駅近マンションは人気の高さから売れやすい傾向にあります。
しかし、駅近マンションの好立地なのになかなか売れないマンションもあります。
人気のはずの駅近マンションが、なぜ売れないのでしょうか?
この記事では、駅近マンションなのに売れない原因や売るための対策・事例などを詳しく解説します。
駅近マンションは売れやすい
一般的に駅近マンションは、売れやすいとされる物件です。
東日本流通機構年報マーケットウォッチによる、首都圏での中古マンションの駅からの交通別成約状況(2023年)は以下のようになっています1。
徒歩10分以内 | 11~20分以内 | 21分以上 | |
成約件数(件) | 24,741 | 8,352 | 569 |
成約件数(%) | 68.9% | 23.3% | 1.6% |
価格(万円) | 5,315万円 | 3,921万円 | 2,755万円 |
駅から近いほど成約率・価格とも高くなっていることが分かります。
駅近のマンションが売れやすい理由としては、以下の3つが考えられるでしょう。
- アクセスのよい駅に近いと利便性の高さから人気が集中しやすい
- 将来再開発される可能性がある
- 居住需要だけでなく投資需要もある
そ れぞれ解説します。
アクセスのよい駅に近いと利便性の高さから人気が集中しやすい
主要駅などアクセスのよい駅に近いと、通勤・通学の時間の大幅な短縮が可能です。
とくに、都心部に住んでいる人は車を持たずに電車を利用する人も多いため、交通利便性は重視される傾向にあります。
また、主要駅周辺は、スーパーや飲食店・娯楽施設など商業施設も多く、生活利便性も高くなります。
マンションを希望する人は利便性の高さを求めている傾向があるため、利便性の高い駅近は人気が高く売れやすくなるのです。
将来再開発される可能性がある
再開発されると、商業施設などが建設される、新たな路線が増えるなどで生活の快適性が向上します。
また、需要が高くなることから将来の値上がりを期待して購入する人も出てくるでしょう。
すでに再開発の予定があるエリアだけでなく、駅近エリアは再開発の対象となりやすいことから、将来性の高さを見込んで人気も高くなるのです。
居住需要だけでなく投資需要もある
駅近マンションは利便性の高さや将来性などから賃貸ニーズも見込めるため、投資対象としても人気の高い物件です。
需要が高く空室リスクを避けやすいだけでなく、資産価値が下がりにくいため、将来の売却がしやすいことも投資需要の高さにつながります。
とくに、1Kなどのコンパクトマンションは価格の安さからも投資家に人気の高い物件です。
このように、居住目的の人だけでなく投資家も購入者になってくるため、買い手の幅が広がり、売りやすくなります。
駅近マンションでも売れない原因10選
人気の高い駅近マンションだからといって必ず売れるわけではなく、売れない駅近マンションも存在します。
駅近なのに売れない場合、売れない理由を把握し理由に合わせた対策が必要です。
駅近マンションが売れない理由にもさまざまありますが、代表的な理由としては以下が挙げられます。
- 相場より価格が高い
- 築年数が古い
- 騒音問題がある
- 陽当たりが悪い
- セキュリティが整っていない
- 設備が時代遅れになっている
- 駅周辺にマンションが乱立しており需要より供給が多くなっている
- 外観が悪い
- 内装の状態が悪い
- 不動産会社が積極的に売却活動を行っていない
それぞれ詳しくみてきましょう。
相場より価格が高い
売れない大きな原因が価格の高さです。
駅近という理由だけで高値を設定したり、相場の把握が甘く価格設定を誤ったりすると、相場よりも高値になり、買い手から避けられやすくなります。
買い手は、基本的に希望するエリアの物件は細かく比較しており、売主よりも相場に詳しいケースも珍しくありません。
相場より高いと物件比較の段階どころか、物件検索の時点で外されやすくなるものです。
とくに、マンションは間取りや階数などの条件で相場が形成されやすく、他と比較して高い物件は候補から外れやすくなってしまいます。
駅近であっても相場を把握し、適切な価格設定が重要です。
築年数が古い
中古マンションの人気が高まっているとはいえ、やはり新築や築浅マンションほど需要は高くなります。
また、築年数が経過するほど資産価値も低下し、住宅ローンの条件が不利になりがちです。これが買い手の資金面でのデメリットにつながり、結果的に売れにくくなってしまうのです。
特に1981年5月31日以前の旧耐震基準で建築されている場合は、融資が認められないことが多く、不利になりやすいので注意しましょう。
騒音問題がある
駅近は利便性が高く、周辺がにぎわっているというメリットがある反面、静かに生活しにくいケースもあります。
駅を利用する人の多さや、電車の音・アナウンス音が騒音となり、住みにくさを感じ、避ける人もいるでしょう。
また、駅周辺が再開発中の場合、工事音が気になることもあります。
とくに、低層階や防音対策が整っていないマンションは、騒音や通行人の視線が気になることから、売れにくくなる可能性があります。
陽当たりが悪い
陽当たりは住み心地に関わってくるため、陽当たりの悪い部屋は駅近であっても人気が下がります。
一般的に南向きほど人気が高く、北向きは人気が低くなるものです。
近くに高層の建物がある場合も、建物が日差しを遮り陽当たりが悪くなります。
セキュリティが整っていない
近年のマンションは防犯カメラやオートロックだけでなく、常駐の管理員や警備会社との連携など、セキュリティが充実しています。
女性やファミリー層はセキュリティの高さも重視しているため、セキュリティが整っていないと安全面に不安を感じ避けられやすくなるのです。
また、エリアの治安が悪い場合も 需要に影響するため、注意しましょう。
設備が時代遅れになっている
設備が古い家は、リフォームプランを提示するのが有効なケースもあります。不動産会社と相談して実施を検討してみましょう。
設備や間取りは時代によってニーズが異なります。
現在のニーズに合った設備ほど売れやすくなる一方、時代遅れの設備は売却のしにくさにつながるのです。
たとえば、ファミリー層向けでは、対面キッチンや食洗器・浴室乾燥機などがあると、買い手の関心を引きやすくなります。
とくに、水回りの設備は買い手が重視しやすく、購入判断に関わってくるでしょう。
古い設備のままだと使い勝手が悪いだけでなく、購入時に交換の手間やコストがかかることが予測され、避けられやすくなるのです。
駅周辺にマンションが乱立しており需要より供給が多くなっている
エリアに競合物件が多く供給過多になっていると、売却が難しくなります。
供給過多の場合、買い手は多くの物件を比較し、より条件のよい物件を選ぶものです。
駅近マンションであっても、築年数や階数・設備・価格などで比較されやすくなってしまい、競合以上の魅力がないマンションは売れにくくなってしまいます。
外観が悪い
マンションの外観は買い手が最初に目にするため、印象が悪いと購入意欲も減退します。
外壁が劣化し剥がれ落ちている、植栽の手入れができていないなどは、見た目の悪さだけでなく管理状態の悪さも予測でき、マイナス要因となります。
内装の状態が悪い
内装の状態が悪いと、内覧時の印象が悪くなり、買い手に避けられやすくなります。
クロスの剥がれ・水回りのカビ・床や壁の傷が多いなどといった状態は、特にマイナスの印象を与えがちです。
軽微な破損であれば、内覧前に修繕しておくとよいでしょう。
ただし、リフォームは必ずしも売却にプラスになるとは限りません。リフォームしたことが売却のマイナス要因になることもあるため、自分で判断せずに、不動産会社に相談しながら決めることをおすすめします。
不動産会社が積極的に売却活動を行っていない
マンション自体に問題がなくても、不動産会社が原因で売れないケースもあります。
広告量が少ない、問い合わせ対応が悪い、営業担当者が熱心ではないといった理由で、売れにくくなる可能性もあるのです。
とくに、マンション売却が不得意な不動産会社に依頼している場合、適切な営業ができずに売れ残る恐れがあります。
不動産会社に原因がある場合は、媒介契約の種類や不動産会社自体を見直すとよいでしょう。
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▼関連記事:仲介会社を変更する手続きや注意点
駅近マンションで売却に苦戦した事例と対策
駅近マンションが売れない場合、どのように対策すればいいのでしょうか。
ここでは、駅近マンションで売却に苦戦した事例と、その対策について具体的なケースをいくつか紹介します。
線路沿いのマンションで騒音を懸念されて売れなかった事例
線路沿いということで、電車の走行音を懸念されて売れていなかったケースです。
このケースでは、売主が騒音対策として二重窓へのリフォームを無料で行うことを条件に売却活動を行うことで、売却につながりました。
ただし、最初から二重窓リフォームを行ったのではなく、成約後にリフォームを行う、またはリフォームせずに相当分額を値引きするという対応を取ったことがポイントです。
リフォームは買主のニーズに合わせる必要があるため、売主の判断だけで事前に行うと、かえって売却のマイナス要因になる恐れがあります。
一方で、値引き対応であれば、買主は浮いた費用で購入後に自分の好みに合わせたリフォームが可能です。
実際に住んでみて、騒音が気にならない程度であれば、リフォームをせずに済み、結果的にお得に購入できることにもなります。
このケースでも、買主はリフォームの実施ではなく値引きを選択し、売却が成立しました。
強気の価格設定で売れなかった事例
相場よりも高い価格をつけたことで売れなかった事例です。
このケースでは、駅近マンションは人気があるという理由で強気の価格設定を行っていました。
しかし、売り出しても問い合わせや内覧自体はあまり入らない状態でした。
そこで売主が価格を再リサーチすると、付近に競合マンションが複数あることが判明。
競合よりも安い価格に設定し直したところ、スムーズに売却が成立しました。
相場よりも高い価格を設定すると、買い手から避けられやすくなります。
とくに、近隣や同じ棟に売り出し中の部屋が多いと価格で比較されやすいので、価格設定時には徹底的に相場をリサーチすることが大切です。
価格設定後も定期的に相場をチェックし、売却状況に応じた見直しをするようにしましょう。
築40年以上の物件で売れなかった事例
築年数の古さが原因となり売れなかった事例です。
築年数が古く、旧耐震基準のマンションは住宅ローンの融資が難しいため、居住用の中古住宅を検討している買い手が購入しにくくなります。
仮に住宅ローン審査が通らなかった場合、投資家や社宅として購入する法人、不動産会社による買取といった手段などに売却の選択肢が限られてしまうのです。
そうしたこともあり、このケースでは買取での売却を選択しています。
買取とは、不動産会社が買主となって直接不動産を売却する方法です。
ただし、買取は仲介での売却よりも価格が下がるというデメリットがある点は覚えておきましょう。
とはいえ、短期間で売却でき、仲介手数料などの売却コストもかからないため、築年数が古く仲介で売れにくい物件の場合は、買取の方がメリットが大きい場合もあります。
売れない駅近マンションに関するよくある質問
最後に、売れない駅近マンションに関するよくある質問をみてきましょう。
駅近マンションのデメリットは?
駅が近いことで、電車の走行音や駅のアナウンス・人の出入りなどの騒音が気になる場合があります。
また、駅近マンションは人気の高さから価格が高くなりがちという点も買主にとってはデメリットでしょう。
ただし、駅近マンションには利便性の高さという魅力があります。
価格の高さに納得してもらえるようにアピールすることが大切です。
駅近マンションの資産価値は今後どうなる?
都心部などアクセスのよい駅近マンションであれば、今後資産価値が高くなる可能性があります。
しかし、マンションは基本的に築年数が古くなるほど資産価値も下がります。
今後、資産価値が高まるかは見通しが不透明でもあるため、売却に悩んでいるうちに築年数が経過し、売却しにくくなる可能性があります。
そのため、売却を検討しているなら、できるだけ早めに動くとよいでしょう。
売れない駅近マンションを賃貸に出すのはあり?
賃貸に出すことで収益を得られる可能性もありますが、賃貸ニーズを見極める必要があります。
売れない理由が築年数の古さや外観などにある場合、賃貸に出しても借り手が見つかりにくい恐れがあるでしょう。
また、賃貸では入居者とのトラブルなどのリスクがある点にも注意が必要です。
将来マンションを活用する予定がないなら、買取を視野に入れて売却してしまうのもおすすめです。
まとめ
駅近マンシ ョンは一般的に人気が高く売りやすい物件ですが、価格の高さや築年数の古さなどから売れないケースもあります。
駅近マンションなのに売れない場合は、まずは売れない理由を分析することが大切です。
そのうえで、理由に合わせて適切に対応することで売れる可能性が出てきます。
また、売れないマンションを手早く手放したい場合は、買取を視野に入れることをおすすめします。
築年数の古さなど売れない理由の解消が難しいなら、買取の方がスムーズに売却できるでしょう。