不動産売却で必要になる不動産査定書。
不動産を売却する経験はそう何回もあるものではないので、査定書についてよく分からないという方もいるでしょう。
「査定書ってそもそも何?」「無料でもらえるだろうか?」そのような疑問をお持ちの方も多いものです。
本記事では、不動産査定書の基本から無料でもらう方法・記載内容について分かりやすく解説します。
不動産の「査定書」とは
不動産査定書とは、不動産査定の結果を記した書類のことです。
不動産を売却する際には、不動産査定をうけて不動産がいくらで売れるのかを確認する必要があります。
その査定結果として、「査定価格」「査定根拠」「不動産概要」などの情報が記載されている書類が不動産査定なのです。
不動産会社に査定依頼することで貰える
不動産査定書は、不動産会社に査定依頼して入手することが可能です。
不動産売却では、いまいくらで売れるのか適正な価格を知る必要があります。
安すぎる価格では売却しても損が出てしまいますが、反対に高すぎる価格では買い手が見つからず、なかなか売れません。
過去の取引事例などから所有している不動産の市場価値を知るために、不動産売却では不動産査定を受けるのが一般的な流れとなります。
一定期間で売れるであろう価格の査定を受けることが可能
基本的に、不動産会社の不動産査定書は一定期間内で売れるであろう価格を算出して作成されるものです。
一般的には、おおむね3ヵ月以内での売却を目安として作成されます。
不動産はあまり長く売れないでいると、「売れ残りの物件」と判断されて、売れづらくなるといったことがあります。
また、あまり長く時間が経過してしまうと、その期間で地価が変動してしまうといった可能性もあるでしょう。
その他、通常、媒介契約の契約期間は3ヵ月で設定されることも、3ヵ月以内に売却できる価格として設定されることの理由の一つです。
不動産会社ごとに査定額が変わる
不動産査定書は、不動産会社によって査定方法や基準が異なり算出される価格も異なるものです。
また、不動産会社毎に物件種別やエリアなど得意不得意があり、査定額に影響します。
例えば、戸建て住宅の販売が不得意な不動産会社では、戸建ては安値で売却しなければ売れないため査定額も低くなる可能性があるのです。
不動産査定を受ける際には、1社のみの査定額を鵜呑みにせずに、できるだけ複数の不動産会社に依頼して査定額を比較するようにしましょう。
金額を知りたいだけで一括査定サイトを使わない方がいい理由
ただし、売却するつもりが無い段階で一括査定サイトを利用して複数社に査定を申し込むのは、あまりおすすめできません。
不動産の一括査定サイトは、売主が査定を申し込む際の利用料などはありません。
しかし、不動産会社側は査定する物件情報を受け取るために、1件あたり1~2万円程度の手数料をサイト運営側に支払っています。
そのため「価格を知りたいだけ・査定書が欲しいだけ」で売るつもりが無い場合は、申し込み後の営業電話等への対応が手間になるのです。
離婚や相続、住み替えなどで売却の検討段階にある場合は、自分である程度の相場を調べた後、売ることが明確になったタイミングで一括査定サイト等を使うことを推奨します。
▼関連記事:相場を自分で調べる方法

不動産査定書と不動産鑑定評価書の違い
不動産の価値を知る方法としては、不動産査定書だけでなく不動産鑑定評価書というものもあります。
どちらも不動産の専門家に不動産の価値を算出してもらった結果の書類ですが、両者には違いがあるため注意が必要です。
不動産鑑定評価書とは
不動産鑑定評価書とは、不動産鑑定士が不動産鑑定基準に基づいて価値を算出し、作成した書類のことです。
不動産鑑定評価書と不動産査定書の違いをまとめると以下の通り。
不動産鑑定評価書 | 不動産査定書 | |
査定方法 | 不動産鑑定基準に基づく | 不動産会社の独自に基準に基づく |
評価人 | 不動産鑑定士 | 誰でも可 |
日数 | 2週間ほど | 即日~1週間ほど |
主な目的 | 不動産の価値を公的に証明する必要がある場合 | 不動産の市場価格を知りたい場合 |
費用 | 有料 | 基本的に無料 |
不動産会社の不動産査定の場合、不動産の評価方法は不動産会社独自で決められ、作成に必要な資格はありません。
それに対し、不動産鑑定評価は国が定めたルールに基づいた厳格な基準で評価しなければなりません。
また、査定結果も不動産鑑定評価書が「不動産の適正な価格」であるのに対し、不動産査定書は「売れそうな価格」という違いもあるのです。
一般的な不動産の売却であれば不動産査定書で十分であり、不動産鑑定評価書があるからと言って高値で売却できるわけではありません。
裁判資料などに使われることが多い
不動産鑑定評価書は有料で作成してもらうもののため、より正確な査定を受けられるものと感じるかもしれません。
しかし、不動産査定 書と不動産鑑定評価書とでは、主に使われる目的が違うということを押さえておくとよいでしょう。
不動産鑑定評価書は公的な資格である不動産鑑定士の資格者により、法律に基づいて作成されるもので、裁判において不動産の評価が必要なケースなどで用いられることが多いのです。
不動産の売却を目的としている場合では、不動産売却のプロが作成した不動産査定書の方が時勢やエリアの特定を盛り込んだ、より正確な価格であることもあります。

不動産査定書を無料でもらう手順
ここでは、不動産査定書をもらう手順について見てきましょう。
不動産会社の作成する不動産査定書は原則無料
基本的に、不動産会社による不動産査定書は無料でもらえます。
不動産査定書は、不動産会社にとって重要な営業ツールです。
不動産会社は不動産の売買契約が成立することで成功報酬を得ることができるため、まず売主に媒介契約してもらう必要があります。
売主は査定結果を元に不動産会社を選ぶため、選んでもらうための重要な査定書は無料で作成する不動産会社がほとんどなのです。
不動産査定書をもらう手順
不動産査定書をもらう大まかな手順は以下の通りです。
- 必要書類を準備する
- 不動産会社に査定依頼する
- 不動産会社に査定を受ける
- 査定書の交付を受ける
必要書類を準備する
査定を受ける際に、不動産情報が分かる書類として以下のような書類を用意しておくとスムーズです。
- 登記簿謄本
- 公図や地図
- 身分証明書(運転免許所や実印・印鑑証明書)
また、必ず必要ではありませんが、以下のような書類があればより詳細な査定結果が期待 できるので準備しておくことをおすすめします。
- 地積測量図や境界確認書
- 固定資産税納税通知書
- 売買契約書や重要事項説明書
- 建築確認済証や建築設計図書
- マンションの場合は管理規約やパンフレット
ただし、インターネットを利用した簡易査定であれば、これらの書類がなくでもおおよその不動産情報だけでも査定可能な場合もあります。
試しに価格を知りたい、と言う場合はまず査定サイトを利用すれば気軽に価格を把握することができるでしょう。
不動産会社に査定依頼する
必要書類の準備ができたら、不動産会社へ査定依頼をしましょう。
査定依頼方法には、不動産会社を訪れて依頼する方法や電話・インターネットで依頼する方法などがあります。
不動産会社に直接依頼すると、その場である程度詳しい話を聞けるなどもメリットもあるものです。
しかし、断りにくくなることやその後営業を掛けられることもあるので、心配な方はインターネットを利用することをおすすめします。
不動産会社に査定を受ける
不動産会社の査定方法には以下の2つがあります。
- 机上査定
- 訪問査定
それぞれ見ていきましょう。
机上査定とは?
机上査定とは、登記簿謄本などの書類やインターネットなどのデータを元に査定結果を算出する方法。
データのみで算出するため早ければ即日には結果を知ることが可能です。
とりあえず価格を知りたい人や、急ぎで価格を知りたい人は机上査定でまずは査定してもらうとよいでしょう。
ただし、簡易な検査となるため実際の売却額と大きな差が出てしまうケースも多いので注意が必要です。
訪問査定とは?
それに対し、データに加え実際に不動産会社の担当者が訪問して査定する方法を訪問査定といいます。
建物の傷み具合や設備・間取りなど物件ごとの違いまで査定額に反映されるため、より正確な査定を受けることが可能です。
ただし、訪問査定の場合、立ち合いの日程調整が必要だったり、また調査自体にも2~3時間かかるといった点に注意しなければなりません。
机上査定 | 訪問査定 | |
正確性 | 低い | 高い |
必要な時間 | 即日~3日程度 | 1週間~2週間程度 |
▼関連記事:机上査定と訪問査定の違い

査定書の交付を受ける
不動産会社の査定が完了したら、査定書の交付を受けます。
査定書の内容を確認し、不動産の売却へと進める場合は、媒介契約へと進めることになるでしょう。
査定書の内容については、単に交付を受けるだけでなく、根拠のある査定額になっているかなど、内容をしっかり確認することが大切です。
不動産査定書の内容
不動産査定書を入手したものの記載内容の意味が分からないという人も多いものです。
不動産査定書は、不動産会社によって書式や記載内容が異なりますが、大まかな項目は似ています。
ここでは、基本的な不動産査定書の見方について確認していきましょう。
不動産査定書の大まかな記載内容は、以下の通りです。
- 査定対象不動産の概要
- 査定対象不動産の周辺環境
- 査定価格
- 推奨売出価格
査定対象不動産の概要
不動産の住所や面積・構造など、査定した不動産の概要が記載されています。
土地の場合は、面積や用途用地・建ぺい率など、建物の場合は面積や構造・間取り・築年数といった不動産の情報が細かく記載されているのです。
査定対象不動産の周辺環境
査定した不動産から駅までの距離や接道状況・交通手段など周辺環境に関わる情報が記載されています。
不動産の価格は基本的に駅から近いなど利便性が高い方が価格が高くなりやすいです。
また、接道状況によっては車の侵入が難しかったり、場合によっては接道義務を満たさず建物を建てられなかったりといったケースもあるでしょう。
そうした環境の違いにより、査定額に違いが出るのです。
査定価格
査定額は、冒頭でお伝えしたとおり、一般的に「おおむね3ヵ月以内に売れる価格」として提示されます。
なお、査定価格の計算方法は、取引事例比較法・原価法・収益還元法の3種類があり、不動産に合わせて選択されます。
例えば、マンションなど比較対象の多い不動産であれば取引事例 比較法が選択されるのが一般的です。
また、上限価格・標準価格・下限価格の3種類が記載されているケースや売却費用を差し引いた価格を掲載するケースなど不動産会社によって記載内容が異なります。
なお、査定価格と同時に、次の項目も確認することが大切です。
- 査定根拠
- 流動性比率
査定根拠
なぜその価格になったのかという、算定価格を算出した理由を示したものが査定根拠です。
一般的には、日当たりや近隣の環境などの要因が掛かれており、中には加点・減点を明確に記載しているケースもあります。
また、不動産会社ごとに、例えばマンションに強い、ファミリー系の物件に強い、特定のエリアに強いなど、強みが異なります。
例えば、査定を依頼している不動産と似た不動産の売却実績が豊富であれば、そうした実績を元にさまざまな観点から査定根拠が書かれている可能性が高いといえるでしょう。
査定を受けてから、不動産会社に媒介契約を依頼するかどうかの判断基準として、この査定根拠は非常に重要な部分となるといえます。
流動性比率
不動産の売れやすさを示すのが流動性比率です。
周辺環境や日当たりなどが考慮され、100%を基準として売りやすければプラス、売りにくければマイナスの評価が付きます。
一般的な不動産査定では、査定額の計算方法に流動性比率が考慮されているものです。
仮に、流動性比率が90%であれば査定額がマイナス10%調整されていることを意 味します。
流動性比率は、プラスであれマイナスであれ、その根拠までを確認するようにしましょう。
特にプラスの場合、契約欲しさに比率を調整している可能性もあるので、理由を聞くことが大切です。
推奨売出価格
売出価格とは、査定に基づき不動産会社が推奨する売出価格のことを指します。
例えば、査定価格3,000万円の物件を、購入希望者から値引き交渉が入ることを想定して、売出価格3,300万円で売り出すといった判断をすることがあります。
こちらもあくまで不動産会社の見立ての数字なので、参考程度にとどめるようにしましょう。
実際の売出価格は、媒介契約を結んだ不動産会社と売主とで、決めていくことになります。
また、実際の売却価格は最終的に売主と買主の合意で決定するため、査定価格や売出価格がそのまま取引額になるわけではありません。
不動産査定書作成時の注意点
ここでは、不動産査定書の注意点について見てきましょう。
注意点としては、次のようなことがあります。
- 査定額はあくまでも不動産会社の一つの意見
- あえて高い査定額を提示する会社もある
- 査定額の根拠を確認しよう
査定額はあくまでも不動産会社の一つの意見
不動産会社による不動産査定書は、不動産会社の基準に基づいて売れる価格を予測したものでしかありません。
不動産会社によって査定基準や販売力が異なるので、査定額も大きな差が出てしまうことも珍しくないでしょう。
また、査定額どおりの価格で売却できるわけではありません。
査定額は、売却価格を決めるうえでの参考価格としてとらえることをおすすめします。
あえて高い査定額を提示する会社もある
複数の不動産会社に査定を依頼すると、大体似通った価格で提示されそれが相場となります。
しかし、中には相場よりも極端に高い価格や低い価格を付ける不動産会社もあるのです。
高い査定額がつくと、高値で売却できる気がするものですが、安易にその不動産会社を選ぶのはおすすめできません。
不動産会社によっては媒介契約欲しさに高い査定額を付けているケースもあるのです。
その場合、契約後になかなか売却できないなどを理由に値下げし、結局は安値での売却になる可能性があります。
反対に低すぎる査定額の場合は、周辺相場などを理解していない不動産会社の可能性もあるでしょう。
査定額が高すぎる・低すぎる場合は、その根拠まで明確に説明できるかを確認する必要があります。
査定額の根拠を確認しよう
先述したとおり、査定書で重要なポイントが査定額の根拠です。
査定額に納得できる根拠を示せているのかは必ず確認しましょう。
例えば、査定額が2,000~3,000万円など幅が大きく根拠も示していない場合、査定結果への信頼性は乏しいと言えます。
査定書に記載がない場合は、不動産会社に問い合わせて説明を求めるようにしましょう。
説明時もあいまいにしてしまうような不動産会社はおすすめできません。
また、コメントや評価欄が充実しているか、査定書の交付時に質問した内容にしっかり回答しているかも重要なチェックポイントとなります。
併せて、査定書の見やすさもチェックするとよいでしょう。
査定書の見やすさは、不動産会社のセンスにもつながります。
見やすく分かりやすい査定書を作成する不動産会社は、集客力も高い可能性があります。
反対に、査定書にセンスを感じられない場合、サイトやチラシもデザイン力も乏しくなってしまう可能性があるものです。
不動産査定書は、不動産価格だけでなく不動産会社の力量を判断するのにも重要な書類となります。
不動産会社を選ぶ際には、査定価格だけでなく査定書の質や査定時の対応など総合的に判断して選ぶようにしましょう。
まとめ
不動産査定書の基本や見方・注意点についてお伝えしました。
不動産売却で必要になる不動産査定書は、不動産会社に査定依頼し無料で入手することが可能です。
査定書を見る際には、査定価格のみだけでなく根拠までしっかり確認することが大切です。査定書を見ることで、不動産売却額の見込み額を把握でき、不動産会社を選ぶ基準にもできます。
この記事を参考に、不動産売却を検討しているならまずは不動産査定をうけて、査定書を元に不動産会社を選ぶようにしましょう。