不動産の売買における手付金は、買主・売主の双方が売買契約の意思表示を明確にするものです。このお金の目的や内容、性質を知っていないと、トラブルに発展することもあります。
ここでは、手付金の特徴や相場、注意点などについて紹介しています。これから不動産売買を考えている方は目を通しておきましょう。
手付金とは
手付金とは、不動産売買をする際、契約締結前に買主が売主に支払うお金のことです。
一般的に、手付金には以下3つの性質があります。
- 解約手付:解約を認める手付金のことで、売主は倍返し、買主は放棄することで解約できる
- 証約手付:契約の成立を証明するための手付金のことで、買主から売主に支払う
- 違約手付:契約違反をした場合にペナルティとして没収される
ここでは、不動産売買時の手付金相場や支払うタイミングなど、基本的な内容について確認していきましょう。
手付金の相場は売買価格の5~10パーセント
不動産売買時の手付金の相場は、売買価格の5~10パーセント程度です。
仮に、売買価格が3,000万円であれば、手付金は150~300万円程度が相場となります。
手付金が安すぎては契約解除も簡単になって、相手に迷惑をかける契約者が現れてしまうので、売買価格の10パーセント程度にしているケースが多いです。
そのため、買主は売主に対して、300万円の手付金を支払わないと、契約を締結することができません。
ただし、不動産会社が売主の場合は、法律上20パーセントを上限として設定できるため、新築の建売住宅や分譲マンションなどでは20パーセントの手付金が必要な場合もあります1。
不動産を売買する場合は、手付金がどれくらいになるのか、事前に確認をしておきましょう。
売買契約時に買主が売主に代金の一部として支払う
手付金は、売買契約の際に買主が売主に対し、売買代金の一部として支払うお金になります。
売買代金とは別にかかるわけではなく、売買代金の一部として充当されるものです。
そのため、売買代金が3,000万円で手付金が300万円なら、残りの2,700万円を現金やローンで支払いをします。
本来は、買主は残金決済時に売買代金を全額支払い、手付金は売主から買主へ返還しないといけません。
しかし、やり取りが複雑になるので、手付金分を売買代金から差し引き、残りを買主が売主に支払いするのが 一般的です。
手付金を買主が売主に支払うタイミングは
手付金は、不動産売買の契約締結時に買主が売主に支払いをします。
なぜなら、手付金の授受には、契約成立を表す役割があるためです。
手付金を買主が支払い、売主が受け取ることで、売主と買主の双方が明確な意思表示をしたとみなされます。
そのため、手付金の授受は契約締結前でも契約をして時間が経ってからでもなく、契約締結時に行うものです。
もし、不動産を購入する際は、事前に手付金額を確認しておき、契約時に支払えるよう準備しておく必要があります。
手付金が支払われる状況とは
ここでは、手付金が支払われる状況について、確認していきましょう。
どのようなケースで、売主・買主の双方が手付金を支払うことになるのか理解しておくことが大切です。
事前に手付金が支払われる状況を把握しておくことで、トラブルも回避でき、スムーズな契約が可能になります。
不動産売買契約の手付金は解約手付
不動産売買契約時に支払う手付金は、解約手付です。
買主と売主は、それぞれ以下の手付金条件を満たすことで、契約解除をすることができます。
- 買主:支払った手付金を放棄することで契約解除ができる
- 売主:受け取った手付金の2倍を支払うことで契約解除ができる(手付け倍返し)
→買主は売主に手付金を返還し、さらに同額を支払う
民法第557条
(1)買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
(2)第545条第4項の規定は、前項の場合には、適用しない2。
売主から契約解除を申し出ることはあまりなく、ほとんどのケースでは買主が申し出ます。
売主の立場からすれば契約解除を防ぎたいため、できるだけ手付金は高く設定したいのが本音です。
しかし、手付金が高すぎると契約のハードルも上がってしまいます。
逆に、契約へのハードルを下げるため手付金を安くしてしまうと、簡単に買主から契約解除される可能性が出てきます。
不動産売買契約の手付金は解約手付であることを理解し「契約しやすく、解約しづらい」金額に設定することが大切です。
手付解約期間中に契約が行わ れない場合
手付金の放棄または倍返しによる解除ができるのは、相手が契約の履行に着手するまでです(民法第557条の1項)。
履行に着手とは、売主が所有権移転登記手続きをした場合や、買主が中間金・残代金の決済をした場合などが該当します。
なお、実務上は、手付金の放棄・倍返しによる契約解除ができるのを2週間などと期間を定めて、売買契約書に記載するのが一般的です。
キャンセルが発生した場合
繰り返しになりますが、解約にあたり手付金を支払うことになるのは、売主だけではありません。
買主がキャンセルを希望する場合は、支払った手付金を放棄する必要があります。
手付金が全額没収となるため、かなりの痛手です。
買主がキャンセルを申し出する際は、手付金が戻ってこないことを理解しておきましょう。
住宅ローンを利用する場合の手付金の扱い
不動産を現金で購入する場合と、住宅ローンを利用する場合とでは手付金の扱いが異なります。
どのような点で違いがあるのか把握していないと、適切な対応ができませんので、チェックしておきましょう。
住宅ローン特約を結ぶのが一般的
買主が住宅ローンを利用して物件を購入する場合は、住宅ローン特約を結ぶのが一般的です。
住宅ローン特約とは、買主がローン審査に落ちたことで契約解除となる場合は、売買契約を白紙に戻すことができ、手付金も返金されるという契約事項になります。
通常、買主が契約解除をする場合は、手付金を放棄しなくてはいけません。
しかし、住宅ローン特約を結んでいれば白紙撤回となるため、手付金も売主から買主に返却されます。
特に、ローン審査が通るか通らないか難しい状況の買主にとっては、非常に大切な特約です。
住宅ローンを利用する場合の不動産売買では、住宅ローン特約が付くのが一般的ですので、覚えておきましょう。

まとめ
ここでは、手付金の特徴や相場、注意点などについて紹介しました。
最後にもう1度、ここで紹介した重要ポイントをまとめると、次の4点が挙げられます。
- 手付金とは不動産売買契約の際に買主が売主に支払うお金のこと
- 手付金の相場は売買代金の5~10パーセント
- 買主は手付金を放棄、売主は手付金の倍返しで解約ができる
- 住宅ローンの審査落ちが原因で解約の際は、特約によって手付金が買主に返却される
これから不動産売買を行う予定の方は、事前に手付金の額を確認し、契約の際に対応するようにしましょう。
また、売主の場合は、高すぎず安すぎずの絶妙な金額設定をすることで、簡単に解約することが防げます。