な要素になります。間取りによって、ターゲットが異なるからです。
単身者、ファミリー層、シニア夫婦などのターゲットの意向にどれだけマッチしているかが、価格に影響を及ぼします。この記事では、間取りが売却価格に与える影響や売れ安さについて解説します。
間取りでメインターゲットは変わる
マンションは、部屋の構成によってメインターゲットが異なります。ワンルームタイプは単身者や投資家が対象になりますが、2LDKや3LDKであれば、ファミリー層がメインターゲットになります。
間取りに対応したターゲットのニーズを汲み取ることが、売却活動をスムーズに進めることのポイントになります。それぞれの間取りのメインターゲットについて解説していきましょう。
1R、1K、1DKは単身者がターゲット
1Rは「ワンルーム」と呼ばれるタイプで、居室の片隅にキッチンが設けられています。1Kは居室とは別にキッチンスペースがあるタイプをいいます。1DKは居室とは別にダイニングキッチンがあるので、寝室と食事をするスペースを分けることができます。
これらのタイプは、いずれも居室はひとつです。キッチンや食事スペースが付いた広いタイプでも、居室がひとつであることは変わりません。複数の人間が居住するには狭いことから、単身者がターゲットになります。
実際には居住しない人が賃貸物件として貸し出す目的で購入することもあり、投資家もターゲットになります。
1LDKは単身者とシニア夫婦がターゲット
1LDKは、居室がひとつと、8畳以上のLDK(リビング・ダイニング・キッチン)がある間取りです。 居室は寝室として使用し、日常の生活はLDKで過ごし、食事をするといった使い方が一般的です。LDKにはソファーなどのボリュームのある家具が設置できます。
1DKよりも面積が広く、くつろげる空間があるので、1人はもちろん2人でも暮らすことができます。
単身者がメインターゲットですが、購入費用が安い ことから、シニア夫婦がセカンドライフを送る場として選択することがあります。
単身者向きかシニア夫婦向きかは、立地が大きく関わってきます。単身者は通勤の利便性を重視しますが、シニア夫婦は通勤よりも日常生活の利便性を重視します。広告戦略が大きく異なりますから、ターゲットの見極めが重要です。
2LDKは夫婦世帯がターゲット
2LDKは、2つの居室にLDKがある間取りです。
居室が2つあるので、単身者はもちろん結婚して間もない子どものいない夫婦や子どもが独立したシニア夫婦がターゲットになります。
2LDKに居住を望む層は、購入に固執せず賃貸を選択する人が少なくありません。また若い夫婦は、将来的に子どもが生まれることを見込んで3LDKを選択することがあります。
中古市場では3LDKよりも人気が落ちる傾向がありますが、新婚夫婦は通勤の利便性を、シニア夫婦は周辺環境の充実を重視する傾向が強く、都市部の駅チカや周辺に商業施設や病院などの施設が充実している物件は人気が高くなります。
3LDKはファミリー世帯がターゲット
3LDKは、部屋数が多いので、ファミリー世帯がターゲットになります。
子どもが2人いてもそれぞれに個室を与えることができます。あるいは子どもが独立後に、高齢の両親を引き取るという見通しも立つでしょう。
賃貸では3LDKだと割高になる傾向があるため、思い切って購入を決断する層が多くなります。購入物件では、2LDKよりも需要があるため、中古市場でも人気が高い間取りといえます。
専有面積が広いので、都心部では価格も高く、物件もそれほど多くありませ ん。郊外に行くほど余裕のある間取りの物件が増えて、価格帯も手ごろになります。
郊外の物件は、敷地内に駐車場を設けられるものがほとんどなので、マイカーを所有する世帯に適しているでしょう。
4LDKは部屋数を必要とする層がターゲット
4LDKは部屋数が多いという特色がありますが、専有面積が広いので価格が高いです。
特に核家族化が進む都心部では、子どもは1人か2人という世帯が多く、そもそも4つの部屋を必要としていません。そのため、ターゲットとなるのは、子どもが3人以上いる、あるいは自宅に仕事部屋がほしい、広めの収納がほしいといった限られた層になってきます。
しかし、類似物件も少なく、購入希望者を見つけることができれば、比較的スムーズに売却できます。
間取りで価格や売りやすさに影響する要因とは
2LDKや3LDKなどファミリー層向けのマンションは注目されやすいので、同時に売却活動を進めている競合物件が多く出回っています。
そのため、間取り以外にも購買意欲を刺激するような魅力をアピールすることが重要です。2LDKや3LDKのマンションで、売却に影響を及ぼす要因について解説していきましょう。
リビングが広い
2LDKや3LDKのマンションでは、リビングの広さが大きなポイントになります。
現在の市場では、部屋の数よりもリビングの広さが重視される傾向があります。友人や知人を招いてのホームパーティを習慣とする人が増えている一方、反対に家族での団らんの時間を大切にする人も少なくありません。生活習慣に即して活用幅が広がるため、リビングの広いマンションが人気物件となるのです。
築年数の古いマンションで、購入後にリノベーションで間仕切りを撤去して、広めのリビングに改装する人が増えているのも、リビングの広さを重視する表れだといえます。
収納スペースがある
マンションでは収納スペースの有無が重要なポイントになります。
一戸建てでは、平面上の空きスペースや階段下、屋根裏、屋外などを利用して収納スペースを設けることができますが、マンションでは、都合の良いスペースが発生しないため、広い収納スペースのある物件は人気があります。
特に人気が高いのがウォークインクローゼット(WIC)です。洋服を大量に所有している人や、ゴルフやキャンプ、冬季スポーツなどのアウトドア用品を所持している人にとって、大きな魅力になります。
自由に使える屋外ス ペースがある
自由に使える屋外スペースに着目する人もいます。
マンションの1階は防犯上の観点から敬遠する人もいますが、専用庭がある物件だと、ガーデニングや菜園が楽しめることや、ビニールプールで水遊びができるといったメリットに惹かれて購入する人もいるでしょう。
また広めのバルコニーがあるタイプは、小さなテーブルを囲って家族や友だちと食事を楽しんだり、ロッキングチェアを置いてリラックスしたりと、誰にも邪魔されない時間を楽しむことができます。
さらに最上階のルーフテラスだと、より開放的な使い方で休日を楽しむことが可能です。
特に子育て世帯では、専用庭が付いた1階や、広めのバルコニーを有した物件に人気が集まります。
リビングが南向き
マンションで過ごす時間の多い世帯にとって、リビングが日当たりの良い南向きであることは、大変重要です。広告で南向きのリビングを強調することで、高値の売却に結び付く可能性が高くなります。
マンションでは、日当たりと合わせて眺望を重視するので、高層階であることがステータスとなります。「海が見える」「恒例の花火大会が見られる」といった、レアな光景が自宅にいながら鑑賞できることも、大きな魅力といえるでしょう。
一方で、日当たりの悪い北向きや日照時間が限定される東向きは低めの査定になりがちです。西向きは日当たりはよいのですが、猛暑に西日が差し込んで冷房費がかさむことから敬遠されることがあります。
50平方メートル以上の物件
50平方メートル以上の物件だとマンション購入するときの住宅ローンに対するメリットがあります。
住宅の床面積が50平方メートル以上の物件は、毎年の住宅ローン残高の1%が10年間にわたり所得税から控除される「住宅ローン減税制度」による減免措置が受けられます。
入居した翌年の確定申告の時に、税務署に必要書類を提出することで控除が受けられます。
その翌年以降は、勤務先にローンの残高証明を提出すれば、年末調整で控除可能です。
「住宅ローン減税制度」のポイントになるのが、登記簿に記載されている面積が50平方メートル以上であることです。
登記簿上の面積とは、部屋の内側の壁からの面積を測った数値です。広告に記載されている「専有面積」とは異なります。登記簿面積の方が専有面積よりも小さくなるので、住宅ローン減税を受けるためには、必ず登記簿面積を確認するようにしてください。
間取り以外に売却に有利な要素とは
間取りは販売価格を決定する重要な要素ですが、同じ間取りでも販売価格が異なるのは、他にも価格に影響する重要な要素があるからです。売却を検討する際に、間取り以外にどのような要素が、物件の価格に影響するのか解説していきましょう。
最寄りの駅までの距離が近い
マンションを選ぶ際には、最寄りの駅までの距離が非常に重要なポイントになります。
最寄り駅から徒歩7分以内、距離にして560メートル以内にあるマンションは、高めの査定額が出やすいです。
駅の位置づけも価格に影響します。急行、快速電車の停車駅であったり、始発駅であったりすると人気があるので、査定に反映される可能性が高くなります。