自分が住まなくなったマンションを活用する選択肢としては、大きく分けて「売る」か「貸す」の2つがあります。
どちらにもメリット・デメリットがあるので、自分の状況やメリット・デメリットを考慮したうえで、判断することが大切です。
基本的に悩むなら「売る」ことをおすすめしますが、その理由や、貸す場合の流れやメリットも理解しておくと判断しやすくなるでしょう。
この記事では、マンションを売る・貸すの判断基準やそれぞれのメリット・デメリット、売ることをおすすめする理由について、分かりやすく解説します。
マンションを売るのと貸すのを決める判断基準
活用しないマンションをいつまでも放置していると、固定資産税などのコストがかかってしまいます。
活用しないなら「売る」か「貸す」という選択肢がありますが、どちらを選ぶべきかは個々の状況などによって異なってきます。
とはいえ、大まかな判断基準として以下の3つを紹介するので、参考にしてください。
将来使う予定があるのであれば貸すのがおすすめ
直近で住む予定がなくても、将来的に活用するのなら貸すのがよいでしょう。
転勤で離れるけどいずれ帰ってくる、老後や子どもが成長した時に住むといったケースで将来利用する可能性があります。
貸すのであれば、所有権はそのまま自分が持つため将来活用できます。
マンションという資産を保有したままでいられるので、子どもや孫に相続させることも検討できるでしょう。
なお、「自分の所有しているマンションを貸したら賃料がいくらぐらいか」を把握したい場合は、portyの家賃相場マップが便利です。
大阪市ミナミエリア周辺の賃料相場マップ
portyでは、地図上で
- 面積
- 築年数
- 間取り
- 建物構造
をソートして自分が所有する区分マンションの条件に合わせることで、周辺の物件はいくらぐらいの賃料設定かが簡単にわかります。
また、AIを活用した賃料査定のサービスも活用可能です。
ローンが残っている場合はそもそも売却できない可能性がある
マンションに住宅ローンが残っている場合、売却するには住宅ローンの完済が必須です。
住宅ローンが残っている間はマンションに抵当権が設定されているため、抵当権を抹消しなければ売却できません。
抵当権を抹消するには、住宅ローンを完済する必要があります。
売却金で住宅ローンを完済できるなら問題なく売却を進められますが、売却金だけでは完済が難しい場合もあるでしょう。
その場合、自己資金で補填する・住み替えローンを活用するなどして住宅ローンを完済することになります。
上記の工夫でも完済できない場合は、そもそも売却できません。
この場合は、貸すという選択肢となるでしょう。
ただし、住宅ローンが残っているマンションは、金融機関の許可なく貸し出すことはできません。
許可なく貸し出してしまうと、住宅ローンに規約違反になる恐れがあるので注意しましょう。
転勤などやむを得ない理由であれば金融機関も許可してくれる可能性があるので、まずは金融機関に相談することが大切です。
それぞれのメリット・デメリットを比較する
「将来的に活用するか不透明」「住宅ローンは問題なく完済できる」「売却金が差し迫って必要ない」などで、売ればいいのか貸せばいいのか判断がつかないケースもあります。
この場合は、まず「売る」場合と「貸す」場合のメリット・デメリットを比較してみるとよいでしょう。
売ると貸すでは、メリット・デメリットが大きく異なります。
両者を比較して、自身の希望に合った方法を選ぶのも一つの手です。
以下では、売ると貸すのメリット・デメリットを詳しく解説するので、参考にしてください。
信頼できる不動産会社をご紹介
イエウリ の不動産査定はこちら
マンションを売るメリット・デメリット
まずは、マンションを売る場合のメリット・デメリットをみていきましょう。
メリット | デメリット |
まとまった資金が手に入る 維持管理の手間と費用が不要になる 売却代金を新居の購入資金に充てられる | 家賃収入を得られなくなる 子どもに資産として残せない 将来住むことができない |
メリット
マンション売却のメリットは3つ挙げられます。
- まとまった資金が手に入る
- 維持管理の手間と費用が不要になる
- 売却代金を新居の購入資金に充てられる
まとまった資金が手に入る
売却することで、売却金というまとまった資金を手に入れられます。
資金の活用方法は自由なので、生活資金や教育資金・老後資金・事業用資金などさまざま検討できるでしょう。
住宅ローンが残っている場合でも、売却金で完済を目指すことが可能です。
維持管理の手間と費用が不要になる
マンションをそのまま所有し続けると、以下のような費用の支払いが続きます。
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険料
- 修繕積立金
- 管理費
住まないからといって放置すると劣化が早くなるので、定期的な管理も必要でしょう。
そのため、活用しないのに手間や費用ばかりかかってしまいます。
売却してしまうことで、これらの費用や手間の負担から解放されるのは大きなメリットといえるでしょう。
売却代金を新居の購入資金に充てられる
売却後に新居の購入を検討している場合でも、売却金を新居購入費用に充てられるというメリットがあります。
新居の購入には、ローンを活用するとしても頭金や税金・引越し費用など諸々のお金が必要です。
仮に賃貸に住む場合でも、敷金・礼金・引越し費用などでまとまった費用が必要になります。
売却金としてまとまったお金があれば、新居資金としてすぐに利用できます。
さらに、近年は不動産の価格 も高騰しているため、高値で売却できれば新居の選択肢も広がるでしょう。
デメリット
売却には以下のようなデメリットもあるので注意しましょう。
- 家賃収入を得られなくなる
- 子どもに資産として残せない
- 将来住むことができない
家賃収入を得られなくなる
貸さない場合に比較したデメリットとして、家賃収入が得られない点が挙げられます。
売却金のようにまとまった資金ではありませんが、毎月給与収入に家賃がプラスされるので生活に余裕も出やすくなります。
その点、売却することは定期的な収入源を手放すことを意味します。
売却金と毎月の家賃収入、どちらが得になるかはシミュレーションしたうえで検討することが大切です。
収益シミュレーションについては、後ほど詳しく解説するので参考にしてください。
子どもに資産として残せない
マンションを所有していれば、自分の資産としていつでも活用できます。
さらに、将来的に子どもや孫に相続させることもできるでしょう。
立地の良いマンションであれば利便性も良く資産価値も落ちにくいため、将来の相続財産としてもプラスになる可能性があります。
手放すことで、活用も相続もできなくなる点には注意が必要です。
将来住むことができない
転勤など一時的に住まない場合でも、貸してしていれば元の土地に戻ることになった際に再び住むことが可能です。
しかし、売却して手放せば転勤後に同じエリアに住む場合でも、新たに新居を探さなければならないので手間や費用がかかってきます。
また、長年住んでいたマンションに愛着を感じる人も多いものです。
資産としての値段以上の愛着・価値を感じている方も少なくないでしょう。
売却して手放してしまうと、後から精神的なストレスを感じてしまうケースもあるので慎重に判断することが大切です。
信頼できる不動産会社をご紹介
イエウリ の不動産査定はこちら
マンションを貸すメリット・デメリット
次に、マンションを貸すメリット・デメリットをみていきましょう。
メリット | デメリット |
家賃収入を得られる 家賃収入でローンを返済できる 将来住むことができる | 維持管理の手間と費用がかかる 家賃収入ゼロでも費用はかかる |
メリット
貸すメリットとしては、以下の3つが挙げられます。
- 家賃収入を得られる
- 家賃収入でローンを返済できる
- 将来住むことができる
家賃収入を得られる
貸し出せば毎月家賃収入を得られます。
家賃収入で固定資産税や管理費などを賄えれば、残りを自分の収入としてプラスできます。
生活費に充てらえる収入がプラスされれば生活に余裕も出やすくなるでしょう。
特に、老後の給与収入が途絶えた時に家賃収入が毎月プラスされるのは大きなメリットです。
家賃収入でローンを返済できる
家賃収入で住宅ローンを返済することも可能です。
家賃は自由に設定できるため、住宅ローン・固定資産税などのコストを賄えるように設定しておくことで、必要なコストは家賃のみで支払えます。
自分の給与収入以外で自動的に住宅ローンを返済できる仕組みができるのは、経済的な大きなプラスです。
ただし、住宅ローンが残っている家を賃貸に出せるのは、転勤など「やむを得ない事情」があって金融機関に承認された場合のみです。
住宅ローンが残っている家を自分の判断で勝手に賃貸に出してしまうと、指導が入って一括返済を求められる可能性もあるため、まずは金融機関に相談するようにしてください。

将来住むことができる
将来住む場所を確保できているというのもメリットといえるでしょう。
一時的に離れる場合でも、マンションを残しておけば新たに新居を探す必要はありません。
新居を探すのは手間や時間がかかるだけでなく、コストもそれなりに必要です。
元居たマンションに戻るのであれば、手間や費用 ・コストの削減ができます。
もともと住んでいた場所なら、周辺環境にも慣れているのでスムーズに生活をスタートできるというのも新生活をするときのメリットです。
デメリット
デメリットとしては次の2つが挙げられます。
- 維持管理の手間と費用がかかる
- 家賃収入ゼロでも費用はかかる
維持管理の手間と費用がかかる
貸し出す場合、借りる人の募集や賃貸契約の締結など賃貸運営の手間がかかります。
賃貸運営は委託会社に任せることも可能ですが、委託はその分費用が必要です。
マンション自体の所有権は自分にあるので、修繕管理費や固定資産税の負担は続きます。
そのため、家賃収入を得られてもそれほどプラスにならないケースもあるでしょう。
また、他人に貸し出すため、室内の使用状況が悪い・借りた人が隣人トラブルを引き起こすなどのリスクもゼロではありません。
借りた人がトラブルを起こせば、大家として対応が必要となり手間の負担以上に精神的な負担ともなりかねないでしょう。
家賃収入ゼロでも費用はかかる
貸すといっても、借り手がいなければ成立しません。
立地が悪い・古い間取りや室内の状態が悪いと、借り手から避けられてしまう恐れがあります。
借り手が見つからなければ、当然家賃収入は得られません。
しかし、その期間にも管理費や税金・ローン返済などの費用はかかるため、収支がマイナスになる可能性もあるでしょう。
費用はかかり、さらに借主の募集などの手間もかかるとなると、負担が大きくなるので注意が必要です。
信頼できる不動産 会社をご紹介
イエウリ の不動産査定はこちら
収益シミュレーション
売るか貸すかを判断する際には、両方の収益をシミュレーションすることも重要です。
どちらも、売却金や家賃収入というお金を得られますが、支出もともないます。
収益をしっかりシミュレーションしておかなければ、マイナスになってしまう可能性もあるので注意しましょう。
マンションを売る場合
マンションを売却する場合、売却金というまとまったお金が手に入ります。
また売却時には、以下のような費用が必要です。
- 不動産会社の仲介手数料
- 印紙税
- 抵当権抹消登記費用
- 譲渡所得税
- 住宅ローン完済の費用
- その他引っ越し費用など
一般的に、売却にともなう費用の目安は売却額の5~10%程と言われています。
一番大きな費用は不動産会社に支払う仲介手数料です。
上記ツールでは売却価格を入力することで、仲介手数料(上限額)を計算できます。
なお、住宅ローンが残っている場合は、売却金などから住宅ローンを完済する必要があります。
そのことを考慮して、収益をシミュレーションするようにしましょう。
以下の条件で具体的に計算してみます。
- 10年前に新築4,000万円で購入
- 売却額:2,500万円
- 住宅ローン残債(3,000万円を1%/30年で借入):2,000万円
売却にともなう諸費用は5%の125万円とした場合、売却額の残りは以下のようになります。
ここから、住宅ローン残債を完済すると375万円が手元に残ります。
ただし、実際の売却の諸費用は想定以上にかかる可能性もあります。
また、売却額によっては譲渡所得税が発生するなどもあるので、より自身の売却に合わせた詳細なシミュレーションをすることが大切です。
マンションを貸す場合
次に、マンションを貸す場合の収益をシミュレーションしてみましょう。
貸し出す場合、家賃収入から固定資産税や修繕積立金などの費用を賄っていき、残りが収入となります。
以下の条件で詳しく計算してみます。
- 毎月の家賃15万円
- 住宅ローン返済額:120万円/年
- 固定資産税・都市計画税:15万円/年
- 修繕積立金・管理費:18万円/年
- 保険料:5万円/年
- 外部委託費:10万円/年
- その他経費:5万円/年
年間の家賃収入は、15万円×12ヵ月=180万円です。
一方、住宅ローン返済額を含めた費用の総額は173万円となり、収益はプラス7万円となります。
仮に、10年後に住宅ローンを完済できれば、家賃収入の多くを手元に残せます。
しかし、築年数が進むことで家賃を値下げしなければ借主が見つかりにくくなる可能性があり、管理費・修繕積立金の値上げなども考慮しなければなりません1。
また、今回は空室リスクや賃貸開始までの広告費・退去後の修繕積立金など細かい費用を考慮していないため、収益は大きく変動する可能性があります。
さらに、自分が元のマンションに戻ってくることを視野に入れて貸す場合は、「定期借家契約」で貸し出すのが一般的です。
賃貸物件の多くで利用される「普通借家契約」で貸してしまうと、自分が「元の家に戻りたい」という理由で借主に退去してもらうには、相応の立退料を支払う必要があるからです。
定期借家契約では、普通借家契約よりも家賃を下げなければ借り手が見つからないことがほとんどであるため、周辺の家賃相場よりも収入が低くなってしまう可能性があります。
実際に賃貸を検討する際にはこうした前提を踏まえた上で、できるだけ詳細にシミュレーションすることが大切です。
信頼できる不動産会社をご紹介
イエウリ の不動産査定はこちら
迷うなら売るのをおすすめする3つの理由
「売る」「貸す」どちらを選択するかは自身の状況などから判断するものですが、悩む場合は基本的に「売る」ことをおすすめします。
ここでは、売るのをおすすめする理由として、以下の3つを解説します。
- 賃貸の競合はプロの大家さんである
- 精神的負担が大きい
- 将来売却できなくなるリスクがある
それぞれ詳しくみていきましょう。
賃貸の競合はプロの大家さんである
賃貸経営は、借り手の募集や契約・家賃の管理・入居者対応などノウハウが必要です。
もちろん個人で運営することも可能ですが、競合となる賃貸の多くはプロである大家さんが運営しています。
ノウハウを持っている大家さんであれば、効果的な広告やサービスの提供などで集客力が高いものです。
そのような競合から入居者を獲得するのは容易ではありません。
また、借り手の方も個人から借りることに抵抗がある人も少なくないでしょう。
精神的負担が大きい
前述のとおり、第三者に貸し出すことは精神的負担になりかねません。
入居者は慎重に選ばなければ、家賃を滞納する・トラブルを起こすなどの恐れがあります。
入居者から大家さんにクレームが入る可能性も十分あります。
空室になることに焦りや不安を感じる方もいるでしょう。
このように賃貸経営は精神的ストレスを感じやすい点には注意が必要です。
また、友人や親族といった自分の知人に貸し出すことを検討している方もいるかもしれません。
その際、賃貸契約をせずに貸してしまうと、退去を求めた際に応 じてもらえないなどのトラブルが発生する可能性があります。
「親しい間柄だから」と契約書を介さずに貸し出してしまうことは、精神的・金銭的リスクに繋がりますので、慎重に判断するようにしてください。
将来売却できなくなるリスクがある
とりあえず貸し出して、うまくいかなければ売却しようと考えている方もいるでしょう。
しかし、売却しない期間にも築年数は進みます。
マンションは、築年数が浅いほど売りやすくものです。
今のマンションの築年数によっては、数年後売却できない・売却できても安値になるリスクが高くなる恐れがあります。
仮に、数年後に住む場合でも状態が劣化すれば、大掛かりなリフォームが必要になることも考えておかなければなりません。
今後、日本は少子高齢化が進むため、将来売却を検討する時期に需要が今より落ちる可能性もあるでしょう。
いつか売ろうと売るのを先延ばししていると、売れない事態になりかねません。
売るかを悩んでいるなら、早い段階で売却することをおすすめします。
信頼できる不動産会社をご紹介
イエウリ の不動産査定はこちら
まとめ
ここまで、マンションを売るか貸すかの判断基準やそれぞれのメリット・デメリット・売るのをおすすめする理由についてご紹介しました。
マンションを売るか貸すかは、自身の状況やメリット・デメリットを比較して検討することが大切です 。
しかし、貸し出す場合は費用を家賃で回収できない可能性も高く、貸出後に売却するのが難しくなる恐れもあります。
売るか貸すかで悩んでいるなら、売りやすいうちに売却するのを検討するとよいでしょう。