不動産会社が買主になる「買取」での売却時は、売主の契約不適合責任を免責として契約するケースが多いです。
これによって売主は、建物や土地に不備があったときに「クレームをつけられて減額請求される、補修費用を請求される、契約を解除される」といったリスクを回避することができます。
ただし、引き渡した後に「言った・言わない」のトラブルを防止するために「売主の契約不適合責任を免責とする」ことが売買契約書に記載されていることを、契約書末尾の特約条項で確認するようにしてください。
売買契約書での売主の契約不適合責任に関する記載について
不動産の売買契約書では、契約不適合責任について、以下のように定められています。
参考:全宅連
不動産会社は既存のフォーマットに沿って売買契約書を作成するため、「買取で不動産会社が購入するから、売主は引き渡し後の責任を負わない(契約不適合責任は免責)」場合も、契約書末尾にその旨を記載し、第20条の取り決め自体は記載されていることが多いです。
もしくは、上記が適用されないことを示すために斜線が引かれる場合もあります(この場合も、免責となる特約は最後尾に別途記載される)。
第1項:買主の権利
1.引渡された本物件が種類又は品質に関してこの契約の内容に適合しないものであるとき(以下「契約不適合」という。)は、買主は、売主に対し、本物件の修補を請求することができる。この場合、売主又は買主は、相手方に対し、修補の方法に関し協議の申し入れをすることができる。
ここでは、契約書に記載された物件の状態が実際と異なる場合、売主に対して「補修等の方法に関して協議を申し入れることができる」という買主の権利が記載されています。
第2項:補修費用と損害賠償
2.引渡された本物件に契約不適合があるときは、その契約不適合がこの契約及び取引上の社会通念に照らして売主の責めに帰することができない事由によるものであるときを除き、買主は、売主に対し、修補に代え、又は修補とともに損害賠償を請求することができる。
契約不適合責任が見つかった場合、買主は売主に対して補修費用や、追加の損害賠償請求ができる旨が記載されています。
ただし、その問題が売主の責任ではない理由(例えば、自然災害や不可抗力)で発生した場合には、売主は責任を負いません。
第3項:契約解除
3.引渡された本物件に契約不適合があるときは、買主は、売主に対し、相当の期間を定めて本物件の修補を催告したうえ、この契約を解除することができる。ただし、その契約不適合によりこの契約を締結した目的が達せられないときに限り解除できるものとする。
ここでは、契約不適合責任が見つかった場合に買主が売主に催告(補修費用の請求等)を行って、売買契約を解除できる旨が記載されています。
ただし、不動産売買においては「その契約不適合によりこの契約を締結した目的が達せられないときに限り解除できるものとする」の部分は「家や土地に住めないような重大な欠陥がある」と解釈されるのが一般的です。
つまり、雨漏り等の修理すれば問題ないような欠陥で契約解除を申し入れることはできません。
第4項:契約解除による損害賠償の条件
4.買主が前項に基づきこの契約を解除し、買主に損害がある場合には、その契約不適合がこの契約及び取引上の社会通念に照らして売主の責めに帰することができない事由によるものであるときを除き、買主は、売主に対し損害賠償を請求することができる。この場合、標記の違約金(F)の定めは適用されないものとする。
重大な欠陥が見つかってその家に住めない場合、買主は契約を解除した上で損害賠償を請求できることが定められています。
違約金が別途設定されているケースでも、実際に生じた損害に応じて損害賠償請求ができる点もポイントです。
第5項:買主の責任
5.買主は、この契約を締結したときに本物件に契約不適合があることを知っていた場合、又は本物件の引渡し後標記(J)に定めた期間を経過するまでに売主に本物件に契約不適合がある旨を通知しなかった場合、売主に対して本条に定める権利を行使できないものとする。
買主が売買契約時点で欠陥を認識していた場合や、契約から一定期間内に売主に対して通知しなかった場合は、契約不適合責任による損害賠償・契約解除等を売主に請求できないことが規定されています。
なお、民法では売主が契約不適合責任を負うのは1年間ですが、不動産売買では「引き渡しから3カ月間」と期間を定めるのが一般的です。
特約に記載される「契約不適合責任免責」の条項
特約条項の記載例
5.(一部省略) 第20条(契約不適合責任)は適用しないものとします。
不動産会社が直接購入する「買取」の場合、ここまで説明した契約不適合責任を売主が負わないことを特約条項に記載して契約するのが一般的です。
また、一般的な仲介の取引では「買主が住宅ローンの審査に通らなかった場合、買主は手付金放棄等のペナルティなしで契約を白紙解除できる」ことを定めた「融資利用の特約(ローン特約)」が設定されますが、買取の場合はこれも設定しないことがあります。
これらの条件は売買契約書の最終ページの「特約条項」に記載され、そこに買主と売主双方が署名・捺印して、売買契約を締結することで、それぞれが合意した上で売買することを示します。
「買取」なら必ず契約不適合責任が免責になるわけではない
ここまで「不動産会社が買主となる場合は、契約不適合責任を免責として契約するのが一般的である」ことを説明しました。
「プロである不動産会社は、物件の状態をきちんと確認した上で購入するため、売主がリスクを回避できるように契約不適合責任を免責にして取引する」というのが通例になっていますが、宅建業法上のルールではありません。
したがって、口頭で「売主は契約不適合責任を免責で売却できます」といった合意があっても、売買契約書に必ずその旨が記載されていることを確認するようにしましょう。
また、「売主が知っていたのに買主に告知していなかった欠陥」 は、契約不適合責任免責の特約があっても、損害賠償請求等を受ける可能性があります。
土壌汚染の可能性や、近隣トラブル、過去にその物件や周囲で人が亡くなったなどの心理的瑕疵を知っている場合は、買取であっても必ず買主に伝えて、売却後のトラブルを防止するようにしてください。
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