「不動産を相続したけどどう分割すればいい?」
不動産は現金のようにきっちり分割できないので、相続時にトラブルになりやすいものです。
スムーズに分割方法を決めるためにも、査定で不動産の価値を明確にしておく必要があります。
この記事では、相続時に不動産査定が必要な理由や査定の流れ、注意点などを分かりやすく解説します。
相続した不動産はまずは査定をしたほうがいい理由とは
相続した不動産を査定したほうがいい理由は以下の3つです。
- 相続税の目安を知ることができる
- 相続放棄するか判断しやすくなる
- 遺産分割協議をスムーズに進めやすくなる
それぞれ見ていきましょう。
相続税の目安を知ることができる
相続税は、プラスの財産からマイナスの財産を差し引いた額が相続税の基礎控除を超えると、超えた部分に課税されます。
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」です。
たとえば、法定相続人が配偶者と子ども2人なら3,000万円+600万円×3人=4,800万円が基礎控除となり、この額を超えた部分に相続税がかかるのです。
相続税を計算する際に、プラスの財産には土地や家といった不動産も含まれます。
不動産は現預金のように明確な金額が把握しにくいため、査定で価格を把握しておくと相続税の目安を計算しやすくなります。
ただし、相続税を計算する際の不動産の評価額は市場価格ではなく相続税評価額になります。
相続税評価額は市場価格の7~8割ほどになるのが一般的なため、査定額よりも相続税計算時に使用する価格が下がることは覚えておきましょう。
土地部分の相続税評価額は相続税路線価、路線価が無い場合は倍率方式で算出される。建物部分は、原則として固定資産税評価額が相続税算出のために用いられる。
より正確な相続税額を知りたい場合は、税理士に相談することをおすすめします。
相続放棄するか判断しやすくなる
相続財産が借金しかない場合は、相続放棄を検討することになります。
しかし、相続財産に不動産が含まれていると、財産がプラスになるかマイナスになるかの判断が難しくなります。
不動産の売却価格は市場にも左右されるため、相続時点での価値が見込と大きく異なる可能性があります。
売却すればマイナスが解消できると思って相続しても、価格が見込みより低ければ、売却後に借金を背負うことになるでしょう。
反対に、相続放棄を決めた後に資産価値が高いと分かっても、手続き後であれば取り消すことはできません。
査定で正しい価値を理解することで、相続放棄すべきかどうかの判断を付けやすくなるのです。
なお、相続放棄ができるのは「相続開始があったことを知った日から3か月以内」という期限があります。
相続放棄を検討している場合は、速やかに査定し判断するようにしましょう。
遺産分割協議をスムーズに進めやすくなる
遺言書がない相続では、相続人全員による「遺産分割協議」で分割方法を決めることになります。
この際、不動産の正確な価値が分からないと、公平な遺産分割ができません。
たとえば、相続人である子ども2人で2,000万円の実家を相続するケースをみてみましょう。
不動産の分割方法にはいくつか種類がありますが、ここでは子どものうち1人が実家を相続する場合で考えてみます。
この場合、片方は2,000万円の不動産を取得するので、もう片方は現預金など別の相続財産から2,000万を取得することができます。
あるいは、不動産を取得するほうが取得しない方に代償金として1,000万円を支払うという方法も可能です。
とはいえ、いずれの方法であっても不動産の価値が明確に分かっていることが前提となります。
相続時に何となくこの位の価格だろうで遺産分割すると、後で正確な価値が判明し損得が発生することで大きなトラブルになる恐れがあるので注意しましょう。
相続した不動産を査定する流れ
ここでは、相続発生から不動産を相続するまでの流れをみていきましょう。
大まかな流れは以下のとおりです。
- 遺言書の有無の確認
- 相続財産・相続人の確認
- 不動産会社に査定依頼する
- 遺産分割協議
- 相続登記
それぞれ見ていきましょう。
遺言書の有無の確認
相続は遺言書が優先されます。
遺言書に不動産の相続人が明記されていれば、その人が相続することになるのでまずは遺言書の有無を確認しましょう。
以下のようなケースでは、遺産分割協議で分割方法を話し合う必要があります。
- 遺言書がない
- 遺言書に記載のない財産がある
- 遺言書とは異なる分割方法にしたい
相続財産・相続人の確認
遺産分割協議を行う前に、相続人と相続財産を調査し確定させます。
遺産分割協議時には相続人全員の合意が必要になり、協議後に新たに相続人が判明すると協議のやり直しが必要です。
そのため、遺産分割協議前に被相続人(亡くなった人)の戸籍を遡って相続人を特定しておくようにしましょう。
また、遺産分割協議で話し合うためにも、相続財産を正確に把握しておく必要があります。
不動産の場合は、所在地などの状況だけでなく住宅ローン残債の有無まで確認しておきましょう。
住宅ローン残債がある場合、残債が相続対象となるので注意が必要です。
ただし、被相続人が団体信用生命保険に加入していれば保険金で残債が一括返済されるので、相続人が住宅ローンの返済義務を負うことはありません。
不動産会社に査定依頼する
遺産分割協議をスムーズに行うためにも、早い段階で不動産会社に査定依頼をしておきましょう。
査定を依頼する方法としては、直接不動産会社に依頼するか、一括査定を依頼するかの2種類があります。
直接不動産会社に依頼すれば、遺産分割協議や相続税などの対応も相談できる場合があります。
一方、一括査定サイトであれば、一度の入力で複数の不動産会社の結果を比較できるので、手軽におおよその価格の把握が可能です。
どの不動産会社に相談すればいいのか分からない、できるだけ多く比較したいという場合は一括査定サイトがおすすめです。
複数社の査定で適正価格をチェック
イエウリ の不動産査定はこちら
遺産分割協議
どの財産をどのように分割するかを、相続人で話し合い決めていきます。
不動産を分割する場合、以下の方法から選ぶことになります。
- 現物分割:相続財産をそのままの形で相続する
- 代償分割:一人の相続人が不動産を相続し他の相続人に代償金を支払う
- 換価分割:相続財産を現金化し相続人で分割する
- 共有分割:相続人全員で共有財産として保有する
どの分割方法が適しているかは相続状況によっても異なるので、相続人でしっかり話し合って決めるようにしましょう。
不動産を相続したい人がいないなら、売却して分割する換価分割が、トラブルを避けてスムーズな相続をしやすくなります。
不動産を売却したお金を分配する「換価分割」であれば、公平に遺産を分割しやすい。
換価分割では売却が必要になるので、信頼できる不動産会社に相談しながら進めるとよいでしょう。
遺産分割協議で合意した内容は、遺産分割協議書に記録しておくことが大切です。
遺産分割協議書は、その後の相続登記などの手続きで必要になります。
相続登記
相続登記とは、不動産の名義を被相続人から相続人に移転する登記手続きです。
遺産分割協議で不動産を相続する人が決まれば、相続登記手続きを進めましょう。
なお、相続登記は義務化されており、相続後3年以内の登記が必要です。
期限内の登記を怠るとペナルティが科せられる恐れもあるので、速やかに手続きを行いましょう。
相続登記は自分で手続きすることも可能ですが、司法書士に依頼することもできます(司法書士への報酬数万円と、登録免許税などの費用が発生)。
自分で査定額を調べる方法
不動産会社に査定してもらえば価格は分かりますが、その前に自分でもある程度価格を把握しておくことが大切です。
不動産会社の査定は、依頼する会社によって価格が大きく異なります。
自分で価格を把握しておくと、査定額の妥当性の判断が付けやすくなるでしょう。
自分で査定額を調べる方法としては以下の3つがあります。
- 大手不動産情報サイトで近隣の物件を調べる
- 国土交通省のサイトで成約価格を調べる
- 公的価格を調べる
それぞれ見ていきましょう。