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不動産売買における指値とは?価格交渉のポイントや注意点を売主・買主の視点で解説

不動産売買では指値による価格交渉が行われることがあります。

指値を行う買主だけでなく売主も指値の基本や対応などを理解しておくことが重要です。

この記事では、指値の基本や売主、指値による価格交渉のポイントを買主それぞれの視点から分かりやすく解説します。

このページの目次
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不動産売買における指値とは

不動産売買では専門的な用語が飛び交います。

その中の1つが「指値(さしね)」です。

まずは、指値が何を表す言葉なのか基本を確認していきましょう

そもそも指値とは

指値とは、売買において買主が購入価格を指定することです。

株式投資やFX取引でよく用いられる用語で、「A株が1,000円以下になったら購入する」というような売買方法を指値注文といいます。

不動産売買における指値

不動産売買においての指値も上記の意味合いと基本的には同じで、買主が購入価格を指定することを指します。

たとえば、5,000万円で売り出されている不動産に対して「4,500万円なら購入する」という場合、購入希望価格である4,500万円が指値です。

一方、売主が提示する売り出し価格は、出値(だしね)と呼ばれます。

上記の場合は、5,000万円が出値です。

また、多くの買主はできるだけ安く買いたいと考えることから、不動産売買の指値は基本的に出値よりも下がります。

そのため、指値=値下げ交渉という意味合いで使われるのが一般的です。

不動産売買は買主と売主の合意により成立するため、出値・指値で売買が必ずしも成立するわけではありません。

出値に対して指値を提示し、売主と買主が価格のすり合わせを行い両者が納得した価格で売買が成立します。

この売買が成立した価格が「成約価格」という点もあわせて覚えておくとよいでしょう。

不動産売買における指値の流れ

不動産売買で買主が指値を提示するのは、購入申込書を提出する段階が一般的です。

購入申込書とは、購入の意思や購入条件を記入した書類で買付申込書や買付証明書などとも呼ばれます。

買付証明書とは?

購入申込書に、出値よりも低い価格を記入する場合が指値になります。

購入申込書は、買主が買主側の不動産会社に提出するものです。

その後、買主側の不動産会社から売主側の不動産会社に渡り、売主へと提出されます。

売主は記載されている内容への返答を売渡承諾書という書類で行うのが一般的な流れです。

売渡承諾書とは?

ただし、売主の返答は口頭で行われることが多く、売渡承諾書が利用されないケースもあります。

また、購入申込書や売渡承諾書はあくまで買主と売主の意志を示した書類であり、提出したからといって売買契約を有効にするものではありません。

価格交渉に合意し売買契約書を締結して、ようやく売買が有効になる点は覚えておきましょう。

不動産売買における指値の目安・相場

指値の目安は、売出価格の5~10%程度が目安です。

たとえば、4,000万円で売り出されている物件であれば3,600~3,800万円程が目安と言えるでしょう。

あるいは、数十万円の端数を切り捨てる形で提示するケースもよくあります。

仮に、3,980万円で売り出されている物件を3,900万円の指値を提示するといった形です。

しかし、上記はあくまで目安で、いくらの指値なら応じてくれるかは売主次第でもあります。

とくに、条件が良く他に購入希望者が多くいる物件では、指値を提示しても交渉にすらならない可能性もあるでしょう。

反対に、売り出してから長期間経過している物件であれば、多少強気な指値でも応じてくれる可能性もあります

買主が指値を行う際の価格交渉のポイント

指値に必ずしも売主が応じてくれるわけではありませんが、少しでも指値を通しやすくするためのポイントを押さえておくことが重要です。

ここでは、買主側が指値を行う際のポイントとして以下の3つを解説します。

  • 相場や状況を把握しておく
  • 手付金を多く支払う
  • 住宅ローンの承認を得ておく

それぞれ見ていきましょう。

相場や状況を把握しておく

相場や物件の状況からかけ離れた指値を付けても応じてもらえません。

相場よりも極端に低い価格を提示すると、売主に不信感や拒否感を抱かれるでしょう。

他に買主が現れやすい条件の良い物件や、売主が売却に時間の余裕がある場合も、指値に応じるよりも出値で購入してくれる買主が現れるのを待つ売主が一般的です。

一方、相場よりも出値が高い、物件に値引きの根拠となる要因があるといった場合は、価格交渉に応じてくれる可能性があります。

たとえば、老朽化しているから○○円値引いて欲しい、相場がこれくらいだからそこまで下げてほしいといった、値引き額の根拠が明確であれば売主も納得しやすくなります。

また、長期間売れ残っている、売主が売り急いでいるといった場合も指値に応じてくれる可能性があります。

そのため、指値を付ける場合は値下げ額の根拠を明確に提示できるように、相場や物件、売主の状況を把握しておくとよいでしょう。

手付金を多く支払う

手付金とは、売買契約時に売主に支払うお金です。

契約の証明だけでなく解約手付としての役割をもち、買主が解約する場合は支払った手付金を放棄することになります。

一般的に手付金は売買価格の5~10%程が目安ですが、最終的な額は売主との交渉で決まります。

手付金を多く支払うことで購入の意思の強さを証明でき、売主からの信頼性も高くなるため、値引き交渉に応じてくれる可能性があるでしょう。

なお、手付金は最終的には売却代金に充てられるため、売買契約後の決済では手付金を除いた額を支払うことになります。

ただし、手付金を支払うタイミングでは住宅ローンはまだ実行されていないため、自己資金の状況も踏まえ慎重に額を検討するようにしましょう。

また、手数料以外でも、決済日や決済方法・引き渡し条件など、売主にとってメリットとなる条件を提示するのもおすすめです。

住宅ローンの承認を得ておく

不動産売買契約では住宅ローン特約を設けることが多いです。

住宅ローン特約とは、売買契約後に住宅ローンの審査承認を得られない場合に、手付金を無条件で変換して白紙解約とする特約のことです。

ローン特約によって、買主は売買契約後に本審査に落ちてしまっても、違約金の支払いや手付金の放棄を免れる。

売買契約後に住宅ローンの本審査を行い、「融資承認取得期日」までに承認が得られない、または否認となった場合は、手付金の放棄等のペナルティなしで売買契約を白紙解除できる。

売主は値下げ交渉に応じても、買主が売買契約後に住宅ローン審査に落ちて住宅ローン特約の条件が満たされれば、契約が白紙解約されてしまいます。

そのため、売主にとっては買主が住宅ローン審査に通りそうな人かどうかも重要なポイントとなるのです。

事前に住宅ローンの承認を得ておけば、値下げに応じてくれれば購入できると示せるようになり売主も応じやすくなるでしょう。

買主が指値を行う際の注意点

指値で価格交渉に応じてもらえれば安く購入できる反面、指値が拒否されると購入自体できなくなる恐れがある点には注意が必要です。

そのため、安易な指値額の設定はおすすめできません。

相場よりも極端に安値を付けたり「半額にしてほしい」といった大幅な指値では、売主に不信感を抱かれやすくなります。

相場や状況といった根拠を明確にできる指値を慎重に設定することが大切です。

また、価格だけでなく交渉にあたり物件の不具合を責める、高圧的な態度をとるといった売主の心証を悪くするような言動も避けた方がよいでしょう。

価格交渉に応じるかどうかは売主次第です。

売主にとっても気持ちいい取引ができるように、価格や態度はマナーを守るように心がけましょう。

▼関連記事:中古物件の購入時に値引きは可能?値引き幅や交渉が有利になる条件を解説

売主が指値に対応する際の価格交渉のポイント

指値にどう対応するかは売主が自由に決めて問題ありません。

しかし、安易に価格交渉に応じて売却すると後悔する恐れもあるので、ポイントを押さえておくことが大切です。

売主が指値の価格交渉に対応する際のポイントとして以下の2点が挙げられます。

  • 売却代金で住宅ローンを完済するときは最低価格を算出しておく
  • 仲介手数料など諸費用を差し引いた手残り額を算出しておく

それぞれ見ていきましょう。

売却代金で住宅ローンを完済するときは最低価格を算出しておく

住宅ローンの残る家を売却する場合、売却金や自己資金での住宅ローン完済が必須です。

価格交渉で安易に売却代金を下げてしまうと、売却代金だけでは完済できずに自己資金を多く充てる必要が出る、そもそも売却できなくなるといった恐れがあります。

そのため、住宅ローンを完済するためには、いくらで売却しなければならないかの最低ラインを事前に明確にしておくことが大切です。

正確な住宅ローン残債額や自己資金額、新居に必要な額などを把握したうえで、ここまでなら値下げに応じられるといった基準を設けておくようにしましょう。

仲介手数料など諸経費を差し引いた手残り額を算出しておく

家を売却すれば売却額がそのまま手元に入るわけではありません。

売却には不動産会社に支払う仲介手数料や登記費用、譲渡所得税、リフォーム費用など状況に応じてさまざまな費用や税金がかかります

これらの諸費用を売却金から差し引いた部分が手元に残るお金です。

売却金がそのまま手に入ると想定して、住宅ローン完済や新居の資金計画を立てていると資金計画が大きく崩れる恐れがあるので注意しましょう。

なお、一般的な売却では売却価格の3~5%程の諸費用が必要と言われています。

たとえば、3,000万円で売却した場合、諸費用は90~150万円ほどかかります。

よって、手元に残るのは2,850~2,910万円となり、ここから住宅ローン完済などの資金を捻出することになるのです。

ただし、売却にかかる諸費用の額はケースによっても大きく異なります。

事前に自分のケースでどれくらいの額がかかるかシミュレーションしたうえで資金計画を立てるようにしましょう。

売主が指値に対応する際の注意点

指値に納得いかない場合、断っても問題ありません。

しかし、断ることで売却のチャンスを逃す恐れがある点には注意が必要です。

とくに、すでに売却まで時間がかかっている物件など指値を断ると次の購入希望者が現れるまで長期間かかる恐れがあるでしょう。

さらに、長期化することで値下げせざるを得ず、最終的な売却価格は断った指値よりも下がるケースもあります。

売主の心境としては値下げせず高値に売りたいものです。

とはいえ、かたくなに指値や価格交渉に応じずにいれば、買主から避けられ売却自体がしにくくなる点は理解しておきましょう。

ただし、前述の通り、とにかく早く売りたいからといって安易に指値に応じると住宅ローンが完済できないなどの不都合が生じかねません。

まずは、最低売却ラインや物件・自身の状況を整理し適切に指値に対応することが大切です。

▼関連記事:家を売る時、買主から値引き交渉された。正しい対処法とは?

不動産売買における指値に関するよくある質問

最後に、不動産売買における指値に関するよくある質問をみていきましょう

不動産売買の指値はどこまでできる?

指値に制限はなく、買主の希望額を付けることが可能です。

しかし、指値に応じるかは売主次第となり、額によっては交渉にすらならない可能性があります。

一般的には、売却価格の5~10%程が目安です。

ただし、物件や売主の状況によっても適切な指値は異なるので、不動産会社に相談しながら検討するとよいでしょう。

不動産売買の指値で半額にすることはできる?

仮に半額の指値を付けた場合、売主から拒否される可能性が高いでしょう。

半額などの大幅な値引き要求は売主の心証を悪くし、その後の交渉も難しくなります。

一方、長期間売れ残っている物件や、状態が悪くリフォーム費用が多くかかる物件であれば、半額は難しくても、ある程度の指値は許容される可能性があります。

ただし、高圧的な態度や根拠のない大幅値下げは拒否されやすいため注意が必要です。

指値を行う場合は、周辺相場や物件の状態を踏まえ、礼節を守って交渉することをおすすめします。

なお、相場より高い売り出し価格が設定されている物件には、「売却活動をスタートしたばかりで、まずは高値で様子を見ている」ケースや、「住宅ローンの残債が多く、この金額でないと売れない」といった事情があることも考えられます。

このように、物件ごとに指値の可否や許容幅は異なります。

実務上は「売主の事情・希望額が売り出し価格に反映されていることを踏まえると、5~10%程度の指値であれば応じてもらえる可能性がある」と言われることが多いです。

気になる物件がある場合は、売り出し価格の変更履歴や販売期間をチェックしながら、適切な交渉タイミングを探りましょう。

不動産売買の指値が失敗したらどうなる?

指値に失敗すると、交渉が決裂する、他の買主を優先されるなどで物件の購入ができない恐れがあります。

物件が購入できないとなれば、一から物件探しをやり直す必要があり手間も時間もかかるものです。

購入できないリスクがあることは理解したうえで、指値を行うか、いくらに設定するかを慎重に検討しましょう。

まとめ

不動産売買では、指値による値引交渉が行われることがよくあります。

これから不動産を購入しようと考えているなら、指値の基本や交渉を通すポイントを押さえておくとよいでしょう。

一方、売主は指値に応じるかは自由に決めても問題ありません。

無茶な指値や不都合が生じる指値なら応じる必要ありませんが、価格交渉に応じずにいれば売却チャンスを逃す恐れがある点は理解しておくことが大切です。

不動産売買で指値をする、指値をされたといった場合、間にたつ不動産会社の力量でも交渉の成否が変わってきます。

売主・買主とも信頼できる不動産会社を見つけることで、満足いく売買が行えるようになるでしょう。

▼関連記事:1年以上売れない家は値引きすべき?売るための対策を解説します

執筆者
逆瀬川勇造
逆瀬川勇造

明治学院大学卒。地方銀行勤務後、転職した住宅会社では営業部長としてお客様の住宅新築や土地仕入れ、広告運用など幅広く従事しました。2018年よりP.D.Pを設立。WEBを通して不動産に関する問題解決を目指します。 保有資格:宅建士、FP2級技能士(AFP)、住宅ローンアドバイザー、相続管理士

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