新型コロナウイルスの蔓延により、不動産の購入希望者が現地に足を運ぶことを敬遠している状況が続いていたところ、「バーチャルステージング」が不動産販売の手法として広まりました。
仮想空間上に家具などを配置するバーチャルステージングが、なぜ不動産売却に有利なのか、そしてメリットと依頼方法について解説をします。
バーチャルステージングとは
「バーチャルステージング」とは、コンピュータ上に創り出した空間を体感できる技術の応用によって、仮想空間で部屋を魅力的に演出する新しい内覧の手法です。
作成した画像は、広告やインターネットの検索サイトに活用することができます。また、内覧時に現実の空き室と家具類を設置したスマホの仮想画面を見比べるといった使い方も可能です。
不動産販売において、なぜバーチャルステージングが利用されるようになったのか探っていきましょう。
「ホームステージング」の手法のひとつ
従前より、マンションの販売や賃貸においては、「ホームステージング」と呼ばれる、部屋の中に実物の家具や小物を配置して内覧を行う手法がとられていました。
単に空室として公開するよりも、生活をしたときの状況をイメージしやすいことから、成約に繋がりやすいとの考えからです。
実際にホームステージングを実施した物件のアンケートでも、成約期間が従前と比較して、「大変短くなった」が28%、「わずかに短くなった」が52%と、合わせて80%の不動産関係者が一定の効果があったことを回答しています1。
ホームステージングは、1970年代の初頭にアメリカで始められた手法です。入居希望者が内覧する部屋へ現物の 家具や小物を配置して販売する手法の効果は大きく、やがてヨーロッパにも広まりました。
今や欧米では、家の販売時にホームステージングをするのは常識的な手法となっていますが、日本では、一定の効果は認めつつも、コストと手間の関係でなかなか広く浸透する状況までには至りませんでした。
コストと手間を削減した販売手法
ところが、バーチャルステージングの登場により、コストと手間の課題が大きく改善されました。実物の家具を置くことなく、室内写真をCG加工することによって、仮想空間による内覧が実現できるようになり、バーチャルステージングが不動産販売の成約に結びつく有力な手法として注目されているのです。
バーチャルステージングのメリットとは
マンションや一戸建ての販売において、バーチャルステージングを採用することで、どのようなメリットがあるのかを紹介していきましょう。
部屋を空室にしなくてもよい
一般的なホームステージングは部屋を空き室の状態にして、実物の家具などを搬入して配置します。
バーチャルステージングは入居中の部屋を撮影し、画像上の家具を消して、新たにCG技術で家具を配置することができるので、わざわざ入居中の部屋を空き室にする手間がいりません。
そのため、早い段階から販売活動を始めることが可能になります。
コストが安い
一般的なホームステージングは、家具や観葉植物などをレンタルします。これを搬入、配置して、さらに撤収する手間が加わりますから、費用が20万円~30万円程度かかります。
バーチャルステージングだと、CG加工で室内を撮影した画像から不要な家具類を消して、新たに家具を合成することにより完成品が作成できるので、大幅にコストを抑えることができます。
価格は、CG加工の手間の度合いによって異なりますが、概ね1万円~5万円程度です。
手間が省ける
バーチャルステージングでは、専門会社の担当者が部屋を写真撮影します。撮影は約1時間で終了します。
一般的なホームステージングだと、実物の家具類を搬入して配置します。この作業中は、立ち会うのが基本です。立ち合い不要としている会社もありますが、立ち会わない場合、クロス、扉、床等の損傷について責任を問えないため、やはり立ち合いをした方が安心です。
バーチャルステージングなら、物件を傷つけるリスクも少なく、立ち合いの時間も省けるため、大幅に手間を省くことができます。
宣伝効果が高い
近年では、不動産物件検索サイトで、まず目的の物件を探す人が増えています。ここでは、写真から得られる印象が最も重要な決め手になりますから、部屋の使用にマッチした家具や小物を配置することで、他の物件よりも注目を惹く効果が期待できます。
コロナ禍では特に賃貸物件において、内覧をすることなく契約をする人が増加していました。
感染拡大が落ち着いた現在でも、内覧増に一定の効果があるため、不動産の仲介や管理を行う会社が活用しています。
最近はドローンによって撮影した画像を駆使する3D内見などのサービスも展開されており、ホームステージングを活用した広告掲載は高い効果があるのです。
バーチャルステージングのやり方
バーチャルステージングは、専門の会社に直接依頼する方法と仲介をしてくれる不動産会社に依頼する方法があります。
専門の会社に依頼する
バーチャルステージングは、専門の会社に依頼する方法があります。
最も安価なコースだと、依頼主が自ら撮影して、その画像に家具等をCG技術で加えるという方法がとられます。
ただし、既存の家具を消すサービスがなく、空き室を撮影して送付することが前提になっている会社もあるので、家具が移動できない場合は要注意です。
質の高いバーチャルステージングを求めるのであれば、すべて専門会社に任せる方法が最適です。広角レンズで撮影した360度写真に加工されるので、宣伝効果の高い仕上げが期待 できます。
単に広告に画像を掲載するばかりでなく、チラシに印刷したQRコードや現場の床に設置されたQRコードをスマホで読み込んで、現実の空き室の状態と家具を配置した仮想画像を見比べるスタイルの内覧に活用することも可能です。
不動産会社に依頼する
大手の不動産会社の中には、専任媒介契約もしくは専属専任媒介契約で査定価格が一定価格以上であれば、無料サービスでバーチャルステージングを実施してくれるところがあります。また、売主の実費負担で行っている不動産会社もあります。
不動産会社にバーチャルステージングを依頼する場合は、次のような流れで進めていきます。
- 媒介契約のご締結
- バーチャルステージングの依頼
- 室内撮影
- 画像制作
- 不動産会社のホームベージヘ掲載
- 売却活動の開始
バーチャルステージングは、販売促進を目的に行いますので、媒介契約が前提になります。また複数の会社と媒介契約の締結が可能な一般媒介契約では、バーチャルステージングの依頼を受けてもらえることは、ほとんどありません。
誇大広告にならないよう注意
宅建業法では、著しく事実に相違する表示をして人を誤認させるような誇大広告が禁じられています。
近年のCG加工技術は、リアル撮影とほとんど区別がつかないような仕上がりになるので、バーチャルステージングで作成した画像を広告に用いる場合は、細心の注意が必要です。
バーチャルステージングを用いた広告では、物件の規模、形状、構造などについて、実際のものよりも優良であると誤認されるおそれ のあるCG加工は認められません。
たとえば、5階にある部屋なのに20階からの眺望を写し込むことや、和室をフローリング貼りの部屋に加工するといった、事実と異なる表示をすることはできません。
たとえ早期に売却をしなくてはならない事情があっても、部屋の仕上げ材を実際よりも見栄え良く加工することは許されません。
バーチャルステージングは、あくまで現実の仕上がりには加工を施すことなく、そこに仮想の家具や小物を加える手法なのです。
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まとめ
バーチャルステージングとは、コンピュータ上に創り出した空間を体感でできる技術の応用によって、仮想空間で部屋を魅力的に演出する新しい内覧の手法です。
作成された画像は、販売広告やインターネットサイトへの掲載をはじめ、現地で実物の空き室と家具を配置した画像を見比べるスタイルの内覧に活用すること も可能です。
従前から、レンタルした家具類を配置する「ホームステージング」という手法が使われていましたが、コストと手間の関係から広く浸透するまでには至りませんでした。
バーチャルステージングは、コンピュータ上の画像処理で行うので、費用と手間を大幅に削減できます。また高い宣伝効果が期待できることから、広く注目を集めています。
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