地震の発生が多い国として知られる日本ですが、近年では台風や豪雨による被害も顕著になっています。台風や地震による被災は、もはやけっして他人事ではありません。
この記事では、万が一台風や地震、水害などの自然災害で被害を受けて自宅が壊れた場合、スムーズに売却することが可能なのかについて解説します。
被災したら罹災証明の申請をしよう
住宅が台風や地震による被害で壊れた場合、被災したことを証明してもらうために市町村役場に罹災(りさい)証明の申請をします。
罹災証明書は、各種公的支援を受ける際の根拠になるもので、壊れた住宅を住める状態に戻したい(火災保険などを利用する)という場合に必要です。
地震や台風、水害などの自然災害の場合は市町村役場で申請・取得が可能です。
火災の場合も罹災証明書による保険や税金の減免措置の適用が可能ですが、火災時は地域の消防署で申請・取得するのが一般的です。
罹災証明書によって、どのような支援が受けられるのかをみていきましょう。
災害救助法に基づく住宅の応急修理への支援
災害救助法は、非常災害に際して、応急的に必要な救助を行うことを目的としています。
災害のため住居が半壊する被害を受け、そのままでは居住できない場合に、応急的に修理をすることで居住可能になるよう、自治体が必要最小限度の修理を行う制度です。
ただし修理費用は役所から修理事業者に直接支払われ、給付金が被災者に支給されることはありません。
被災者生活再建支援制度による支援
被災者生活再建支援制度は、被災者生活再建支援法に基づき、自然災害により居住する住宅が全壊するなど、生活基盤に著しい被害を受けた世帯に被災者生活再建支援金を支給して、生活の再建を支援するものです。
支援金は、「基礎支援金」として全壊世帯に100万円、大規模半壊世帯に50万円が支給されます。
また「加算支援金」として住宅を建設・購入する場合は200万円、補修する場合は100万円、賃借する場合は50万円がそれぞれ加算される仕組みになっています。
住宅金融支援機構による災害復興住宅融資
被災した住宅を建て直したり、修理をしたりする場合に、住宅金融支援機構の災害復興住宅融資を低金利で利用することができます。
罹災証明があれば融資を受けることができますが、着工後の申請は認められません。必ず工事着手前に金融機関に相談する必要があります。
税の減免
住宅が被災した場合、「所得税の雑損控除」が適用されます。住 宅、家財、車両などの生活に必要な資産の損失額や災害に関令した支出が控除されます。
災害に関連した支出の中には、建物だけでなく敷地に流れ込んだ土砂の搬出費用も含めることができます。ただし、保険金で補填された場合は、その金額を惨害額から差し引きます。
この他、地方自治体に納めている国民健康保険料や固定資産税、自動車税が減免されることがあります。
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被災した住宅をスムーズに売却するためのポイント
台風や地震に被災した場合、その直後に売却することはかなり難しいと言わざるを得ません。
やはり、復旧が進んで周囲がある程度の落ち着きを取り戻した頃に売却をすることが望ましいのですが、その際に、どのような点に注意をして売却をすればいいのか解説していきましょう。
支援制度は有効に活用する
罹災証明書を取得することによって、さまざまな支援を受けられることは先述したところです。
これらの支援制度は、実際に被災した人が対象になるため、売却後の家には適用されません。
このため、被災した場合には、すみやかに罹災証明書を取得したうえで必要な支援制度を活用しましょう。
支援金などで住宅を利用可能な状態に復旧させることによって、有利に売却することが可能になります。
放置したままにしない
仮設住宅に入居するなどの理由で、自宅に住まなくなることがあります。
その場合であっても、将来の売却を見据えているのであれば、被災した住宅を放置することは避けましょう。
たとえば床上浸水の被害にあった場合だと、構造材が水を含んだままの状態になるため、木材の腐朽が促進されます。
また湿気の多い家屋は家全体にカビを発生させたり、シロアリの繁殖を促進したりする要因となります。
さらには、断熱材の性能の著しい劣化を招くことにもなります。
情況によっては、内装材の一部を解体するなどして、住宅が含んだ水分を十分に乾燥させる措置が必要になります。
インスペクションを実施する
中古住宅の売却に際しては、既存住宅 状況調査(インスペクション)が実施されることがあります。
これは、売却前の住宅を専門家が調査することで、事前に被災して損壊した箇所はもちろん、その他の家の不具合も把握できるため、契約不適合のトラブルを大幅に軽減することが可能になります。
一般の住宅では、売却に際してインスペクションが実施されないこともありますが、被災した住宅においては、売却後のトラブルを避けるために必ずインスペクションを実施しましょう。
被災した住宅においては、売却後の不具合がすべて被災に結び付けられることがあります。
インスペクションを実施することにより、事前に不具合を明らかにすることが可能になるのと同時に、入居後の不具合(瑕疵)についても買主の言い分に対抗することが可能になります。
さらにインスペクションによって発覚した不具合を補修すれば、既存住宅売買瑕疵担保責任保険(瑕疵保険)に加入でき、後に買主から契約不適合で訴えられた際にも、資金面の不安はありません。
被災した事実を売却前に告知する
被災した事実があると、売却上不利になることがありますが、これを隠したまま売却をすると、後に契約不適合として契約破棄や払い戻しの請求をされることがあります。
被災したことは、事実として重要事項説明の中で告知しておきましょう。
そのうえで、被災によって発生した不具合を補修した旨を説明すれば、けっして不利な取引にはなりません。
買取専門の会社に買い取ってもらう
被災した住宅は、周辺の住宅も同時に被災していますから、エリア全体が購入希望者から敬遠される傾向があります。
したがって、仲介で個人の買主を見つけるのは難しいケースが多いです。
一方で、買取専門の不動産会社は不利な条件の住宅でも、補強やリフォームをすることで新たに魅力ある物件として再生するノウハウを持ち合わせています。
近所の売却状況などから、売却に苦労すると感じたら、買取専門の会社に相談してみてはいかがでしょうか。
条件がまとまれば、1週間程度で売却金が振り込まれますから、被災後の新生活に向けて早いスタートを切ることができます。
まとめ
台風や地震で被災した住宅は、可能な限りの公的支援を受けるという方法が、再生への近道となります。そのためには、まず罹災証明書の取得は欠かせません。
住宅を住める状態に復旧させてからが、売却活動のスタートとなります。構造と防水に問題がなければ、売却に大きな支障はありません。
売却前には、インスペクションを実施して、住宅に大きな不具合がないことを確認しておきましょう。
一方で、被害の状況が人々の脳裏に残っている期間は、売りに出してもなかなか買主が現れないとい事態も十分に想定できます。
仲介による売却が困難であると実感した際には、買取専門の不動産会社に売却するという方法もあります。
被災した住宅の売却はじっくりと検討をしたうえで、最善の方法を選択しましょう。