不動産の査定額は根拠の確認が非常に重要です。
根拠が明確になっていれば精度の高い査定と判断できるため、不動産売却を有利に進められます。
しかし、不動産売却が初めての方は、不動産会社が提示した査定額を鵜呑みにしてしまう人も少なくありません。
極端に高い価格で売り出してしまうと、なかなか売れずに長期化する恐れもあります。
そこで本記事では、不動産査定を失敗しないためのコツや根拠の聞き方などを詳しく解説します。
不動産査定を検討している方や査定をすでに受けた方などは、ぜひ参考にしてください。
不動産の査定額は本当に信用できるのか
不動産会社による査定は必ずしも信用できるとは限りません。
査定額は、物件の状態や市場の動向、過去の取引事例などを基に、不動産会社が「このくらいで売れるだろう」と見積もった金額です。
しかし、最終的な売却価格は、買い手との交渉や市場の需要によって変わります。そのため、査定額が高いからといって、その価格で確実に売れるわけではないのです。
金額そのものの高低ではなく「高く売る方法・戦略があるか」を根拠を持って説明してもらえるかを確認しましょう。
不動産会社を選ぶ際には、提示された査定額の根拠をしっかりと確認し、信頼できる会社を選ぶことが重要です。
複数の会社に査定を依頼し、各社の査定額や説明を比較することで適切な判断ができるでしょう。
不動産会社によって査定額が異なる理由
依頼する不動産会社によって査定額は異なりますが、その理由は以下が考えられます。
- 査定基準が違うから
- 営業戦略が違うから
- 地域の知識や経験が違うから
それぞれを詳しく解説します。
査定基準が違うから
不動産会社によって独自の基準やマニュアルを用いて査定を行っており、物件の評価方法や重視するポイントが異なります。
例えば、ある会社は過去の取引事例を重視し、別の会社は市場動向や地域の特性を重視する場合があります。
また、同じ物件でも比較対象とする事例の選び方や、評価の仕方によって査定額に差が生じます。
さらに、会社の営業方針や戦略によっても査定額が変わるケースがあります。そのため、複数の不動産会社に査定を依頼し、各社の査定基準や根拠を確認することが重要です。
営業戦略が違うから
不動産会社は、それぞれの営業方針やターゲットに応じて査定額を決めています。
そのため、「売主が売却を急いでおらず、新居探しも含めて売却にかける時間がある」といったケースでは、市場価格よりもやや高め「チャレンジ価格」 と呼ばれる査定額が提示されることがあります。
一方で、別の会社は早期売却を重視し、現実的な相場価格を提示することもあるでしょう。
また、広告や販売手法の違いも査定額に影響を与えます。
例えば、積極的に宣伝活動を行い、多くの買主を集められる会社は、比較的高めの査定額でも売却できる可能性があるため、査定額が高くなる傾向があります。
このように、不動産会社ごとの営業戦略や販売手法の違いによって、査定額に差が生じることがあるのです。
地域の知識や経験が違うから
地域密着型の不動産会社のように、地域の特性や市場動向を深く理解している会社は、適切な価格設定が可能です。一方、その地域の情報が不足している会社では、査定額が実際の市場価格とズレる場合があります。
特に、大手不動産会社は全国展開している一方で、一つひとつの地域の特性や魅力の知識については、地域密着型の不動産会社と比べて劣っているケースがあります。
大手と中小でメリットとデメリットがあるため、査定依頼する際は複数の不動産会社へ相談するのがよいでしょう。
不動産の査定額が高すぎる際の注意点
不動産会社の査定によっては相場より高く査定してくれる場合があります。しかし、極端な高額査定には以下のリスクがあります。
- 買い手に敬遠されやすくなる
- 当初の売却スケジュールが乱れる
- 売れ残り物件として認知される恐れがある
それぞれを詳しく解説します。
買い手に敬遠されやすくなる
査定額が極端に高いと買い手が敬遠し、売却の機会を逃す恐れがあります。
購入希望者は予算内で物件を探しており、相場より高い価格設定の物件は選択肢から外されがちです。
その結果、問い合わせが減り、売却までの期間が長引く可能性があるのです。
売却が長期化すると、その間にも固定資産税や管理費などの支払いは続き、経済的な負担が増すことになります。
そのため、査定額が高すぎると感じた場合は、複数の不動産会社に査定を依頼し、適正な価格を見極めることが重要です。
当初の売却スケジュールが乱れる
高額査定により買い手が現れなくなれば売却が長引くため、当初の売却計画が乱れるかもしれません。
スケジュールが乱れれば、予定していた資金計画や新居への引っ越し時期などに支障をきたす場合があります。
さらに、売れない期間が続くと物件の印象が悪くなり、後で価格を下げても買い手の関心を引きにくくなることもあるのです。
スケジュールどおりに売却するためにも、市場相場を自分で調べたり他の不動産会社の査定額と比較したりして、適正価格を把握しておくようにしましょう。
売れ残り物件として認知される恐れがある
極端な高額査 定により売れない期間が続くと、物件に対する印象が悪くなります。
そうなると、購入希望者に「何か問題があるのでは?」と疑われ、値下げをしても売れにくくなる恐れがあるのです。
売れ残り物件として印象付いてしまうと、その後も売れにくくなるため、当初の計画が乱れるだけでなく、そもそも売却できなくなるかもしれません。
このような状況になった場合は売り出すのを一度止めて、実需の不動産取引が活発になる繁忙期(2~3月ごろ)に成約を狙って再度売り出すなどの工夫が求められます。
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不動産の査定額は根拠の確認を欠かさないことが重要
不動産会社によって査定額が異なるとお伝えしましたが、査定額の根拠が明確になっているかどうかも重要です。
提示された査定額が信用できるかどうか判断するためにも、以下の2点を確認しておきましょう。
- 担当者に査定額の根拠を聞いてみる
- 根拠が曖昧な場合は信用できない
担当者に査定額の根拠を聞いてみる
査定額を確認する際、担当者に根拠を尋ねることは非常に重要です。
査定額は、近隣の取引事例や公的な価格情報をもとに算出されます。また、特に戸建て住宅の建物部分の評価には、同じものを新たに建てる際の費用から、経年による価値の減少分を差し引く方法も用いられます(原価法)。
これらの情報をもとに査定額がどのように導き出されたのかを理解することで、「本当にこの査定額は信用できるのか」を判断できるでしょう。
「近隣の相場情報からは3,000万円程度が適正価格だと予想されるが、現在売り出し中の競合物件と比較して優位性がある(高層階・設備が良い・日当たり良好・駐車スペースが大きい)から高値での売却が狙える」という根拠であれば、高い査定額でも一定確率での成約が考えられます。
一方で、根拠なしに「相場より10%程度高めから販売してみても良いかもしれません」といった内容であれば、結局その値段では売れずに値下げを強いられる確率が高いと考えられるでしょう。
根拠が曖昧な場合は信用できない
根拠が曖昧な場合は、査定額が適切でない可能性があるので注意しましょう。
前述のように、査定額を算出するにはいくつかの方法を用いることが一般的です。
しかし、具体的な方法を説明できなかったり説明が曖昧だったりすれば、適切な方法で査定していない可能性があります。
担当者によって査定方法や経験、知識などが異なるため、査定額を提示されたら「なぜこの価格になったのか」をしっかり聞いておきま しょう。
不動産売却を失敗しないために媒介契約前にチェックすべきポイント
不動産売却を失敗しないためには査定の根拠を聞くだけでなく、以下の点も重要なポイントです。
- 売却相場を自分でも調べてみる
- 周辺の物件相場と比較してみる
- ほかの不動産会社の査定額と比較してみる
それぞれを詳しく解説します。
売却相場を自分でも調べてみる
売却相場を事前に調べることで、提示された査定額が適正かどうかを判断できるようになります。
調べる方法としては、「SUUMO」や「ホームズ」などの不動産ポータルサイトを利用すると、実際の売り出し物件の価格を参考にできるので、初心者の方におすすめです。
また、「不動産情報ライブラリ」を使えば、過去の成約情報が掲載されているため、「実際にいくらで売れたのか」を把握できます。
市場相場を把握できれば、より適正な査定額を判断できるようになるため、積極的に調べておきましょう。
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周辺の物件相場と比較してみる
周辺の類似物件が実際にいくらで売り出されているのか、または成約しているのかを調べてみましょう。
「SUUMO」や「HOME’S」などの不動産ポータルサイトでは、エリアや不動産種別、築年数や専有面積などを絞って検索できるため、類似物件の相場を把握しやすくなります。
類似物件と比較して極端に査定額が高ければ売れにくくなる可能性があるため、査定額の見直しなどが必要でしょう。
特に、間取りや築年数、設備状況が似ている場合、買主は価格を重視する可能性が高いため、類似物件の比較は非常に重要です。
ほかの不動産会社の査定額と比較してみる
ほかの不動産会社の査定額と比較することで、物件の適正な市場価格を把握でき、売却を有利に進められます。
一社だけの査定では、その会社の主観や戦略に左右される可能性があります。
特に、不動産売却が初めての方は、「この査定額は本当に信用できるのか」と判断するのが難しいかもしれません。
そのため、複数社の査定額を比較したうえで、適正な査定額を見極めることが大切です。
不動産査定額の根拠に関するよくある質問
不動産 査定額の根拠に関するよくある質問をご紹介します。
不動産査定は無料ですか?
不動産査定は基本的に無料で受けられます。不動産会社は、売買契約が成立した際に仲介手数料を受け取るため、査定自体に費用はかかりません。
ただし、より精度の高い「不動産鑑定士による査定」を受ける場合は、有料で20〜30万円前後かかります。
不動産査定があてにならないのは本当ですか?
査定額の根拠が曖昧であれば、あてにならない場合があります。
不動産会社や担当者によって査定方法や基準が異なるため、査定額に差が生じることもあります。そのため、査定額だけでなく、その根拠をしっかりと説明してもらうことが重要です。
根拠が不明確な査定は信頼性に欠けるため、慎重に判断しましょう。
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まとめ
不動産査定の根拠の重要性や査定依頼時の注意点などを解説しました。
不動産会社や担当者によって査定方法や基準などが異なるため、提示された査定額が信用できるとは限りません。
なかには媒介契約欲しさに、極端に高い査定額を提示してくる不動産会社も存在します。
精度の高い査定額を見分けるためには、担当者へ査定額の根拠を聞いたり、事前に自分で市場相場を把握したりすることが大切です。
不動産査定は、不動産売却において非常に重要な要素です。
査定額の見極めで失敗すると買い手が現れにくくなり、売却が長期化したり売れ残り物件として印象付いてしまう可能性があります。
不動産査定を検討している方は、ぜひこの記事を参考にして売却活動を進めてみてください。