空き家を放置するリスクに犯罪への悪用があります。
空き巣や不法占拠、犯罪者のアジトにされるなど、さまざまな形で悪用されるケースがあり、自分の知らないうちに所有する空き家が犯罪に巻き込まれてしまう可能性があるのです。
犯罪に巻き込まれないためには、しっかり対策する必要があります。
この記事では、空き家が悪用される具体例や管理の注意点・対策などを詳しく解説します。
空き家が犯罪に悪用されるよくあるケース
人の出入りがなく人目に付きにくい空き家は犯罪者にとって都合の良い場所です。
代表的な犯罪被害に「放火」「不法占拠」「不法投棄」があります。
また、近年は以下のような犯罪で悪用されるケースも増えているので注意しなければなりません。
- 現金や不正薬物の入った荷物の受取に悪用される
- 犯罪活動のアジトとして利用される
- 空き巣被害に遭ってしまう
それぞれ詳しく解説します。
現金や不正薬物の入った荷物の受け取りに悪用される
近年横行している特殊詐欺の被害金や不正薬物の受取場所として、人目の付かない空き家はうってつけです。
代表的な受け取りの手口として、は以下のようなものがあります。
- 郵便受けに偽の表札を貼られ投かんされた不在連絡票を利用し郵便や宅配便で受け取る
- 空き家に侵入し住民に成りすまして荷物を受け取る
特殊詐欺の被害金の受取としては振り込みが代表的ですが、近年は振り込め詐欺の認知度が上がってきたため、代わりにレターパックなどを利用した現金送付が行われることがあります。
また、直接受け取らずに、置き配や宅配ボックスを利用できる点も犯罪のしやすさの要因となっているでしょう。
犯罪活動のアジトとして利用される
受け取りだけでなく犯罪活動のアジトとして利用されるケースもあります。
詐欺電 話を掛ける場としてや潜伏場所・違法薬物の栽培に利用されるケースは少なくありません。
このような犯罪に利用されると、所有者として警察から事情聴取される恐れがあります。
さらには、犯罪拠点として全国ニュースに流れてしまう可能性もゼロではないでしょう。
そこまでいかなくても、不法侵入者が空き家をうろつくことでいわくつき物件として広まってしまい、精神的なストレスとなったり売却に影響が出たりする恐れがあります。
また、犯罪に利用された後に証拠隠滅のために放火されるリスクもある点も大きな懸念材料といえます。
空き家の放火では空き家が消失し解体費用などが掛かるだけでなく、近隣に延焼し被害を出す恐れがあります。
近隣に被害を出した場合でも所有者が罪に問われることはありません。
ただし、空き家の管理が不十分と判断されると存在賠償請求を受ける恐れがあるので注意が必要です。
たとえ法的責任がないとしても近隣へ見舞金を支払うのが一般的であり、見舞金を支払ったとしても近隣からの責めからは逃れられないでしょう。
空き巣被害に遭ってしまう
相続した空き家に荷物をそのままにして放置しているケースも多く、その場合空き巣被害に遭うリスクがあります。
現金や貴金属・パソコンなどの電化製品を放置しているなら要注意です。
さらに、金品の物色中に家じゅうを壊される、他の家で窃盗したもので金目にならないもの・不法侵入中のゴミなどを放棄される可能性もあります。
日本における空き家問題
空き家を放置すると犯罪に利用されるだけでなく、倒壊や景観悪化・治安悪化などさまざまな問題を引き起こすリスクがあります。
このことは「空き家問題」として、都市部・地方関わらず日本全国で大きな問題となっているのです。
空き家率が増加している
総務省の調査によると2023年10月1日時点で、日本の空き家数は900万戸と2018年の849万戸から51万戸の増加となっています。
空き家数は2003年659万戸、2013年820万戸となっており、年々増加していることが分かります。
また、総住宅数に占める空き家率は2018年の13.6%から2023年で13.8%への増加です。
空き家が増え続ける要因として、日本の少子高齢化・人口減少・核家族化・新築住宅の供給過多などが挙げられます。
複雑に原因か絡み合っており、今後もこれらの原因が急速に解決される見込みがない以上、今後も日本の空き家が増え続けることが予測されるでしょう1
空き家を解体すると固定資産税が高くなるため放置される
空き家を相続した場合、管理ができないなら解体して土地として所有することで倒壊や犯罪リスクを避けやすくなります。
とはいえ、家を解体するにはそれなりの費用が必要です。
加えて、空き家を解体すると固定資産税が高くなることも解体が進まない大きな理由といえます。
不動産の所有者に対して毎年課税される固定資産税は、空き家であっても課税の対象です。
しかし、居住用の建物が建っている土地は固定資産税が最大6分の1になる軽減措置が適用されます。
一方、居住用の建物を解体し更地にしてしまうと、この軽減が適用できません。
本来の税額に戻るだけではありますが、それまでの税金の最大6倍に跳ね上がるとなると大きな負担となりかねないでしょう。
空き家が建っていることで税負担を軽減できるのは、所有者にとって大きな魅力といえます。
わざわざ解体費をかけ税金まで上がるとなれば、解体が進まないのもうなずけるものです。
2015年に空き家対策特別措置法が施行される
このような空き家問題の解決のために施行されたのが「空き家対策特別措置法(空き家特措法)」です。
空き家特措法では、空き家の適切な管理や活用の促進を目的とし空き家の所有者や自治体の責務・対応方法などを定めています。
空き家特措法によって、自治体は管理が適切でない空き家を「特定空家」に指定できます。
特定空家に指定されると、所有者に対し管理改善の指導や指示が行われ、解消できない場合は強制執行も可能です。
また、特定空家に指定され自治体から勧告を受けると、前述の固定資産税の軽減措置も適用できなくなります。
なお、2023年の法改正により特定空家になる恐れのある空き家に対し「管理不全空家」の指定も可能になっています。
管理不全空家でも指示・指導の対象となり、固定資産税の軽減措置の除外や過料などのペナルティの恐れがあるので注意しましょう。
このように、相続した空き家を放置しているとさまざまリスクを生じます。
適切に管理することが大切ですが、管理が難しいなら売却して手放すことも検討するとよいでしょう。
空き家を管理する際の注意点
犯罪に利用されやすい空き家の特徴として、「見た目で空き家だと判断できる」「人が寄り付かない雰囲気を出している」という点が挙げられます。
空家だとしても、定期的に人の手が入っていると感じられると狙われにくくなるものです。
管理する際には、以下の点に注意しましょう。
- 窓ガラスが割れている状態で放置しない
- 草が生えっぱなしの状態で放置しない
- ポストに新聞やチラシが溜まっている状態で放置しない
それぞれ解説します。
窓ガラスが割れている状態で放置しない
割れた窓ガラスを放置していると明らかに空き家だと分かります。
また、割れた窓が侵入経路となってしまうので注意しましょう。
すでに割れた窓は交換し、まだ割れていない場合でも防犯フィルムを張るなど対策することをおすすめします。
草が生えっぱなしの状態で放置しない
草が生えっぱなしという状況では長期間手入れされていないと判断されやすいです。
さらに、草が生い茂ることで周辺からの視界を妨げやすくなる点も犯罪者が利用しやすくなる要因です。
定期的に除草して手入れするようにしましょう。
雑草は成長が早く、管理の手間がかかりやすいものです。
作物を育てる予定がないなら除草剤を散布する、お金をかけられるならコンクリートで舗装することも検討するとよいでしょう。
また、防犯対策として庭や玄関に人感センサーライトを設置するのもおすすめです。
ポストに新聞やチラシが溜まっている状態で放置しない
ポストの投函物が溜まっていると不在であることが明らかになるため、定期的に回収しましょう。
被相続人(亡くなった方)郵送物がくる場合は、転送届や送付先に連絡するなどで送付されないように早めに手続きすることが大切です。
新聞なども早めに解約しなければ、料金がかかってしまいます。
また、ポストはテープなどで投函口を塞ぎチラシお断りと記載しておくとよいでしょう。
空き家を適切に管理するための対策
空き家を適切に管理するための対策として以下の3つを紹介します。
- 定期的に足を運ぶ
- 業者の利用を検討する
- 売却を検討する
それぞれ見ていきましょう。
定期的に足を運ぶ
定期的に空き家を訪れて以下のような状態のチェックや管理を行うことが大切です。
- 敷地内・建物の掃除
- 室内の換気
- 建物の不具合のチェック
- 近隣への挨拶
人の住まない家は老朽化が進みやすくなります。
不具合を放置していると破損などで近隣に被害を出す恐れもあるので、状態をチェックし早期 発見できるようにしましょう。
また、足を運んだ際に近隣に挨拶し良好な関係性を築いておくことで、不審者がいれば気にしてくれたり、何かあったら連絡してくれたりするなどトラブルを未然に防ぎやすくなります。
業者の利用を検討する
空き家が遠方にあったり、管理する時間が取れなかったりと、自分での管理が難しいなら、管理会社に委託するのも1つの方法です。
空き家の管理業者では、定期的な巡回や清掃・点検・郵送物のチェックをしてくれます。
ただし、管理会社への依頼は費用が発生します。
管理会社や管理内容によっても費用は異なりますが、月額0.5万円~1.5万円ほどが目安です。
事前に費用や管理内容をしっかり確認し業者を選ぶようにしましょう。
売却を検討する
自分で管理するには手間がかかり、委託すれば費用がかかります。
また、所有し続ける限り固定資産税は毎年課税されます。
このように、使う予定のない空き家は費用と手間がかかるうえに、管理ができなければ倒壊や犯罪のリスクが高まるものです。
管理やリスクから解放されたい場合は、売却を検討するとよいでしょう。
ただし、地方や築年数が古い空き家は売却が難しい恐れがあるので注意が必要です。
空き家を売却するなら、そのエリアの空き家の売却に強みを持つ不動産会社を選ぶようにしましょう。
選ぶ際には最初から1社に絞るのではなく、できるだけ多くの不動産会社に査定依頼し比較することが大切です。
なお、売却しにくい空き家や手間をかけずにすぐに手放したい場合は 、仲介ではなく買取が適しています。
まずは、買取と仲介両方の査定を受けて売却方法を検討するよいでしょう。
イエウリでは、仲介だけでなく買取の査定も無料で行えます。
プロによる無料相談も受け付けているので、空き家をどうすればいいか悩んでいる方はぜひご相談ください。
空き家の犯罪に関するよくある質問
最後に、空き家の犯罪に関するよくある質問をみていきましょう。
空き家と犯罪率に関するデータはある?
空き家に残された金品の窃盗事件が増えている傾向にあります2。
また、消防庁によると令和5年の火災件数は38,672件 でそのうち放火・放火の疑いは4,111件と昨年よりも増加しています3。
空き家がどれだけの被害に遭っているかの公表はありませんが、居住中の家よりも放火されるリスクが高い点には注意しましょう。
空き家と治安に関係性はある?
適切に管理されず放置された空き家は犯罪の温床になりやすくなります。
不法侵入者が住みついたり、犯罪のアジトにされたり、周囲の治安の悪化を招くでしょう。
また、荒廃した空き家があることで犯罪の起きやすい心理が働くともいわれており、治安の悪化を起こしやすくなるのです。
空き家問題は2030年にはどうなる?
国土交通省 によると居住目的のない空き家は1988年で182万戸、2018年で349万戸であり、2030年には470万戸に上ると見込まれています4。
また、野村総合研究所によると2033年の空き家率は約30%と、住宅10戸のうち3戸が空き家になると予測されており、すでに深刻化している現在よりもより空き家問題が深刻になる恐れがあります5。
ただ し、野村総合研究所の新しい予測 では空き家率は25.2%または17.9%になると下方修正されています。
国や自治体としても空き家特措法などで空き家問題に取り組んでいる現状もあるので、一概に悲観的とは言えないでしょう。
とはいえ、すぐに解決される問題ではないため今後の動向を注視しておくことが大切です。
まとめ
空き家を放置していると倒壊や景観悪化などのリスクがあるだけなく犯罪の温床となる恐れもあります。
また、自治体から特定空家に指定されると指導や命令が行われ、固定資産税の軽減が受けられない・強制執行を受けるなどのリスクもあります。
空き家を犯罪から守るには、適切な管理が必要です。
しかし、管理には手間や時間・費用も掛かるため、活用の予定がないなら売却を視野に入れるとよいでしょう。