不動産の売却を検討して相場を調べようと思ったときに「実勢価格」というワードを目にしたことはあるでしょうか。
実勢価格とは「実際に取引が行われた値段」のことですが、土地につく価格は他にも公示地価や基準地価などがあり、それぞれの意味を知っておくと不動産相場への理解が深まります。
この記事では土地の実勢価格の特徴や調べ方、他の価格との違いについて紹介しています。
土地の実勢価格とは
土地売買で重要な指標となる価格が「実勢価格」になります。
実勢価格は、実際の取引価格をもとに算出しているため、相場に近い金額です。
土地を売買するのであれば、実勢価格の把握は不可欠です。
実際の売買に使われている価格である
土地の実勢価格とは、実際に売買された価格から算出されるものです。
市場で取引が成立した価格であり、その周辺の土地の価値を算出する際の参考指標になります。
不動産会社が土地価格を算出する際にも実勢価格が用いられます。
実勢価格は需給バランスによって変動するため、土地に需給があれば高騰し、市場の取引価格も高値が期待できます。
ただし、実勢価格はこれまでの取引価格をもとに算出しているため、将来の値段を約束するものではありません。
また、過去取引の平均的な価格であるため、実際に取引する土地の形状やその他条件によって、価格に差が出ることも多いです。
SUUMOやHOME’Sといった不動産ポータルサイトでは物件の販売価格が確認できますが、ポータルサイトに掲載されている値段は売主が設定した販売価格となり、そこから値引きが行われることもあるので実勢価格とは異なります。
国土交通省のデータベースで調査可能
実勢価格の代表的な調べ方が、国土交通省の「不動産 情報ライブラリ(旧:土地総合情報システム)」を使って調べる方法です。
不動産情報ライブラリでは、地域を指定して過去の取引事例から以下のような項目を確認可能です。
- 地域
- 最寄駅
- 取引額
- 坪単価
- 面積
- 前面道路
- 都市計画
- 建ぺい率
- 容積率
- 取引時期
不動産情報ライブラリの使い方は下記記事で詳しく解説しています。

土地の実勢価格を調べる方法は、他にも以下のような方法があります。
- レインズで調べる
- 不動産会社に査定してもらう
レインズで調べる
「レインズ」とは宅建業者専用の不動産情報サイトのようなものですが、「レインズマーケットインフォメーション」というサイトで一般向けにも過去の成約情報が公開されており、11万件以上(2020年3月時点)の取引情報を検索できます。
なお、先ほど挙げた不動産情報ライブラリは、レインズの成約データも参照しているため、同等の情報を確認可能です。
相場を調べたい土地周辺の過去の取引情報から、実勢価格を導き出すことが可能です。

不動産会社に査定してもらう
不動産会社に査定を依頼すると、上記で挙げたような情報を元に査定額を算出してもらえます。
査定額も「売れることを保証する金額」ではありませんが、実勢価格を参考に「このぐらいで売れそうだ」という目安として算出されます。
一括査定サイトなどを活用すると複数業者の査定額が確認でき、相場価格との妥当性も確認できるので便利です。
上記の方法は、いずれも費用は無料なので気軽に利用できます。
国・都道府県から発表される3つの土地価格
固定資産税や相続税の計算に用いるために国から発表される土地の価格も、土地の値段を知るために利用できますが、基本的には実際に取引が行われた実勢価格を参考に算出されるものです。
- 公示地価
- 基準地価
- 路線価
上記3つの指標について、その性質と役割を見ていきましょう。
公示地価
国から公表される、1月1日時点での「標準地」の評価額が公示地価で、毎年3月下旬に発表されます。
全国2万6,000地点以上の標準地を、1地点につき2人以上の不動産鑑定士が鑑定し、鑑定評価を国土交通省土地鑑定委員会が審査して評価額が決まります。
公共事業用地を取得する際に基準となるなど、取引価格の目安になっているものです。
なお、公示地価は実勢価格を参考に決定されており、公示地価のおよそ1.1〜1.2倍が実勢価格になると言われています。
土地価格が異常に高騰すると国民経済へ悪影響を与えるため、適正な土地価格を形成することを目的として公示地価が算出されるようになりました1。
公示地価は毎年公示されるため、変動がわかりやすいのが特徴です。
公示地価は、国土交通省の「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」で調べることができます。
公示される際に、住宅地・商業地・宅地見込地・準工業地・工業地・市街化調整区域内宅地・市街化調整区域内林地に分類されます。
なお、公示地価の調査地点は「都市やその周辺地域」と限定されているため、都市周辺以外の地価は次に説明する「基準地価」で知る必要があります。
基準地価の意味と役割
基準地価は、「都道府県が選んだ基準地1㎡あたりの価格」のことです。
調査主体は都道府県で、毎年7月1時点の評価が9月下旬に公表されます。
全国2万地点以上の基準地を、1地点につき1人以上の不動産鑑定士が鑑定を行い評価します。
基準地価は、公示地価と同じく適正な土地価格の形成を目的としています。
公示地価との大きな違いは「都市以外も含む土地の価格」がわかることです。
基準地価は、国土交通省の「国土交通省地価公示・都道府県地価調査」で調べることができます。
下記のサイトでは毎年の基準地価のデータを確認でき、便利です。

路線価
路線価とは、「道路に面する土地1㎡あたりの価格」のことです。
調査主体は国税庁で、毎年1月1日時点の評価が7月1日に公表されます。
- 相続税路線価
- 固定資産税路線価
相続税路線価は贈与税や相続税の算出に用いられます。
固定資産税路線価は固定資産税や都市計画税、不動産取得税や登録免許税の算出基準になります。
このように、税金の算出基準となるのが路線価の特徴・役割です。
なお、通常「路線価」と言及される場合は「相続税路線価」を指すのが一般的です。
また、公示地価を基準とした場合、相続税路線価と固定資産税路線価の価格は次のとおりです。
- 相続税路線価:公示地価の8割程度
- 固定資産税路線価:公示地価の7割程度
路線価は、地価公示価格や実勢価格、不動産鑑定士等による鑑定評価価額などをもとにして決められます。
路線価は国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で調べることが可能です。
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実勢価格と国や自治体が出す地価の違い
公示地価や基準地価、路線価などの価格と実勢価格は、価格の算出方法や役割、更新スピードなどに違いがあります。
どのような違いがあるのかを把握すれば、それぞれの価格を適切に使えるようになります。
国や自治体の出す価格は目安
公示地価や基準地価など、国や自治体が出す価格はあくまでも目安です。
実勢価格は実際に取引が行われなければ算出できませんが、「公示地価」を100%としたとき、おおむね110~120%の価格になります。
そのため、これらの価格は市場の取引価格と差があります。
所有する土地の評価額が、どれくらいなのかを知る参考指標にはなりますが、実際の取引価格とは差が出ることを理解しておきましょう。
なお、取引の事例があまり見つからない地方の不動産売買では、基準地価や路線価が査定に用いられるケースもあります。
実勢価格は売買価格
土地を売買する際に確認したいのが実勢価格です。
実際の取引価格をもとにした価格なので、市場価格に非常に近い金額になります。
そのため、市場価格と乖離が大きい国や自治体の価格より、実勢価格の方が売買時の参考になります。
先に紹介した通り、実勢価格の調べ方は大きく3通りあるため、やりやすい方法で調べましょう。
実勢価格はリアルタイムで更新されるが、国などの地価はタイムラグが有る
公示地価や基準地価、路線価は不動産鑑定士が調査地点を鑑定するなどして、評価額を決定します。
そして、それぞれの価格は以下のように評価時期と発表時期に2ヶ月〜半年間のタイムラグが発生します。
公示地価
- 評価時期:毎年1月1日時点
- 発表時期:毎年3月下旬
基準地価
- 評価時期:毎年7月1日時点
- 発表時期:毎年9月下旬
路線価
- 評価時期:毎年1月1日時点
- 発表時期:毎年7月1日
一方で、実勢価格は過去の取引価格をもとにした平均価格であ るため、指定地点を調査員が鑑定する必要がありません。
すぐに価格更新ができるため、リアルタイムで確認できます。
他の価格と実勢価格では、更新・確認できるスピードが異なります。
まとめ
今回は、土地の実勢価格の特徴や調べ方、他の価格との違いをご紹介しました。
実勢価格とは、実際の取引価格をもとに算出していて市場相場に近く、売買時の参考になる価格です。
公示地価や基準地価、路線価のように市場価格との差がなく、更新スピードが早いことが特徴になります。
適切な価格で土地を売買したいのであれば、押さえておくべき価格です。
土地を売買する際は、公示地価、基準地価、路線価、実勢価格と、それぞれが示す価格や役割の違いを把握しておくようにしましょう。