マンションの評価額は、所有する不動産の価値を数字で示すものです。この評価額は、相続税や固定資産税の計算、売買価格の目安、さらには保険の契約時など、さまざまな場面で必要となる重要な情報です。
マンションを相続や売却する際には、正しい評価額を把握しておくことで、不利な条件での取引や過剰な税負担を回避できます。しかし、評価額には「実勢価格」や「固定資産税評価額」など複数の種類があり、それぞれに異なる特徴があります。
この記事では、マンション評価額の基本から、それぞれの種類や調べ方について詳しく解説します。マンション所有者にとって役立つ情報をお届けしますので、ぜひ参考にしてください。
マンションの評価額とは
マンションの評価額とは、所有するマンションの価値を金額で示したものです。
相続税や固定資産税の計算、売買価格の決定、保険加入時の参考など、さまざまな場面で必要となります。
マンションの評価額を明確に把握することで、相続や売却時に損する可能性を低くできるため、マンション所有者は確認しておきましょう。
マンション評価額は6種類ある
マンションの評価額には以下6種類があります。
- 実勢価格
- 不動産鑑定評価額
- 公示地価
- 相続税評価額
- 固定資産税評価額
- 火災保険評価額
それぞれで特徴や意味が異なるため、詳しく解説します。
各評価額を理解することで、自分のマンションの評価額を計算する際に役立ちます。
実勢価格
実勢価格とは、市場で実際に取引された価格を指します。
売り手と買い手が合意して成立した金額であり、需要と供給のバランスを直接反映しているのが特徴です。
そのため、所有するマンションが現在どの程度の価値を持つのかを知るための重要な指標となります。
ただし、実勢価格は市場動向や物件の個別条件によって変動するため、常に最新の情報を参考にしましょう。
不動産鑑定評価額
不動産鑑定評価額とは、マンションや土地などの不動産が持つ経済的な価値を金額で示したものです。
不動産鑑定士が不 動産鑑定評価基準にもとづいて対象となる不動産を詳しく調査・分析し、適切な評価手法を用いて算出するのが特徴です。
不動産の売買や相続、資産管理など、さまざまな場面で重要な指標となります。特にマンション所有者にとっては、資産価値を正確に把握するための有益な情報といえます。
なお、不動産鑑定は有償で実施され、20~30万円程度の費用が必要です。
公示地価
公示地価とは、国土交通省が毎年公表する土地の価格指標です。
土地取引や資産評価の基準となり、適正な地価形成を促す目的で設定されています。具体的には、毎年1月1日時点の標準地の価格を不動産鑑定士が評価し、3月下旬に公表します。
公示地価は土地そのものの価値を示すもので、建物の価値は含まれていません。公示地価を把握することで所有する物件の資産価値や売却時の適正価格を判断する際の参考になります。
また、相続税や固定資産税の評価額とも関連しており、税金の計算にも影響を及ぼします。そのため、マンションの資産管理や売却を検討する際には、公示地価を確認しておきましょう。
相続税評価額
相続税評価額は、相続時にそのマンションに対して課される税金を計算する際の基準となる価値です。
市場での売買価格とは異なり、税務上の特定の方法で算出されるのが特徴です。
具体的には、マンションの建物部分は「固定資産税評価額」をもとに評価され、土地部分は「路線価」や「倍率方式」を用いて評価されます。
これらを合計したものが、マンション全体の相続税評価額です。この評価額は、相続税の計算に直接影響するため、マンションを所有している方にとって非常に重要な指標といえます。
固定資産税評価額
固定資産税評価額とは、市町村が土地や建物の価値を評価し、適正な価格を算出したものです。
例えば、土地であればその場所や形状、接している道路の状況などが影響し、建物の場合、新築時の建築費や築年数、構造などが評価のポイントとなります。
この評価額をもとに固定資産税や都市計画税などの税額が計算されるため、マンション所有者にとって、固定資産税評価額は毎年の税負担を左右する重要な指標となります。
固定資産税評価額は、市区役所などから通知される固定資産税の「納税通知書」、固定資産税評価証明書で確認できます。
なお、以下の計算式でマンションの資産価値の目安を把握することが可能です。
火災保険評価額
火災保険評価額とは、火災などの被害に遭った際に、同じ建物を新しく建て直すために必要な金額を指します。
新しく建て直すために必要な金額を「新価」と呼び、建物の経年劣化や使用による価値の減少分を差し引いた金額を「時価」と言います。
火災保険では、被災後に同等の建物を再建できるよう、「新価」を基準に保険金額を設定するのが一般的です。
マンションの実勢価格の調べ方
マンションが実際に取引されたときの実勢価格は以下の方法で調べられます。
- 不動産情報ライブラリで調べる
- 不動産査定を受ける
それぞれを詳しく解説します。
不動産情報ライブラリで調べる
マンションの実勢価格を知るためには、国土交通省が提供する「不動産情報ライブラリ」を活用するのが便利です。
不動産情報ライブラリでは、過去の不動産取引価格や地価情報などを地図上で簡単に確認できます。不動産情報ライブラリの取引価格は、「レインズ」と呼ばれる不動産会社専用の物件情報システムのデータを基に公開されているのが特徴です。
使い方は以下のとおりです。
- 不動産情報ライブラリのウェブサイ トにアクセス
- トップページの「不動産価格の情報をご覧になりたい方へ」の「データの検索・ダウンロード」をクリック
- 地域や物件の種類(マンションなど)を選択し、条件を設定して検索
- 検索結果として表示された該当エリアの取引事例や価格情報を確認
この方法により、所有するマンションと似た条件の物件がどの程度の価格で取引されているかを把握できます。
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不動産査定を受ける
不動産会社の査定を受けるのも方法の一つです。
不動産査定は、不動産会社の担当者が実際にあなたのマンションを査定してくれるため、実際の売却価格を把握できます。
査定には「机上査定」と「訪問査定」の2種類があります。
机上査定は、物件の基本情報や周辺の取引事例をもとに概算価格を算出 する方法で、手軽に依頼できるのが特徴です。
一方、訪問査定は実際に担当者が物件を訪れ、詳細な状態や周辺環境を確認してより正確な価格を提示する方法です。売却を検討している場合は、訪問査定を受けることをおすすめします。
不動産査定は無料で受けられるため、マンションの売却を検討している方は不動産会社に相談してみましょう。
マンションの不動産鑑定評価額は不動産鑑定士へ依頼する
不動産鑑定評価額を知りたいのであれば、不動産鑑定士へ依頼しましょう。
不動産鑑定士は国家資格を持つ専門家で、物件の価値を客観的に評価します。
相続や財産分与で不動産が含まれる場合、共有者や相続人間で資産価値に基づく適切な分割を行う必要があります。
この際、公平性を担保するために、客観的で信頼性の高い評価が求められます。
不動産鑑定士による鑑定評価額は、不動産の特性や市場状況を詳細に分析した結果に基づくため、下記のような理由で資産価値を把握したい場合に有効です。
- 相続や離婚に伴う財産分与のため
- 親族間売買の価格の正当性を示すため
- 法人同士の不動産取引や資産計上のため
鑑定には費用と時間がかかりますが、正確な評価を得ることで後々のトラブルを防げます。
マンションの公示地価の調べ方
マンションの公示地価は以下の方法で調べられます。
- 不動産情報ライブラリで調べる
- 全国地価マップで調べる
それぞれを詳しく解説します。
不動産情報ライブラリで調べる
実勢価格と同様に、公示地価も「不動産情報ライブラリ」で調べられます。
公示地価だけでなく、不動産取引価格、防災情報、都市計画情報など、さまざまな不動産関連情報を閲覧できます。
公示地価の調べ方は、トップページにアクセスし、「地図から探したい方へ」をクリックします。次に、表示された地図上で調べたい地域を選択し、公示地価の情報を表示する設定にするだけです。
これにより、選択した地域の公示地価を地図上で確認できます。
この方法を使えば、マンションの所在地や周辺地域の公示地価を把握でき、売買や資産評価の際に役立ちます。初心者の方でも直感的に操作できるので活用してみましょう。
全国地価マップで調べる
次に、「全国地価マップ」で調べる方法です。
このサイトでは、土地の評価額を地図上で簡単に確認できます。
全国地価マップでの調べ方は以下のとおりです。
- トップページの「地図検索」ボタンをクリックし、表示したい地図を選択
- 都道府県や市区町村を選択するか、郵便番号や住所を入力して調べたい場所を検索
- 地図上に表示されるマークをクリックすると、その地点の公示地価などの詳細情報が表示されるので確認
簡単に調べられるので初めての方は利用してみましょう。
マンションの相続税評価額を調べる手順
マンションの相続税評価額を調べる際は、以下の手順で進めます。
- 土地の評価額を調べる
- 建物の評価額を調べる
- 土地と建物の評価額を合計する
各手順を詳しく解説します。
①土地の評価額を調べる
まずは、土地の評価額を調べましょう。
土地評価額を調べる方法は、「路線価方式」と「倍率方式」があり、それぞれで方法や特徴が異なります。
路線価方式
路線価方式は、国税庁が毎年公表する「路線価」をもとに土地の価値を算出する方法です。
路線価は、主要な道路に面した標準的な土地1㎡あたりの価格を示しています。この価格に、土地の形状や奥行きなどの条件を考慮した補正率を掛け合わせて最終的な評価額を求めます。
路線価は、公示地価の8割程度の価格とされており、国税庁の「路線価図・評価倍率表」を活用して調べられます。
倍率方式
倍率方式とは、土地の相続税評価額を計算する方法の一つで、路線価が設定されていない地域で利用されます。この方法では、土地の固定資産税評価額に「評価倍率」を掛け合わせて計算します。
例えば、土地の固定資産税評価額が1,200万円で評価倍率が1.1の場合、「1,200万円 × 1.1 = 1,320万円」となり、土地の相続税評価額は1,320万円です。
評価倍率は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」でエリアを選択して調べられます。
②建物の評価額を調べる
次に建物の評価額を調べましょう。
建物の評価額は、「固定資産税評価額」をもとに算出されます。
固定資産税評価額は、市区町村から毎年送付される「固定資産税の課税明細書」に記載されています。この明細書にある「家屋の固定資産税評価額」が、建物部分の相続税評価額です。
明細書を紛失してしまった場合は、市区町村役場で「固定資産評価証明書」を取得して確認できます。
③土地と建物の評価額を合計する
最後に、土地と建物の評価額を合計しましょう。
それぞれの評価額を合計した数値がマンション全体の評価額です。
ただし、2024年1月1日以降の相続ではマンションの評価方法が改正され、建物と土地の評価額に一定の補正が加わるので注意が必要です。
詳細は専門家に相談しましょう。
マンションの固定資産税評価額の調べ方
マンションの固定資産税評価額の調べ方は以下の3つです。
- 固定資産税納税通知書を確認する
- 固定資産課税台帳で確認する
- 固定資産評価証明書を取得する
それぞれを詳しく解説します。
固定資産税納税通知書を確認する
マンションの固定資産税評価額を知る最も簡単な方法は、毎年4月頃に自治体から送られてくる「固定資産税の課税明細書」を確認する方法です。
この明細書の「家屋」の欄に記載されている「価格」や「評価額」が、所有するマンションの評価額に該当します。
固定資産課税台帳で確認する
固定資産税納税通知書を紛失するなどして確認できない場合、市区町村役場で「固定資産課税台帳」を閲覧することで固定資産税評価額を把握できます。
固定資産課税台帳には、所有するマンションの評価額が記載されています。閲覧を希望する際は、本人確認書類を持参し、役場の窓口で手続きをおこないます。
ただし、所有者本人やその代理人のみが閲覧可能で、他人の物件情報を閲覧する場合は所有者からの委任状が必要です。
また、自治体によっては台帳の直接閲覧ではなく、「評価証明書」などの書面を発行する形式を採用している場合もあります。この場合、手数料が発生することが多いので事前に確認しておきましょう。
固定資産評価証明書を取得する
固定資産評価証明書を取得して確認する方法もあります。
この証明書は、住んでいる地域の市区町村役場で発行されています。
取得する際には、本人確認書類の提示と手数料の支払いが必要であり、数百円程度が一般的です。また、郵送での申請を受け付けている自治体もあるため、事前に確認してみましょう。
火災保険評価額の調べ方
火災保険評価額は以下の方法で調べられます。
- 保険会社へ問い合わせる
- 自分で計算する3つの方法
それぞれを詳しく解説します。
保険会社へ問い合わせる
マンション所有者が火災保険の評価額を知るためには、保険会社に直接問い合わせるのが最も確実です。
保険会社は、建物の構造や専有面積などの情報をもとに再建築に必要な費用を算出し、適切な評価額を提示してくれます。
特に、築年数が経過しているマンションの場合、評価額が変動している可能性があるため、定期的な確認が重要です。
また、保険会社は専門的な知識を持っているため、評価額の算出方法や保険金額の設定について詳しく説明してくれます。疑問点や不安がある場合は、遠慮せずに相談しましょう。
自分で計算する3つの方法
火災保 険評価額は、以下の方法を活用すれば自分でも調べられます。
- 再建費用を基準にする
- 市場価値を基準にする
- 簡易計算をおこなう
それぞれを詳しく解説します。
再建費用を基準にする
火災保険の評価額は、同等の建物を新たに建てるための費用である「再建費用」を基準に設定します。これにより、被災時に元の状態に復旧するための十分な保険金を受け取れます。
マンションの場合、専有部分の評価額を算出する際には、「新築費単価法」を用います。具体的には、専有部分の面積に1㎡あたりの建築費を掛け合わせる方法です。
例えば、専有面積が70㎡で建築費が1㎡あたり25万円の場合、評価額は「70㎡ × 25万円 = 1,750万円」となります。
市場価値を基準にする
マンションの火災保険評価額を算出する際、専有部分の市場価値を基準とする方法があります。
計算手順は以下のとおりです。
- 専有部分の面積を確認する
- 現在の建築費単価を調べる
- 評価額を計算する
まずは、購入時の契約書やパンフレットなどで専有部分の正確な面積を確認します。
次に、現在の建物を建築する際の1㎡あたりの建築費を調べます。建築会社や不動産会社に問い合わせて情報を得られます。
最後に、専有部分の面積に現在の建築費単価を掛け合わせて評価額を算出します。例えば、専有部分の面積が70㎡、現在の建築費単価が1㎡あたり20万円の場合、評価額は70㎡ × 20万円 = 1,400万円となります。
この方法により、現在の市場価値にもとづいた適切な評価額を設定できます。
ただし、建物の劣化状況や設備の更新状況など も考慮する必要があるため、専門家に相談しながら算出しましょう。
簡易計算をおこなう
専有部分の面積と建物の構造をもとに概算する簡易計算を使っても求められます。
まず、専有部分の面積(㎡)を確認し、建物の構造に応じた1㎡あたりの建築費を調べます。
鉄筋コンクリート造のマンションの場合、1㎡あたりの建築費は25万円前後とされており、この単価に専有面積を掛け合わせることで建物の評価額を算出できます。
例えば、専有面積が70㎡の場合、25万円×70㎡=1,750万円となります。
ただし、この方法で得られるのは概算の評価額であり、実際の評価額は建物の築年数や設備の状況によって異なります。詳細な評価額を知りたいのであれば専門家へ相談しましょう。
マンションの評価額に関するよくある質問
マンションの評価額に関するよくある質問をご紹介します。
マンションの評価額と実際の売買価格の差はどれくらい?
売買価格の差は、時期や不動産市況によって異なります。
評価額は、税金計算や相続手続きのために公的機関が定めた基準であり、固定資産税評価額や相続税評価額などが該当します。
一方、売買価格は市場での需要と供給によって決まるため、評価額とは異なるケースが多いです。例えば、固定資産税評価額が1,000万円のマンションでも、実際の売買価格がそれより高くなる場合もあれば低くなる場合もあります。
立地条件、築年数、周辺環境、管理状況など、さまざまな要因によって実際の価格は変動するため、マンションを売却する際には評価額だけでなく、最新の市場動向や物件の特性を考慮し て適切な価格設定をおこなうことが重要です。
マンション評価額の改正でどう変わったの?
2024年1月1日から、マンションの相続税評価方法が見直されました1。これにより、特に高層マンションでは評価額が上昇する可能性があります。
これまで、マンションの相続税評価額は市場価格より低く算定される傾向がありました。特に高層階の物件ではこの差が大きく、「タワマン節税」と呼ばれる節税策が利用されていました。
しかし、今回の改正で評価額が市場価格の約60%となるよう調整されました。これにより評価額が引き上げられ、相続税の負担が増加する可能性があります。
詳しくは、国税庁「居住用の区分所有財産の評価」をご覧ください。
マンション売買の際はどの評価額を参考にすればいい?
実勢価格を参考にしましょう。
実勢価格は実際の市場で取引される価格であり、適切な価格に最も近い価格だからです。
「不動産情報ライブラリ」では、実際に取引された価格が掲載されているため、類似物件の価格情報を確認してみましょう。
まとめ
マンション評価額について解説しました。
マンションの評価額とは、そのマンションの価値を表した金額であり、相続税や固定資産税を計算したり売却価格を設定したりする際などに参考にできます。
評価額には、「実勢価格」や「不動産鑑定評価額」、「固定資産税評価額」などさまざまな評価額があり、それぞれで活用する場面や意図が異なります。
それぞれの評価額の意味や計算方法を理解することで自分のマンションの評価額をより具体的に把握できるため、相続や売却などにも活かせます。
最近はマンションの価値が上昇しており、売却や賃貸を検討している方もいるでしょう。
マンションの評価額を正確に把握することで、適切な売買価格や、賃料の設定が可能です。
「マンションの評価額っていくらなんだろう?」と思っている方は、ぜひこの記事を参考に評価額を調べてみましょう。