※本記事は2019年の消費税増税前に作成したため、消費税の表記に変更がある場合があります。
不動産売却時に課される4つの税金
不動産売却時には、以下4つの税金が課されます。
- 所得税/住民税
- 登録免許税
- 印紙税
- 消費税
それぞれについて見ていきましょう。
①所得税/住民税
まず、不動産を売却して利益があると、その利益分に対して所得税と住民税が課されます。
売却した不動産を購入したときに支払った費用を経費として計上できたり、マイホームの売却の際には特別控除の適用を受けられたりしますが、最大で40%弱の税率が課されるため、事前にいくらくらい税金がかかるかしっかり把握しておくべきだといえます。
②登録免許税
登録免許税は登記に対して課される税金です。
不動産を売却するときの登記には所有権移転登記や抵当権抹消登記などありますが、このうち、所有権移転登記については買主が負担するのが一般的です。
(ただし、登録免許税ではありませんが、売渡証書の作成を司法書士等に依頼する必要があります。)
抵当権抹消登記
住宅購入時に住宅ローンを組んでいる場合、対象の住宅に対して抵当権を設定しますが、住宅売却時にはこの抵当権が抹消されていなければなりません。
すでにローンを完済している場合には、住宅を売却するまでに、ローンが完済されていない場合には、住宅の売却時に、その売却代金などでローンを完済し、抵当権を抹消します。
住宅売却時にローンを完済している | 売却までに抵当権抹消する |
住宅売却時にローンを完済していない | 売却と同時に抵当権抹消する |
なお、抵当権抹消に関する登録免許税は1筆につき1,000円となっています。
例えば、戸建ての売却で土地1筆、建物1筆であれば2,000円となりますが、1つの土地でも登記上数筆に分かれているような場合には、筆数の分だけ登録免許税がかかります。
住所変更登記
不動産の登記簿謄本には、所有者の住所も記載されています。
住宅購入時から、売却までの間に売主の住所が変わっていて、なおかつ住所変更登記を済ませていない場合には、売却と同時に住所変更登記をしなければなりません。
住所変更登記の登録免許税は、抵当権抹消登記と同じく1筆につき1,000円です。
③印紙税
住宅売却時には、買主との間で住宅に関する不動産売買契約書を取り交わしますが、売買契約書には、契約書に記載されている売買価格に応じた額の印紙を貼って印紙税を納める必要があります。
なお、2027年3月31日までの間に作成された不動産の売買契約書については、以下のように軽減税率の適用を受けることができます1。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
10万円を超え 50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え 100万円以下のもの | 1千円 | 500円 |
100万円を超え 500万円以下のもの | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下のもの | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え 1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え 5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え 10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え 50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
④消費税
最後は消費税です。
基本的に「個人が住宅を売る場合には消費税はかからない」という認識で構いません。
もう少し踏み込んで見てみると、消費税の課税条件は以下のようになっています。
- 土地の取引は非課税
- 建物も、個人が売却する場合は課税されない
- 事業者として建物を売却した際は、消費税が加算される場合がある
なお、仲介手数料や、登記を司法書士に依頼する際の司法書士報酬については消費税がかかる点に注意が必要です。
不動産売却時の譲渡所得税の計算方法
不動産を売却して利益がでると、その利益に対して税金が課されます。
この税金のことを譲渡所得税と呼びますが、譲渡所得税は以下の式で計算できます。
- 課税譲渡所得=売却価格-取得費-譲渡費用-特別控除
- 納税額=課税譲渡所得×税率
取得費の計算では減価償却がポイント
上記計算式のうち、取得費は「売却した不動産を購入したときに要した費用2」で、譲渡費用は「不動産を売却したときに要した費用(仲介手数料など3)」です。
例えば、5,000万円(本体価格+各種経費)で購入した不動産を200万円の経費をかけて3,000万円で売却したような場合には、以下のように計算します。
上記計算式を見ても分かるように、取得費を計上できれば納税額を大きく減らすことができます。
ただ し、実際には、不動産のうち建物部分については「年数の経過による劣化分」を差し引く必要があり、これを減価償却と呼びます。
仮に、5,000万円で購入した不動産が30年かけて3,000万円にまで価値が落ちていた場合、上記の取得費も3,000万円となるのです。
ただし、土地については減価償却を考慮する必要はありません。
減価償却の計算については下記の記事で詳しく解説しています。

特例の適用を受けて控除を受ける
また、売却する不動産がマイホームであるなど一定の要件を満たすことで、特例の適用を受けられます。
例えば、「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けると、先ほど計算した課税譲渡所得の額からさらに3,000万円差し引くことができます。
3,000万円で購入した不動産が30 年かけて1,000万円まで価値が落ち、200万円の経費をかけて3,000万円で売却したような場合で、3,000万円特別控除の適用を受けると以下のようになります。
譲渡所得税の税率は所有期間5年以上かどうかで大きく変わる
譲渡所得税の税金は、売却した不動産の所有期間によって異なります。
具体的には、所有期間が5年以下か、5年超かによって以下のように分けられています。
所有期間 | 区分 | 所得税 | 住民税 | 合計 |
5年以下 | 短期譲渡所得 | 15.315% | 5% | 20.315% |
5年超 | 長期譲渡所得 | 30.63% | 9% | 39.63% |
売却するときの所有期間が5年以下の場合には、1~2年待つだけで納税額を半分以下に抑えられる可能性があることを覚えておくようにしましょう。
相続した不動産を売却したときの税金は?
不動産をご両親から相続するなどしたものの、使い途がなく、売却したいというケースではどのように税金を計算するのでしょうか?
相続した不動産を売却しても譲渡所得税は課される
基本的には、相続した不動産を売却する場合でも、通常の売却と同じように、その利益額に対して譲渡所得税が課されます。
相続した不動産を売却する場合、同居していた場合を除き、3,000万円特別控除などマイホームであることを条件とする特例の適用を受けることが出来ない点には注意が必要です。
契約書や領収書など書類を確認しておこう
なお、課税譲渡所得の計算上、取得費は購入時の契約書や領収書を元に算出します。
相続した不動産についても、それらの書類があれば取得費を計上できるため、相続するときには購入時の契約書や領収書などの書類がどこにあるのか事前に確認しておきましょう。
ちなみに、こうした書類がなく取得費が分からないときには「売買価格の5%」を取得費として計上することになります。
相続した不動産の所有期間に関する取扱い
譲渡所得税の税率は、所有期間が5年以下か5年超かによって大きく変わることをお伝えしましたが、相続した不動産については、被相続人(亡くなった方)の所有期間も合算して計算できます。
登記簿謄本などで、いつ取得した不動産なのかを確認しておくとよいでしょう。
所得税/住民税の納期限と相続税の納期限
譲渡所得税は、