住宅ローンの審査は、マイホームの購入を検討する人にとって避けては通れないハードルのひとつです。
一般的に住宅ローンの審査には「事前審査」と「本審査」の2種類があります。これらの段階を通過することで、正式に融資をしてもらえるのです。
本審査にさえ通れば、住宅ローンを組めるものだと誰もが思っているはず。ですが、本審査に通過した後でも、予期しない理由で融資が実行されないケースがあることをご存知でしょうか?
当記事では、住宅ローン本審査承認後に融資が実行されない原因や、発生し得るペナルティ、さらにリスクを減らすための対策について解説します。
住宅ローンの本審査に承認された後で落ちる理由とは?
住宅ローンの本審査で通過したにもかかわらず、その後で審査に落ちてしまうことがあります。
本審査後に落ちる理由には、以下のようなものがあります。
- 収入に変化があった
- 信用情報に傷がついた
- 返済負担が増加した
- 健康状態が悪化した
以下では、住宅ローンの本審査承認後に落ちる理由について詳しく解説します。
収入に変化があった
住宅ローンの審査では、安定した収入や雇用状況が評価されます。そのため、承認前と収入や雇用形態に変化があると、承認後に落とされる可能性があるのです。
例えば、転職や退職といったケースが該当します。本審査後に転職して一時的に収入が減ってしまったり、退職して無収入の期間があると承認後でも落とされる恐れがあります。
また、夫婦や親子の収入を合算してローンを申し込んだ場合も注意が必要です。どちらかが退職や離職をして収入が減少すると、本審査承認後に落とされる可能性があります。
信用情報に傷がついた
本審査承認後であっても、申込者の信用情報に傷がつくと融資を取り消される恐れがあります。
信用情報とは、金融機関が申込者の借入状況や返済実績を確認するための情報を言います。
例えば、安定した収入がある、正規雇用、過去に借り入れたローンの返済を滞りなく行っている場合は、申込者の信用力が高いと判断されます。
反対に、自営業や派遣社員で収入が不安定、過去にローンの返済で延滞していたなどの場合は、信用力が低いと判断されます。
さらに、自己破産のような金融事故を起こすと、信用情報 を大きく傷つけることになります。これがいわゆる「ブラックリストに載る」という状態です。
住宅ローンの本審査承認後に信用情報に傷をつけると、承認が取り消されて融資を受けられない恐れがあります。
返済負担率が増加した
住宅ローンの本審査に通過する前と後で、返済負担率が増加した場合も承認後に落とされる可能性があります。
返済負担率とは、申込者の年収に対する年間返済額の割合を指します。住宅ローンを組む際に、申込者に返済能力があるかを金融機関が判断するために用いられます。
返済負担率は低ければ低いほど、問題なく融資を受けることができるでしょう。一方で、返済負担率が高ければ、返済が困難になるリスクがあると判断されます。
返済負担率が増加するケースとして、以下が挙げられます。
- 新たに借入を行った
- キャッシングの利用が増えた
- 承認前より収入が減った
住宅ローンの本審査が承認されたとしても、その後で返済負担率が増加すると落とされる可能性が高くなります。
健康状態が悪化した
住宅ローンの本審査承認後に、健康状態が悪化した場合も落とされるケースがあります。
住宅ローンを組む際は、申込者が団体信用生命保険(団信)に加入することが条件の一つとなっています。
団信は、申込者が死亡または高度障害などでローンの返済が難しくなった場合に、残ったローンを保険金で補填する保険を言います。
住宅ローンの本審査に承認されたとしても、融資が行われる前に健康状態が悪化して団信に加入できないと、条件が満たされないため承認を取り消される可能性があります。
本審査と事前審査はどう違う?
住宅ローンの本審査承認後に落ちないための対策として、審査ではどのような段階を経ているのかを知ることから始めましょう。
以下では、住宅ローンの一般的な流れや、審査ではどのようなことがチェックされているのかをご紹介します。
住宅ローン審査の一般的な流れ
住宅ローンを申請すると、以下の流れで審査と融資が行われます。
- 事前審査
- 本審査
- 契約手続き
- 借り入れ
一般的な住宅ローンの審査は、事前審査と本審査の2段階で行われます。
事前審査でチェックされる内容
事前審査は、名前の通り本審査を行う前の簡易的な審査のことをいいます。
住宅ローンの融資額は数千万円と高額になるため、申込者の情報を細かくチェックすることになります。
ですが、本審査を行い融資が実行されるまでは、長ければ1ヶ月以上かかる場合も珍しくありません。
審査が終わるのを待っている間に、他の買主に物件を購入される恐れもあります。そこで、申請者の返済能力に問題がないか、信用情報に傷はついていないかなどを確認する意味で事前審査が行われます。
金融機関によって細かい部分は異なりますが、主に申告者の以下の部分をチェックされます。
- 年齢
- 職業
- 年収
- 返済負担率
これらの項目をチェックするために、以下の書類が必要となります。
- 事前審査の申込書
- 身分証明書
- 健康保険証
- 収入が確認できる書類
- 残高証明書
- 物件の資料
事前審査を行う前に、書類は忘れずに用意しておきましょう。
本審査でさらに確認さ れるポイント
事前審査の次に本審査が行われます。本審査では、申込者の返済能力や収入などをより細かくチェックされます。
- 完済時の年齢
- 雇用形態
- 収入
- 返済負担率
- 物件の情報
- 家族の情報
チェック項目や基準は各金融機関によって異なりますが、主にこれらの項目が重視される傾向にあります。
また、本審査では以下のように事前審査より多くの書類を提出することになります。
- 本審査の申込書
- 団体信用生命保険の申込書
- 火災保険加入の書類
- 住民票
- 印鑑証明書
- 不動産売買契約書
- 物件のパンフレットや間取図
- 不動産登記簿謄本
これら以外にも書類の提出を求められる場合があります。必ず金融機関で必要な書類を確認しておきましょう。
住宅ローン本審査承認後に落ちた場合のペナルティ
住宅ローンの本審査承認後に落ちてしまった場合、融資が受けられないだけではありません。他にも、様々なペナルティが発生する可能性があるのです。
以下では、住宅ローン本審査承認後に落ちた場合、どのようなペナルティがあるのかについて解説します。
購入契約の解除と違約金が発生する可能性
住宅ローンの本審査承認後に、様々な理由で融資が行われなければ、物件の購入は諦めることになるでしょう。
契約解除が買主側の都合であれば、不動産との契約を解除することとなります。その際、契約内容によりますが、物件価格の5~10%の違約金が発生します。
例えば、3,000万円の物件であれば、違約金は150万円~300万円程度となります。
ただし、後述する「住宅ローン特約」があれば、違約金が発生せずに契約の解除が可能となります。
手付金が没収される場合も
住宅ローンの本審査に承認された後に落とされた場合、不動産の購入契約を解除することになります。この際、契約時に支払った手付金が没収されることもあるため注意しましょう。
手付金は契約を結んだことの証として支払われるものをいいます。買主が原因で不動産の購入契約が解除されると、売り主への補償として手付金が没収されるのが一般的です。
手付金の金額は売買主や仲介に入る不動産会社と協議した上で決定されますが、物件価格の5~10%程度が一般的です。例えば、3,000万円の物件であれば、150万円~300万円が手付金として支払われます。
こちらも違約金同様に「住宅ローン特約」があれば、手付金を返還してもらうことが可能です。
ローン特約について理解しておくべきポイント
住宅ローンの本審査承認後に落とされると、融資が実行されないため物件の購入契約を解除しなければいけません。
その際、違約金の発生や手付金の没収などで、数百万円の損失が発生する可能性もあります。
こういった、買主が被る損失を抑える救済措置が「ローン特約」です。
以下では、ローン特約の基礎知識などを解説します。
ローン特約の基礎知識
ローン特約とは、物件の購入契約を結ぶ際に、買主と売主の合意によって設定されるオプションの一つです。
通常、本審査に落ちて購入契約が解除されると、買主は違約金を支払ったり、手付金を没収されたりすることがあります。
しかし、ローン特約をつけておけば、違約金が発生せず手付金も買主に返還されます。買主は経済的な損失を被ることなく、無条件で契約を解除することが可能です。
ローン特約の種類
ローン特約には「解除条件型」と「解除権保留型」の2種類があります。
解除条件型
解除条件型は、期限内に住宅ローンの審査を通らなかった場合、自動で売買契約が解除されるといった特徴があります。
買主から売主に意思表示をしなかったために、手付金が返ってこなかったというリスクを防ぐことができます。
ただし、ローンが落ちた時点で自動的に契約が解除されるため、別の金融機関にローンの申請をするのであれば、売主と改めて売買契約を結ばなくてはいけませんが、「一度審査に落ちた売主との契約は見送り、他の買主を探す」という売主も多いです。
また、審査がすべて終わるまで契約を解除されたくない場合は、売主と相談して「売買契約変更合意書」を交わす必要があります。
解除権保留型
住宅ローンの審査に落ちると、買主に売買契約を解除する権利を一定期間与えられるのが解除権保留型の特徴です。買主から売主に、契約の解除を伝えることでローン特約が適用されます。
複数の金融機関に住宅ローンの申請をするのであれば、解除権保留型がおすすめです。仮に本命の審査に落ちたとしても、自ら売主に意思表示しなければ契約は継続されるため、他の審査の結果を待つことが可能です。
ただし、期間を過ぎると解除の権利を失ってしまいます。権利を失効すると、手付金の没収や違約金 が発生するなどのペナルティが科せられるため十分注意しましょう。
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住宅ローン本審査承認後に落ちないための事前対策
住宅ローンの本審査を無事に通過するためには、事前にしっかりと対策を立てることが肝心です。
以下では、住宅ローンの本審査承認後に落ちないための事前対策を解説します。
収入を安定させる
住宅ローンの本審査を通過するには、兎にも角にも収入を安定させることです。各金融機関では、住宅ローンの申込者に返済能力があるか、安定した収入があるかを重要視しています。
本審査を通過した後に、転職や退職をすると一時的に収入が減少したり、収入源を失ってしまいます。特に自営業やフリーランスは収入が不安定になりがちなので注意が必要です。
住宅ローンの本審査終了後に、融資が実行されるまでは現在の雇用状況を維持して、安定した収入を確保しておきましょう。
信用情報を良好に保つ
住宅ローンの本審査後に落ちてしまう原因の1つに、信用情報の変化が挙げられます。信用情報が傷ついていると、金融機関では返済が難しいのではないかと判断してしまいます。
本審査前は信用情報が良好であっても、審査後に信用情報に傷がつくと落とされる可能性が高いのです。
本審査を無事に通過するためにも、金融機関で本審査が行われている期間は、クレジットカードのキャッシングや新たな借り入れをしないようにしましょう。
▼関連記事:住宅ローンの審査後にクレジットカードの新規作成・高額利用を行う場合の注意点
手元に十分な資金を確保しておく
住宅ローンの審査では、貯金の有無や頭金を用意できるかどうかもチェックされます。たとえ本審査に通過しても、手元資金が不足していると融資額を減らされたり、最悪の場合は融資が取り消される可能性があります。
さらに、手元資金が十分でないと、病気やケガ、車の修理費用など、予期せぬトラブルに対応することが難しくなるでしょう。
金融機関の信頼を得るだけでなく、普段の生活で困らないためにも、事前に十分な資金を確保しておきましょう。
健康状態を良好に保つ
住宅ローンの審査では、収入や雇用状況に加え、健康状態も重要なポイントとされています。なぜなら、多くの金融機関では、住宅ローンの審査に団体信用生命保険(団信)への加入が義務付けられているからです。
団信は、ローン申込者が死亡または高度障害となった場合、残りのローンを保険金で補填してもらえます。
しかし、健康診断の結果や過去の医療履歴、現在の健康状態によっては団信への加入を拒否される可能性があります。団信に加入できない場合、住宅ローンそのものを利用できなくなることも少なくありません。
こうしたリスクを避けるためには、日頃から健康に気を配ることが大切です。本審査を受ける前に健康診断や早期治療を行い、健康状態を良好に保ちましょう。
まとめ
最後までお読みいただきありがとうございます。今回は、住宅ローンの本審査承認後に落ちる理由と対策をご紹介しました。
住宅ローンの本審査承認後でも、様々な理由で落ちる可能性があります。例えば、本審査後に転職や退職をすると、安定した収入が得られなくなります。
また、信用情報に傷がついたり、返済負担が増加することでも本審査承認後に落ちてしまう可能性があります。
住宅ローンの本審査終了後に落とされないためにも、本審査中は収入が減少するような転職や退職は避けるようにしましょう。