親の土地をもらって家を建てる場合や、親の家を相続した場合は、不動産の名義を親から子に変更する必要があります。
しかし、名義変更のケースによっては贈与税がかかる可能性があるのです。
贈与税は高額になりがちなので、課税されるかどうかや節税方法まで押さえておくことが重要です。
この記事では、親から子への名義変更で贈与税がかかるケース、かからないケースや、安く抑える方法、注意点などを分かりやすく解説します。
親から子への家の名義変更で贈与税がかかるケースとかからないケース
親名義の家や土地は、親の資産です。
その名義を子に変更するということは、親から子への資産の譲渡にあたるので、贈与税がかかる可能性があります。
ここでは、親から子への名義変更で贈与税がかかるケース・かからないケースをそれぞれみていきましょう。
贈与税がかかるケース
贈与税がかかるケースとしては、以下が挙げられます。
- 生前の贈与で基礎控除を超えている
- 相場よりも極端に安い価格で子に売却している
親が生前中に行う子への資産の譲渡は、贈与税の対象です。
不動産の名義変更では、土地や建物などの評価を表す「不動産評価額」が贈与税の対象となります。
ただし、贈与税には年間110万円の基礎控除があり、基礎控除を超えた部分に贈与税が課税されるのです。
たとえば、評価額1,000万円の土地の名義を変更すれば、1,000万円-110万円=890万円が贈与税の対象となります。
また、親から子への売却であっても、相場よりも極端に売却額が低いと「みなし贈与」として課税される恐れがあります。
仮に、相場1,000万円の土地を100万円で子に売却すると、差額の900万円が贈与とみなされ、贈与税が課税されるのです。
相場よりどれだけ価格が低いとみなし贈与になるかの明確な基準はないので、不安な場合は不動産会社や税理士に相談するとよいでしょう。
▼関連記事:不動産を評価額より安く売ることはできる?リスクや税金の注意点を解説
贈与税がかからないケース
贈与税がかからないのは以下のケースです。
- 基礎控除以内に収まる
- 適正価格で売買する
- 相続により名義変更する
贈与税の基礎控除である110万円以下に評価額が収まるなら、贈与税は発生しません。
とはいえ、不動産の評価額が110万円に収まるケースは稀な点に注意しましょう。
また、相場価格に対して適正な価格での売買であれば贈与ではないので、課税されません。
しかし、売買の場合は親の売却利益に対して譲渡所得税が課税されるので、発生する税額はあらかじめ押さえておきましょう。
そもそも、子に不動産を購入できる資金があることも条件となってきます。
仮に、資金援助をしたとすれば、資金に対して贈与税がかかるので注意が必要です。
贈与も相続も個人の資産を譲るという点は同じですが、贈与は譲る側が生前中に行うものであるのに対し、相続は譲る側の死亡をきっかけに成立するという違いがあります。
そのため、親の死亡を理由に名義変更する場合は相続となり、贈与税は課税されません。
ただし、相続による不動産の取得は贈与税ではなく相続税の対象です。
そもそも贈与税とは
ここでは、贈与税の基本を押さえていきましょう。
財産を贈与された人が納める必要のある税金
贈与とは、個人の資産を第三者に譲ることです。
贈る側(贈与者)と贈られる側(受贈者)の合意で成立し、いつでも・誰にでも贈与できます。
この際、贈られる側に対して課税されるのが贈与税です。
贈与税は贈られる側が負担するため、良かれと思って贈与したのに贈られた側が思わぬ税負担で苦しむケースもあります。
贈る側・贈られる側ともに贈与税について理解したうえで、贈与を行いましょう。
贈与税の計算式
贈与税は、基礎控除である110万円を超えた部分に、贈与税の税率を乗じ控除を差し引いて求められます。
不動産の場合は、売買額や時価ではなく、相続税評価額が贈与税の対象です。
土地の場合
国税庁が毎年公表する路線価や倍率方式によって評価します。
路線価の無い土地は「倍率方式」で相続税評価額が算出される。
- 市街地などでは、路線価(1㎡あたりの価額)に土地の面積を掛けて算出します。
- 路線価が設定されていない地域では、固定資産税評価額に一定の倍率をかけて計算します。
建物の場合
- 固定資産税評価額がそのまま相続税評価額として使われます。
- 固定資産税評価額は、市町村から送られてくる「固定資産税納税通知書」で確認できます。
贈与税は年内のすべての贈与額で計算する
また、贈与税は年間の贈与額に対して課税されるので、その年に不動産以外の贈与を受けた場合はその額も含めます。
贈与税の税率は、贈与者と受贈者の関係性によって以下の2つに分かれます。
- 一般税率(一般贈与財産用):特定贈与財産以外の贈与
- 特例税率(特例贈与財産用):直系尊属から18歳以上の者への贈与
特例税率は、贈与を受けた年の1月1日時点で、18歳以上の人が直系尊属(父母や祖父母)から贈与を受けた場合に適用される税率です。
祖父母から孫や親子間での贈与が該当します。
しかし、直系尊属からの贈与であっても、贈られる側が1月1日時点で18歳を超えていないと一般税率になるので、孫への贈与などでは年齢も確認するようにしましょう。