「注文住宅を建てたいけど予算が厳しい」
そのようにお悩みの方もいるでしょう。
注文住宅の費用を抑えたいなら、補助金制度を活用するのも一つの手です。
この記事では、注文住宅の建築時に使える国や自治体の補助金・助成金や、減税制度について詳しく解説します。
【2025年版】注文住宅の新築時に使える補助金と助成金一覧
ここでは、注文住宅新築の際に使える補助金・助成金として以下の3つを紹介します。
- 子育てグリーン住宅支援事業
- ZEH補助金
- 給湯省エネ2025事業
いずれも子育て世帯からシニア世帯まで幅広く利用できるため、ぜひチェックしておきましょう。
子育てグリーン住宅支援事業
対象世帯 | 対象住宅 | 補助額 | 古家の除却を伴う場合の補助額の加算額 |
すべての世帯 | GX志向型住宅 | 160万円 | なし |
子育て世帯 / 若者夫婦世帯 | 長期優良住宅 | 80万円 | 20万円 |
ZEH水準住宅 | 40万円 |
「子育てグリーン住宅支援事業」は、新築住宅を対象とした補助金制度です1。
電気やガス、石油などのエネルギー価格をはじめとする物価高騰の影響をとくに受けやすい子育て世帯や若者夫婦世帯が対象となります。長期優良住宅またはZEH水準住宅を新築する場合、最大80万円(古家の解体を伴う場合は+20万円)の補助を受けられます。
さらに、より高性能なGX志向型住宅であれば、世帯問わず160万円が交付されます。
いずれも「グリーン住宅支援事業者」との契約が条件となりますが、家の新築・建て替えを考えている場合、ぜひ活用したい制度の一つです。
ZEH補助金
対象者 | 対象住宅・設備 | 補助金額 | 追加補助 |
新築住宅を建築・購入する個人 新築住宅の販売者となる法人 | ZEH Nearly ZEH ZEH Oriented | 55万円 / 戸 | CLTや蓄電システム、太陽熱利用システム などを導入する場合、最大90万円の追加補助 |
ZEH+ Nearly ZEH+ | 90万円 / 戸 |
「ZEH補助金」は、ZEH住宅の取得に対する補助金制度です2。
「ZEH」とは、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)のことです。
高断熱・高効率な設備を採用し省エネを図るとともに、太陽光発電などの再エネ利用システムの導入によって年間におけるエネルギー収支ゼロの実現を目指した住宅を指します。
本制度では、ZEH住宅であれば一戸あたり55万円、ZEHよりもさらに高い性能を備えたZEH+住宅であれば、90万円の補助を受けることが可能です。
さらに、特定の設備を導入した場合、設備の種類に応じて最大90万円の追加補助も受けられます。
ただし、補助金が交付されるのは、一般社団法人 環境共創イニシアチブ(SII)に登録されている「ZEHビルダー」または「ZEHプランナー」が建築、設計または販売している住宅のみです3。
契約するハウスメーカーや工務店がこの要件を満たしているか、事前に確認するようにしましょう。
給湯省エネ2025事業
対象住宅 | 対象設備 | 補助金額 | 性能加算額 |
新築住宅 既存住宅 | ヒートポンプ給湯機 (エコキュート) | 6万円 / 台 | 4万円 / 6万円 / 7万円 |
電気ヒートポンプ ガス瞬間式併用型給湯機 (ハイブリッド給湯機) | 8万円 / 台 | 5万円 / 7万円 | |
家庭用燃料電池 (エネファ ーム) | 16万円 / 台 | 4万円 |
「給湯省エネ事業」は、新築または既存住宅への高効率給湯器導入に対する支援制度です4。
エコキュートやエネファームなど、導入する設備の種類に応じて最大16万円の補助を受けられるほか、性能によって最大7万円の追加補助も行われます。
また、給湯機を購入せずリース契約で利用する場合も補助金が交付されるため、活用しやすい制度と言えるでしょう。
ただし、「子育てグリーン住宅支援事業」や「ZEH補助金」と同様、特定の事業者(この場合は「給湯省エネ事業者」)と契約を結ぶことが交付の条件となります。
制度の利用を検討する際は、対象事業者かどうかを確認したうえで、導入を進めていきましょう。
各自治体の補助金・助成金
注文住宅に関する補助金・助成金は国の制度だけでなく、自治体独自で設けられている場合があります。
ここでは、各自治体が実施している補助金・助成金制度を以下の3分野から紹介します。
- 省エネ関連の補助金・助成金
- 子育て関連の補助金・助成金
- 移住支援関連の補助金・助成金
なお、補助金の有無は自治体によって異なります。
紹介する補助金はあくまで一例のため、検討する際にはお住まいの自治体の窓口やホームページで詳細を確認しましょう。
省エネ関連の補助金・助成金
省エネ設備の導入や、省エネ性能に優れた住宅の取得で活用できる補助金・助成金です。
省エネ関連の補助金は、先述した国の補助金と併用できるケースもあるので、積極的に活用するとよいでしょう。
千葉県千葉市:再生可能エネルギー等設備の導入補助金(戸建て・集合住宅)
千葉市内の住宅に、再生可能エネルギー等の設備を導入した市民に対して補助金を交付する制度です。
新築住宅の場合はZEH、エネファーム、定置用リチウムイオン蓄電システムが対象となり、7万~10万円の補助を受けられます。
また、要件を満たしていれば複数の設備について補助金を申請することも可能です。
埼玉県さいたま市:省エネ・断熱住宅普及促進補助金
さいたま市内で新たにZEH住宅を取得する市民に対して交付される補助金です。
最大30万円の補助を受けられ、「子育てグリーン住宅支援事業」や「給湯省エネ2025事業」などの国の補助金との併用もできます。
ただし、「ZEH補助金」と違い、ZEHのみが対象となり、Nearly ZEHやZEH Orientedは対象外となる点に注意が必要です。
子育て関連の補助金・助成金
次は子育て関連の補助金・助成金です。
神奈川県相模原市:妊婦のための支援給付事業(出産・子育て応援事業)
相模原市では、「妊婦支援給付事業」を実施しており、この事業では、市内在住の対象妊婦および児童養育者に対して、5万円~の給付金が支給されます。
妊娠ごとに給付の対象となるため、相模原市にお住まいの子育て世帯・夫婦世帯は、ぜひ活用を検討したい 制度と言えるでしょう。
東京都葛飾区:ゆりかご葛飾
葛飾区が実施する妊娠・出産・子育て支援事業「ゆりかご葛飾」では、区内保健センター等で実施される「ゆりかご面接」を受けると、妊婦1人あたり5万円の支援給付金、および妊娠子育て応援券(1万円分)を申請できます。
面接や相談にはパートナーの同伴も可能なため、経済的な支援だけでなく、家族での妊娠・出産との向き合い方についてもサポートがほしい方におすすめです。
移住支援関連の補助金・助成金
近年は、移住者の誘致に積極的な自治体も多く、移住支援として土地や建物の取得で活用できる補助金が用意されているケースもあります。
愛知県移住支援事業(移住支援金の支給)
愛知県では、東京23区または一部の東京圏に在住し、23区へ通勤していた方が、愛知県内の対象地域へ移住した場合、支援金の交付を行っています。
東京都心部からの移住を考えている方には特に利用しやすい制度と言えるでしょう。
なお、支援金の支給額は単身で60万円、世帯で100万円となり、18歳未満の児童を伴う場合、1人につき最大100万円が加算されます。
長野県松川村:松川村移住定住促進補助金
長野県松川村では、村外・県外からの移住者が新たに土地・住宅を取得する場合に、100万円の補助金を交付しています。
補助金申請時の年齢が45歳以下であることに加え、自治組合への加入が必須など、やや厳しい要件もあるものの、自然豊かな地域への移住を検討している場合、有力な選択肢となるでしょう。
補助金制度の対象となりやすい住 宅の特徴
補助金制度の対象になりやすい住宅として、以下の3つが挙げられます。
- ZEH水準住宅
- 長期優良住宅
- GX志向型住宅
それぞれの特徴を見ていきましょう。
ZEH水準住宅
ZEH水準住宅とは、ZEH同等の性質を持つ住宅です。
ZEHは、太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入を前提としていますが、ZEH水準住宅は、ZEHと同等の断熱性や省エネ性能を備えている一方で、再生エネルギー設備の導入は必須ではありません。
そのため、ZEHを同じような高性能の住宅でありながら、コストを抑えた家づくりが可能です。
ZEH水準住宅も省エネ性に優れているため、各種補助金を適用しやすくなります。
ただし、ZEHとZEH水準住宅は異なる住宅であるため、補助金などの申請を検討している場合は、どちらが対象住宅となっているか確認するようにしましょう。
長期優良住宅
長期優良住宅とは、安心して長く住み続けるために、以下のような措置が講じられている住宅のことです。
- 長期使用に適した構造および設備を有している
- 居住環境への配慮を行っている
- 一定以上の住戸面積を有している
- 維持保全の期間、方法を定めている
- 自然災害への配慮を行っている
実際にはより具体的な基準が国土交通省によって定められており、全ての基準を満たすことで、長期優良住宅として認定されます。
ZEHと比較した場合、長期優良住宅は「住まい」としての耐久性や暮らしやすさにフォーカスしている点が特徴です。
長期優良住宅も各種補助金の対象となっており、国の補助金だけでなく住宅ローンの控除額が増えるなどのメリットもあります。
GX志向型住宅
GX志向型住宅とは、「脱炭素化」の理念に基づいた高性能な省エネ・創エネ住宅です。
ZEHと同様、高断熱・高効率設備と再生可能エネルギー利用設備の導入が前提ですが、さらに高いエネルギー消費の削減および二酸化炭素排出量の抑制を目的としています。
ZEH以上に環境への配慮を重視した設計がされており、持続可能な未来を目指す次世代型の住宅であると言えるでしょう。
GX志向型住宅は2050年のカーボンニュートラル実現のために国が早期の普及を目指していることから、補助金の対象となりやすい住宅です・
ただし、ZEHや長期優良住宅に比べてさらに建設コストが高くなりやすい点には注意しましょう。
注文住宅新築時の補助金や助成金に関する注意点
補助金・助成金利用を検討する際は、以下の2点に注意が必要です。
- 補助金の交付には審査がある
- 補助金の交付は後払いが一般的
「補助金をあてにしていたのに使えなかった」といった事態を防ぐためにも、事前に確認しておきましょう。
補助金の交付には審査がある
注文住宅に利用できる補助金や助成金は、申請すれば必ず交付されるものではありません。
制度ごとに定められた要件があり、申請内容が要件に合致しているかどうか、書類審査や現地調査などを通じて判断されます。
また、審査には数週間以上かかることもあるため、補助金を活用したい場合はスケジュールに余裕をもって手続きを進めましょう。
なお、補助金の 交付は基本的に着工前の申請が必要です。
着工後では審査に通らなくなる恐れがあるので、適用条件を確認しハウスメーカーなどに相談しながら申請を進めていきましょう。
補助金の交付は後払いが一般的
住宅建築に関する補助金や助成金は「後払い」が多く、建築工事が完了し、所定の実績報告を提出した後に振り込まれるのが一般的です。
また、住宅ローンの融資が実行されるのは建物完成後になります。
そのため、土地の購入費や着工金といった補助金が交付されるまでの費用は、原則として自己資金でまかなわなければなりません。
補助金が交付されるからといって自己資金が必要ないわけではないので、注意しましょう。
住宅ローンの融資実行までに必要な自己資金が不足している場合は、つなぎ融資や分割融資などの利用も検討するのがおすすめです。
つなぎ融資を利用することで、住宅ローンの実行前に支払いが必要な資金を工面しやすい。
▼関連記事:「つなぎ融資」とは|金利は何%?利用のメリット・デメリット、注意点を解説します
注文住宅新築時に活用したい減税制度
注文住宅の新築時には、補助金だけでなく各種減税制度を適用できる可能性があります。
減税制度を適用することで税負担を抑えられるので、トータルの費用の軽減につながるでしょう。
注文住宅の新築にあたって検討できる、主な減税制度は以下の5つです。
- 住宅ローン控除
- 登録免許税の軽減税率
- 不動産取得税の軽減税率
- 印紙税の軽減税率
- 固定資産税の軽減税率
それぞれ見ていきましょう。
住宅ローン控除
住宅ローンを利用して住宅の新築・取得をした場合、年末のローン残高の0.7%が所得税または翌年の住民税から差し引かれます。
控除期間は最大13年間で、長期優良住宅・低炭素住宅であれば1年あたり最大35万円の控除が可能です。
なお、控除対象となる借入額の上限は取得する住宅の性能や世帯によって異なります。
また、住宅ローン控除は2025年6月時点では2025年12月31日入居までが適用となっている点にも注意しましょう。
住宅ローン控除はこれまでも何度か延長されており、2025年以降も延長される可能性はあります。
しかし、現時点では延長については延長時の条件について公表されていないので、検討している方は動向を注視しておきましょう。
登録免許税の軽減税率
登録免許税は、不動産登記時に課税される手数料のような税金です。
建物の新築や不動産購入、住宅ローンの借り入れなどの不動産取引では登記が必要になるため、様々な場面で発生します。
登録免許税の税額は登記の種類によって異なりますが、新築時に行う建物の所有権保存登記の税率は以下です。
所有権保存登記の登録免許税:不動産評価額×0.4%
ただし、新築の注文住宅の場合、特定の要件を満たせば登録免許税の軽減税率が適用され、税率が0.15%まで引き下げられます。
たとえば、建物の課税標準額が2,000万円だとすれば、通常8万円かかる税金が3万円となり、5万円の節税が可能です。
不動産取得税の軽減税率
不動産取得税とは、家や土地の取得時に発生する税金です。
不動産取得税は、原則「不動産評価額×4%」ですが、一定の条件を満たせば税率が3%に軽減されます。
さらに、新築住宅の場合は評価額から1,200万円(長期優良住宅の場合は1,300万円)が控除されるため、大幅な減税が期待できると言えるでしょう。
印紙税の軽減税率
注文住宅の新築にあたって、建築業者と工事請負契約を結ぶ際の請負契約書は印紙税の対象です。
請負契約書については、契約金額に応じて一定の軽減措置が適用されます。
たとえば、契約金額が200万円を超え300万円以下の場合、通常1,000円かかる印紙税が500円に減額されます。
なお、電子契約の場合は印紙税の対象とならないため、印紙税は課税されません。
固定資産税の軽減税率
新築注文住宅を購入した場合、特定の要件を満たせば、新築後3年間固定資産税が1/2に減額されます。
たとえば、課税標準額2,000万円の住宅を新築した場合、軽減措置がなければ1年あたり約28万円(2,000万円 × 1.4%)の固定資産税が発生します。
しかし、軽減措置が適用されることで約14万円/年となり、3年間で約42万円の節税が望めるのです。
さらに、長期優良住宅の新築であれば、減税期間が5年間に延長されるため、ぜひ活用したい制度と言えるでしょう。
▼関連記事:家の購入で重要な資金計画を立てる際の6つのポイントを解説します
まとめ
理想のマイホームを実現させるには、無理のない資金計画を立てることが大切です。
その一環として、国や各自治体が実施している補助金・助成金制度の活用は非常に有効といえます。
制度ごとに交付要件や対象住宅の種類が異なるため、自分の建てたい家が要件に合致するか事前に確認し、余裕を持ったスケジュールで手続きを行うようにしましょう。
また、住宅の新築・取得にあたって適用される減税措置もあるため、あわせてチェックするのがおすすめです。