離婚の財産分与では不動産の評価額を巡ってトラブルになるケースがあります。
トラブルを避けるには夫婦どちらも納得できる評価額の提示が重要であり、不動産鑑定を受けるのも1つの方法です。
とはいえ、不動産の評価の仕方にはいくつか種類があり、必ずしも不動産鑑定が必要なわけではありません。
この記事では、離婚時の財産分与での不動産価値の決まり方や価値の具体的な調べ方、不動産鑑定の必要性などを分かりやすく解説します。
離婚時の財産分与で不動産価値はどう決まる?
離婚時の財産分与では、不動産を含め婚姻後に取得した財産を原則1:1で公平に分けることになります。
しかし、現金のように価値が明確に分からない不動産は、財産分与時に価値を巡ってトラブルになりがちです。
まずは、財産分与で不動産価値をどのように決めるのかを確認していきましょう。
不動産の評価額は複数存在する
土地や建物は「一物五価」と呼ばれるように、一つの不動産に対して複数の評価額が存在します。
主な評価額は以下の5つです。
- 実勢価格
- 公示地価
- 基準地価
- 相続税路線価
- 固定資産税評価額
実勢価格とは、実際に取引のあった価格であり、いわゆる時価です。
それに対して公的な土地の評価額である公示時価や基準地価、税金算出の基となる層族税路線価や固定資産税評価額なども不動産の評価額を示します。
しかし、同じ不動産であってもそれぞれが示す評価額は異なります。
たとえば、実勢価格は公示地価の1.1~1.2倍、相続税路線価は公示地価の8割ほどが目安です。
仮に、公示地価が1,000万円なら実勢価格は1,200万円ほど、相続税路線価は800万円ほどということになります。
実勢価格は実際に取引が行われなければ算出できませんが、「公示地価」を100%としたとき、おおむね110~120%の価格になります。
どれも不動産の評価額には違いませんが、どの評価額を用いるかは用いる目的に応じて使い分ける必要があるのです。
時価で判断するのが一般的
時価とは、その時点において市場で売買が成立する価格です。
つまり、今売却したらいくらで売れるのかという価格になります。
離婚では家を売却したり活用したりが多いため、実際に売れる価格である時価を用いるのが一般的です。
後ほど詳しく解説しますが、時価を調べるには過去の取引事例を調べる、不動産会社の査定や不動産鑑定を受けるといった方法があります。
不動産会社の査定か不動産鑑定であれば、市場動向や類似物件の取引事例も考慮されるのでより適正価格に近い時価の算出が可能です。
当事者同士の合意があればどの評価額を採用しても問題ない
離婚時の財産分与では時価を用いるのが一般的ですが、当事者の合意があればどの評価額を用いても問題ありません。
しかし、財産分与での不動産の評価額は重要なポイントです。
たとえば、実際には2,000万円の価値の不動産を3,000万円として財産分与するとします。
この際、どちらか一方が不動産を取得し、もう片方に代償金として1,500万円を支払うことになれば、取得した方は本来なら1,000万円で済む代償金を500万円余分に支払うことになります。
反対に、不動産の価値を1,000万円として財産分与すると、代償金は500万円となり代償金を受け取る側は500万円の損失です。
財産の中でも高額な割合を占める不動産は、評価額によって得られる財産も大きく変わってきます。
財産分与の額はその後の生活にも大きく関わってくるため、一方的に不利益を被ると後々大きなトラブルになる可能性があるのです。
そのため、当事者が納得できる評価額を用いることが重要になってきます。
家の価値を調べる方法
ここでは、財産分与で家の価値を調べる代表的な方法として、以下の3つをご紹介します。
- 時価を調べる方法
- 固定資産税評価額を調べる方法
- 相続税路線価を調べる方法
それぞれ見ていきましょう。
時価を調べる方法
時価を調べる主な方法は、以下の3つです。
- 過去の類似取引の価格を調べる
- 不動産査定を受ける
- 不動産鑑定を受ける
過去の類似取引の価格を調べる
国土交通省の不動産情報ライブラリでは、過去の取引事例が調べられるので、類似物件を調べるとおおよその相場が把握できます。
しかし、類似物件であっても自分の不動産とは条件が異なるため、相場と時価が大きく異なる可能性がある点には注意しましょう。
より、自分の不動産にあった時価を調べたいなら、不動産会社の査定か不動産鑑定がおすすめです。
不動産査定を受ける
不動産会社の査定とは、不動産会社が家の価値(いくらで売れるか)を算出することをいいます。
不動産会社の査定は不動産会社に依頼することで受けられます。
基本的に無料で受けられますが、売却を前提としていない査定には応じてくれないのが一般的です。
また、依頼する不動産会社によって査定額は大きく異なるので、複数査定する価格を比較することをおすすめします。
不動産鑑定を受ける
一方、不動産鑑定とは国家資格を有する不動産鑑定士が、不動産の評価額を算出する方法です。
不動産鑑定士事務所などに依頼して受けることができます。
不動産鑑定は法律に基づいて正確な評価額を算出するため、裁判資料など公的な証拠書類としても有効です。
しかし、不動産鑑定は有料であり、数十万円ほど費用がかかる点には注意しましょう。
▼関連記事:離婚で家の査定書が欲しい時はどうすれば良い?査定依頼から売却までの流れを解説
固定資産税評価額を調べる方法
固定資産税評価額とは、毎年課税される固定資産税を算出する基となる評価額です。
自治体によって不動産一つずつ評価額が算出されています。
固定資産税評価額は、毎年送付される固定資産税納税通知書の課税明細書を確認すれば把握できます。
または、自治体の窓口で固定資産課税台帳の閲覧や評価証明書を取得することでチェック可能です。
なお、固定資産税評価額は時価の7割程度になります。
つまり、実際に売買すると3,000万円の家の固定資産税評価額は、2,100万円程度になるということです。
そのため、離婚にともない売却するケースでは、固定資産税評価額を用いて財産分与すると不公平感が生じることもあるので注意しましょう。
なお、以下の計算式で固定資産税評価額から時価を推測することができます。
▼関連記事:固定資産税評価額から売値を推測する方法
相続税路線価を調べる方法
相続税路線価とは、国税庁が定める主要道路に面した1㎡あたりの土地の価格です。
相続税や贈与税を課税する際の評価額を求めるときに利用されます。
相続税路線価は、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で調べることが可能です。
所在地を検索すると地図上に路線価が表示されるので、地積を掛ければおおよその評価額が算出できます。
なお、路線価が定められていないエリアは倍率方式で評価額を算出します。
倍率方式では、エリアごとに定められた倍率を固定資産税評価額に乗じれば評価額の算出が可能です。
相続税評価額は相続税路線価、路線価が無い場合は倍率方式で算出される。
なお、相続税路線価も固定資産税評価額同様、時価よりも低くなるので、財産分与で用いるかは慎重に話し合うようにしましょう。
▼関連記事:不動産の評価額はどう決まる?路線価・公示価格・基準地価などの評価基準を解説
離婚時の財産分与で不動産鑑定する必要はある?
離婚時の財産分与で時価を調べる主な方法には、不動産鑑定と不動産会社の査定の2種類があります。
不動産鑑定の方が効力はあり適しているように思えますが、実際はどうなのでしょうか。
一般的な財産分与では不要なケースが多い
大きなトラブルがない一般的な財産分与であれば、不動産鑑定ではなく不動産会社の査定で問題ありません。
とくに、離婚にともない売却して売却金を分けるといったケースであれば、より売却額に近い不動産会社の査定の方が適正しています。
不動産会社の査定は無料で受けられるので、依頼料の捻出が難しい場合も不動産会社の査定を検討するとよいでしょう。
ただし、不動産の価値が高額、特殊な不動産、収益不動産が含まれるといったケースでは、後々のトラブルを避けるためにも不動産鑑定をおすすめします。
また、不動産会社の査定は基本的に売却が前提となるので、どちらかが住み続ける場合も不動産鑑定が適しているでしょう。
▼関連記事:不動産鑑定士による査定が必要になるケース
評価額を巡って意見が対立している場合には不動産鑑定が有効になりやすい
不動産会社の査定は不動産会社独自の基準で算出され依頼先によって額が大きく異なるため、評価額や査定方法を巡ってトラブルになりがちです。
一方、不動産鑑定は法律に基づいて評価額が算出されるので不動産査定ほど大きく額が異なることはありません。
そのため、評価額や評価方法を巡ってトラブルが予測される場合は、不動産鑑定を受ける方がよいでしょう。
仮に、不動産会社の査定で財産分与する場合は、公正証書に査定方法についても双方合意している旨を残しておくことでトラブルを避けやすくなります。
離婚調停や財産分与を裁判所で争うときは鑑定結果が重要な判断資料となる
離婚や財産分与は当事者の話し合いで決まりますが、話し合いで解決できない場合、裁判所の調停や審判で解決を目指すことになります。
この際、財産分与の判断資料として用いることができるのは、不動産鑑定士の鑑定書です。
不動産会社の査定書には証拠能力がなく、公的な資料としては認められないケースがあります。
そのため、裁判が関わってくる場合は法的な効力のある不動産鑑定を受ける必要があります。
離婚時の財産分与で不動産鑑定を依頼する方法
ここでは、不動産鑑定の依頼方法を詳しくみていきましょう。
不動産鑑定を依頼する方法には、「任意鑑定」と「裁判所による鑑定」の2種類があります。
任意鑑定
任意鑑定とは、裁判手続き以外で不動産鑑定士に鑑定を依頼する方法です。
一般的に不動産鑑定を依頼する場合は任意鑑定の方法になります。
任意鑑定の場合、まずは不動産鑑定を行っている事務所などに問い合わせします。
問い合わせ時に大まかな費用や期間、評価額の水準などが提示されるので納得できたら依頼しましょう。
依頼後は、スケジュールなどの打ち合わせを行い不動産鑑定が行われ、鑑定後に鑑定書が交付されます。
不動産鑑定は法律に基づいて算出されるため、一定の範囲 に価格が収まる傾向にありますが、鑑定士によって金額が前後することもあります。
また、依頼先によって費用も大きく異なります。
不動産鑑定を依頼する場合は、実績や費用などを調べたうえで信頼できる依頼先を見つけることが大切です。
裁判所による鑑定
裁判所による鑑定とは、調停や審判の際に必要に応じて裁判所が不動産鑑定を依頼する方法です。
双方で評価額が大きく食い違うといった場合に、裁判所による鑑定が実施されます。
裁判所による鑑定だからと言って任意鑑定と評価額が大きく異なることはないでしょう。
しかし、裁判所を介して不動産鑑定を行う場合、任意鑑定よりも費用がかかる可能性がある点には注意が必要です。
一般的な財産分与であれば時価が分かれば問題ないため、不動産鑑定ではなく不動産会社の査定で十分です。
ただし、査定依頼する不動産会社によって価格は大きく異なるので、複数比較して相場を把握することで公平な財産分与を行いやすくなります。
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まとめ
離婚時の財産分与では、不動産の評価額にどちらかが納得できないと大きなトラブルになる恐れがあります。
一般的には時価を用いて不動産の価値を判断しますが、時価の調べ方には不動産鑑定と不動産会社の査定の2種類があります。
離婚で裁判になる、価格を巡ってトラブルが予測できる場合は、公的な資料にできる不動産鑑定を受ける方がよいでしょう。
一方、一般的な財産分与であれば不動産会社の査定で問題ありません。
とくに、離婚にともない家を売却するなら不動産会社の査定の方が適しています。
不動産会社の査定額は依頼先によって異なるので、できるだけ多く比較しトラブルのない財産分与を目指しましょう。
▼関連記事:離婚で家を売る際に買取が適したケースとは?