住宅ローンを組むには、職歴や収入の他に健康であることを条件にしている金融機関がほとんどです。初めてローンを組む人からすると「なんで健康じゃなきゃダメなの?」「健康診断で引っかかったら住宅ローンが組めない?」と疑問に思うはずです。
当記事では、住宅ローンと健康診断の関係や、健康診断の結果が審査に影響を与えるのかといった疑問にお答えします。
健康診断の結果は住宅ローンに影響する?
結論からお伝えすると、住宅ローンの審査のために健康診断を受けさせられたり、健康診断書を求められることはありません。
ただし、住宅ローンの審査基準である「団体信用生命保険(団信)への加入」には大きく影響します。
団信とは、ローンを組んだ人が返済中に死亡したり、重い障害で働けなくなった場合に、残りのローンを返済してもらえる保険をいいます。
特に民間金融機関の住宅ローンでは、多くが団信への加入を求められます。
家族が家を手放さずに済むという意味でも、団信への加入は必須です。
告知書の役割と記入する内容
団信に加入する際に、申込者の健康状態を知るために「告知書」の提出が求められます。告知書に書かれた申込者の健康状態から、保険会社は団信への加入の可否や保障内容を判断します。
告知書は自己申告制で、以下の項目を記入するのが一般的です。
- 糖尿病、高血圧、心臓病など、治療中の病気や症状
- 過去の入院や手術歴
- 治療を受けた時期、内容、医療機関名
- 服用中の薬やサプリメント
- 薬やサプリメントを服用していた目的や期間
- 定期検査や経過観察の有無
- 喫煙や飲酒の習慣、運動量など生活習慣に関する情報
これらの情報を記載した告知書を提出することになります。
ただし、団信への加入条件や審査の基準については非公開とされているため、審査に通るかは実際に申し込んでみるまで分かりません。
健康診断書の提出が必要なケース
団信の申込みでは、基本的に健康診断書の提出は必要ありません。しかし、以下のようなケースでは、保険会社に健康診断書の提出を求められることもあります。
- 借り入れ金が5,000万円を超える場合
- 団信でガン保障や3大疾病特約をつける場合
- 持病があり告知書だけでは判断が難しい場合
- 告知書に欠かれている内容に虚偽が疑われる場合
保険会社や金融機関で、より詳細な情報が必要となる場合に必要となります。健康診断書の提出を求められたら、すぐに対応しましょう。
健康診断書を取得する手順
健康診断の予約や健康診断書の取得は、以下の手順で行なうのが一般的です。
- 医療機関を選ぶ
- 予約の手続きをする
- 健康診断と結果の取得
- 診断書を確認する
健康診断書を取得するために、まずは実施する医療機関を選ぶ必要があります。住宅ローン審査の場合、必要な検査項目が異なる場合があるので事前に金融機関に確認しましょう。
問題がなければ医療機関に予約を入れて、指定された日時に来院します。予約の際に、必要な検査項目を伝えておくとスムーズに手続きが進むでしょう。
検査を受診した後、医師による結果の説明があります。その際、必要な検査結果や健康診断書を取得しましょう。
ただし、診断書の発行には日数がかかる場合があるため、スケジュールに余裕を持つようにしてください。
発行された診断書を受け取ったら、内容に不備がないか確認してください。不備が見つかった場合は、速やかに再発行を依頼しましょう。
各医療機関によって異なりますが、健康診断書の作成には2,000円~10,000円ほどの費用がかかります。
告知書に記入するときの5つの注意点
告知書に記入する際は、次の5つのポイントに注意してください。
- 嘘や隠し事は絶対に避ける
- 告知書には3ヶ月以内の情報を記入する
- 診療記録や検査結果を参考にする
- 専門用語は医師や専門家に確認する
- 不明な点は必ず金融機関や保険会社に相談する
以下では、告知書に記入する際の注意点について、詳しく解説します。
1. 嘘や隠し事は絶対に避ける
告知書には、絶対に嘘や隠し事は記載しないようにしましょう。
「病気の申告をすると住宅ローンが組めなくなるなら、自分に有利なことだけを書けばいい」と、考える人もいるでしょう。
告知書は自己申告なので、自分にとって都合のいいことだけを書くことは可能です。しかし、嘘を書いたり隠し事をすると「告知義務違反」に問われる可能性があります。
例えば、現在も病気を治療するために通院しているのに、それを隠して告知書に記載しなかったとします。
それで住宅ローンの審査に通過しても、団信を利用した時点で保険会社は過去の病歴などを調査することがあるのです。
その結果、虚偽の報告が発覚すると保険金が支払われないだけでなく、ローン契約が取り消される可能性も考えられます。告知書には嘘や隠し事はせずに、正確な情報を記載しましょう。
2. 告知書には3ヶ月以内の情報を記入する
団信の告知書には提出期限が定められています。基本的に住宅ローンの借り入れを申し込む際に告知書の提出が求められるので、それまでに準備は済ませておきましょう。
借り入れを決めたら、早めに健康診断の予約をすると良いでしょう。ただし、告知書に記入できるのは、一般的に過去3ヶ月以内の情報に限られます。3ヶ月以上経過している場合は無効となるため注意しましょう。
また、団信の告知書の有効期限は、告知日から12ヶ月と定められるのが一般的です。有効期限内に融資が実行されない場合は、再度告知書を記入して申し込む必要があります。
3. 診療記録や検査結果を参考にする
健康診断を受けていないと、自分の健康状態を正確に把握するのは難しいはずです。記憶だけに頼って告知書を記入すると、内容に誤りが生じやすく後々トラブルにつながる可能性があります。
そこで、健康診断書を参考にして病名や治療期間、服用中の薬、症状の経過などを正確に記入してください。
4. 専門用語は医師や専門家に確認する
告知書を記入する際に、医療用語や病名が曖昧で分からないといったケースも少なくありません。
不正確な情報を記載をすると、保険会社が適切に評価できない可能性があります。それが原因で追加の説明や書類の提出を求められたり、場合によっては保険金を支払う段階になってトラブルが発生するかもしれません。
難しい用語や病名がある際は、自己判断せずに医師や医療従事者、専門家に確認しましょう。
5. 不明な点は必ず金融機関や保険会社に相談する
告知書の記入方法や必要書類、健康状態の伝え方などで分からない部分があれば、早めに金融機関や保険会社へ問い合わせましょう。
自分の判断で誤った情報を記載すると、保険金の支払いを拒否されたり、契約上のトラブルに発展しかねません。
不明な点は、必ず各金融機 関の担当者やカスタマーサポート窓口などに相談しましょう。
団信に加入できない場合の対処法
団体信用生命保険(団信)は、健康状態や年齢などの理由で加入できないと、住宅ローンの審査に通らない可能性があります。
しかし、次のような対処法を取ることで、マイホームの夢を諦めずに済むかもしれません。
- 特約を外して申し込む
- ワイド団信を検討する
- フラット35を利用する
- 健康状態を改善する
- 配偶者を主たる債務者にする
以下では、団信に加入できない場合の具体的な対処法をご紹介します。
特約を外して申し込む
団信は、死亡・高度障害保障の他に「がん保障」や「三大疾病保障」などの特約を追加できます。しかし、特約を付けると告知項目が増えるため、審査が厳しくなる傾向があります。
団信に加入できない場合は、特約を外して申し込んでみましょう。特約を外すことで、告知する内容も簡略化されるので、持病や既往歴がある場合でも加入しやすくなる可能性があります。
ただし、特約を外すことで、特定の疾病に対する保障がなくなります。健康面で不安を抱えているのであれば、必要に応じて民間の医療保険や生命保険で補うことをおすすめします。
また、住宅ローンの借り入れ後に団信の種別を変更することは基本的にできません。特約を外すかは、自身の健康状態などを考慮した上で決めましょう。
自分だけでは判断が難しい場合は、金融機関や保険会社の担当者に相談して、専門家の意見を参考にしてください。
ワイド団信に加入する
ワイド団信は、持病や既往歴がある人でも加入しやすい団体信用生命保険です。
通常の団信では加入が難しい高血圧症や糖尿病、肝機能障害などがあっても、ワイド団信であれば加入できる可能性があります。
しかし、ワイド団信は以下のようなデメリットもあります。
- 住宅ローン金利に0.3%程度の上乗せが発生する
- ワイド団信を取り扱っていない金融機関も多い
- 借り入れ先が限られる可能性がある
- がん保険や三大疾病保障などの特約が付けられない
ワイド団信の加入を検討する際は、金融機関や保険会社の担当者に相談し、メリットとデメリットを比較した上で判断しましょう。
フラット35を利用する
フラット35は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する全期間固定金利の住宅ローンです。
他の住宅ローンとは異なり、団体信用生命保険(団信)への加入が任意となっています。そのため、健康上の理由で団信に加入できない方でも、フラット35であれば住宅ローンを組むことが可能です。
ただし、団信に加入しない場合、借り入れした人が死亡または高度障害を負った際、ローンの返済を遺族が引き継ぐことになります。最悪の場合、家を失う可能性もあるため、団信以外の準備をしておく必要があります。
万が一の事態に備えて、別途生命保険や収入保障保険に加入することが望ましいでしょう。
健康状態を改善する
住宅ローンに申し込む前に、病気の治療を終えてしまいましょう。告知書に記載する内容は、診断や検査から3ヶ月以内の健康状態にもとづくため、改善が見られた時点で住宅ローンの申し込みを行うと、審査で有利になる場合があります。
健康状態の改善のために通院や治療はもちろん、生活習慣を見直して健康的な食事を心がけましょう。さらに、適度な運動を日常に取り入れることで、健康状態の改善が期待できます。
配偶者を主たる債務者にする
団信は主たる債務者に対して適用されるため、ご自身の健康状態が理由で加入できない場合でも、配偶者が条件を満たしていれば住宅ローンを利用することが可能です。
また、主たる債務者を配偶者に設定し、自身が連帯保証人や共同名義人になることで、住宅ローンの返済を夫婦で分担することもできます。
ただし、夫婦共働きで住宅ローンを返済することになると、いくつかの注意点もあります。例えば、出産や育児、入院や退職でどちらかが収入源を失うと、もう一方に返済の負担が重くのしかかってしまうでしょう。
住宅ローンの返済は長期に及ぶため、支出と収入のバランスが変わってしまう可能性も十分にありえます。そのような場合に備えて、返済計画を夫婦間でしっかりと話し合っておくことが重要です。
住宅ローン審査に通過するためのコツ
住宅ローンの審査では、申込者に返済能力があるか、信用できる人物かなどを厳しくチェックします。金融機関が重視するポイントを押さえて、事前に適切な対策を取ることで審査をクリアする可能性が高くなります。
以下では、住宅ローン審査を通過するためのコツを分かりやすく解説します。
健康状態を整える
団信への加入には、自身の健康状態を記載した「告知書」の内容が大きく影響します。健康状態が安定していれば審査はスムーズに進みますが、病気や治療歴がある場合は加入が難しくなることもあります。
そこで、住宅ローンを申し込む前に、健康状態を整えましょう。例えば、バランスの取れた食事、適度な運動、そして十分な睡眠を心がけることで、生活習慣病の改善が期待できます。
さらに、健康診断を受けて自身の健康状態を把握することが重要です。必要であれば医師に相談して、適切な治療を受けることで審査を通過する可能性を高めることができます。
収入を安定させる
金融機関では、住宅ローンの申込者が長期間にわたり無理なくローンを返済できるかを重視しています。安定した収入があれば、返済能力があると判断されて審査に通過しやすくなります。
例えば、同じ年収であっても、正社員で定期的な収入がある人は審査で有利になります。一方で、収入が不規則なフリーランスや最近転職したばかりの人は、返済能力に不安があるとみなされる可能性があります。
住宅ローンの審査に通過するために、収入が安定した状態を維持しましょう。仮に転職を検討しているのであれば、審査が完了するまで現 在の職場で勤続年数を維持することをおすすめします。
適切な借入額を設定する
金融機関では、住宅ローンを申し込む際、申込者の収入や支出をもとに返済能力を審査します。一般的に、借入額が年収に対して高すぎる場合、返済能力に不安があると判断され、審査を通過しづらくなります。
一方、無理のない範囲で借入額を設定することは、審査通過率を高めるだけでなく、家計への負担軽減にもつながります。
年収倍率の基準
借入額は、年収の5〜7倍が一般的な目安です。
返済比率の基準
毎月のローン返済額が年収に占める割合(返済比率)は、金融機関によって異なりますが、一般的には以下の基準が目安とされています。
- 収入400万円未満:返済比率は 30〜35%以下
- 収入400万円以上:返済比率は 35〜40%以下
▼関連記事

信用情報に傷をつけない
住宅ローンの審査では、申込者の信用情報も評価されます。信用情報は、クレジットカードやローンの利用状況、返済履歴などが記録された情報をいいます。
例えば、クレジットカードの支払いを滞納したり自己破産をすると、信用情報機関に記録が保存されて各金融機関で情報が共有されます。これが「 信用情報に傷がついた」「ブラックリストに載った」といわれる状態です。
信用情報に傷がつくと、申込者に返済能力がないと見なされて、住宅ローンの借り入れができなくなる恐れがあります。
もし不安がある場合は、住宅ローンを申し込む前に、信用情報機関から信用情報を取り寄せて現在の状況をチェックしましょう。
また、ローン審査を検討しているのであれば、新たにクレジットカードを作成したり、高額な分割払いを利用したりするのは避けてください。これらは「多重申込」と見なされて、信用力の低下につながる可能性があります。
さらに、既存の借入がある場合は、可能な限り住宅ローンの申込前に返済を済ませておきましょう。
▼関連記事

頭金を用意する
頭金を準備することで、住宅ローンの審査を通過しやすくなります。頭金とは、物件価格の一部を自己資金で支払うお金を指します。
頭金を十分に用意することで、借入額を減らすことができます。結果、月々の返済額や総返済額を抑えられるというメリットがあります。
また、頭金が多い場合、金融機関によっては金利が優遇される制度を利用できることがあります。
ただし、無理な貯金や節約をしてまで頭金を準備するのは避けるべきです。生活費やその他の資金が不足すると、住宅ローンを返済する段階で問題が発生する可能性があります。
生活費などを考慮した上で、無理のない範囲で頭金を用意しましょう。
なお、父母・祖父母から住宅購入のための資金について贈与を受けた場合、一定の金額を非課税とできる特例をでき、頭金に充てることも可能です1。
頭金の割合や贈与の特例については、FP・税理士などの専門家や金融機関の担当者に相談してみてください。
▼関連記事

まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。今回は、住宅ローンに健康診断がどのように影響を与えるかを解説しました。
健康診断の結果そのものが住宅ローンの審査に影響を与えることはありません。しかし、団信への加入が求められる場合には、健康状態が審査を通過するポイントになります。
住宅ローンの審査をスムーズに進めるためには、健康状態の管理が重要です。健康診断を受けて自身の健康状態を把握し、必要であれば生活習慣を見直したり、医師のアドバイスを受けるなどして改善を図りましょう。
また、告知書の記入時に虚偽の申告や情報を隠すような行為をすると、後々大きなトラブルに発展する可能性があります。告知書には正確な情報を記載しましょう。
さらに、団信への加入が難しい場合でも、ワイド団信やフラット35などを利用することで、住宅ローンを組める可能性はあります。
この記事で紹介したコツや対策を活かして、夢のマイホームを手に入れてください。