傾いている・高低差があるといった条件の土地では、活用の前に造成工事が必要になるケースがあります。
また、土地を安く購入できたと思っても造成工事で予算オーバーするケースもあります。
土地活用を検討する際には、造成工事の費用まで押さえて予算計画を立てることが大切です。
この記事では、造成工事の基本や工事の種類別の費用相場・工事費の節約方法などを詳しく解説します。
造成工事とは
造成工事とは、土地を活用する目的に合わせて区画や形状などを整える工事です。
たとえば、住宅を建設するための土地に樹木が多い茂り土地がデコボコしているなら、樹木を伐採し均一にならす工事が造成工事となります。
すべての土地で必要な工事ではありませんが、主に以下のような土地では造成工事が必要です。
- 高低差のある土地
- 変形している土地
- 地盤が弱い土地
1つの土地に傾斜や段差があるケースやデコボコがある場合は、均一にならす造成工事が必要です。
また、四角形・長方形の整形地以外の土地では、建物を建てる際に必要な広さを確保するために造成工事が必要になるケースがあります。
地盤の弱い土地に建物を建てると地盤沈下などの恐れがあるため、目的に応じた地盤の強度を確保するための造成工事が必要です。
このように土地の状態と活用の目的に合わせて行うのが造成工事です。
そのため、造成工事にもいくつか種類があります。
主な種類については次の章で解説するので参考にしてください。
なお、造成工事の内容や地域によっては許可が必要です。
自分の土地であっても自由に造成工事できるわけではないことを覚えておきましょう。
【工事の種類別】造成工事の費用相場
造成工事には、主に以下の5種類があります。
- 整地
- 伐採・除草
- 地盤改良
- 盛土
- 土留
必要な工事の種類によっても費用は変わってくるので、それぞれの工事費用の相場を押さえておくようにしましょう。
以下では、それぞれの工事の内容と費用の相場を解説します。
なお、費用相場は国税庁の宅地造成費 の金額表(令和5年/東京都/平坦地)1を参考にしています。
傾斜がある土地や造成工事をする地域・工事内容によって費用は大きく異なるのであくまで参考とし、実際の費用は見積もりを取って確認するようにしましょう。
整地工事の費用相場
整地工事とは、土地を平らにならし固める工事です。
具体的には、建物がある場合は取壊し不要物を除去してからローラーなどで平らにならし転圧して踏み固めます。
また、固めた後は目的に応じて砂利やコンクリート・アスファルトなどで舗装までして土地を整えます。
整地工事の費用の目安は、1㎡あたり800円です。
ただし、どのように仕上げるかによっても費用は大きく異なります。
シンプルな粗仕上げが最も費用が安く、アスファルト・コンクリート舗装は費用が高くなります。
伐採・防草工事の費用相場
土地に生えている樹木や草花を除去する工事です。
樹木の場合は切り倒す伐採だけでなく根元から掘り起こす伐根も必要となります。
また、除草では草花を取り除いた後に除草剤の散布や除草シートを引いて仕上げるケースもあり、仕上げ方によって費用は異なります。
伐採・除草工事の費用相場は、1㎡あたり1,000円です。
ただし、樹木が多い場合は木材の廃棄費用がかかる場合もあるので注意しましょう。
なお、伐採・除草は敷地全体を行う必要はありません。
建物を建てる部分だけなど必要部分のみ施工し、残った樹木を活かすことも可能です。
地盤改良工事の費用相場
地盤改良工事とは、活用に合わせて地盤を必要な強度に高める工事です。
表面をセメントで固める「表層改良」や建物を支える「柱状改良工法」「鋼管杭工法」といった工法があり、必要に応じてどの工法が適しているかは異なります。
地盤工事は、事前に地盤調査をしたうえで実施の必要性や適切な工法を決めることになります。
地盤改良工事の費用目安は、1㎡あたり1,800円です。
例えば、150㎡の土地であれば30万円弱程度となりますが、実際には「表層改良」なのか「柱状改良」なのか、どの工事方法を実施するかで変化します。
実際のところ、一般的な宅地として考えるのであれば、表層改良で30~50万円程度、柱状改良になると50~100万円程度必要になるケースもあります。
地盤改良工事が必要かどうかは、土地を購入してから調査する必要があるため、土地購入前にどのくらいの金額が必要になるか分からない点にも注意が必要です。
盛土工事の費用相場
盛土工事とは、周囲よりも低い土地や傾斜のある土地に土を盛って地面を高くする工事です。
一方、高い土地の土を削って低くする工事は切土工事と呼ばれます。
もともとの地盤を削る切土に対し、盛土は新しい土を盛るため地盤がゆるむリスク高くなります。
そのため、盛土工事と合わせて地盤補強工事が必要になるケースが多いでしょう。
盛土工事費用の目安は、1㎡あたり7,400円です。
なお、盛土工事を行った場合は、土地の崩壊を防ぐために次に紹介する土留工事も行うケースが一般的です。
土留工事の費用相場
盛土だけでは側面から土地が崩れ落ちるリスクがあるため、崩れ落ちないように壁などを設ける土留工事を行います。
また、もともと高低差のある土地や斜面がある土地などでも崩壊を避けるために土留工事が行われます 。
土留工事は、必要な強度に応じて板やブロック・石・コンクリートなどが用いられ種類によって費用も大きく異なるので注意しましょう。
土留工事費用の目安は、1㎡あたり77,900円です。
土留の種類は外観にも大きく影響するので、強度だけでなく見た目も加味して決めることをおすすめします。
【事例別】造成工事の費用シミュレーション
ここでは、造成工事も費用を具体的にシミュレーションしていきましょう。
なお、費用の目安は以下のとおりです。
造成工事の修理 | 費用目安/1㎡あたり |
整地工事 | 800円 |
伐採・除草工事 | 1,000円 |
地盤改良 | 1,800円 |
盛土工事 | 7,400円 |
土留工事 | 77,900円 |
【40坪】整地工事のみ行うケース
1坪は約3.3㎡のため40坪は約132㎡です。
整地工事の費用相場が800円であるため、40坪の整地工事の費用目安は約10.5万円となります。
ただし、仕上げをどのようにするかによっても費用は異なってきます。
たとえば、もっとも費用がかかるコンクリート舗装で1㎡あたりの費用が1万円のときは整地費用が132万円と高額になってきます。
コンクリート舗装は駐車場経営を検討している場合に適していますが、一般的な住宅用や土地売却であれば砕石塗装で十分でしょう。
費用も考慮して活用方法に適した仕上げ方法を選んでください。
【50坪】地盤改良工事と整地工事を行うケース
50坪は約165㎡です。
地盤改良工事と整地工事の50坪での費用は、それぞれ以下のとおりです。
- 地盤改良工事費用:1,800円×165㎡=約29.7万円
- 整地工事費用:800円×165㎡=約13.2万円
よって、費用合計は29.7万円+13.2万円=42.9万円となります。
【60坪】伐採と整地を行ったうえで防草工事を行うケース
60坪は約198㎡となります。
除草工事で除草と除草シート仕上げまでする際の費用を1㎡あたり3,000円とした場合のそれぞれの費用は以下のとおりです。
- 伐採工事費用:1,000円×198㎡=19.8万円
- 整地工事費用:800円×198㎡=約15.8万円
- 除草仕上げ:3,000円×198㎡=59.4万円
よって合計額は19.8万円+15.8万円+59.4万円=95万円となります。
すぐに土地を活用しない・土地として売却するというケースでも、雑草が生えると次の活用時に除草が必要で、見た目が悪くなることから売却に影響する恐れがあります。
そのため、土地で保有・放置する場合でも除草シートなどで雑草対策しておくとよいでしょう。
【100坪】整地と合わせて盛土と土留工事を行うケース
100坪=330㎡です。
また、盛土工事をそのうち60㎡、土留工事は盛土を行った部分の側面3.5㎡行うとした場合の費用目安は以下のようになります。
- 整地工事費用:800円×330㎡=26.4万円
- 盛土工事費用:7,400円×60㎡=44.4万円
- 土留工事費用:77,900円×3.5㎡=約27.3万円
この場合の合計金額は26.4万円+44.4万円+27.3万円=98.1万円です。
なお、国税庁では傾斜地のある宅地造成費(整地+盛土+土留)の金額目安を以下のようにしています2。
傾斜度 | 金額/㎡ |
3度以上5度以下 | 20,300円 |
5度以上10度以下 | 24,700円 |
10度以上15度以下 | 37,600円 |
15度以上20度以下 | 52,700円 |
20度以上25度以下 | 58,400円 |
25度以上30度以下 | 64,300円 |
土地の造成費は土地の状況によっても大きく変わってきます。
土地の状況や活用目的に応じて適切な工事を選び、見積もりを取って比較するようにしましょう。
造成工事費用を節約する方法
造成工事は状況によっては100万円以上かかるケースもあり、家購入の初期費用の中でも高額になります。
また、想定より造成工事に費用がかかってしまうと家づくりの予算がオーバーしてしまうことがあるので注意が必要です。
造成工事費はちょっとしたコツを押さえれば節約できる可能性があるので、以下のことを意識するとよいでしょう。
購入前に不動産会社や住宅会社に相談する
造成工事費を抑えるには、造成工事が必要ないか、必要であっても少なくて済む土地を選ぶことが重要です。
とはいえ、土地を見ただけでどのような造成工事が必要かを判断するのは、容易ではありません。
土地が安いと思って購入しても調査すると大掛かりな造成工事が必要になるケースもあるでしょう。
反対に、多少土地代が高くても造成工事が少なくて済む土地なら、トータルの費用を抑えられる可能性があるものです。
また、土地によっては造成工事に規制がかかる場合もあります。
事前に不動産会社や住宅会社の担当者にどのような造成工事の必要性や必要な場合の費用の目安をアドバイスしてもらい購入を検討することが大切です。
雑草の処理やごみの処分など自分でできることは事前に済ませておく
雑草の処理やゴミの処理も業者に任させられますが、その分費用はかかってきます。
できる範囲を自分でやっておくことで費用を抑えられる可能性があるでしょう。
相見積もりする
業者によっても工事費は大きく異なります。
事前に複数の業者に見積もり をとって比較検討することが大切です。
ただし、安いからという理由だけで選ぶのはおすすめできません。
土地の造成工事は活用後の安全性に関わる重要な工事です。
業者の実績や評判・施工技術・対応などを含めてチェックし、信頼できる業者を選ぶことが何より重要になります。
また、土地造成費はトラブルになりやすいため、追加費用が発生しないかなど見積もり内容をしっかりチェックし、不明点は必ず確認するようにしましょう。
まとめ
土地の購入時や土地として売却する場合、造成工事が必要になる場合があります。
しかし、土地の状況や目的に応じて必要な工事の種類は異なるので、造成工事が必要かをまずはしっかり確認することが必要です。
造成工事の必要性は素人目では判断が容易ではないため、不動産会社などの相談して判断するようにしましょう。