不動産を売却する際には、不動産会社と媒介契約を結ぶのが一般的です。
媒介契約書は不動産会社とのトラブルを避けるうえでも重要な書類になるので、契約時には入念なチェックが欠かせません。
とはいえ、媒介契約書の内容は専門的でよく分からないという方もいるでしょう。
そこで、この記事では媒介契約書のチェックポイントと契約の流れを、売主・買主それぞれの視点で詳しく解説します。
媒介契約書とは
媒介契約書とは、仲介で売買する際に不動産会社と結ぶ媒介契約の書類です。
仲介での売却では、売主が不動産会社と媒介契約を結び、不動産会社が買主を探して売買が成立します。
この際、売主と不動産会社の権利や義務、責任、報酬などを明らかにし、トラブルを避けるために交付されるのが媒介契約書です。
媒介契約書の交付は、宅地建物取引業法に仲介業務を行う不動産会社の義務として定められています。
また、契約書の書式は不動産会社で自由に決められますが、ほどんとの不動産会社で国土交通省が告示している「標準媒介契約約款」に基づいて作成されているので、確認の際に参考にするとよいでしょう。
なお、売主だけでなく買主側も不動産会社を通して不動産の紹介を受けるので、この際にも媒介契約を結びます。
そのため、売主・買主ともに媒介契約書の内容を理解しておくことが大切です。
【売主視点・買主視点】媒介契約書のチェックポイント
ここでは、媒介契約書でとくにチェックしておきたいポイントを紹介します。
媒介契約の種類
媒介契約の種類には「一般媒介契約」「専任媒介契約」「専属専任媒介契約」の3種類があり、それぞれ特徴が異なります。
大まかな違いは以下のとおりです。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
契約できる不動産会社 | 複数 | 1社のみ | 1社のみ |
レインズへの登録義務 | なし | あり 契約から7日以内 | あり 契約から5日以内 |
営業活動の報告義務 | なし | あり 2週間に1回以上 | あり 1週間に1回以上 |
自己発見取引 | 可 | 可 | 不可 |
契約期間 | 定めなし 一般的には3ヵ月 | 最長3ヵ月 | 最長3ヵ月 |
一般媒介契約は、複数の不動産会社と契約できる形態です。
一方、専任媒介契約・専属専任媒介契約は1社のみとしか契約できません。
専任媒介契約・専属専任媒介契約を結んでいるのに他の不動産会社と契約してしまうと、契約違反として違約金を請求される恐れがあるので注意しましょう。
媒介契約の種類は売却にも影響するので、売主は希望した種類かどうかをしっかり確認することが大切です。
契約期間
専任媒介契約・専属専任媒介契約の契約期間は最長3ヵ月です。
3ヵ月より短くはできますが、特約でも3ヵ月を超える契約はできません。
また、期間終了後に引き続き契約する場合は更新手続きが必要となり、自動更新はできないので注意しましょう。
契約を解除する場合は、契約期間終了のタイミングで更新しなければ解除となり、違約金などは発生しません。
反対に、契約期間内の売主都合の解除は違約金が発生する恐れがあります。
ただし、不動産会社の落ち度が理由の契約解除であれば違約金は発生しません 。
契約期間は解除や更新を検討するうえでも重要になるので、いつまでが期間となるかを確認しておきましょう。
なお、一般媒介契約では契約期間の法的な定めはありませんが、3ヵ月ほどで設定されているケースがほとんどです。
しかし、3ヵ月を超える契約でも問題ないので、期間は確認しておくようにしましょう。
レインズへの登録義務
専任媒介契約・専属専任媒介契約では、レインズ(不動産情報交換のためのネットワークシステム)への登録義務があります。
不動産会社は、専任媒介契約の場合は契約の翌日から7営業日以内、専属専任媒介契約の場合は5営業日以内に登録しなければいけません。
レインズへの登録後は登録証明書が発行され、売主であれば自分の物件の情報をチェックできます。
レインズの登録内容は売却活動にも大きく影響するので、登録内容と実際の状況が一致しているかは定期的にチェックするようにしましょう。
なお、一般媒介契約ではレインズへの登録義務はありません。
活動内容の報告義務
専任媒介契約・専属専任媒介契約では、売主への活動内容の報告義務があります。
専任媒介契約で2週間に1回以上、専属専任媒介契約で1週間に1回以上が必要です。
活動内容としては、問い合わせや内覧件数、広告などの状況が報告されるので、売主が状況把握や売却戦略を立てるうえで重要な役割を果たします。
そのため、報告方法や内容を契約書で確認し、必要に応じて内容は追加してもらうようにしましょう。
一般媒介契約では、活動内容報告の義務はありません。
売主は、自分でこまめに状況を確認する必要があるので注意しましょう。
仲介手数料の額
仲介で売却が成立すれば、不動産会社に仲介手数料を支払うことになります。
仲介手数料の額は上限が以下のように定められており、上限を超えての請求はできません。
売買代金 | 計算式 |
200万円以下 | 売買代金×5%+消費税 |
200万円超400万円以下 | 売買代金×4%+2万円+消費税 |
400万円超 | 売買代金×3%+6万円+消費税 |
たとえば、売買代金が3,000万円なら3,000万円×3%+6万円=96万円(税抜)が上限です。
ただし、売買代金800万円以下の場合、合意を得ることで一律30万円(税抜)の請求が可能です。
仲介手数料は高額になりやすく、追加費用を請求されたなどトラブルになるケースもあります。
また、仲介手数料は売主だけでなく買主も支払う必要があるお金です。
売主・買主共に仲介手数料の発生条件はしっかり確認しておくようにしましょう。
仲介手数料の支払いタイミング
仲介手数料は高額になりがちなので、売主・買主共に支払いタイミングを押さえて準備を進める必要があります。
仲介手数料の支払いタイミングは不動産会社によって異なりますが、一般的には以下の2パターンのいずれかです。
- 売買契約時に半額・決済時に残額
- 決済時に全額
売買契約時に全額というケースもありますが、不動産売買では売買契約後も不動産会社のサポートが必要です。
売買契約後に全額支払ったからといって手を抜かれることはないでしょうが、万が一も考え決済・引き渡しまでは全額を支払わない方がよいでしょう。
また、タイミングとあわせて支払い方法も確認しておくことが大切です。
一般的には現金や銀行振込になりますが、都合の良い支払い方法が利用できるかは確認しておきましょう。
違約金の額
契約期間内に「売却する気がなくなった」など、売主都合で解約すると違約金が発生します。
また、専任媒介契約にもかかわらず他の不動産会社と契約したなどの契約違反でも、違約金が請求される恐れがあります。
一般的に売主都合の解約では、それまで行った営業活動の実費が請求されます。
ただし、実費の請求では本来発生するはずだった報酬(仲介手数料)の額を超えることはできません。
解約時の違約金はトラブルになりやすいので、事前に違約金の発生条件と額を確認しておきましょう。
▼関連記事:媒介契約を解除する際の違約金などに関する注意点
特別な依頼に関する内容と費用
仲介手数料にはそれまでの営業活動の必要経費も含まれているので、不動産会社は基本的に仲介手数料以外の費用を請求できません。