家を使って資金を得る方法に、リースバックがあります。
リースバックは、資金を得ながらそのまま家に住み続けられるというメリットがある反面、家賃の値上げや賃貸期間の制限などのデメリットにより、「やばい」「やめておけ」と言われるケースがあるのです。
リースバックで後悔しないためには、リスクやデメリットを正しく把握する必要があります。
この記事ではリースバックの仕組みやリスク、後悔しないための対策について分かりやすく解説します。
リースバックとは
リースバックとは、家を活用した資金調達方法です。
具体的には、家を売却し資金を得たあと、新たに賃貸契約を結んで、賃料を払いながらそのまま家に住み続けるという仕組みです。
不動産の所有権を買い取ってもらうことから「リースバック買取」と呼ばれることもあります。
売却金に使用用途の制限はなく、ローン返済や生活資金、老後資金など、さまざまな目的で活用できるので、注目されている制度です。
不動産担保ローンやリバースモーゲージとの違い
家を使った資金調達方法には、不動産担保ローンやリバースモーゲージもあります。
不動産担保ローンとは、不動産を担保に融資を受ける方法です。
また、リバースモーゲージも不動産を担保に融資を受ける方法ですが、こちらは毎月の返済が金利のみとなり、契約者が死亡後に家を売却して一括返済します。
代表的な商品に「リ・バース60」があり、一般的に50歳以上・60歳以上が対象となる高齢者向け融資です。
不動産担保ローンやリバースモーゲージは資金を得るという点は同じですが、いずれも融資です。
一方、リースバックは売却です。
そのため、不動産担保ローン・リバースモーゲージは融資後も家の所有権を持てますが、リースバックでは家に住んでいても家の所有権は売却した業者に変わる点が異なります。
リースバックの仕組み
リースバックは以下の3つで成り立っています。
- まとまった資金を得られる
- 賃貸契約を結びそのまま住み続けられる
- 再売買の予約で買い戻せる
それぞれの仕組みを詳しくみていきましょう。
まとまった資金を得られる
リースバックでは、家をリースバック業者に売却するため、まとまった資金を得られます。
一方、仲介で家を売却するとなると、不動産会社と媒介契約を結び、広告などで買主を探す必要があり、売却までに時間がかかります。
一般的には3ヵ月~6ヵ月ほどが目安となり、築年数が古い・立地が悪いなどの場合、さらに時間が かかるケースが多いです。
しかし、リースバックであれば、業者との交渉が決まればすぐに売却できます。
短期間で売却できるので、急に現金が必要になった場合でも対応しやすいでしょう。
賃貸契約を結びそのまま住み続けられる
家をリースバック業者に売却した後、リースバック業者と賃貸契約を結び、そのまま家に住み続けることが可能です。
毎月の賃料は発生しますが、固定資産税や火災保険料、管理費などが不要になるので、毎月の支出を軽減し、定額化しやすい点はメリットといえるでしょう。
通常の家の売却では、売却後に家を出ていく必要があり、新居探しや引越しなどさまざまな手間やコストがかかるものです。
リースバックであれば、売却後もそのまま住めるので引っ越しは必要ありません。
住み慣れた家にそのまま住めるのは、精神的なメリットも大きいでしょう。
また、そのまま住んでいるため売却したことが周囲にバレにくい点も魅力といえます。
再売買の予約で買い戻せる
再売買の予約とは、将来不動産を買い戻す権利を保証する契約です。
あらかじめ買い戻し金額と買い戻しまでの期間を定めて契約することで、資金の準備ができたときに不動産を買い直せるようになります。
なお、リースバックでは再売買の予約ではなく、買戻し特約を付加するケースもあります。
買戻し特約とは、買主が支払った代金と費用を返済することで、不動産を買い戻す(売買契約を解除する)ことができる特約です。
ただし、この特約を設定できるのは売買契約時のみとなり、買戻しできる期間は10年以内など、細かい要件が定められています。
それに対し、再売買予約では売主と買主の合意によって、柔軟な再売買の条件の設定が可能です。
どちらも家を取り戻せる方法ですが、再売買の予約と買い戻し特約は異なってくるので、契約時には内容をしっかり確認しましょう。
また、リースバック業者や契約によっては買い戻せないケースもあります。
リースバックのデメリットと注意点
リースバックを検討する際には、以下のデメリットと注意点を押さえることが重要です。
- 売却価格が安くなりやすい
- 家賃が高くなりやすい
- 賃貸できる期間に制限が設けられるケースが多い
それぞれ見ていきましょう。
売却価格が安くなりやすい
リースバックの売却額は、仲介での売却よりも安くなるのが一般的です。
リースバックでは、業者は買取後に不動産を売却するなどの活用ができません。
そのため、不動産所有のコストやリスクを負うことになり、自社の利益を考慮し買取額が安くなるのです。
なお、リースバックで住宅ローン返済を検討している場合、買取額+自己資金で住宅ローンの完済ができないと、リースバックが利用できません。
住宅ローン残債があるケースでは、事前に完済できるかを慎重に判断しましょう。
家賃が高くなりやすい
リースバックの賃料は、売却額を基準に設定されるのが一般的です。
業者によっても異なりますが、売却額の7~13%程が年間賃料の目安となるでしょう。
たとえば、3,000万円で売却した場合、月額17.5~32.5万円ほどになります。
通常の賃貸住宅は周辺相場などを元に賃料が設定されていますが、リースバックは買取額に応じるため相場より高くなりやすい点に注意が必要です。
高値で買取してもらうほど賃料も高くなるので、支払い続けられるかもシミュレーションするようにしましょう。
賃貸できる期間に制限が設けられるケースが多い
リースバックの賃貸契約では、定期借家契約が用いられるケースが多いです。
賃貸契約には普通借家契約と定期借家契約の2種類があり、契約期間終了後の更新が異なります。
普通借家契約では契約終了後に更新が認められ、貸主は正当な理由がなければ契約更新の拒否ができません。
借主の権利が強い契約であり、一般的な賃貸物件では普通借家契約が用いられます。
一方、定期借家契約では契約の更新が認められません。
一般的なリースバックでの定期借家契約では、2~5年ほどの契約期間が定められ、期間終了後は退去が必要になるのです。
契約期間や契約更新できるかは契約方法によって異なるため、契約時には契約内容を細かくチェックし、不利にならないかを十分に検討しましょう。
なお、普通借家契約でも賃料滞納や規約違反などで契約解錠される可能性があり ます。
リースバックのリスク
リースバックには以下のようなリスクがあります。
- 家賃を上げられるケースがある
- リースバック業者が家を売却するケースがある
- 自宅の買戻しに応じてくれないケースがある
それぞれ見ていきましょう。
家賃を上げられるケースがある
賃貸契約の内容次第では、更新にあわせ家賃が値上げされるリスクがあります。
もともと相場よりも高値の場合、さらに値上げされると、支払い続けるのが困難になる恐れがあるでしょう。
契約書に「状況に応じて家賃改定の可能性あり」や「更新時に見直し」など記載があると、値上げされる可能性があります。
とくに、家賃収入を目的としているリースバック業者では家賃が値上げされやすいので、注意が必要です。
賃貸契約時には、入居できる期間や値上げについてしっかりと確認しましょう。
リースバック業者が家を売却するケースがある
リースバック業者に売却後は所有権が業者に渡るので、業者の判断で売却が可能です。
業者が倒産したり、売却で利益を得るなどでリースバック後に売却されるケースもあります。
ただ、業者が売却したからといって、賃貸契約が終了して立ち退きを求められることはありません。
この場合は、オーナーチェンジと言って新しい所有者(オーナー)に賃貸契約が引き継がれるのです。
しかし、オーナーが変わると賃貸方針がガラッと変わり、家賃が高くなる、更新が拒否される、立ち退きを要求されるといったリスクが発生する可能性があります。
オーナーチェンジの対策としては、契約時に勝手に売却しない旨や、仮にオーナーチェンジがあった場合の条項を決めておくとよいでしょう。
また、倒産や勝手に売却しないような信頼できる業者を選ぶことも大切です。
自宅の買戻しに応じてくれないケースがある
リースバックでは、買戻しに応じてもらえないトラブルもあります。
応じてもらえないケースの多くは、口約束のみで契約書を交わしていないことが原因です。
基本的に買戻しできるケースでは、契約書に買戻し特約が付加されているか、売買契約書とは別に再売買契約書を交わしています。
買戻しを検討する際は、きちんと条件を定め、書面に残しておくことが重要です。
ただし、特約を設けている場合でも、条件の期限内に資金を準備できないと買戻しができないので注意しましょう。
リースバックで後悔しないための対策
リースバックで後悔しないためには、以下のような対策を行うことが重要です。
- 余裕のある資金計画を汲む
- 取り決めたことは口約束ではなく契約書に明記する
それぞれ解説します。
余裕のある資金計画を組む
リースバックの売却は、仲介での売却よりも価格が下がるため、必要な資金が確保できるかを慎重に判断する必要があります。
とくに、売却金でローン返済を検討しているといった場合は、ローン残債や自己資金の状況、査定額を踏まえて入念な計画が欠かせません。
また、リースバックでは売却後に毎月の家賃が発生します。
家賃は相場より高くなる恐れもあるので、ずっと住み続けられるかもシミュレーションしておく必要があります。
まとまったお金を手にすることだけ考えていると、家賃の支払いが厳しくなり、退去せざるを得なくなるといったケースも珍しくありません。
リースバックでは売却額が高くなると家賃も高くなるため、支払いが難しい場合は価格を下げてもらうのも1つの手でしょう。
取り決めたことは口約束ではなく契約書に明記する
リースバックのトラブルの多くは、契約書に明記されていないことで起きます。
口約束だけで契約を進めてしまうと、後で条件が違っていても「言った・言わない」となり、条件の変更が難しくなります。
また、契約書の内容をよく理解しないまま契約し、思っていた条件と違ったというケースも多いものです。
口約束で交わした内容もきちんと契約書に明記してもらい、内容をしっかり確認することでトラブルを避けやすくなるでしょう。
契約書の内容に不明な点があるときは、そのままサインするのではなく、質問して解決したうえで契約することが大切です。
リースバックに関するよくある質問
最後に、リースバックに関するよくある質問をみていきましょう。
リースバックはやめた方がいいといわれる理由は?
リースバックでは、売却額の低さや家賃の高さと値上げリスク、買戻しできないトラブルなどからやめた方がいいといわれます。
賃貸契約後の資金計画を入念にし、契約書をしっかりと確認することでリスクを避けやすくなるでしょう。
リースバックはデメリットしかない?
たしかに「売却金額が安 くなる」「家賃が周辺相場よりも高くなる可能性がある」といった点は大きなデメリットです。
しかしリースバックには、資金調達しながら家に住み続けられるという、売却とは異なるメリットがあります。
特に老後になると、賃貸物件の審査が厳しくなるケースも多いため、リースバックを利用することで、安心して住み慣れた自宅に居続けられる点は大きな魅力と言えるでしょう。
また、新居探しや引っ越しの手間、さらには引っ越しに伴うコストを節約できるのも、リースバックのメリットのひとつです。
リースバックをした方のよくある後悔事例とは
よくある後悔事例に、以下のようなケースがあります。
- 家賃が値上げされた
- 勝手に家が売却された
- 買戻しできなかった
- 売却額が低かった
- 賃貸契約が更新できずに退去させられた
- 高額な手数料を請求された
このような後悔を避けるためには、契約書の入念な確認や、リースバックの仕組みへの理解が必要です。
また、なかには悪質なリースバック業者もいるので、できるだけ複数比較し、信頼できる業者を選ぶことがより重要になってきます。
まとめ
リースバックは、売却してまとまった資金を得ながらそのまま家に住めるというメリットがあります。
一方、売却額が低くなる、家賃が高い、買戻しできないなどのデメリットやリスクから、やばいといわれるケースもあります。
リースバックで後悔しないためには、慎重な計画と契約書の確認、業者選びが重要になってくるでしょう。
信頼できるリースバック業者を選び、満足いく売却ができるようにしてください。