地価が高い都市部など、敷地面積の確保が難しいエリアでは3階建ての住宅も珍しくありません。
3階建ては床面積を確保できるというメリットがありますが、階数の多さや高さからデメリットも生じやすいので、デメリットを理解しておくことが重要です。
この記事では、3階建ての家を購入するメリット・デメリットや、事前のチェックポイントなどを分かりやすく解説します。
3階建ての家を購入するデメリット
3階建ては階数が多く、建物の高さも高くなるため、デメリットが生じることがあります。
購入後に後悔しないためにもどのようなデメリットがあるかを理解しておくようにしましょう。
価格が高くなりやすい
3階建ては、同じ床面積でも2階建てよりも建築価格が高くなるのが一般的です。
そのため、中古を購入する場合でも建物価格は同じ条件の2階建てよりも高くなる傾向があります。
3階建ての建築価格が高くなる要因としては、以下のようなことが挙げられます。
- 構造計算が必須になる
- 地盤改良費が高くなりやすい
- 足場などの仮設費用や基礎の費用が高くなりやすい
構造計算とは、建物を建てるにあたっての安全性や耐久性・機能性が適切な構造になっているかを計算する作業です。
木造2階建てでは構造計算は免除されている一方、3階建てやRC造り2階建てでは構造計算が必須となり、その分コストがかさみます。
また、3階建ては2階建てよりも重量が大きくなるため、それに耐えられるような地盤を確保するために地盤改良費が高額になるケースも珍しくありません。
重量に耐えられるように基礎も厚くする、鉄骨を増やすといった工夫も必要になり、建築コスト増につながります。
このように、建築コストの高さが物件価格にも反映されやすいので、注意しましょう。
ただし、3階建ては敷地面積が狭いケースが多く、その分土地代を削減できます。
建物と土地のトータルでどれくらいの価格かを比較しながら検討することが大切です 。
動線が悪くなりやすい
一般的に3階建ては、1階ごとの床面積は小さくなるので1フロアに配置できる部屋数は少なくなります。
そのため、家事動線・生活動線が複雑になりやすい点に注意が必要です。
導線の使い勝手を事前にしっかり調べておかないと、ちょっとしたことで階段の上り下りが必要になり、負担が増える恐れがあります。
冷暖房効率が悪い
3階が暑くなりやすい反面1階は寒くなりやすいというように、階ごとの温度差が大きくなります。
とくに、オープンに1階から3階がつながる間取りは冷暖房効率が悪くなり、光熱費の増加につながるので注意しましょう。
階段の上り下りが大変
2階建てよりも3階建ての方が、階段の上り下りの負担が大きくなりがちです。
たとえば、洗濯機が1階で干場が3階の場合、干すのとしまうので、1階から3階の上り下りを繰りかえす必要があります。
購入時は若く元気があるから階段の上り下りが気にならない場合でも、高齢になってから3階までの移動は大きな負担です。
水回りは1・2階に集中させ、3階は子供部屋にするなど、購入の段階から将来移動の負担にならない使い方を検討しておくようにしましょう。
家具搬入が大変
階段が多く、1階ごとの床面積が広くない3階建ては家具の搬入が難しくなりやすい点にも注意が必要です。
一般的には、2階にリビング・キッチンを設けるので、ソファや冷蔵庫と言った大型家具の搬入が必要です。
さらに、3階に寝室となると3階までベッドやマットレスを搬入することになります。
今まで使って いた家具ではドアや階段の移動ができないとなれば、買い換えやクレーンを使った搬入が必要となりコストもかかりやすいので注意しましょう。
法規制が厳しい
3階建ては高さがあることから、高さ制限や日影制限などの法規制の制限が厳しくなります。
増改築やリフォームの際に、規制に制限されて希望のリフォームなどができない恐れがあるので注意しましょう。
購入後にリフォームを検討している場合は、事前にどのようなリフォームなら問題ないのかを不動産会社などに確認しておくことが大切です。
地震の際に揺れやすい
3階建ては高さがあるため、地震の際に揺れの影響が強く出やすい点にも注意が必要です。
大地震でなくても、小さな地震や台風などの強風、大型車が道路を通る際の揺れなどでも影響を受けやすい恐れがあります。
とくに、1階部分がガレージで空洞になっているとより揺れやすいため、事前に耐震性や揺れの具合などはしっかりチェックしておきましょう。
3階建ての家を購入するメリット
3階建てにはデメリットばかりではなくメリットも多くあるので、メリットとデメリットを比較して検討することが大切です。
ここでは、3階建てのメリットをみていきましょう。
狭い土地でも十分な床面積を確保しやすい
3階建てにすることで、狭い土地でも十分な床面積を確保できます。
狭い土地に2階建てを設けても、床面積が十分に取れずに居室が狭くなったり必要な部屋数を確保できなかったりすることがあるでしょう。
高さ制限がないなら、3階建てにすることで床面積・部屋数を確保できるので、居住スペースに余裕をもって生活できます。
3階からの眺望がよいケースが多い
3階建ては高さがあるため、2階建てよりも眺望は良くなります。
窓から夏の花火や遠くの景色が一望できるケースもあるでしょう。
また、周りが2階建てばかりであれば、日当たりを確保しやすいのもメリットです。
3階バルコニーや屋上で眺望や日当たりの良さを活かして洗濯物を干したり、趣味を楽しんだりもしやすいでしょう。
日当たりによっては発電効率がよくなりやすいので、太陽光発電の設置にも適しています。
地価の高いエリアでも一戸建てに住める
地価の高いエリアで広い敷地を確保しようとすると、土地で予算オーバーになりやすいものです。
限られた土地の予算で地価の高いエリアを希望する場合は、土地面積を小さくする必要があるでしょう。
土地を予算内に収めて小さくした場合、2階建てでは十分な居住面積が確保できない恐れがあります。
その点、3階建てなら狭い 土地でも居住面積を確保できるので、地価の高いエリアでも一戸建てを所有できる可能性があります。
階数ごとに使い分けできる
3階建てなら、階ごとに家族のニーズに合わせた使い分けも可能です。
たとえば、リモートワークをしている人なら、1階を仕事専用のスペースに、2階・3階をプライベートな空間として使うことができます。
また、高齢になることを見越して、1・2階に水回りや主寝室を配置し、3階を収納や子ども部屋にするという方法もあります。
さらに、二世帯住宅として、1階を親世帯、2階を共用スペース、3階を子世帯の居住スペースにする使い方も可能です。
このように、フロアが増える分家族のニーズに合わせて使用用途を明確にできるので、メリハリのある生活を送りやすくなるでしょう。
水害対策できる
水害時に避難所への移動が難しい場合は、建物内で2階以上の高さに逃げる垂直避難が適しています。
3階建てであれば、より高い位置に避難できるのでリスクの軽減につながるでしょう。
また、大雨や洪水などで床上浸水の被害を受けると、1階部分は大きなダメージを負います。
しかし、3階建ての場合、1階部分をガレージなどにすることで2階以上の居住スペースへの被害を最小限に抑えることが可能です。
とくに、川が近くにあるなど水害リスクの高いエリアを検討している場合は、3階建てで水害対策しておくとよいでしょう。
3階建ての家の購入で後悔しないための事前チェックポイント
家は、購入 後に失敗したと感じても簡単に買い替えるわけにはいきません。
後悔しないためにも、事前にチェックすべきポイントを押さえておくことが重要です。
ここでは、3階建ての家の購入で後悔しないためのチェックポイントをみていきましょう。
実際の広さを現地で確認する
3階建ては一般的に、1フロアごとの面積は小さくなりがちです。
延床面積や部屋数だけでイメージしていると、実際に見たときに「1フロアごとが思ったより狭い」と感じることもあります。
また、空き家の状態では広く感じても、実際に家具を配置すると圧迫感が出て狭く感じるケースも少なくありません。
内覧時には、部屋の広さをチェックするとともに、実際に家具を置いた場合のレイアウトや生活動線をイメージしながら、希望する広さに合っているかをチェックすることが大切です。
生活動線・家事動線がストレスにならないか確認する
階数が多いため、日常的に上下の移動が増え、負担になる恐れがあります。
たとえば、洗濯のたびに1階から3階を往復したり、来客のたびに3階から下りて対応したりと、ちょっとしたことでも階段の上り下りが発生します。これが毎日にもなれば、大きなストレスになるものです。
若いうちは問題なくても、高齢になったときにどうなるかも考えておくことが大切です。
家事や日常生活の動線がどうなるのか、長期的な視点で確認するようにしましょう。
収納の量や動線を確認する
フロアごとの居住スペースが小さくなりやすいため、収納ス ペースが十分確保できていないケースもあります。
部屋数が余っていれば、部屋を丸ごと収納スペースにすることも可能ですが、そもそもどれだけの収納スペースが必要か分からなければ適切な収納力の判断が難しくなります。
まずは、今の収納物を確認し必要な収納量を明確にしたうえで、対応できる収納スペースや部屋があるのかをチェックするようにしましょう。
また、収納力だけでなく、必要な場所に収納があるのかも重要です。
収納するために階段の上り下りが必要となると負担も大きくなりやすいので、収納する導線にも注意しましょう。
コンセントや照明の配置を確認する
見落としがちなのが、コンセントや照明の位置や数です。
必要な数のコンセントがないと、家電が使用しにくいという恐れがあります。
また、位置も家具に隠れる場所やコードが届かないような位置では、不都合が生じやすいものです。
今使用している家電などのコンセントの状態を確認し、必要な場所と数でコンセントがあるのかもチェックしましょう。
照明についても、十分明るさを確保できるのか、購入後に設置しないといけないのかもチェックすることが大切です。
空調の効きは問題ないか確認する
3階建ては空調効率が悪くなりやすいので、空調の効きも確認しておくようにしましょう。
空調の効きが悪いと、過剰に冷暖房を掛けることになり光熱費の増加にもつながります。
売主や不動産会社に、夏場や冬場の空調の使用状況や対策していることがあるかなども聞いてみるとよいでしょう。
家具の配 置を確認する
前述のとおり、フロアごとの居住スペースは小さくなりやすいので、家具を搬入すると狭くなる恐れがあります。
現在使っている家具や、購入を予定している家具のサイズ・配置を事前に確認し、配置が可能か、配置した場合に生活に支障が出ないかをチェックしておきましょう。
また、大型家具は階段での搬入ができないケースもあるので、搬入口のサイズや搬入方法を確認しておくことが大切です。
陽当たりを確認する
3階建ては、3階部分の陽当たりは良くなる一方で、1階の陽当たりは悪いケースも多くあります。
とくに、住宅密集地にある場合、隣家との距離が近く陽当たりが悪くなりやすいので注意が必要です。
陽当たりの状況や、陽当たりを確保するためにどのようなことを対策しているのかなどを、事前に確認するようにしましょう。
また、隣地との距離が近い場合は、近隣の生活音や視線が問題になるケースもあるので、あわせて確認しておくことをおすすめします。
3階建ての家に関するよくある質問
最後に、3階建ての家に関するよくある質問をみていきましょう。
3階建ての家はやめた方がいいといわれる理由は?
3階建ての家をやめた方がいいといわれる理由としては、以下が考えられます。
- 建物の価格が割高になりやすい
- 耐震性の不安がある
- 階段の上り下りが大変
- 空調効率が悪い
3階建ては、高さから生じるデメリットによってやめた方がいいといわれるケースがあります。
しかし、3階建てには地価の高いエリアで も戸建てを所有できる、フロアごとに使い分けられる、水害リスクに強いなどのメリットもあり、一概にやめた方がいいとはいえません。
メリット・デメリットを比較したうえで、検討するとよいでしょう。
3階建ての家に老後まで住める?
3階建ての家に老後も住むことは可能ですが、上り下りが生じるので、生活のしにくさを感じる恐れがあります。
老後まで見越して3階建てを検討するなら、エレベーターが設置されている家や、間取りの使い方を工夫するなど、考慮するとよいでしょう。
3階建ての家を購入して良かったことは?
3階建てのメリットとしては以下が挙げられます。
- 3階や屋上の眺望や陽当たりがよい
- 地価の高いエリアでも一戸建てに住める
- フロアごとに使い分けできる
- 水害対策できる
3階建てには、2階建てや平屋とは異なる魅力があります。
デメリットはありますが、どちらも把握してしっかり対策することで、3階建てのメリットを十分活かして満足いく生活をしやすくなるでしょう。
まとめ
3階建ての家には、価格の高さや揺れへの心配、階段の上り下りが多いなどのデメリットがあります。
しかし、3階建ては地価が高いエリアでも一戸建てを所有できる、眺望が良いなどメリットも多くあります。
メリット・デメリットや購入時のチェックポイントを押さえたうえで、家族のニーズに合わせれば満足いく3階建てに出会えるでしょう。