不動産の購入後は、基本的には価格が下落することが多いです。
しかし、下落する原因を知っていれば、値下がりする前に売却する、あるいは、値下がりしにくい物件を見抜けるようになります。今回は、不動産の価格が下落する原因と下がる前に売却する際のポイントについてお伝えします。
建物は経年で価格が下落する
不動産は、土地と建物の価格の両方を加味した上で最終的に売却価格が決まります。土地の価格は、経年で自動的に下落するわけではありません。需要と供給で変化します。
しかし、建物の価格は、ほぼ間違いなく経年で下がります。建物の設備や外観は、劣化が避けられないからです。
また、どうしても周辺の新しい建物と比較されるため、古い建物の訴求力は下がってしまいます。 多くの人は古くて設備が整ってない物件よりも、最新の設備が備わっていて外観がおしゃれな物件を好むものです。
他には、デザインの陳腐化や設備の老朽化、安全性などの諸問題でも建物の価格は下落することがあります。
建物の価格は法定耐用年数の影響を受ける
居住用の建物は、上記の数値から1.5倍した法定耐用年数で計算される。
また建物には、法定耐用年数が決まっています。法定耐用年数は、基本的には納税時における減価償却期間を示した数字ですが、不動産の売買において建物価格の下落を示す基準の一つにもなっています。
法定耐用年数は物件の構造により異なります。
- 木造・合成樹脂造の住宅:22年
- 金属造3〜4mm以下の住宅:27年
- 金属造4mm超の住宅:34年
- 鉄骨鉄筋コンクリート造(RC造)の住宅:47年
例えば、木造物件の耐用年数は22年(居住用の場合は33年)です。あくまでも目安ですが、建築から20年以上も経過している木造物件の価値は、その時点でかなり低くなります。
建物の価値は平方メートルあたりの
で算出されます。
再調達価格とは、その建物と同じ建物を建築する際に必要な金額のことです。再調達価格が㎡単価20万円の100㎡築11年木造物件であれば、
その価値は1,000万円と算出されます。
▼関連記事:建物の査定額に耐用年数はどう影響する?寿命との違いや耐用年数超過で評価がどうなるかを解説
管理状態で建物の評価が下がることも
また、経年や耐用年数の経過だけではなく、実際の物件の状態によって価値が下がります。木造物件や築古の RC造物件であっても、管理状態が良くて美観が綺麗な物件であれば、不動産の実売価格はそれほど下がらないこともあります。
逆に、築5年や6年といった比較的まだ新しい物件でも、管理状態が悪くて設備の不具合や屋根の破損、シロアリ被害などが見つかれば、価格が暴落するおそれがあります。2019年の台風で被害を受けた武蔵小杉のマンションは、その資産価値が低下したとの報道を覚えている方も多いでしょう。
法定耐用年数および築年数はあくまでも建物の価値を算出するための目安であり、絶対的な基準ではありません。最終的に売却価格は市場での需要で決まることを覚えておきましょう。
また、物件を探す時点で大半の人は築年数を基準に「築20年以上の物件はNGだな」などNGラインを決めて部屋探しを行うことも多いです。つまり、築年数が古い時点で購入の対象から外されてしまうこともあるのです。
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地価は不動産の価格に大きく影響する
建物以上に不動産の価値を左右するのが、土地の価値(地価)です。土地は減価償却の対象にならないため、経年だけで価値は変化しません。 実際の不動産取引市場における需要と供給の関係で価格が変動します。
地価は需要によって上下する
地価は、エリアに対する需要によって上昇もしくは下落します。
不動産価格の高騰で多くの人の記憶にあるのは、1980年代後半頃のバブル経済ではないでしょうか。 この時期は日本全国で地価が暴騰し、バブル経済の崩壊後は日本中の地価が一斉に下落しました。
近年ではバブル経済期までとはいきませんが、地価が上昇しています。都心部においては、バブル経済期に近い価格帯まで不動産価格が高騰しているのです。
しかし、バブル経済期と大きく違うのは、バブル経済期は日本全国の地価が上昇しましたが、ここ数年の日本は少子・高齢化社会が進んでいることもあり、地価が下がるエリアが多く存在している点です。
郊外や地方では、地価の暴落が発生している地域もあります。地価が上がるエリアと下がるエリアの見極めこそが、不動産が値下がりする前に売るポイントです。
地価が下がるエリアは、人が住まなくなるエリアでもある
地価が下がる理由は、エリア全体に需要がなくなりつつあるからです。つまり、人口が減っているエリアだと考えて良いでしょう。
現在の日本では、人口が地方から都心部に流入する傾向にあります。東京都の人口が1,400万人を突破する傍ら、東北地方や中国地方などではほとんどの自治体で人口が減少しています。人が住まなくなれば不動産の需要は減 り、地価も建物の価格も下がる一方です。
人口予測などで先の需要を読む
人口の増減次第で不動産と土地の価値が変化するのですから、これから先の需要を読むには人口動態を押さえることが大事です。人口動態を把握することによって、ある程度は今後の地価の変動が読めるようになります。
例えば、以下の図は東京都が発表した人口動態に関するデータです。このデータでは、東京都の人口は2025年頃までは上昇する見通しです。
ただし、このデータは2010年の予測であり2024年時点で人口は1,400万人を超えています。今後も東京都の人口は予測以上に伸びる可能性が十分考えられるでしょう。
一方で、例えば、青森県の人口予測は以下の図の通りです。
今後も人口の減少を食い止めることができないため、地価の下落は避けられないと考えられます。
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新築物件の購入では価格の下落は避けられない。需要を先読みした上で土地や中古物件を購入する
では、不動産の価格が下がる前に可能な限り物件を最高値で売却するには、どのようなポイントを押さえておけば良いのでしょうか。まずは新築物件の購入を避けることが大事です。
新築物件には建築業者の利益が含まれている
新築物件には、不動産会社の利益が建築時に含まれています。
例えば、5,000万円のマンションの価格の内訳は
建物代:2,000万円
不動産会社の利益:1,000万円
であったとします。
物件を売却する際の価格には、建物と土地が持つ価値のみが反映されます。不動産会社の利益は売却価格に含まれません。不動産会社の利益が含まれる新築物件を買うと、売却時には必ず業者の利益分だけ価格が下がってしまうのです。
しかし、中古物件を購入すれば、購入価格に不動産会社の利益分が含まれていません。不動産市場の相場に沿った価格で売買されます。仮に購入時よりも土地への需要が高ければ、売却時に購入時を上回る価格で売却が可能な場合もあります。
土地のみであれば、売却時に値が下がらずに済むことも
土地のみを購入すれば、経年劣化で価値は下がらないため、購入時よりも高く売ることが容易になります。
ただし、値上がりする土地を見極める必要があります。また、住宅ローンは利用できないので、こちらは投資を前提に不動産の売買を考えている方向けの選択肢です。
自治体の発表や鉄道路線の延伸など、先の需要を読む
では、値上がりする土地を見極めるにはどうすれば良いのでしょうか。
大切なのは、市街地の開発計画や鉄道路線の延伸計画などを事前に知ることです。
武蔵小杉は21世紀に入って複数の路線が乗り入れしたことで、駅の利便性が大きく向上しました。その結果、通勤に便利な場所として住む人が増え、マンションも続々と建てられました。2001年から2019年までを比較すると、武蔵小杉駅付近の公示地価は坪単価119万円から、坪単価328万円にまで上昇しました1。
さらに人が集まれば、ビルや商業施設などの建物の開発が行われ、より多くの人が移住する好循環が生まれます。
エリアの開発 計画は、自治体や鉄道会社が前もって発表します。情報をこまめにチェックすれば、不動産に対する需要のピークを見極めることが出来るのです。今後はリニアモーターカー新幹線の停車駅周辺の開発が進む可能性が高く、注目されています。
一方で同じく武蔵小杉が台風の被害を受け、意外な災害への弱さが露呈し、マンションを売りに出す人が増えたという報道も行われています。プラスの要素だけではなく、災害への対応力などマイナスに繋がる要素も見極めましょう。
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まとめ
不動産の価格は、常に一定ではありません。建物は経年によって基本的に下落しますし、土地は需要次第で上がることも下がることもあります。
新築物件を購入した場合、購入価格には不動産会社の利益分が含まれるため、売却時には利益分だけ必然的に値下がりします。不動産を購入して値下がりを防ぐには、まずは中古物件の購入が先決です。
そして、予測される人口動態を調べ、商業施設の開発や鉄道路線の延伸計画などを把握の上、需要の増加が見込めるエリアを見定めましょう。
また、近年の気候変動により、今後大型台風の襲来が増えるとも言われています。強風、洪水、浸水といった自然災害の被災のしにくさも、今後は不動産相場に影響する可能性があります。その点もしっかり見ていきましょう。
上記の数々のポイントを押さえれば、不動産相場のピークを見極めて高値で売却することも可能でしょう。