不動産売却を進める中で、「売却の希望額はありますか?」と聞かれて戸惑った経験はないでしょうか。
「相場で売りたい・できるだけ高く売りたいと思っているのに、なぜ希望額を聞かれるの?」という疑問はもっともです。
そもそも言い値の希望額で売れるなら誰も不動産売却で苦労しませんから、答えること自体が無意味に思えますよね(笑)。
この記事では、不動産会社がこの質問をする背景と意図を整理することで、売却への不安や不信感を解消するヒントをお伝えします。
理由①売主の状況を把握するための会話の糸口
「できるだけ高く売りたい」と思っている売主にとって、希望額を聞かれることは少し奇妙に映るかもしれません。
しかし実際には、不動産会社にはいくつかの実務的な理由があってこの質問をしています。
まずは「売主の状況を把握するために聞かれる」場合から解説します。
基本的には営業トークの一環であまり深い意味はない
住宅ローンの残債や、住み替え先の購入価格、相続税の支払いなど、売却に向けて本格的に動き出すには、金銭面の全体像を把握する必要があります。
「希望額」という切り口は、こうした込み入った事情をナチュラルに引き出すための入り口として使われることがあるのです。
営業トークのひとつ、と言ってしまえばそれまでですが、担当者として売主の状況を深く理解するための真剣な問いかけでもあります。
理由②相場観や他社への相談状況を確認するため
たとえ相場より高い金額でも、その価格で「売り出す」こと自体は可能です。
売主がある程度相場を調べた上で希望額を持っているなら、「その金額で売り出してみませんか?」と寄り添った提案につながるケースもあります。
一方で、希望額を聞くことで売却のハードルを下げ、まず媒介契約を結ぼうという算段がある場合も否定はできません。
売主の希望額が高めでも、まずは相場より高めの「チャレンジ価格」とされる金額で売り出しをスタートするケースも多い。
どちらの意図があるかは、その後の会話の流れや提案内容から判断していきましょう。
理由③仲介で売れずに買取を検討するケース
仲介で売り出したものの思うように売れず、住み替えや相続手続きのスケジュールのために買取を検討する——
そんな場面も少なくありません。
このとき売主は「できるだけ高く売りたい」「でも期限までに売らなければ」という板挟みになりがちです。
こうしたケースで希望額を聞くのは、その金額を基準に自社または他の買取業者で成立できるかを探り、売却に向けた現実的な調整を進めるためです。
希望額が明確であるほど、担当者も具体的な提案をしやすくなります。
買取は仲介よりも2~3割程度、売却価格が安くなるのが普通です。
不動産会社が買取して再販売する際のコストや利益を差し引いた金額で取引されるため、仲介よりも金額が安くなる。
しかし、物件の状態によっては半分に満たない金額しか提示されないこともあります。
そのため、買取業者を探す・紹介する前提として「売主の目線の金額」を確認しておかなければ、商談がまとまらず、いたずらに時間だけが過ぎてしまいます。
「仲介で販売中だけど、売れないから買取を検討する」というケースでは、買取業者に前向きに検討してもらうためにも希望額・売却額の目線を決めておくことが重要です。
▼関連記事:不動産の買取査定は何社に依頼すべき?多くの買取業者に査定してもらう方法は?
「なかなか売れずに売却期限が迫って来たから、仲介から買取に切り替える」というシーンにおいて、せっかく買取業者からの査定額を提示しても、契約直前になって「やっぱりもう少し仲介で粘ってみたい」と意見を翻してしまう売主も少なくありません。
売るか売らないかの最終決定は、売主の権利として当然認められるものですが、仲介会社としては「買取業者側との話もまとめたのに、直前で契約をキャンセルされるのは困る」という事情もあるものです。
そうならないために「仲介で売り切るか・買取に切り替えるか」の最終段階においては売主の目線を確認することが重要であり、希望額を問われる理由にもなっています。
実際に、当サイト「イエウリ」 での不動産査定でも、仲介での売却活動中に買取額を確認したいという方の査定を受ける場合、希望額をお尋ねさせていただくことがあります。
それによって売主の売却事情や引き渡し時期の目安が具体的になり、不動産会社からの買取額・条件も明確になってその後の取引がスムーズに進むことが多いためです。
「希望額を伝えるとマイナスになるのでは?」よくある不安を整理します
「希望額を伝えたら、その金額が基準になってしまい、それより高く売るチャンスを逃してしまうのでは?」と不安に思う売主の方も多いです。
「買い叩き」「足元を見られる」というケースは限定的
ただ実際には、そこまで不親切な対応をする不動産会社は少なく、「売却に向けた段取りを進める中での話のひとつ」であることがほとんどでしょう。
希望額は、あくまで状況把握のための参考情報として扱われるということです。
例外的なケース:築浅の物件で相場がローン残債に満たない場合など、「手出しが必要になるかもしれないが、それでも売りたいか?」という少し込み入った確認をするために、希望額の話が持ち出されることもあります。
担当者としては、現実的に売却が成立するかを見極めた上で追客するかどうかを判断したいという営業的な意図もあります。
仲介から買取に切り替えた場合の希望額をどう捉えるべきか
多くの仲介会社は、買取での売却が本格的に検討される段階で「自社の買取金額を提示しつつ、買取を得意とする他の不動産会社にも並行して買取金額を提示してもらう」という方法を取ります。
これにより、できる限り高い買取金額を提示した業者との契約が可能になります。
一方で、自社や関係会社の利益を優先し、希望額付近での成約を優先するあまり、より高値での売却チャンスがあっても売主に伝えない ケースもゼロではありません。
業界のブラックボックスとなっている部分は一般の売主には見えにくく、不安を感じる方も多いかと思いますが、最終的には金額や売却プロセスに自分自身が納得した上で判断することが重要です。
▼関連記事:仲介の不動産会社から買取業者への売却を提案されました。注意点はありますか?
希望額を聞かれたとき、どう答えるのが賢いか
希望額を正直に伝えることへの抵抗感がある場合、以下のような答え方が考えられます。
- 「まずは査定額を聞いてから考えたい」と伝える。具体的な金額を出さず、状況整理のステップにいることを示す。
- 「○○万円以上であれば検討したい」と下限を伝える。上限を示さないことで、より高い提案の余地を残せる。
- ローン残債や住み替え費用など、売却に必要な金額の背景を共有する。担当者も現実的な提案がしやすくなる。
- 「相場通りで構わない」と伝えた上で、スケジュールの希望を明確にする。価格より時期を優先したい場合に有効。
希望額を聞かれた際は「なぜこの金額が必要か」という背景を一緒に伝えると、担当者も状況を正確に把握でき、より的確な提案につながります。金額だけを言うよりも、目的とセットで伝えることが大切です。
「そもそもその金額での売却は無理」というケースもありますが、お互いに探りあって時間だけが無駄に過ぎるよりも、基準となる希望金額を確認してから話が進められるかを判断する方が効率的なこともあります。
▼関連記事:不動産査定時に売却理由を聞かれるのはなぜ?安心して査定依頼するための確認事項を解説
査定額と希望額の関係を理解しておこう
仲介の場合、査定額はあくまで「不動産会社がおおよそこの価格帯で売れると見込む金額」であり、売り出し価格を決定するものではありません。
売り出し価格は売主が最終的に決めるもので、その先の売却価格はさらに買主との交渉 で決定します。
希望額が査定額より高い場合、売り出しはできますが売れるまでの時間が長くなる可能性があります。
一方、査定額より低い場合は早期売却の可能性が上がりますが、その分手元に残る金額は少なくなります。
希望額を伝える際はこのトレードオフを念頭に置いておくと、担当者との会話がスムーズになります。
ただし、買取の場合は査定額がほぼ売却額に直結しますので、業者間の値段を比較しないまま安い希望額を伝えてしまうと、「買い叩かれる」結果になってしまうことも考えられるでしょう。
▼関連記事:不動産の買取でよくある失敗事例と、それを防ぐための方法について
まとめ:希望額の質問は、信頼関係の入り口
「希望額はありますか?」という質問は、不動産会社側の意図や状況によってさまざまな意味を持ちます。
ただ共通しているのは、売主の状況をより深く理解しようとするプロセスの一部だということです。
- 希望額を伝えることで、売却の段取りが前に進むケースが多い
- 答えたくなければ「査定額を見てから」と伝えるのも有効な選択肢
- ローンや住み替えなど背景の事情を合わせて伝えると提案の質が上がる
- 希望額は売り出し価格を縛るものではなく、あくまで参考情報として扱われる
- 担当者の質問の意図を確認することが、信頼できる不動産会社かを見極めるヒントにもなる
不動産売却は人生の大きな決断です。
疑問や不信感を感じたら、その場で明確に確認することが、最終的に納得のいく売却につながりま す。








