マンションの売却で必ず関わってくるのが税金です。納めるべき税金がよく分からずに、マンション売却を不安に感じる方もいるのではないでしょうか。この記事では、マンションを売却したときの税金の種類や金額について解説をします。
マンション売却でかかる税金の種類
マンションを売却したとき、関係する税金として次の3種類があります。
- 印紙税
- 登録免許税
- 譲渡所得税(所得税・住民税)
また、2037年まで、所得税には復興特別税が加算されます。
それぞれの税金の概要を紹介していきましょう。
印紙税
印紙税は、マンションを売却する際に買主と交わす売買契約書に貼る収入印紙にかかる税金です。
記載された金額に応じて税額がきまり、契約書に収入印紙を貼ることで納税します。
印紙税の税額と納税時期
印紙税の税額は次のとおりです。
- 500万円を超え1千万円以下 ……1万円
- 1千万円を超え5千万円以下……2万円
- 5千万円を超え1億円以下……6万円
- 1億円を超え5億円以下……10万円
ただし、土地建物売買契約書などの不動産の譲渡に関する契約書で、平成26年4月1日から令和9年3月31日までの間に作成されるものは、次のように軽減されます。
- 500万円を超え1千万円以下 ……5千円
- 1,000万円を超え5,000万円以下……1万円
- 5,000万円を超え1億円以下のもの……3万円
- 1億円を超え5億円以下のもの…… 6万円
印紙税は、購入した収入印紙を契約書に貼り付けて納税完了となりますので、納税の時期は契約時となります。
マンションの売買契約書は、買主と売主がそれぞれ1通ずつ原本を保管します。収入印紙も双方の契約書に貼り 付けるので、印紙税は買主と売主で折半するのが一般的です。
登録免許税
登録免許税は、マンションの所有権を売主から買主へ移転する際の登記手続きに伴って支払う税金です。ただし、売買に伴う所有権移転登記は、買主が行うのが一般的ですので売主には登録免許税は発生しません。
売主に関係するのは、抵当権の抹消登記に関わる部分です。抵当権の抹消登記とは、マンション購入の際に組んだ住宅ローンの担保として設定されていた抵当権を取り除く手続きのことです。
登録免許税の税率と納税時期
マンションの購入時に住宅ローンを利用している場合、返済の保証として抵当権が設定されています。売却の際には、この抵当権を外さなければなりません。
そのため抵当権抹消の登録免許税が必要になります。抵当権抹消登記の登録免許税は、不動産1件につき1,000円です。マンションでは、土地と建物がありますので、それぞれ抵当権抹消登記が必要になり、合計で2,000円です。
譲渡所得税(所得税・住民税)
譲渡所得税は、マンションを売却して譲渡所得が発生した際にかかる税金です。譲渡所得とは、売却で生じた所得を指します。確定申告で所得税を納めると、後日、地方自治体から住民税の納付書が届きます。
万が一、売却額が購入したときの価格よりも安くなったなどの理由により譲渡所得が発生しなかった場合には、譲渡所得税は発生しません。
譲渡所得税は高額になることがあるので、次の項で詳しく解説します。
復興特別税
復興特別税とは、東日本大震災の復興のために使われる税金で、2037年まで 、所得税にこの復興特別税が加算されます。
復興特別税にかかる税率は所得税額の2.1%で、マンションを売却した翌年に譲渡所得税の確定申告をする際に同時に提出する形になります。
譲渡所得税の税率と納税時期
譲渡所得税は、マンションの売却で譲渡所得があれば発生する税金です。
譲渡所得税の税率と納税時期を解説していきましょう。
譲渡所得とは
譲渡所得とは、マンションを売却したときに得られる収入からその物件の取得費用と不動産会社への仲介手数料、土地の測量費、登記費用などの諸費用を引いた金額です。
譲渡所得税では、まず譲渡所得を次の式により算出します。
計算する際に注意したいのが、取得費に含まれる「建物の購入価格」です。建物の購入価格はそのまま合算せずに「減価償却費」を差し引かなければなりません。
減価償却費とは、経年劣化によって下がった建物の価値です。減価償却費の計算方法には「定額法」と「定率法1」がありますが、建物では定額法が用いられます。
定額法は次のように計算します。
もし資料の紛失などでマンションの取得費が分からない場合は、譲渡収入額の5%を取得費とする簡便な方法を用いることができます。
関連記事:減価償却費の計算方法
譲渡所得税の税率
譲渡所得税の税率は、マンションの所有期間によって異なります。所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」であり、5年を超える場合は「長期譲渡所得」です。それぞれの税率は次のとおりです。
- 短期譲渡所得の税額=短期譲渡所得×(所得税30%+住民税9%)
- 長期譲渡所得の税額=長期譲渡所得×(所得税15%+住民税5%)
これに2037年(令和19年)まで復興特別税(基準所得税額×2.1%)が加算されるので、最終的な税率は次のようになります。
- 短期譲渡所得の税額(5年以下)……39.63%
- 長期譲渡所得の税額(5年超)……20.315%
マンションの所有期間は、実際に所有していた期間ではなく、マンションを取得した日から売却した年の1月1日の時点で決まります。たとえば、2019年3月に取得したマンションを2024年10月に売却すると、実際の所有期間は5年7カ月ですが、税法上は4年10カ月が所有期間になります。
これにより、短期譲渡所得として扱われ、税率は39.63%が適用されます。
譲渡所得税の計算(短期譲渡所得)
マンションを3,000万円で売却した場合の税金をシミュレーションしてみましょう。売却したマンションの要件を次のとおりとします。
- 売却価格…… 3,000万円
- 売却時にかかった経費…… 100万円
- 所有期間…… 4年11カ月
- 取得費…… 2,000万円
まずは譲渡所得を算出します。譲渡所得は、マンションを購入した価格と経費を売却価格から差し引いた価格です。
これにより、900万円が譲渡所得となります。
マンションの所有期間は4年11カ月ですから、短期譲渡所得となり、適用する税率は39.63%です。
所有期間4年のマンションを売却したときの譲渡所得税は約356万円となります。
譲渡所得税の計算(長期譲渡所得)
それでは同じ条件のマンションを5年2カ月所有して3,000万円で売却した場合の譲渡所得税はどうなるでしょうか。
譲渡所得は短期譲渡所得と同じ900万円とします。
マンションの所有期間は5年2カ月ですから、譲渡所得税の適用する税率は20.315%です。
長期譲渡所得の税額は約182万円です。売却時期が3カ月違うだけで、短期譲渡所得の税額と比べて、約174万円安くなることが分かります。
所得税の納税時期
譲渡所得税の納税時期は、マンションを売却した翌年の確定申告の期間になります。つまり、2月16日から3月15日(土日祝日に該当する場合は翌平日)までです。
また、申告の際に振替納税の手続きをすることもできます。その場合、4月頃に銀行口座から自動で引き落とされます。
住民税の納税時期
住民税は所得税の確定申告をすることで手続きが不要になります。