家の売却では、仲介を依頼した不動産会社によって、売却価格や売却できる期間に大きな違いが生じます。それだけに、売却の成功には、不動産会社の選択が大きく関わってくるのです。この記事では、家の売却で信頼のできる不動産会社の選び方を解説します。
不動産会社選びは査定依頼から始める
不動産会社の選び方のひとつに査定依頼を通じて選ぶという方法があります。
不動産の売却では、査定を依頼することから始めます。査定とは、その不動産を売却する際の見込み額を算出することです。査定依頼では、直接不動産会社と会話をすることになるので、結果提示までの過程を通じて、その会社の体質や能力を見定めることができます。
査定を通じて、どのような選考基準で不動産会社を選べばいいのか解説していきましょう。
そもそも査定とは
査定とは、不動産会社の営業担当者に物件を見てもらい、周辺の売却価格の相場や物件自体が持っている価値を見定めて、売出予定価格を出してもらうものです。査定は無料で行ってもらえますから、複数の不動産会社に依頼することで、売却物件の客観的評価が浮かび上がります。
また、査定のプロセスで、不動産仲介会社の提案のポイントや売却に対する戦略の立て方、売り出しに係る段取りやアドバイスなど、各会社のスタンスや特徴が比較できます。
査定を通じて知り得た各社の特徴を比較することで、良質な不動産会社と出会える可能性が広がるのです。
査定には、「机上査定」と「訪問査定」の2種類の方法があります。査定を依頼する際は、それぞれの査定の特性を生かして不動産会社を選びます。
机上査定は複数の会社に依頼する
机上査定は、担当者が自宅を訪ねてくることなく、メールや電話でやりとりを行い、最終的に査定書が送付されてきます。現地の状況を考慮しないため、精度は訪問査定よりも劣ります。
事務的に進められるため、一括査定サイトなどを通して5~6社に依頼しても、それほど大きな負担にはなりません。担当者との接点はわずかですが、このやりとりだけでも、担当者の能力や印象がある程度つかめます。
訪問査定は数社に絞り込む
訪問査定は、担当者が実際に売却する物件を訪ねてきて、家の内外部の調査を行います。
何社も不動産会社に訪問査定を依頼すると、その対応だけで大変な労力を要しますので、机上査定の段階で印象の良かった2~3社に絞って依頼をします。
ただし、不動産会社の選択基準から、査定額の高低は、いったん外してください。査定額の高かった不動産会社だからといって、そのまま高値で売却できるわけではありません。
特に一括査定サイトを利用した場合「競合する他社」の存在が明らかなので、高めの査定額が提示されやすいです。
訪問査定では、売却物件を実際に視認して、建物の状況や周辺環境が把握できるため、高い精度の査定が期待できます。
訪問査定で着目するポイントとは
訪問査定では、正確に判定するために次の書類を用意します。
- 登記事項証明書
- 固定資産税等納付通知書
- 家の平面図
- 土地の測量図
- 確認通知書
- 検査済証
- 管理規約等(マンションの場合)
訪問査定では、査定に訪れた営業担当者の説明内容はもちろん、所作にも注目してください。実際に仲介を依頼すると、基本的に査定に訪れた営業担当者が売却活動も担当することになるからです。
「この人に売却の仲介を依頼しても大丈夫だろうか」という観点から担当者の身なりや話し方、査定価格の根拠の示し方、過去の仲介実績などに着目します。
査定の根拠理由に納得できるか
査定の結果は、不動産会社より価格査定書が渡されます。様式は各社ごとに異なりますが、価格査定書には次のような事項が記載されています。
- 売出提案価格
- 査定価格
- 査定価格の根拠
- 成約物件事例
- 売出物件事例
価格査定書では、査定価格となる金額とその根拠となった理由に着目をします。
金額そのものの高低ではなく「高く売る方法・戦略があるか」を根拠を持って説明してもらえるかを確認しましょう。
査定価格の算出理由や根拠が明確で納得のできるものであるかが、信頼のできる資料であることの目安となります。
売却で不動産会社を選ぶポイントとは
査定を通して、いくつか候補の会社が浮かび上がりますが、最終的には仲介を依頼する不動産会社を決定しなければなりません。不動産会社選びのポイントについて解説します。
住宅の売却を得意としている
不動産会社には、それぞれの得意分野があります。売却を得意としている会社もあれば、購入や賃貸を得意としている会社もあります。不動産会社の得意分野を見定めるには、インターネットなどの媒体を通じて不動産会社が発信している情報をチェックする方法が有効です。
ホームページで数多くの物件情報を掲載している会社は、購入・販売が得意だと考えられます。売却を得意としている不動産会社は、自社のコラムなどで相続や離婚、住み替えなどの売却に密接な関係のある記事を掲載していることがあるでしょう。
投資物件を中心に扱っている不動産会社は、投資物件と居住用物件では、査定の方法も客層もまるで異なりますから、自宅の売却の仲介には適していません。
売りに出す地域の情報に精通している
不動産の売却では、名の知れた大手だから安心というわけではありません。特定のエリアで古くから営業をしている、いわゆる「地域密着型」の不動産会社は、限定されたエリアに特化して営業活動を行っているため、地域の情報は大手よりも詳しく把握しています。
エリア内に住む住民との交流もあるので、地元の人から耳寄りな情報が集まってきます。またエリア内での過去の取引記録もデータを確保しており、スムーズな不動産売却を進められます。
家の売却を進める場合は、会社の規模ではなく、地域との繋がりの深が不動産会社を選択する基準になります。
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机上査定の段階では不動産会社に個人情報を公開しないため、しつこい営業電話なしで複数の不動産会社を比較することができます。
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▼関連記事:不動産売却は大手と中 小どっちを選ぶべき?
売り出し方が洗練されている
不動産の売却では、広告が重要な役割を果たします。不動産の広告を比較すると分かりますが、条件が類似した物件であっても、写真の撮影の仕方、表現の仕方で物件の印象は大きく異なってきます。
内観写真で、売主が使用中の家財が映り込んでいたために、一気に購入意欲がしぼんでしまったというケースも実際にあります。
こうした負の要素を排除する、ちょっとした工夫を施すことで、チャンスは広がります。売却する家をどのように見せるかといったアドバイスも不動産会社の大きな役割のひとつなのです。
近年では、インターネットの普及により、「360度カメラ」や「ドローン」といった最新機材を用いた売り出し方法への評価が高まっています。最新の洗練された手法によって建物をより魅力的にアピールし、価値を最大化してくれる不動産会社であることも、不動産会社を選ぶ基準となります。
写真の撮り方ひとつで物件の印象が変わり、内見の申し込み状況にも影響します。
▼関連記事:スマホでも反響が増える物件写真が撮れる!プロ直伝の撮影テクニックを完全解説
担当者の能力、印象が良い
不動産の売却において、営業担当者の果たす役割は非常に重要です。実際に不動産の買主を探し、条件交渉をしてくれるのは担当者ですから、担当者の能力に頼るところが大きいのです。
良い担当者の条件には、レスポンス(返答)の早さはもちろんのこと、専門知識の豊富さや対応力の高さなどが挙げられます。たとえば、販売価格の根拠や買主のイメージ像を具体的に伝えてくれる担当者であれば、営業能力の高い担当者だといえます。
さらに、担当者から受ける印象も重要です。
買主は不動産をあれこれと見定めて購入を判断しますが、実際に短時間ですべてを把握することは困難です。そのような状況下においては、どうしても担当者の説明に大きな比重を置くことになります。
物件説明をする担当者が、「この人は信用できる」という人物であれば、購入を決断する大きな力となるのです。
反対にいくら能力が高い担当者でも、清潔感がなかったり、横柄な態度で接していたりすれば、買主は「この人からは絶対に買いたくない」と思うのが、一般的な人の感情です。
印象の良い担当者が所属する不動産会社に依頼することで、売却のチャンスが広がります。
▼関連記事:不動産売却では担当者選びが重要?優秀な営業マンの見極め方と、担当者を変えたい場合の注意点を解説
売却を依頼する会社に欠かせないものとは
売却を依頼する不動産会社には、基本的に欠かせない条件があります。良質の不動産会社の基本的条件について解説します。
納得のいく根拠が示せ る査定ができる
不動産売却では、査定の依頼から始めるのが一般的です。しかし、高い査定額を提示した不動産会社が良い不動産会社とは限りません。いくら査定が高くても、その価格で売却できるとは限らないからです。
そればかりか売り出し価格が高過ぎて非現実的な場合は、なかなか売却できず、大幅に値を下げざるを得ない事態に追い込まれることもあります。
▼関連記事:不動産の査定額は根拠の確認が重要
もちろん、安過ぎる査定額が良いわけではありません。相場よりも安い価格で売却することになれば、すぐに買手が見つかるかもしれませんが、さらに高い価格で売却できる可能性は捨てきれません。
重要なのは適正な価格を提示できる不動産会社です。査定額が提示された段階で、その根拠を尋ねて、納得のいく根拠を示せた不動産会社を選択することが、売却の成功に通じることでしょう。
▼関連記事:高すぎる不動産の査定額には注意が必要
免許更新の実績がある
不動産売買の仲介には、宅地建物取引業の免許が必要です。免許には、複数の都道府県にまたがって支店がある会社に国土交通大臣が交付するものと、ひとつの都道府県で営業をする会社に都道府県知事が交付する免許があります。
免許には、次のような番号表示があります。
- 「国土交通大臣免許 (3) ○○○号」
- 「○○県知事免許 (2)○○○号」
この( )の中の数字が免許の更新回数です。宅地建物取引業の免許は、5年に1度更新する義務がありますので、( )の数字が大きいほど、営業実績が長い不動産会社であることが分かります。
もちろん、更新回数が少なくても優秀な不動産会社はたくさんありますが、不動産会社選びに迷ったときに、長い期間営業実績があることが、ひとつの安心材料になります。また、同一エリアで営業を続けていた場合は、地域の情報に精通している証にもなります。
宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者は、公衆の見やすい場所に免許の標識を掲げなければならないと定められています。
さらに慎重に調べたい場合は、標識から免許番号を確認し、国土交通省が運営する「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で検索することで、正式に営業許可をもらった会社であることが分かります。
行政処分を受けていない
売却を依頼する場合、その不動産会社が行政処分を受けていないことは、安心を得るひとつの指標になります。
宅地建物取引業者に法令違反があった場合は、業務改善のための指示処分、業務停止処分、免許取消処分などがあります。
行政処分情報は、国土交通大臣免許の会社であれば、国土交通省地方整備局等で、各都道府県知事免許の会社であれば、都道府県庁で確認できます。
行政処分歴が必ずしも不動産会社の質に通じるものではありません。行政処分歴があっても、業務改善によって顧客トラブルが激減した不動産会社もあります。
行政処分情報は不動産会社を選ぶための、ひとつの参考情報です。最終的には不動産会社の実際の応対をしっかりと見極めて判断してください。
▼国土交通省|ネガティブ情報等検索サイト(宅地建物取引業者)
※一部府県の情報は、リンク先ページからさらに別のページで検索可能です。
適切な媒介契約を選ぶ
不動産会社を決定したら、媒介契約を締結します。媒介契約の選択によって、不動産会社の対応も大きく変わりますから、適切な媒介契約を選択することが重要です。
媒介契約には、次の3つの種類があります。
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
媒介契約の種類は、売主が自由に選べます。
査定依頼などを通じて、安心して任せられる不動産会社が見つかれば、専任媒介や専属専任媒介で問題ありません。レ インズ(不動産ネットワークシステム)への登録や定期的な報告があるので、販売活動の状況がわかります。不動産会社は、商談が成立すれば確実に自社の収入になるので、熱心な販売活動が期待できます。
それぞれの媒介契約の概要を説明していきましょう。
一般媒介契約
一般媒介契約は、複数の会社と媒介契約を締結することができます。不動産会社の縛りが緩く、契約期間の制限はありません。レインズへの登録義務や販売活動の報告義務もありません。
一般媒介契約は、確実に自社と契約してくれる保証がないことから、あまり熱心に営業活動をしてくれない不動産会社もあります。
専任媒介契約
専任媒介契約は、他の不動産会社への依頼はできません。ただし、売主自身が見つけられた買主と売買契約を締結することが可能です。
契約期間は3カ月を上限に売主が自由に設定できます。
不動産会社は媒介契約締結後7営業日以内のレインズ登録、2週に1回以上の定期報告の義務を負います。
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約では、他の不動産会社への依頼はできません。また売主自身が見つけた買主との売買契約もできません。
不動産会社の義務は専任媒介契約より重く、レインズ登録は5営業日以内、定期報告は1週に1回以上です。
▼関連記事:一般・専任・専属専任|不動産会社との媒介契約の違いと物件別の選び方を解説
買取という方法もある
買取は、不動産会社に直接買い取ってもらう方法です。買取は、市場価格の70%程度が相場とされており、高値での売却を目指している人は、仲介による売却の方が適しています。
また、物件価格が安くなると、買取では売主の手元に残るお金がほとんどないケースも多いので注意しましょう。
一方で、買取にはいくつかのメリットがありますので紹介していきましょう。
早く売却できる
不動産会社が買主である買取は、わざわざ買主を探す必要がありません。そのため、買取価格に合意すれば、すぐに売却が決まります。買取は、早く現金が必要な場合に適しています。
近隣に知られず売却ができる
買取は、近隣に知られることなく売却ができます。
不動産会社が買主である買取は、わざわざ買主を探す必要がないので、新聞の折り込み広告などの広告はありません。そのため、近隣の人に知られることなく売却できるのです。
仲介手数料が不要
仲介による売却は、売却価格に応じた仲介手数料が必要になります。
買取は、不動産会社との直接取引なので、仲介手数料は発生しません。
▼関連記事:不動産売却での「仲介」と「買取」の違い、メリット・デメリットを徹底解説
まとめ
不動産の売却では、査定をすることから始めます。どれだけ納得のいく査定根拠が示せるかで、不動産会社の能力を見極めることができます。
仲介を依頼する不動産会社は、住宅の売却を得意とする会社が適しています。また、売却する地域の情報に精通していることも欠かせない要素です。
営業担当者の印象も、依頼する不動産会社を決める大きな要素となります。良い担当者の条件には、レスポンス早さや門知識の豊富さや対応力の高さなどが挙げられます。
売却には仲介と買取があります。スケジュールにある程度余裕があり、できる限り高値で売却したい場合は仲介が適しています。高値での売却よりも早急な売却を優先したい場合は買取が適しています。それぞれの状況に合わせて、売却方法を選択をしてください。